先々週からも何度か訪れる疼きを我慢していた。
今は、仕事で忙しくて頑張ってくれている夫に対して
裏切ってような思いはしたくなかった。
夫が落ち着いてから、また抱いてくれるのを待とうと決めていた。
疼く時もあったが、夫を支えるという気持ちで乗り切っていた。
今日も、出張にでかける夫を送っていったばかりだった。
その日の午後
ガシャンっ
「イタっ」
「あっ ごめんなさいっ」
ある日、買い物をしてマンションに上がって、角を曲がったところで
いきなり走ってきた男の子とぶつかって、尻もちをつかせてしまう。
「僕 大丈夫?」
ぶつかった子供を見ると、隣の家の子供だった。
たまに同じ階ですれ違うときに、コクンと挨拶してくれる礼儀正しい子だった。
確か、名門私立小学校に通っていて6年生で、学年1,2位だということを
隣の奥さんが、ゴミ捨て場で立ち話しているのを聞いたことあった。
「ちょっと、イタイです。。」
痛そうに顔をしかめながら、足首をさすっていた。
「痛いの? ご両親はいらっしゃる?」
「いえ。。今週は学会で海外に二人とも・・」
「えっ海外に・・。どう・病院に行く?」
景子は動揺した。
あたりを見回すが、当然誰もいなかった。。。
「い。。いえ。。大丈夫です。
でも、夜、塾に行かないといけないんです。」
「じゃあ・・おばさんの家でちょっと休んでいって お名前は?」
「雅也です」
「そう 雅也くん 立てる? おばさんの家は貴方の家の隣だからすぐよ」
景子は痛そうにしている雅也の腕を抱えるように立たせると、
少し片足をひきずって立ち上がりながら雅也が言った。
「知ってますよ」
「えっ?」
「おばさんは綺麗だから・・・」
(え・・・・・)
景子はキュンと心が鳴った気がした。
久しぶりにこんな気持ちを感じて顔が少し赤くなる。
「おばさん いい匂いしますね」
「あ・・ありがとう。でも大人をからかっちゃダメよ」
そう最近、香水を変えていた。
夫には気づいてもらえなかったが、雅也は褒めてくれたことに
景子はまたドキドキした。
(バカ・・・お世辞よ)
景子は、子供の他愛もない冗談だと決めつけようとして
心を落ち着かせて、十メートル先の自分たちの部屋まで連れていった。
部屋に入り、リビングのソファに座らせると、靴下を脱がして足首をみると
少し赤くなっていた。
「ちょっと待ってね 湿布をとってくるから」
暖かい湿ったタオルで足を拭いてやると、赤くなった部分に
湿布を貼ってやる。
話を聞くと、今からコンビニで晩御飯を買って、食べてから
塾に行く予定だったということだった。
「ちょうど、今日おばさんも一人だから、カレーだけど
食べて行く?」
「え。いいんですか。ありがとうございます」
雅也は嬉しそうに、笑顔を見せた。