※この作品はR-18です。

この素晴らしい「夢薬」で本心を!   作:GA 飛びイカ

2 / 5
2話目になります。
多分まだKENZENです。


第2話

「どうしてこんなことに……」

 

私は今から始まる惨状に気が重くなり、深くうなだれる。

 

「だ、大丈夫めぐみん?」

 

横では私の様子を気にした風のゆんゆんが座っているが、本当はこれから始まるものが楽しみで仕方ないのかそわそわしている。

 

「楽しみですねー!昨夜はいったいどんな感じだったのでしょうか!」

 

その横では最早楽しみなのを隠そうともしないこの店の店主ウィズが座っている。

今だけは悪魔とアンデッドは問答無用で滅ぼそうと言うアクアの意見にも賛同できる。

 

「フハハ!それでは今回の劇を始めようではないか!」

 

目の前でバニルがお手製の人形劇の幕を上げ、中の人形たちが腰を折って挨拶するような動作をしてくる。

今回は私とカズマだけでなく、ダクネスやアクアの人形もある。

アクアの人形だけあからさまにボロボロですね…。

 

「あれは爆裂娘が初めて薬を使ってから6日目の夜のことだ」

 

どこからともなく音楽が流れて劇が始まる。

というか

 

ちゃんと店の仕事をしてください!!

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ぐむむ…」

 

私はイライラしていた。

それはもう不機嫌ですよオーラが周りに立ち込める位にはイラついていた。

 

「おかしい。どうやってカズマはあそこから立ち直ったのですか」

 

初めて夢薬(仮)を使用した日。

カズマの予想外の反応に面食らったりしましたが、めくるめく夜を堪能した夜。

昼に起き抜けで会った際のカズマは、なんというか、野獣の眼光鋭い性獣で、もう私に劣情を抱いているのが丸わかりだった。

 

カズマの気持ちもわかる。

夢薬を使った際のカズマは夢を観ているような状態だったわけですが、私が色々と出した要望に応えながらも手を出そうとする度に私に止められていた。

カズマからしてみれば何度も何度もお預けを喰らっていたようなもので、そりゃああんな獣の目もするってものです。

 

こんな目をしている男と1つ屋根の下、何も起きないはずはありません。

勢いで貞操を失うのは困りますが、それはそれで、まぁ既成事実を盾に迫ればいいですし、未遂でもそれを理由にからかったりして仲を深めていけば良いでしょう。

 

そう思っていたのに。

 

「どうしためぐみん?何か考え事か?そんなんじゃダメだぞ!」

 

外泊を済ませて帰ってきてから妙にすっきりして爽やかな様子ですし。

 

「めぐみん、お茶でもどうだ?イライラによく効くぞ。アクアは水でも飲んでろ」

 

気味が悪いくらい私だけに優しいし。

あまつさえ今の状況だ。

 

「もうすぐアクセルの街だ。街に入ったら降ろすからな」

 

カズマは私をおんぶしてアクセルへの道を歩いていく。

日課の爆裂散歩を済ませた私たちは、帰路に付いているのですが、その際に私はカズマにおんぶを頼みました。

おんぶを頼んだ際にぶつくさ文句を言わない時点でいつもと違いますが、まぁそれはいいです。

私がおんぶを頼んだのは、何も自分が楽しようという思惑だけではありません。

 

カズマは私をおぶる際には小まめに抱え直して胸の感触を楽しんだり、手の位置を変えるフリしてさりげなくお尻や太ももを触ってくるのが常です。

約1週間前のガツガツしたカズマならば、もう辛抱たまらんとがっつりお尻を掴んできたりするのではないか。

もしそうなったら怒りながらも満更でもない感じをだし『え?あれ?めぐみん?』『私以外の女の子にやってはダメですよ』なんて言ったりしていい感じの雰囲気に……て思っていたのに!

 

この男、全然お尻を触ってきません!

それどころか胸の感触を楽しんだ様子もなく、まるで老人のような穏やかさで私を運んで行きます!

 

…………。

 

いやいや!これでは私の方が触って欲しくて期待しているみたいではないですか。

私はそんなダクネスのような痴女では断じてないのですが!それでもこう何もないとイライラとする訳ですよ!

 

私のイライラなどつゆ知らず、カズマは菩薩のような表情で歩いていく。

結局カズマはアクセルの街の入り口ではおんぶを解除せず、屋敷までおぶってくれました。

 

……優しいのはいいのですけど。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「と、そんな感じです」

「何だか夜の営みがなくてイライラしている人妻みたい」

「何ですかその例えは!最近そう言う小説ばっかり読んでいる所為でそういう発想になるのですよ!族長に手紙を書いて報告させてもらいます!」

「やめて!!本当にそれだけはやめて!私もう里に帰れなくなっちゃう!!」

 

爆裂散歩から帰ってきた私はギルドに赴き、そこで一人寂しく過ごしていたゆんゆんに最近のカズマの様子を話していた。

夢薬にも関連する事だからウィズの店に行ってウィズも交えて、とも思いましたが、もれなくあの悪魔が口を出してくるのが簡単に予想できたので今回はギルドに来たわけです。

この時間ならゆんゆんはギルドにいるだろうと予想できましたし。

 

「だ、だけどめぐみん。カズマさんが何かしら迫ってくると思ったからもう薬は使わないって啖呵を切ったんでしょ?今のままじゃ関係が進まないんじゃないかな…」

「うぐっ」

 

この子は、腐っても紅魔族といったところでしょうか。

私の目論見なんかも全て分かっていたようですね。

 

私がバニルから薬を買った理由としては、カズマとの関係進展のために、というのが一番大きな理由です。

ちなみに二番目はカズマを好き勝手出来るという点ですが、それはこの際置いておきましょう。

薬を使った後にカズマがムラムラして私にぐいぐいアプローチをかけてくれるならば、私は大人な女を演出して手玉に取ろうと思っていたのに、肝心のカズマがヘタレを通り越して賢者になってしまっては出来ることなど無くなってしまう。

 

「ですが、カズマも妙ですね。あんなにギラギラしていたというのに、外泊を済ませて帰ってきた後からは憑き物も落ちたようなスッキリとした表情をしていました。…なぜか私だけには優しいですし」

 

アクアやダクネスにはいつも通りの態度なのに私だけに優しいというのも変な話だ。

夢薬によって私を意識して優しい、というのなら分かる話ですが、どうも照れとかそういう感情由来ではなさそうなのですよねぇ。

 

「…!ねぇ、めぐみん。あくまで想像というか予想なんだけど、理由を思い付いたんだけど…聞きたい?」

「なんですかその言い方は?正解かどうかも聞かなきゃ分からないのですから気にせずに言えばいいじゃないですか」

 

私の言葉にゆんゆんは少し逡巡するが、意を決したように話し出した。

 

