転生者だけど、前世の記憶を喪失している上にジェダイの騎士で指揮官になっています(白目) 作:断空我
今回でこの話は終了です。
そして、Z23ファンはごめんなさい、先に謝っておきます。
次回は番外編を挟んで、いよいよ重桜編です。
「綾波殿、大丈夫か?」
「問題ない、です」
格納庫でトルーパー達の帰還を待つ綾波達。
震えている彼女に気付いて高雄が声をかける。
「寒いのか?」
「違うのです」
ふるふると首を振る綾波。
「何か、言葉にできないのですが、嫌な予感がするのです」
「嫌な予感?」
「はい、その、理由がわからないのですが」
綾波の不安そうな表情に高雄は周囲を警戒する。
「怪しい類のものは感じられないのだが」
「……そう、ですが」
言葉にできない何かが綾波の中を駆け巡っていた。
おそらく不安という言葉で片づけられるものなのかもしれない。しかし、無視してはいけないという言葉が綾波の中で囁かれていた。
「綾波?本当に大丈夫?」
「……ゼロの様子を見てくるのです」
「え?でも、ホーネットが」
瑞鶴も行きたい衝動にかられながらも綾波の後姿をみつめる。
「どうしたんだろ?」
「不安なのだろう、ゼロ殿はまだ意識を取り戻していないからな」
「そう、なのかな?」
何か、いつもより綾波の元気がない。
そんな風に瑞鶴はみえた。
通路を歩く綾波。
ゼロの寝ている部屋が近づくほどに彼女の不安が大きくなっていく。
理由はわからない、誰かが急げと綾波の耳元で告げている。
歩いていた足が段々と急ぎ足から駆け足になっていく。
ゼロの扉の前に到着したところで綾波は異変に気付いた。
ホーネットの姿がない。
「ホーネット?」
綾波がきょろきょろと周囲を調べる。
すぐ近くのドアが気になって綾波はゆっくりと中に入った。
「ホーネット!」
一つの部屋の中に入ると気絶しているホーネットの姿があった。
体を揺らして、呼吸を確認して安堵の息を吐く。
「気絶しているのです……でも」
ホーネットがここで気絶しているのは何故か?
その理由を考えたところで綾波はわき目も降らずにゼロが寝ている部屋の扉を開ける。
そこではライトセーバーをゼロへ振り下ろそうとしているローンメイルの姿があった。
「っ!」
振り下ろされるという瞬間、綾波は地上であるというのに海上と同じくらいの瞬発力を発揮して、大型ブレードで割り込む。
火花を散らしてぶつかりあう大型ブレードと黄色のライトセーバー。
「何を、しているのです!!」
叫びながらライトセーバーを弾き飛ばす。
ローンメイルに大型ブレードの先を向ける綾波。
「もう一度、聞くのです。貴方は何をしようとしていたのですか?」
ニヤッと笑いながらローンメイルが迫る。
驚きつつも綾波は振るわれるライトセーバーを受け止める寸前で後ろへ下がる。
綾波の死角から迫るもう一本のライトセーバーが空を切った。
「ほぉ、気付いたのか」
「二刀流、なのです」
驚きながらブレードを構える綾波。
ちらりとベッドの上で休んでいるゼロをみた。
「(ここで暴れれば……ゼロが)」
ちらりと彼へ視線を向けながら綾波は駆け出す。
ローンメイルは驚きつつも二本のライトセーバーで受け止めようとした。
「なっ!?」
瞬間的な加速とタックルによってローンメイルは外へ放り出される。
雪が降り注ぐ中、外へ転がり出たローンメイルを綾波は追いかけようとした。
「綾波!」
「何の騒ぎだ!」
騒ぎに気付いた瑞鶴と高雄がやってくる。
「フン、ぞろぞろ集まって来たか」
ローンメイルは近づいてくる二人へライトセーバーを向けた。
「瑞鶴殿!」
高雄が瑞鶴を突き飛ばす。
フォースの力で接近したローンメイルの刃を高雄は軍刀で防ぐ。
「ぐっ、重たい……!」
高雄が顔をしかめながら軍刀を横薙ぎへ振るう。
敵を斬った感触がない。
ひらりと宙を舞う様に跳びながらローンメイルは雪道の上へ降り立つ。
「いたぞ!」
ぞろぞろと四人のところへクローン・トルーパーがやってくる。
彼らは一斉にブラスターを構えた。
