16-34
新学期が始まったが堀田優奈の消息は掴めなかった。
両親がやって来たが、学校は直接関係がない。
誘拐された渡辺優香と堀田優奈を助けに行った康正は時の人に成っていた。
優香の痴態を隠すために仕方無くついた嘘が、事件を複雑にしている事は康正も知っていた。
だが、犯人が誰か?
現場に残されていた色々な道具は家の地下室に隠して有った。
あの様々な道具を警察に提出すれば、事件の解決は早いと思っていたが出来ない康正。
今頃に成ってとても出す訳には行かない。
色々な道具を見て、康正はあの数人の中に医者が存在しているのでは?との疑念を持っていた。
だが、優香にも医者に狙われる記憶が無いと電話で言われて、尚更誰が犯人なのか判らない康正だった。
それぞれの秘密が事件を闇の世界に放り込んでしまったのだ。
優奈は池尻家の明日香が捕らわれていた部屋で毎日を過ごしていたが、流石に沙織は顔を見せずに欄、祥子、朋子が交代で世話をしていた。
「いつまで、ここで捕まえて置くの?」
「それは、判らないわ!社長が困っているわ」
「貴女達、渡辺先生を捕まえて、倉庫で何をしていたの?」
倉庫の中を見ていない優奈には不思議だったのだ。
最初の話では男達に誘拐されて、渡辺先生が強姦だと考えていたが、若者ではなく池尻社長ともう一人の男も若くは無かったから、強姦とは思えない優奈だった。
「。。。。。」質問には答えない欄。
「渡辺先生以外に誰か居たの?」
「。。。。。」
「そうだ、不正の相談?会長が先生達を集めて、何か頼んでいたのね、娘の成績の改ざん?進学の不正相談?」
優奈には、女が多く居て倉庫の中でSMプレーが行われて、被害者が渡辺先生とは考えられなかったのだ。
その話が俊之に伝わって「そうか、あの子が渡辺先生を捕まえて、不正の相談をしていたと言ったか?」と聞くと急に笑い出した。
「お前達は何者だと思ったのだろう?」
「町村先生は大学の先生と思ったのかもしれませんね」
「そうか、それなら一度堀田と云う学生と話してから、処分を考えても良いかも知れないな」そう言うと俊之は応接間に呼んで話をしてみる事にした。
俊之は娘沙織の勉強が出来ないので、三人の先生に不正をお願いしていたのだ。
大学の先生にも来て貰って、受験の事を頼んでいたと話して様子を見る事にしてみた。
「会長は、私に見られて驚いてここに連れて来たのね」
「その通りだよ、まさか同じ部活の君が荻野先生と一緒に来るとは思わなかったよ」
「主将は勉強出来ないのね」
「その通りだよ、困って仕方無く先生達に頼んでいたのだよ」
「他にも先生が居たのね」
「そうだよ、誰がとは教えられないがね、荻野先生は不正が嫌いだからね、断られたのだよ」
「渡辺先生を沢山の先生で説得していたのね」
「その通りだよ、あそこに荻野先生が乱入するとは思わなかったので驚いてしまったよ」
「じゃあ、会長は私に見られたのはショックよね」
「当然だよ、お願いだ!目を瞑ってくれないか?タダとは言わない」
「えー、お金貰えるの?」
「君が黙っていてくれるなら、私の顔が潰れるからな」
「しばらく考えるわ」と返事を濁す優奈に「君の成績も考えて貰えるがな!」と言う俊之。
「えー、そんな事が出来るの?」と驚き顔に成る。
「君が黙ってくれたら、これをあげるが」と分厚い封筒をテーブルに置いた。
「君の事も私に任せれば、悪い様にはしないから、安心して学生生活を満喫すれば良い」と笑う俊之。
封筒を優奈の前に突き出すと、優奈から札束が見える。
「こんなに、貰えるの?」
「そうだ、君が総てを忘れてくれたらあげるよ」
躊躇していたが、思わず手に取って「百万!」と声をあげた。
「判ったわ、内緒にするわ、荻野先生には何て言えば?」
「仮面の人達に連れ去られたけれど、今日解放されたと言えば他は総て知らない、判らないと言えば良い」
「そうよね、私顔見たのは会長だけだったから、他の人は本当に知らないわ」と嬉しそうに札束の封筒を持って「会長、ありがとうございます」とお辞儀をした。
俊之はこの娘は喋らないだろうと思って、欄に学校の近くの寮の所迄車で送らせた。
「強姦して無くて良かったよ、お金を渡して喜んで帰って行ったよ」
「それは助かった、その筋に頼んで始末を考えていたから助かった!」と町村と安堵の話をした。
寮に戻った優奈を寮長が確認して教頭に連絡されて、夜遅く教頭、康正と校長もやって来て、色々事情を聞いた。
康正は自分の嘘の証言が暴露されないかが心配だった。
勿論、優奈は両親に電話で無事を伝えて、両親は安堵して警察にも子供の無事を伝えていた。
優奈は訪れた学校関係者に、倉庫から出て来た覆面の連中に連れて行かれたが今日の夕方解放された。
身体は乱暴も何もされなくて、目隠しをされていたので何処を車が走ったか判らない。
捕らえられていたのはマンションの一室だったが、部屋から見えたのは高い煙突の工場が見えたと、全く出鱈目を話した。
康正は安心して校長達が帰ってしばらく居たが、優奈が何も変わった事を話さないのを確認して帰って行った。
優奈は会長の怯えて居る康正に、警戒心を持っていたから優奈は口を閉ざしたのだ。
翌日、兵庫県警が優奈に事情を聞きに来たが、昨夜と同じ事を話して捜査を混乱させていた。
康正の嘘、優奈の嘘で俊之は全く安全に成って、再び優香の誘拐を画策しようとしていた。
沙織は学校で絶えず優奈に目を光らせていたが「大丈夫よ、私は味方だから」と優奈に囁かれて、自分より恐い女だと笑ってしまった。
優香は毎日の様に康正にメールをしてくるか電話、康正も悪い気はしてないが、自分の身体を考えると素直にお付き合いから、恋愛そして結婚には進めないのだ。
九月の中旬に成って明日香は憂鬱な日々を過ごしていた。
全く生理が来ない明日香は薬局で検査薬を買って、調べると血の気が引いていたのだ。
妊娠を示していたのだ。
あの恐怖の強姦で妊娠したと考える明日香は、呆然として検査結果を見ていた。