「私の読んでいる小説に人妻が遊びで不倫をする話の物があるんだけど…」

「やっぱりそういう本を読んでいたのですか、いやらしい子ですね」

 

赤面しながらもゆんゆんは話を続ける。

 

「その人妻の夫も実は同じように他の女の人に手を出していたの。その男の人は別の女と会った次の日なんかは、罪悪感からかすごく人妻に優しかったりするの。……今のカズマさんのように」

「……!!!」

「ここからは私の勝手な推測なんだけど、実はカズマさんもめぐみんのことが好きなのよ!だけどパーティの仲間に手を出すのは冒険者のタブー。身を焦がす感情を表に出さないで過ごしていた……。だけど薬を飲まされた夜、夢とはいえめぐみんとイチャイチャして我慢できなくなっちゃったんだと思う。そこで外泊をして、浮気か…店売りの女の人で、その、スッキリしたんじゃないかな…。身体はスッキリしたけれど、想っていためぐみんを裏切ったような気がして優しくしている…。あくまで私の想像だけど」

 

ゆんゆんは最後に再び想像という言葉を付けていたが、私は雷に撃たれたような衝撃を受けていた。

それだ!まさしく今の状況に完全に合致している!

なんということでしょうカズマが私を想って、それでいて手を出さずにその想いを胸に秘めていたなんて!

昔の私ならともかく、今の私ならきちんと責任を取ってくれるなら、カズマの想いだって受け入れられるというのに!

 

しかも、今のゆんゆんの予想ではカズマが私に優しい理由は不倫をしたことによる罪悪感だと言うではありませんか。

そんな!

カズマが私以外の女の人と…そんなことを…。

嫉妬でどうにかなってしまいそうです…。

 

あ、いや、私とカズマは付き合っている訳ではないので不倫でも何でもないのですが……。

ないのですが…。

カズマが私以外の女の人と一夜限りとはいえ親しくしている場面を想像する。

 

いやです、そんなのは!

 

「…ゆんゆん。私、今夜夢薬を使おうと思います」

「えぇ!?いいの?使ったら明日は一緒に劇を見なきゃいけなくなっちゃうよ?それに私の言った事だってあくまで推測でしかないし」

「いいんです。ゆんゆんの言った事を確かめるためにも、眠ってるカズマに聞いてみたいと思います。……それに、カズマが不倫してしまった原因は、私ですから」

 

もうあの悪魔にからかわれたって構わない。

本当にカズマが不倫をしたのかどうか、確認しなければスッキリしない。

…それにカズマにたっぷり甘えたいですし。

 

「めぐみん…。わ、わかったそこまで言うなら私は止めないよ。で、でもめぐみんは一度やり出すとハメを外すというか、行くところまで行っちゃうタイプだから気をつけてね。明日みんなの前で上映できる内容にとどめてよね」

「何を心配しているのですか。私はうら若き乙女ですよ?ゆんゆんが普段読んでいる小説のような内容になんかなりませんってば」

「うぅ。もうその言葉で逆に心配なんだけど…」

 

ゆんゆんはまだ何か言いたげでしたが、私はカズマにどんなことを聞いたり、やってもらおうか考えるのに夢中だった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

ギルドから屋敷に帰る途中。

 

「おーいめぐみん!今から帰るところか?」

 

後ろから誰かが走り寄ってきて声をかけて来る。

声の持ち主に当たりがつくので柔らかい笑みを浮かべて振り返る。

 

「ダクネス。はい、そうです。ダクネスももう屋敷に戻りますか?」

「ああ、今日は私が料理当番だからな。実家のメイドにとっておきのレシピを教えてもらった。これであの男に目に物見せてやれる!」

 

案の定ダクネスが私へと走り寄って隣に並ぶ。

そういえば、今日はダクネスが料理の担当でしたね。

 

「メイド?料理長とかではないのですか?」

「…料理長からは丁重にお断りされた」

 

…今日の料理の行方も先が見えましたね。

それにしてもメイドに料理長…なんだかんだ言ってもダクネスは貴族様なんですよね。

こうやって並んで同じ屋敷に帰るだなんて、冷静に考えると不思議な感じです。

魔法学校に通っていた時には想像もつかなかったでしょう。

 

「今日は食材もこだわって選んだからな!あの男は私のことを「これだからお嬢は」とすぐに馬鹿にしてくる。それに何かにつけて固いだけの脳筋だの、それならアダマンタイトの方がまだ使いようがあるだのと…まったく!」

 

ダクネスは歩きながらカズマの悪態を付いていたのだが、その顔は誰が見ても怒っているというよりも嬉しそうに見える。

おそらく貴族という身分を明かしても態度の変わらないカズマに、好感を抱いているからだろう。

それは、恋、と呼べるレベルには。

 

だけど、私はそれを察しながら指摘はしない。

カズマが誰を好きになるかは自由だ。

でも同じ条件ならきっと、私でなくダクネスを選ぶのではないかとも思っている。

客観的に見てもダクネスは美人でスタイルが良く、カズマ好みの大人のお姉さんだし、大貴族のダスティネス家の一人娘で家柄も良い。

まぁ、それを差し引いてもドMという欠点をかばいきれるかは微妙だけれども。

 

「料理でしたら私も少しお手伝いしますよ。もちろんカズマには内緒で」

 

僅かに感じた罪悪感をぬぐうようにそう提案する。

 

「本当か?それは助かる!見てろよカズマめ!」

 

ダクネスは楽しそうに笑う。

 

…いつか、カズマが誰かを。私達のどちらかを選ぶ日が来たとしても、今のままの4人でずっと一緒に居たいな。

そんな風に思える笑顔だった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「普通」

「ぐっ!」

 

出来上がった料理は………カズマの言うとおり普通だった。

もちろん美味しいのだが、なまじ食材が良いためか料理をした人物の腕前を如実に現わしてしまっている。

それにメイドから教わったレシピというのも家庭料理の粋を出ず、ダクネスのやる気は空回りする結果となってしまいました。

 

「だからさー、別にお前に料理の腕前とか求めてないって何度言えば分かるんだよ。新しいキャラ付したいなら貴族は貴族らしくふんぞり返って『下賤な庶民が、わずかだがとっておきたまえ』って馬鹿にした感じに金を渡せば…」

「なんだその偏見に満ちた貴族像は!私は清廉潔白を良しとするダスティネス家の者。庶民から不当な搾取をする悪徳貴族と一緒にするな!」

「あぁ、渡すほど金がないのか」

「ぶっ殺してやる!」

 

ダクネスは席から立ち上がるとカズマの首を絞めようと突進していく。

カズマはその動きを予想していたのか避けながらドレインタッチで応戦している。

 

…なんで料理の感想を聞くだけなのに殺し合いみたいな喧嘩にまで発展するんですか。

これじゃあダクネスが自身の気持ちを自覚するまで、まだまだ時間がかかりそうですね。

 