銃口がローンメイルへ向けられる。
「何のつもりだ、クローン!」
「ローンメイル将軍、貴方を逮捕する!」
「逮捕、フッ、逮捕というか、クローン!一応、聞いてやるが何の罪か教えてもらおうか?」
「敵に内通して情報を流している罪だとも、おい!」
ファイブスの指示で後ろからトルーパーの二人がシャドーピープルの一人を連れてきた。
あの後、彼らは先行していたベルファストと共にシャドーピープルのアジトを襲撃、一人を確保して、尋問をした。
「その結果、驚くべき事実が見つかりました」
「こいつが洗いざらい吐いたぞ!アンタが敵と内通していること、計画の情報を流していることもなぁ!」
ベルファストとファイブスの追及ににローンメイルは拍手をする。
突然のことに誰もが言葉を失う。
「成程、戦うだけの生き物かと思っていたが、意外と頭の方も回るようだな」
「バカにするのか!?」
「お前達は所詮、戦うだけの駒だ。ならば、こちらの好き勝手に利用するだけだ」
「ふざけるな!俺達は兵士だ!お前の駒じゃない!」
我慢できないという風に叫ぶファイブス。
「ローンメイル将軍、貴方を逮捕する」
「CT-782……貴様が一番、利用しやすい駒だ。命令に忠実、逆らうこともしないとなぁ」
「勘違いしないでください」
喋らないヘヴィの前にシェフィールドが出る。
普段は無表情の彼女が鋭い目でローンメイルを睨んでいた。
「ヘヴィは誰よりも純粋な兵士です。命令に忠実というところはあるかもしれません、ですが、ただ従うだけの者ではありません。自分で考えて行動しています。そして、自分が付いていくべき人を選べます。そして、彼が付いていくべき人は貴方で――」
最後まで言う前にヘヴィがシェフィールドを止める。
「俺に命令できる人は最高のジェダイの騎士、ゼロ将軍一人だ。ローンメイル将軍、貴方を逮捕する」
ブラスターピストルを構えるヘヴィ。
同時に他のクローン達もブラスターを向けた。
ローンメイルはため息を零す。
「はぁ、どいつもこいつも奴のことばかり、心底、腹が立つ」
バチンとローンメイルのライトセーバーが地面を切り裂く。
「ただの人殺しのことをどいつもこいつも、イライラする!どうせ、全てはあの方の描いたシナリオ通りだというのに!」
「何を言っているのです!」
「逮捕する!動くな!」
トルーパー達がじりじりと近づいていく中、ローンメイルがライトセーバーを振るう。
「危ない!」
「撃て!」
瑞鶴が叫ぶ中、ヘヴィの合図で一斉にブラスターが斉射される。
飛来するブラスターの光弾を二つのライトセーバーで弾いていく。
多勢に無勢であるはずなのにローンメイルは冷静に光線を裁いていた。
高雄が軍刀を抜いて駆け出す。
ブラスターの雨が止んだところで高雄が軍刀を握り締める。
「悪即斬!」
振るわれる一撃必殺の刃。
ローンメイルは二つのライトセーバーで防ごうとする。
しかし、衝撃を殺しきれずローンメイルは雪の壁にぶつかって吹き飛んだ。
「クソッ、化け物め」
悪態をつきながらローンメイルは雪を払いのけながらライトセーバーを構えた。
「ここは分が悪いな」
地面を蹴り、ローンメイルは基地の外、雪の中へ消えていく。
「逃がすな!」
「行くのです!」
トルーパー達が基地の外に出る。
彼らは警戒しながら雪道を進む。
先を進む高雄が手で制す。
暗闇からいきなりライトセーバーの刃が振るわれる。
「っ!」
高雄が軍刀で受け止めたところで綾波が闇の中へ踏み込んだ。
振るわれる一撃は空を切る。
一瞬で後ろに下がったローンメイルが暗闇の中から飛び出してクローン達のど真ん中に現れる。
「撃て!」
ヘヴィが叫んでトルーパー達がブラスターを一斉に掃射する。
ローンメイルの持っているライトセーバーの反対側の部分からも刃が飛び出す。
ダブルブレードライトセーバーを回転させながら光弾を弾き飛ばして、クローンを一体、また、一体と光線の刃で貫く。
「撃ち続けろ!手を止めるな!」
ファイブスが懐から爆弾を取り出して投げる。
