6-41
しばらくして自宅に電話をして来た賢造は「明日香に荻野先生の住所を聞いてくれ」と慌てて住所も聞かずに新幹線に飛び乗っていた。
新幹線に乗り込んで急にお腹が空いたのを思い出す賢造は、駅弁を急いで食べ始める。
自分では嬉しいのか、哀しいのかよく判らない。
とにかく子供が出来てしまったらから、結婚の約束をさせなければ駄目だの一心なのだ。
新神戸駅に到着したのは夜の九時前で、駅から直ぐにタクシーに乗り込む賢造だ。
康正は優香の考えてもいなかった妊娠の話に、次々と話す優香の色々な話題に、殆ど上の空状態で食事の片付けを簡単にして、寛ぐ優香は早く康正に抱かれたい。
もしも機会が有ればあのSMプレーの様な事がしてみたいし、されたいのだった。
九時半を少し過ぎてチャイムの音に「今頃お客?珍しいな」そう言ってインターホンに向かう康正に「何方かいらしやったの?」康正が小さな画面を見て「知らない人だな」そう言って「どちら様ですか?」と尋ねると「荻野先生ですか?」
「はい、荻野ですが何方様でしょう?」と聞く康正に、聞きい覚えの声に優香が見に来て「わーー!お父さん!」と叫んだ。
直ぐに招き入れると「夜分にすみません、優香の父の渡辺賢造です」
「荻野です、始めまして」と会釈をすると「娘に子供が出来た事はご存じですよね」と言いだした。
「おとうさん、ちが。。」と言いかけると「優香は黙っていなさい」と止めて「子供が出来たのはご存じですか?」
「はい、先程聞きました」
「それなら話は早い、優香も先生の事をとても好いています、お腹が大きく成る前に結婚式をして頂けませんか?」と必至の言葉。
「はあ、それ。。。」戸惑う康正。
「お父さん、うそ。。。。。」優香の言葉を遮って「お前は黙っていなさい!優香も先生も好きで、子供が出来たら結婚するのが普通でしょう?違いますか?」
「はい、責任は私に有ります」と康正が答えないと収まらない雰囲気に成っていた。
「ほんとう、先生!結婚してくれるの!嬉しいい」といきなり抱きついた優香。
「そうか、判ってくれたか、流石に聖職者だ理解が早い、来月にでも簡単な結婚式をしよう」と満面の笑みに変わった建造だ。
「えー、おとうさん来月なの?」今度は優香が喜びの表情で叫ぶ。
「当たり前だ、お腹が大きく成ってからは、恥ずかしいだろう」
急展開の話に訳が判らない優香は結婚出来るならそれで良いわ!と先程の話をもう言わなく成ってしまった。
今更、妊娠は嘘で私はまだ処女よとは言い出せないのだ。
でも不思議なのは、荻野先生が父の剣幕に一方的に結婚を承諾した事だった。
優香の頭の中で勝手な解釈がされて、康正は始めから自分の事が好きだったから、父の言葉にのって承諾したと解釈してしまった。
「今夜は、泊まって下さい、お父さん!」と康正に言われて「そうか、婿の家に泊めて貰うのも悪くは無いな」と上機嫌に変わった。
「お酒でも飲みませんか?」
「そうか、それは良いな!でも大きな家だな」
「一人では大きすぎます」
「優香さん、何か適当に酒の肴をお願いします」
「はーい」優香も上機嫌に成って台所に行く。
「胡瓜のぬか漬けが有ると思う、それも持って来て!」
「判ったわ」
しばらくしても酒を持って来ない優香を見に台所に行く康正が、気分が悪そうにしている優香を見て「どうしたの?」と声をかけると「ぬか漬けをお皿に盛りつけ様としたら、急に気分が悪く成ったの」と言った時に賢造が「どうしたのだ」と入って来て「気分が悪く成った様で」と康正が言うと「おおーそれは悪阻だな」と喜びの表情に成った。
「えー、悪阻ですか?」と驚く康正に「えー、本当に悪阻なの?」と驚き顔に成った優香だった。
夜遅くまで上機嫌で飲んだ賢造は、自分が今までに逮捕した話を得意気に話して二人を眠らせなかった。
ようやく、賢造と優香は同じ部屋で眠った。
流石に父親の居る家で、ラブラブには成れない優香だったが、本当に悪阻?本当に妊娠なの?と考えると眠れなく成っていた。
黒人のトム、ニクソンは、あの日から明日香の事が忘れられなかった。
ポルノ男優の彼が始めて、満足なSEXを出来た日本人だったから、今までの女性で一番だったのかも知れなかった。
忘れようとしたが、もう一度SEXがしたい。
顔も身体も最高だったと日々を追う事に、妄想として増大していた。
望月医師から聞いた名前は渡辺明日香、音楽の先生の情報で探し始めたのだった。
友人を頼って、学校関係を探して時間の空いた時に、探し廻る日々が続いていた。
翌日賢造は、優香を残して岡山に帰宅して「お母さん、荻野先生が結婚を承諾してくれた」と大喜びで話して、悪阻の事も嬉しそうに話した。
明日香は自分が誰の子供か判らない男性の子供を始末したのに、妹は好きな人と結婚出来るのかと複雑な気持ちに成っていた。
自分の部屋で鏡の前でロングに艶やかな髪を櫛で梳きながら、自分は自分だから忘れよう連休明けから新たな気分で仕事に行こう、イメージを変えようと急に閃いた。
午後に成って昔からよく行く美容院に向かう明日香。
「渡辺先生お久しぶりね」店主の女性が挨拶をして「ご無沙汰しています」と会釈をして、待合で待つ。
呼ばれてシャンプーを終わって椅子に腰掛けると「いつもの事だけれど綺麗な髪ね、それに何だか色っぽく成ったわね」
「そうですか?」と鏡の中の明日香が笑ったが、心なしか寂しさが感じられた。
髪を梳かして「揃える位のカットでいい?」と尋ねると「切りたいの」と答えるので「これ位」と位置を確かめる店主に「もっと大胆に」と鏡の自分に訴える様に言う。
「えー、イメージ変わるわよ」と驚いた様に言うと「変えたいの」店主の女性は何か有ったのだと感じ取った。
ロングの黒髪をショートにしたいと言う明日香に「勿体ないね、本当に良いの?」
「バッサリとお願いします、スキンヘッドでも良いくらいよ」と投げやりな言い方に変わる明日香に「失恋?後悔するから止めなさいよ!」と諭す様に言う店主は綺麗に揃えて、明日香によく考える様にね!誰でも失恋の一つや二つは有るから、また良い事も有るよと諭した。
「違うのよ、失恋では無いのよ、子供を殺してしまったのよ」と心で叫んでいた。
美容院を出た明日香に優香が「先生と結婚する事が決まったのよ、連休明けに先生に会ったらよろしくね!」と明るい声で電話をかけていた。
「子供本当に出来たの?」
「う、うんそうよ、先生との子供よ、楽しいわ」
「そう、よかったわね」とは言ったが、優香の言葉に明日香の心は大きく乱れて、気持ちと身体は別の行動に成っていた。