そんな二人の様子を眺めながら、さりげなく私も席を立ち、カズマの杯の中に夢薬を垂らす。

ふふふ、これで今夜も巡るめく夢の世界ですね…。

悪い顔になりそうなのをこらえて、未だ喧嘩をする二人をとりなす。

 

「ほら二人ともそこまでにして下さい!食事中に喧嘩なんかしたら埃が立って、ただでさえ普通の料理がまずくなってしまうじゃないですか」

「め、めぐみんまでそんなことを言うのか!?そ、それに今日の料理はめぐみんも手伝っただろうに!」

「味付けまでは関与していませんから。ほらほら、座った座った」

 

私の言葉に落ち着いたのか、カズマとダクネスが席に座り直して食事を再開する。

 

「新しいキャラ付ねぇ。私も語尾とか一人称とか変えてみようかしら。一人称を『わらわ』語尾を『ぞよ』とかにすれば水の女神だってみんなが認めてくれるかも!」

「形から入らないと認めてもらえない時点で無理だって気づけよ」

「…アクアがいきなりそんな口調になったらますます私達のパーティは変な目で見られてしまうだろうな」

「アクアは十分キャラが立っているのですから、これ以上変な要素を足さなくてもいいと思いますよ」

 

ただでさえ奇行の目立つアクアだ。

口調まで変になったらどうなってしまうことでしょう。

 

「キャラとは違いますが私達4人の服装とか色合いを揃えるのは面白いのではないですか?里のみんなを見ていて思いましたが、黒を基調とした服に揃えれば何とも格好いいパーティに…」

「さ、流石にそれは…」

「黒はダメよ!何だか堕天っぽい感じがしてイメージが良くないもの!ここはやっぱり清らかなイメージの青で…」

「それこそアクシズ教徒の集団みたいで引かれるわ!めぐみんの案も、俺とかめぐみんなんて髪も含めて黒一色になっちまうから却下だ。どこのなろう主人公だよ」

 

な、なろう主人公?

ちょくちょくカズマは意味の分からない単語を使いますね。

 

「お前達は「ペット枠」「ロリっ娘」「お色気枠」としてキャラ立ちしてるから今のままでいいんだよ。アクアはちょむすけとのレギュラー争い頑張れよ」

「ちょっと!?私ってばあんな黒き獣と枠争いしてるの!?」

「いい加減に私のことをロリ扱いするのはやめてもろうか!」

「いいだろう。ならばお前のキャラは「下賤な庶民」だ!この拳はわずかばかりの礼だ、とっておけ!」

 

私達三人は席から立ち上がるとカズマを取り囲む。

 

「おい!3対1はずるいぞ!暴力反対!暴力反対!!」

 

ソファの上ではちょむすけが「やれやれ」とばかりに一声鳴いていた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

もうすぐ明け方という時刻で目を覚ます。

前回の反省を活かして、一度眠ってから早めに起きてカズマを待つ作戦に変更した。

流石に毎回カズマと同じ時間に起きるようでは怪しまれるかもしれません。

私はまだ眠い頭を振り意識を覚醒させると、いつもの冒険者服に着替える。

今日はカズマとのやり取りの後はそのまま起きていようと思っている。

 

服を着替え終えて包帯やソックスを履こうとしていると、部屋の扉が開き、夢うつつなカズマが入ってきた。

 

「あ!カズマ来ましたね。うふふ、こんばんは」

 

前回と違ってカズマがやってくるという確信はあったので随分余裕をもって出迎えられたと思う。

好きな人が部屋にやって来たという事実に、私の胸は早くも高鳴り嬉しさが表情に現れてしまう。

裸足のまま、カズマの傍に寄る。

 

「?…また、めぐみんの部屋…?」

 

一方カズマは再びの来訪を予期していなかったため、前回のように何故自分が私の部屋にいるのか不思議な様子だ。

 

「これは夢ですよ、カズマ。前と同じ、良く出来た『夢』です」

 

どうやらカズマは夢薬を使った体験を夢と勘違いしているふしがある。

バニル曰く現実感あふれる感覚なので、普通の人は勘違いすることはないらしいのですが、カズマはいぶかしげながらも夢だと思っているようだ。

ならばそこに付け込まない理由もない。

今日も二人の夢での逢瀬を楽しむとしよう。

 

「夢…。まためぐみん…?じゃあ…」

 

カズマはううむ…と悩んでいるようでしたが納得したのか頷くと、おもむろに服を…

 

「だからなんで服を脱ぎだすんですか!?今日もやりませんから服は着てください!」

「えぇ…」

「そんな怪訝そうな声を出されても、むしろこっちの方が意味が分かりませんよ」

 

カズマはあからさまに残念そうな顔をするが、私からの命令には逆らえないのか、のろのろと服を着直した。

 

「ふぅ。さて、今日カズマに『夢』で会うのは他でもありません。聞きたい事があります」

「最近は、責められるのも悪くないと思っている」

「そんなことは聞いてませんよ!なんですか一体!」

 

私は怒鳴りながらも手帳を開き「最近カズマはちょいM」と書き加えた。

 

「ご、ごほん。話を戻します。カズマに聞きたい事というのは、この間外泊した時に何をしたかということです。カズマ、いったい何をしたんですか」

「…宿屋に泊って寝た」

「そんなのは分かっていますよ。それで、その宿屋で、女の人と会ったりしたんじゃないんですか」

「…女の人には会ってない」

 

宿では会っていないのでしょうか?

 

「宿に行く前はどこへ行ったのですか?そこでいかがわしいことをしたのでは?」

「…宿に行く前には喫茶店に行った…いかがわしいことはしていない」

 

どういうことでしょうか?

夢薬が効いている最中は素直に本心を語る、というのがバニルの説明でした。

つまりカズマの言うとおり外泊中にいかがわしいことはしていない?

ゆんゆんの予想では誰かしらと会って、すっきりしたはずなのですが…

もう直接本人に確認した方が早そうですね。

 

「では、カズマ。外泊した後、屋敷に戻ってから妙にすっきりしていたのは何故ですか?外泊する前は欲求不満でしたよね?」

 

私はカズマがどのようにして欲求不満を解消したのかを聞いてみた。

カズマは半眼のまま、ふらふらと考えていたのだが、不意にぴたりと揺れるのを止め、私の目を見ながら答えはじめた。

 

「夢で…」

「夢?」

「夢で…めぐみんとめちゃくちゃS〇Xしたからスッキリした」

「!!!??」

 

え!?え!!???

今カズマは何て言いました!?

わ、私と…S〇Xする夢を見た…!?