投げた爆弾はローンメイルが見た途端、空中で動きを止めた。
「いかん!離れろ!」
高雄が叫ぶ中、前に飛び出す瑞鶴。
瑞鶴は腰の航空甲板に刀の刃をぶつける。
刃に次々と艦載機が連結するように集まり刃が炎を纏う。
「だぁああああああ!」
爆弾へ振り下ろされる刃。
直後、爆発が起こる。
「瑞鶴殿!」
高雄が叫ぶ中、爆炎の中から煤まみれの瑞鶴が姿を現す。
「瑞鶴殿!」
「大丈夫!それよりも、後ろ!!」
振り返ると同時に軍刀を振るう。
火花を散らして軍刀とダブルブレードライトセーバーがぶつかる。
「化け物にしては勘が良いじゃないか、だが、焦っているな?」
心のうちを読むようなローンメイルの言葉に高雄は後ろへ下がった。
「どうした?攻めてこないのか?」
「逃がさないのです!」
「待て!深追いはやめるんだ!」
逃げるローンメイルを追いかけて一人、飛び出す綾波。
暗闇の中で綾波は大型ブレードを静かに構えた。
「怯えているな?」
暗闇の中からローンメイルの声が聞こえてくる。
「綾波は怯えないのです」
「お前は別のことを恐れている」
囁くような言葉が木霊する。
「そうか、お前はあの男と離れることを恐れているな?」
ぴくりと綾波が反応する。
「お前はあの男のことを大事に思っている。だが、奴がそう思っていないかもしれないと恐怖している」
「そんなこと、ないのです!」
「図星か」
暗闇の声の方へ綾波は刃を振るう。
しかし、刃は空を切った。
「自分の気持ちに素直になるべきだな。お前は奴に執着している。奴を手放したくない、欲しいと!」
「違う、違うのです!」
「認めろ、そうすれば、お前は楽になる」
じわじわとローンメイルの言葉は綾波の心の中へ沈みこんでいく。
不安、動揺、恐怖、そして、小さな執着。
「ゼロ……」
『恐れるな、フォースはキミと共にある』
「っ!」
出会った戦場の海でゼロが叫んだ言葉が急にリフレインする。
綾波は頭を左右へ振りながら目の前の暗闇を見据えた。
「(意識を集中するのです。言葉に惑わされては駄目……綾波はゼロの相棒、何があってもゼロのところへ帰ると約束したのです)」
目の前のものに惑わされてはいけない。
綾波は瞳を閉じる。
暗闇の向こう、僅かだが感じるものがあった。
その方向へ大型ブレードを振り下ろす。
綾波が目を開けるとダブルブレードライトセーバーで防いでいるローンメイルの姿があった。
「くそっ、何だ、お前、いや、なんだ、この強大なフォースの流れは!?」
動揺を隠せていないのか冷や汗を流しながらローンメイルは叫ぶ。
「これで――」
綾波は後ろへ下がる。
首元へ手を伸ばしながらじたばたと足掻き始めた。
ローンメイルのフォース・グリップが綾波の首を絞めているのだ。
にやりと笑みを浮かべながらローンメイルはさらに力を籠める。
「ぐがっ、うぐっ!」
必死に拘束から逃れようと暴れる綾波だが、フォース・グリップは弱まる様子をみせない。
手から大型ブレードが雪の上へ落ちる。
「そのまま、死ね!」
「(ゼロ……)」
ローンメイルがさらに力を籠めようとした時。
彼の体が見えない力に突き飛ばされたように吹き飛ぶ。
雪の上へ無様に転がっていくローンメイル。
「げほっ!ごほっ!けほっ、けほっ!」
フォース・グリップが解除されたことで綾波は地面へ座り込みながら激しくせき込む。
「大丈夫か?」
頭上から聞こえた優しい声に綾波は顔を上げる。
「よく頑張ったな」
綾波の頭へ乗せられる温かい手。
その手を小さく握りしめながら綾波は頷く。
「綾波はゼロの相棒なのです。これくらい当然なのです」
「そっか、頼りになる相棒だな。後は任せてくれ」
ゼロは纏っているジェダイローブを上から綾波へかぶせる。
「すぐに終わらせる」
そういって歩いていくゼロの姿を綾波はみる。
不安はなかった。
「綾波!」
「ニーミ?」
後ろからやってきたのは鉄血の駆逐艦Z23だ。
「大丈夫ですか、これ……」
「ゼロが奥に……綾波も!」
「貴方はここにいてください!わ、私が行きます!