 

つ、つまり、カズマは私の夢薬によって欲情してしまったが、私に手を出すのははばかれるので宿屋に泊って落ち着くことにした。

その夜、夢の中に私が出てきて…そういうアレを致したおかげですっきりすることは出来た。

しかし、夢とはいえ私を汚してしまったことに罪悪感を覚え、罪滅ぼしの意味も込めてこの1週間私に優しかった…ということでしょうか。

…………。

 

私は。

私はその事実に思い至った瞬間に、胸の奥がじーんと痺れる様な、涙を流してしまうような深い感動に襲われた。

この人は、周りのみんなからクズだのゲスだの言われているが、違う。

本当のカズマはこんなにも心がキレイな人なのだ。

そしてそれを知っているのは世界中で私だけなのだ。

 

私は無意識にカズマに抱き着いてしまっていた。

この優しくも不器用な人は、もっと報われなきゃいけない。

 

「すみませんカズマ…。私はカズマのことを誤解していました。…いいえ、もちろんカズマが本当は優しい人だとは知っています。それでも、こんなにも私のことを想ってくれているとは考えても居ませんでした。本当に、ごめんなさい…」

「……仲直りプレイ?」

「ふふ、そうですね。喧嘩なんてしてませんが、私達の仲をもっと良くしたいです。…好きですカズマ。世界中の誰よりも」

 

カズマが私の言葉をどう受け取ったのかは分からない。

今この人は半分寝ているのだから。

でも、私の言葉を受けたカズマは、抱き着いている私の肩から背中にかけて、優しく撫でてくれた。

今の私は普段の冒険者服だ。

ローブは着ていないから肩と背中は肌が露出している。

そこをカズマの暖かい手で撫でられると、まるで心を撫でられているように心地良い。

 

「カズマ…好きです…」

「めぐみん…お互いにすれ違ってしまうことはあると思う…。だけど、俺達の心は一つだ…。だから絶対に仲直りできるはずだ…」

「ふふ、だから別に喧嘩をした訳ではありませんってば。でも、そうですね。心は一つですよね」

 

カズマは無言でこくんと頷くと撫でていた手を下降させていき、背筋をつつっと撫で上げた。

 

「ひゃうっ!?も、もう!だからカズマ!そういうのはダメですって!」

「仲直りプレイ…?」

「プレイはしないって言いましたよね。そういうのは起きてる時にして下さい」

 

私の拒絶にカズマは身体を離すが、その顔はどことなしか残念そうだ。

 

「そんな顔しないで下さい。これは『夢』ですが、起きてる時の私だってカズマのセクハラ…満更でもないんですよ?」

「本当に…?」

「ええ。だから、この夢が覚めても内容を覚えていたら一度イタズラしてみてください。少しは怒るかもしれませんが、カズマのことを嫌いになったりはしませんよ」

「…わかった…!」

 

何か今までの返事よりも力強さを感じたが、まあいいでしょう。

この人はもっと報われるべきなのだから。

 

「さて、しんみりしてしまいましたが時間は有限です。話を先に進めましょう!…と言いたいところですが、ちょっと気になってることがありまして…」

 

少し恥ずかしいが、聞いた瞬間から気になって気になって仕方がないことを聞いてみる。

 

「外泊の時に私の夢を見たといいましたが、…具体的な内容ってどんな感じだったんですか…?」

 

あの獣のような目をしたカズマ。

それが次の日には菩薩もかくやと言える穏やかな瞳にさせる夢。

一体どれほどの夢を見ればそんなことが…?

私が質問すると、カズマはまるで教師が生徒に物を教えるように、人差し指を立てて説明しだした。

 

「…まず俺とめぐみんがいます」

「はい」

「それが互いに100人に増えます」

「は!?え?え!?」

「そしてみんな素っ裸になります」

「ちょ!?えええ~~!??」

「その後、好きなように乱交しました。1対1はもちろん、中には複数の俺に責められるめぐみん、複数のめぐみんに責められる俺。普通のS〇Xはもちろん、許容できる範囲の変態的なプレイはほぼやりました。具体的には…」

「もういい!!もういいです!分かりました!カズマは変態です!変態!この変態!」

「ありがとうございます!」

「なんで喜ぶんですか!?意味が分かりませんよ!」

 

やっぱりこの人は、報われなくてもいいかもしれない。

……手帳に「複数のカズマに責められる私」とメモをしたのは内緒だ。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「カズマはとんでもない変態ということはよく分かりました。なんですか100対100の乱交って」

「大乱交スマッシュブラザーズ!」

「意味の分からないことを叫ばないで下さい!」

「ぐぅ…」

 

前にも思いましたが都合が悪くなると寝たふりをしますねこの男は!

まぁいいでしょう。男の人は普段から性欲を持て余すそうですし、所詮夢の内容なのですから許してあげましょう。

こういう所に理解があるのが大人の女性というものです。

 

「ふぅ、さて、質問の続きです。カズマが私のことを想ってくれているというのは分かっています」

 

ゆんゆんの予想に、先ほどのカズマの「心は一つ」という発言からそこは確定的に明らかだ。

 

「俺は…」

「みなまで言わなくていいですよ。告白はちゃんと起きてる時にして欲しいので。質問したいのはそこではなく、どうしたらカズマが私に積極的に迫ってくれるようになりますかね?」

 

ダクネス曰く、カズマはちょっとしたセクハラとかはしてくるのに、肝心なところではヘタレてしまう人だ。

私への秘めた想いを抱えながらもそれを表に出せないのもそういう所が起因しているのかもしれません。

セクハラだってその裏返しだと思えば可愛いものだ。

 

「…俺がめぐみんに迫るようになるためには…」

「ためには…!」

「好き好き言いながら夜這いを仕掛けてくれればOK」

「サキュバスじゃないんですよ!それじゃあ私の方から迫ってるじゃないですか!」

 

なんでこんなに受け身なんですかこの男は!

あれですか?前にカズマが言っていた草食系という奴なんでしょうか?

 

「そもそもカズマは私に色気とか感じたりすることはないんですか!?思わず手を出したくなる瞬間とか」

「…ある。…結構頻繁にムラムラすることはある」

「む、ムラムラ…もうちょっと言い方というものが…。いえ、いいでしょう、それってちなみにどういう時ですか」

「服がエロい」

「は?服?服ってこの服ですか?これのどこが…」

 

今の私は普段の冒険者服だ。

今はローブをしていないですが魔法使いとしては特段おかしなところはないはずです。

 

「ローブを外している時に肩とか背中とかがむき出しなのがエロい」

「え!?ええ!?」

 

思わぬ方向性に私は自分の肩を抱いてカズマから隠そうと努力する。

 

「前かがみになった時に胸が見えそうになるのがエロい」

「ちょ、ちょっと!?」

 

私は自分の胸を押さえて慌てる。

 

「スカートの丈が短くて事あるごとにパンツが見えたりするのがエロい」

「わああああ!!!」

 

私はスカートの裾を押さえて…無理だ!どこかを防御すると絶対にどこかはカズマの視線が突き刺さってしまう。

 

…いや、違うでしょう私!

私が求めていたのはこういうことではないんですか?

ここは恥ずかしい気持ちを抑えてカズマの視線と向き合わなくては!

 

私はムンと気合を入れると、各所を手で隠すのを止め、心を強く持ってカズマに確認する。

 

「…カズマの言い分をまとめましょう。まず肩と背中ですが」

「…童貞には女の子の背中は刺激が強い。目の前で背中とか肩が丸出しだと触りたくなる…」

「ほうほう!」

 

聞いてよかった、これはかなり大きな情報です。

つまりカズマと一緒に居る時はローブを外していれば、それだけでカズマの欲情を誘えるわけですか。

 

「次に…胸が見える…というやつですが」

「…めぐみんの服は前面の防備も薄い。…おじぎをしたり前かがみになったりするだけで乳首はもちろん、おへそまで見えそうになる。…手を突っ込みたくなる」

「…手を突っ込んだらセクハラどころの話ではありませんよ」

 

男の人ってやっぱり裸とかが好きなんですね。

私は触れ合いがあればそれでよいのですが…。

今度からカズマが正面に居る時は無意味に屈んでみますか。

 

「最後に…スカートですが…」

「…パンツ!パンツが見たい!めぐみんはパンチラ率が高くてえらい!パンツが見えるたびに俺の好感度が1上がる!ワシの好感度は108あるぞ!」

「百回以上パンチラしなきゃいけないんですか私は!?」

 

そんなに私のパンツが見たいのですかこの男は!?

試しにベッドに腰掛けて足を組むような動きをして意図的にパンツを見せてみる。

 

「…………!!」

 

めっちゃ見てきますね。こんなの極論ただの布でしょうに。

…今後はもっといいやつを履くようにしましょう。

 

「めぐみんの服は童貞を殺す服…。エロい」

「エロいって……もっとこう、言い方とかないんですか?」

「すごくエッチだ」

「エロいとほぼ同じじゃないですか!」

「エッッッッッ!」

「うるさいですよ!!」

 

私の大声の抗議に、カズマはしーっと人差し指を口に当てる。

…一体、誰の性で声を荒げていると思っているのですか!

 

メモ⇒「パンチラを意識する」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「はぁ、はぁ…」

「興奮した?S〇Xする?」

「しませんよ!!これは興奮ではなく疲れたんです!」

 

カズマのいじらしい優しさに触れた時は、感動で涙が出そうになりましたが、今では口からため息が出そうだ。

 

「カズマのことを知ればカズマの趣向が分かって、起きている時のカズマが思わず私に迫るようなアピールも分かるかと思いましたが…。知れば知るほどカズマという人物の評価が下がってしまいそうですよ」

「…ちなみにめぐみんのことは『自分のことをちょいSだと思っているけど、責められたら簡単に堕ちてしまうちょいM』ではないかと予想しています」

「妄想をあたかも事実のように言うのはやめてください!!」

 

どうしよう、カズマと話をしていてもちっともいい雰囲気になりません。

 

「はぁ、もういいです。カズマ、命令です。私を抱きしめながら頭を撫でつつ、エッチな夢を見たことや、いやらしい目で見たことを謝って下さい。…要所要所で好きだって言うのも忘れずに」

 

私は気を取り直すためにカズマに抱きつくよう命令する。

カズマは私の手を掴むと引き込むように抱きしめ、左手を肩に回し右手で頭を撫でてくる。

 

「…めぐみんごめんな。俺はめぐみんのエッチな夢を見ちゃったんだ。大好きなめぐみんの。前の日にめぐみんが凄い誘ってきて我慢できなかった。それに普段からめぐみんのことをじろじろ見ちゃって…ごめん。でも、めぐみんも悪いんだぞ、こんなに可愛いから…。はぁ、めぐみん可愛い。めぐみん、好きだ」

 

私はカズマの胸板に頭を押し付けられながらムフムフと呼吸をする。

あぁ〜、これ、やっぱり凄くいいです。

味覚以外の五感全部でカズマを感じることが出来ます。

毎日やって欲しい。

 

「毎日…。そうですカズマ!このまま爆裂魔法の採点をしてみて下さい。…私への褒め言葉も入れて」

 

毎日、という言葉で日課の爆裂散歩を思い出す。

ここ最近の爆裂魔法はメンタル的な問題であまり自慢出来る内容ではありません。

そのため、カズマの採点も褒めるでも貶すでもない微妙な感じだ。

夢くらいは手放しで褒めてもらいたい。

 

「…今日の爆裂魔法は100点満点だ。威力、音圧、爆風、全て言うことなしの出来栄え。まさにめぐみんは爆裂魔法の申し子といった感じだな。…さらにここにめぐみんの可愛さが加点される。撃つ際の凛々しい顔。倒れ込んだ時の気の抜けた顔。採点を待つ時の緊張した顔。どれも可愛い俺の理想だ。それらを加点した総計は……計測不能だ」

 

カズマは私の頭を撫でて甘々な採点をしてくれる。

肩に回していた左手は私の右耳を弄りだし、カズマの手が触れることで自分の耳が予想以上に熱くなっていることに気付く。

そして、私はというと。

 

「ふぅ…!ふぅ…!」

 

めちゃくちゃ興奮していた。

手放しで褒められる爆裂魔法。

そこに可愛い・理想などの褒め言葉。

心地良く撫でられる頭に、こそばゆくも少し感じてしまう右耳。

さらに身体中で感じるカズマのぬくもりと匂い。

自然と私の方からカズマの背中に手を回して、ぎゅうとしがみついてしまう。

 

「めぐみん、好きだ」

「ふぅ…!ふぅ…!!」

 

私は返事をすることも出来ずに、カズマの胸の中でこくこくと頷くことしか出来ない。

あぁ、興奮しすぎて頭がクラクラしてきました。鼻血が出そうです。

 

ふらふらとした頭でカズマを堪能していると頭や耳を弄っていた手が止まり、私の顎や頬を触り出す。

どうしたのだろうと、とろんとした顔で見上げると、カズマと視線が合った。

 

カズマは私と同じく息を浅くはいて興奮していた。

目は血走っており、睨んでいるのではと思えるくらいに鋭い。

私の頬を両手でかっちりと包みこむと、顔を固定してしまう。

 

「めぐみん…キスしたい…」

 

きす…キス…。

ちゅー。

あぁ、私もカズマとちゅっちゅしたい。

でも、あぁ、やっぱり、ううん、でも…

 

私の逡巡を感づいたのか、カズマの右の親指が私の唇に触れる。

 

「キスしたい…」

 

唇に触れていた親指に力が込められて私の口内に侵入してくる。

口の中に感じるカズマの指。

私は無意識に、それを舐めてしまう。

 

「んちゅ…ちゅっ…ちゅっ…」

 

舐めるだけの動きは、次第に吸い付きに変わり、もっともっととおねだりをしているようだ。

上目使いでカズマを見つつ、無心で指をしゃぶってしまう。

カズマの身体の一部が私の中に入っている。

その事実に私のお腹の奥がきゅんと収縮し、ブルっと身震いしてしまう。

 

「んちゅ…んぽっ…あっ!」

 

前触れもなくカズマの指が引き抜かれる。

私はそれを名残惜しそうに目で追ってしまい、カズマはそれをにまにまと見つめていた。

 

「めぐみん…キスしたい…」

 

ここでお預け。

 

…ずるい。

ずるいずるい。

カズマはずるい!

私だって…。私だってキスしたいです…!

だけど…

 

「…ストップ。ストップです、カズマ」

 

私はカズマの身体に手を当てて押しのける。

カズマは私の言葉と態度にこれ以上は無理だと察したのか、両手を外して距離を取る。

その間に私はふぅふぅと呼吸を整える。

カズマは残念そうに笑っている。

 

「…おしかった」

「…えぇ、正直流されそうになりましたが、これは『夢』です。理想の塊。これ以上は起きている時にお願いします」

「残念…」

 

カズマは本当に残念そうに肩を落とす。

…というか何かだんだんカズマの反応が起きている時と変わらなくなってきてませんか?

これではそのうち、私の静止を無視して事を成しそうで怖いですね。

 

前回の逢瀬の時は先程の様にお預けを重ねることでカズマは外泊してしまいましたし、あんまり我慢させるのも良くないでしょうか。

 

…もう少し、手心というか、ムチだけでなく飴もあげてみましょうかね?

 

「そんな顔しないで下さい。…唇でのキスはダメですが…それ以外の場所なら…」

「ちく」

「乳首とかあそことか言ったらはっ倒しますよ。そうですね…」

 

私はどこか適した場所がないか思案すると、ぴったりの場所を思い付く。

カズマのそばを離れてベッドに歩いていき、ぽすんとふちに腰かける。

 

「騎士カズマ、私の手の甲にキスをして、忠誠を誓いなさい」

 

前回の時もやった姫・騎士ごっこ。

原作にはこんなシーンもないし、お姫様もこんな高圧的なキャラではありませんが、内面の恥ずかしさを隠すためにあえて上からの態度でカズマに命令した。

 

カズマはするすると私の足元にしゃがみ込むと私の手を取り見上げて来る。

 

「私の生涯の忠誠を貴方様に」

 

そう言うと手の甲にちょんと軽くキスをし、手を離した後は熱いまなざしで私を見上げて来る。

ふふふ、あのカズマが跪いて私の手にキス。まるで夢のようですね。

先程の興奮はまだ冷めきっておらず、どこかふわふわとした気分だ。

 

私は気分の良さを体現するように両足をそろえた状態からゆったりとした動作で足を組む。

その際にスカートの中をカズマにしっかりと見せつける。

 

「…騎士カズマ、どこを見ているのです?正直に申しなさい」

「…はい、姫様のお召し物、パンツを見ていました」

「ふふふ、そうですか正直でよろしい。そんなに私のパンツが好きですか?」

「…はい。姫様のお年では不釣り合いな黒の下着。とても興奮します」

 

カズマは頭を下げながら朗々と語っているが、時折ちらちらと視線を動かしてパンツを覗き込んでいる。

そのみっともない姿を見て、私の方もどこか変なスイッチが入ってしまったのだろうか。

 

「そうですかそうですか。正直な騎士には褒美をやらなくてはいけませんね」

 

私は組んでいた足を解き、裸足のままの右足をズイっとカズマの前に差し出すと…

 

「褒美を与えます。好きに舐めて構いません」

 

そんなことを言ってしまった。

 

「喜んで。おみ足、失礼いたします」

 

カズマは私の度を過ぎた行為に引くでも怒るでもなく、笑顔のまま私の足を抱えると、足の甲にちゅっちゅとキスを繰り返し始めた。

 

「んっ…ふぅ…!」

 

手の甲のキスとは違う、むさぼるようなキスの連続。

思わぬ刺激に吐息が漏れ出てしまう。

 

「んちゅ…ちゅぱ…ちゅ…」

「あぁ!?ひぃん…くぅ…」

 

足の甲全体にキスを済ませたカズマは今度は足の裏に舌を這わせて、ペロペロと嘗め回してきた。

くすぐったさが勝るが、この背徳的なシチュエーションに興奮してしまい身をよじってしまう。

足の裏を舐めるために足が持ち上がってしまい、大きくスカートがめくれ上がる。

カズマは私の足を舐めながら、スカートの中を凝視して興奮を高めているようだった。

 

「ちゅぽ!ちゅ!んちゅ!」

「あ!?あっ、そこ!?指の間まで!?」

 

足の裏を舐め終わったカズマは仕上げとばかりに親指を口に含んでちゅぱちゅぱと嘗め回す。

指を含んだり、指の間に舌を這わしたり…

親指から順番に全ての指と指の間を丹念にしゃぶられる。

 

「んちゅ!れろ!ちゅっ!」

「ふぅ…!んひぃっ!?あぁっ…!」

 

なんでこんなことになったのでしょう。

 

右足が持ち上げられるので、そのままベッドに倒れ込まないよう両手を後ろにやって支える。

何とも言えない快楽に、私は顔をのけ反って耐えることしかできない。

カズマに主導権を与えるべきじゃなかった。

私は、こんな足舐めですら、カズマに逆らえないのだ。

 

指を舐め終わったカズマは再び足裏を舐めだすが、今度はそこだけに収まらず、かかと、ふくらはぎと私の足の付け根に向かって舌を這わせる。

それに合わせてカズマは私の足を持ち上げるので、ついに私は身体を支えることが出来なくなり、右足だけをバレリーナのようにピンと伸ばした状態でベッドに倒れ込んでしまった。

 

カズマは舐めやすくなったとばかりにどんどんと舐め下げていき、ついに私の太ももの裏側をぺろぺろと舐めはじめた。

 

「こ、こんなの…!うぅっ…!エッチすぎます…!」

 

舐め回したりキスをしたり、太ももの裏側の敏感な場所を好きなようにカズマに弄られる。

感じた事のない感覚が駆け上ってしまい、体中がガクガクと震えてしまう。

 

永遠と続くかもと思えた愛撫。

ふいに、ふいにカズマが口を離す。

…終わったのでしょうか?

私は投げ出していた手に力を込めて身体を少し起こすと、カズマの方を見る。

 

カズマは、笑っていた。

いやらしく口もとだけを歪ませて。

その瞬間、カズマは再び私の太ももの裏側に吸い付くと、じゅううううっと力強くキスマークを付けてきた。

 

「ひうっ…!?んぐ…うむううう…!!」

 

いきなりの行動にあられもない声が出そうになったが、唇を噛んで我慢する。

不意打ちとも呼べるそれは、私の全身に電流を流したような衝撃を与える。

キスマークをつけ終えたカズマが、にんまりと微笑み私の右足を離す。

ベッドのふちから投げ出されたそれは、まるで自分の足じゃないようで、ふるふると震えてしまっている。

 

「…んはぁ…はぁ…今度こそ…終わり…でしょうか…?」

「…はい。では、続いて左足を失礼いたします」

 

その言葉にぎょっとして身を起こす。

カズマはにやにやと意地の悪い顔をしている。

 

「ま、待って!それは別にいいです!許可っ、許可してませ…うううぅぅぅ!!」

 

左足は既にカズマに抱えられている。

必死の抗議もむなしく、いきなり指をしゃぶられてうめき声を漏らしてしまった。

 

…………………………

…………………

……………

 

両の足がベッドのふちから床へとだらんと投げ出されている。

どちらの足もカズマの唾液に濡れて艶めかしく光っており、わなわなとした震えが先程までの刺激の激しさを現わしているかのようだ。

 

「姫、大変美しいお姿です」

 

脱力しているカズマは、どこから取り出したのか、白いハンカチで口もとを拭いている。

その様はまるで貴族が食事を終えた後のように優雅だ。

 

「……すごかったです」

 

ぼんやりとそれだけ呟いた私は、夜も明けそうなのでカズマに部屋に戻るよう指示する。

いまだ力の入らない両足のいたる所にはカズマの付けたキスマークが浮かんでいる。

 

「全部隠せますかね……」

 

その言葉だけが誰もいない部屋に響き渡った。

 

メモ⇒「カズマの足舐め、すっごく気持ちいい」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「めぐみん、おはよう」

「…おはようございます。ダクネス」

 

朝になって広間に行くと、すでに目覚めていたのだろうダクネスがコーヒー片手に新聞を読んでいました。

 

あの後、何とか足に力が入るようになってからまずしたことは、足を濡れタオルで拭くことでした。

カズマの唾液でてかてかの足を拭いていくと、先ほどの行為を思い出して顔が赤くなってしまう。

拭きながら自分の足を確認すると、所有権を主張するかのように色んな所にキスマークが残されていた。

 

「…私の足はあなたの物ではないんですよ」

 

そう愚痴るように呟くが、声色は嬉しさを隠せない。

普段履いている包帯とタイツでキスマークを隠し、広間へとやってきたのだ。

 

「めぐみん、今日の明け方ネコかなにかだろうか?少し騒がしかったのだが気付いたか?」

「え!?い、いえ私はぐっすりだったので分かりませんでした」

「そうか。屋敷にはちょむすけもいるし、野良猫が寄ってきているのかもしれないな」

 

ダクネスは何でもないことのように笑うと、再び新聞に目線を戻しました。

その様子を見つつ、私はダラダラと冷や汗を流す。

私とダクネスの部屋は隣同士なので、ダクネスの言うネコとは私のことだろう。

バレなくて良かった。

 

「おはよ~。今日は結構早く起きれた~!」

 

アクアがパジャマのまま広間にやってくる。

着替えてない時点で二度寝する気まんまんなのが窺い知れる。

 

「こらアクア。もう朝なんだからパジャマから着替えないか」

「いやぁ、もうちょっと寝ようかと思ったんだけどね。明け方少し騒がしくて起きちゃったのよ。…あら?めぐみん。足の裏側だけど、虫に刺されてるわよ」

 

二人の会話をひやひやしながら聞いているとアクアがそんなことを指摘してきた。

私は思わず「え!?」と驚くと、自分の足を見つめる。

 

「ほら、左足の太ももの後ろ。ソックスで少し隠れてるけど赤くなってる」

 

アクアが指摘したのはもちろん虫刺されでなく、カズマの残したキスマークだ。

 

「え!?え?ほ、本当ですか!そんな所を刺されるなんて、寝相が悪かったんですかねアハハ」

 

私は内心の焦りを顔に出さないよう空笑いをあげたが、二人は特に気にした様子もなく「暖かくなってきたとはいえ夜は冷える。ちゃんと布団をかけて眠れよ」とダクネスから言われて終わった。

 

本当にバレなくて良かった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

午前中の内にダクネスに頼んで爆裂散歩を済ませる。

ダクネスは爆裂魔法の良し悪しが今ひとつ分からないようで、「今日も良かったな」とだけ返した。

 

私的には今日の爆裂魔法は昨日よりも発動後の違和感がが減って確かに良かったのですが…、やっぱりカズマじゃないと細かな違いなどは指摘してくれませんね。

 

若干の物足りなさを覚えつつ、ダクネスにおぶられて屋敷へと戻る。

ドレインタッチで魔力を分け与えてもらわないと私は終日グロッキーだ。

だらんとダクネスの背中に身を投げ出しつつ運んでもらう。

 

ダクネスにおぶられたまま屋敷の玄関をくぐり、広間に行くと、あの人が。

カズマが新聞片手に朝食兼昼食を食べていた。

 

「あ、カズマやっと起きたのか!今日はアクアも早かったというのにお前というやつは!」

 

ダクネスはいつも通りカズマを叱りだしましたが…

 

「あ、あぁ…悪い…」

 

カズマは心ここにあらずといった様子で、ダクネスの言葉を受け流してしまいます。

ダクネスはその様子に面食らってしまいそれ以上叱る事は出来ないようで、私をソファに横たわせると私服に着替えるために一度部屋へと戻った。

 

広間には私とカズマだけが残る。

 

カズマは食事の手を止めて、ソファにいる私のことをじっと見つめ一言も話さない。

私も昨夜のことを思いだし、少し赤くなりつつも、カズマから目を離せないでいた。

 

「…あの…ドレインタッチを、お願いします」

「あ!お、おう、悪ぃ」

 

私の言葉にカズマは思い出すかのように動き出す。

横たわる私のそばにしゃがみ込み、右手を持ち上げて魔力を流し込んでくれる。

右手からじんわりと温かい力が流れ込んでくる。

 

「………………」

「………………」

 

その最中も互いに無言のままだ。

すると、突然。

カズマは私の右手を持ち上げる。

 

どうしたのか?と聞く間もないまま

 

カズマが私の手の甲にキスをした。

 

「え!?あ…」

「………………」

 

驚いて声を出してしまった私と対照的に、カズマは唇を離した後も無言で私の目を見つめて来るだけだった。

とても情熱的に。

 

 

心臓の鼓動が早い。

ドクドクと脈打つ音が聞こえるくらいだ。

きっと顔も目も紅くなっている。

カズマの顔も赤く、目には私の顔だけが丸く写し込まれている。

 

互いに無言のまま見つめ合っている。

だけど、だんだんと。

少しずつではあるが二人の距離が縮まっていく。

 

そして…!

 

 

「ただま~!今日は朝早かったからお腹すいちゃったわ!お昼ご飯は何かしら!」

 

アクアの登場によって急いで距離を離す私達。

顔が赤くなっているのがばれないよう、アクアに背中を向けたまま心を落ち着かせる。

 

「ちょっと!おかえり~を言ってよ二人とも!それにお昼ごはんはなーに?」

 

私達の様子が変な事に気付かないアクアはマイペースにそんなことを聞いてくる。

入ってきたのがアクアで良かった。

 

「お、おかえりなさいアクア。今日のお昼はまだ決まってませんよ。カズマは自分で用意して食べ始めていますし」

「…起きたらお前ら全員いないんだぞ?外で食べてるかと思って全員分は用意してないっての」

「えぇー、じゃあ今から作るの?お腹ぺこぺこなんですけどー」

「わかりましたよ。今から急いで作りますから待っててください」

 

私はそう返事すると台所へ足を進める。

カズマがそんな私をチラチラと見つめていましたので、気付かないフリをしてあげる。

 

魔力以上に大変なものを貰った気がした。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

ウィズの店のテーブルで私は突っ伏してぶるぶると震えている。

隣ではゆんゆんが同じように突っ伏し、そのまた隣ではウィズまでが赤くなって身悶えている。

 

「フハハハ!以上で今回の劇は終了である!上質な羞恥の悪感情三人分!大変に美味である!フハハハハ!!」

 

恥ずかしすぎて死にそうになるなど、この演劇の恥死率(ちしりつ)はいかなるものか。

 

始まる前は楽しみなのを隠していたゆんゆんも今では私と同じような赤い顔をして、もじもじと内股を擦り合わせている。

この娘は恥ずかしさと共に興奮していますね、これは。

はしたない子です。

 

開演前は楽しみなのを隠そうともしなかったウィズは、以外にも恥ずかしそうにうつむいている。

 

「足を舐めるだなんて、そんな…」

 

どうやら足を舐めるという行為が想定外だったのだろう。

新しい扉を開いてしまったリッチーは、アンデッドにも関わらず顔に朱がかかっていた。

 

「フハ!フハハ!爆裂娘とぼっち娘の羞恥は見通せたが、まさか色ボケ店主の悪感情まで頂けるとは、まったく吾輩予想外の収穫に笑いが止まらぬわ!フハハハハ!!」

「人の痴態で高笑いなど鬼ですかあなたは…!」

「吾輩、鬼ではなく悪魔である!フハハハハ!!」

「ぐぅ…!」

 

ギリギリと歯ぎしりをしてしまうが、私自身が痴態を晒してしまったのだから分が悪い。

この悪魔は無視して女三人で今後のことを話す。

 

「…では、ゆんゆん、ウィズ。今回の夢薬ですが、何か感想を」

「私としましては…足を舐めさせるのは…ちょっと」

「足舐めからは離れてください!」

 

この色ボケリッチーはダメだ。

ちらりとゆんゆんを見ると、私の意図を察したのか話始めた。

 

「私としては途中よりも起きてからのカズマさんのアプローチが凄く大きかったと思う。…今までのカズマさんなら、あそこであんなことはしないと思うし」

「えぇ、そうですね。私もまさかカズマがあんなことをしてくれるなんて…」

「手の甲へのキス。物語の続きみたいでドキドキしましたねぇ」

 

ウィズも色ボケから復活したのか話に乗ってくる。

そうなのだ、前回はギラギラとした目で見てくるだけにとどまっていたカズマが、今回は自分から仕掛けてきたのだ。これは相当大きい。

 

「今後はカズマからのアプローチを期待していいということでしょうか」

「え、でも、めぐみんからも何かしら行動した方が良いと思うよ。前回もそれで慢心したら1週間何もなかった訳だし…」

「そうですね。今は起き抜けでめぐみんさんへの気持ちが高まっていますが、またエッチな夢など見てリセットされてしまう可能性もあります。気持ちを切らせないためにも、ここは押していく場面だと思いますよ」

 

私は二人の意見に頷く。

幸いにも今回の逢瀬でカズマが私のどういう所を見たり意識しているかは分かった。

そこを突いてやれば再びいい雰囲気になることは間違いないでしょう。

 

ただ、問題としてはカズマがエッチな夢を見た後の穏やかな感じになってしまうと、私としてはやれることがなくなってしまう。

いかに私がアプローチしても、当のカズマが笑ってかわしてしまえば意味がない。

 

「悩める爆裂娘よ、吾輩からもアドバイスをくれてやろうではないか!」

「…対価は?」

「いらぬ。ウィズの悪感情など久しいからな。それの礼だと思え」

「バニルさんが!久しぶりに私の名前を!」

 

…ウィズの言葉は無視して椅子に座り直して聞く体勢を取る。

何だかんだこの悪魔のいう事に間違いはない。

タダより安いものはないのだから聞くだけは聞いてあげましょう。

 

「まず、小僧の淫夢対策だが、これは気にせぬとも良い。見るかもしれんが前の様に枯れた雰囲気にはならぬ。むしろ前よりもガツガツした感じになるであろう。そこな二人が言った、汝自らが働きかけるのも吉とでた」

 

ほう!

つまりカズマの方から色々してくるのですか。

カズマの出方を伺いつつ、私からも誘ってみましょうかね。

 

「さらに、予想外のことが起きた場合、深く考えずに自らの欲望を優先すると吉。以上だ」

「?何だか分かりませんが分かりました」

 

そもそも私は撃ちたい時に爆裂魔法を撃つ紅魔族だ。

やりたい事にストップをかけないことにおいては自信がある。

 

「ちょっとめぐみん、それだと紅魔族全員が向こう見ずな人達みたいになるからやめてほしいんだけど」

「実際そうではありませんか。やりたいことをするのが紅魔族。ゆんゆんも早く帰ってオ○ニーでもしてくればいいのでは?」

「ちょ!?そ、そんなことはしませんわよ!」

 

誰ですかあなたは。

 

「フム、ぼっち娘のこの後の様子を見通してみるか…どれどれ」

「わあああああ!!今日はこれ位でお暇します!!」

 

ゆんゆんは慌てた様子で店を飛び出すと、一目散に駆け出して行った。

 

「最後に特大の悪感情。美味である」

 

相変わらずえげつない。

私もそろそろ帰るとしましょう。

 

「それではウィズ、私も帰るとします。次回はウィズに悪感情が発生することはないと断言いたしましょう」

「…めぐみんさん。その発言はもう色々と予想が付いてしまいますよ…」

 

ウィズはそう言うが足舐め以上に恥ずかしいことなど早々ないでしょう!

私は自信満々でウィズの店を後にした。

 

 

案の定、次回の劇でもウィズはたっぷり羞恥の悪感情を発することになりましたが、それはまた別の話です。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。