ふらふらと立ち上がった綾波を止めてZ23が艤装を構えてゆっくりと奥へ向かった。
暗いうえに雪道ということで相手の姿を捉えることが難しい。
慎重に進んでいたZ23は音の方へ歩む。
その先に広がる光景に彼女は言葉を失う。
雪の上など気にしないという風にジェダイの二人は切りあっていた。
ダブルブレードライトセーバーを二本も操って優位である筈のローンメイル。
対峙しているゼロは一本のライトセーバーを常人が捉えきれないほどの速度で操りながらローンメイルのダブルブレードライトセーバーをいなしている。
あまりの速さにZ23は追いかけるので精いっぱいだった。
「これが、ジェダイですか?」
Z23が言葉を失っているとローンメイルが笑い出す。
「ハハッ!」
自身が劣勢であるはずなのに笑い出したことでZ23は戸惑ってしまう。
「貴様、まだ、完治していないな?」
振るわれるライトセーバーの一撃をゼロは受け止めようとした。
「ちっ」
不自然な動きを取って仰け反るゼロ。
何が起こったのかわからないZ23だったが、ゼロの手をみて気付く。
ゼロの手は霜焼けで真っ赤。
彼は吹雪の中、綾波を守るようにして進んでいた。そのために手が凍傷になりかけていたのだ。
フォースの力を借りて戦えているとはいえ、万全ではない。
ローンメイルはそれを見抜いて彼を追い込む様な戦い方をする。
「フン、その程度か!」
「お前、何をそんなに憎んでいるんだ?」
「憎んでいるだと?」
「あぁ、お前からは憎しみを感じる」
「当然だ!」
激昂したローンメイルがダブルブレードライトセーバーを繰り出す。
二つの刃をゼロは防ぎきれずに雪の上に転がり込む。
すぐに起き上がってライトセーバーの剣先を向けるがぶるぶると小さく震えていた。
「貴様は、貴様が俺のマスターを殺した!忘れたとは言わせないぞ!俺のマスター、ポング・クレルを貴様は殺したのだ!」
「……そうか、お前はクレルのパダワン」
「そうだ!貴様が殺したマスターの弟子だ!だからこそ、俺がこの技術で貴様を殺す!」
叫びと共に振るわれようとした一撃。
瞬間、砲弾がローンメイルの前に直撃する。
雪がローンメイルに降り注いで視界が一時的に塞がれた。
彼の憎悪に染まった目がZ23へ向けられる。
血走った瞳を向けられた彼女は小さな悲鳴を漏らしながら主砲を構えた。
主砲を撃つも躱されてダブルブレードライトセーバーがZ23の主砲を斬る。
バチンと先端が斬られて後ろへ座り込むように倒れたZ23が見上げると、狂気に染まった笑みを浮かべながらダブルブレードライトセーバーを振り下ろそうとしているローンメイルの姿。
「っ!」
来る痛みへ目を閉じてしまうZ23。
しかし、いつまで経っても痛みがこないことでZ23が目を開ける。
離れたところにいた筈のゼロがフォースの力を使ってローンメイルの刃を受け止めていた。
「この!死にぞこないが!」
怒りに顔を染めながら刃を押し込もうとする。
しかし、ここでローンメイルの表情が変わった。
無理矢理前へ押しても刃がぴくりとも動かない。
二つのダブルブレードライトセーバーが全く動かなかった。
「おい」
ゼロの声にローンメイルは後ろへ下がる。
ふらりと立ち上がったゼロの目は怒りに染まっていた。
ただし、ローンメイルのような狂気に染まったものではない、静かな怒り。
感情を殺して、目の前の相手に対してただ怒りを放っていた。
彼の感情に呼応するように周囲のフォースが反応を起こす。
「くそっ、何だ、何なんだ、お前は!」
沸き上がる感情は恐怖。
目の前の……先ほどまで取るに足らなかったはずの相手が急に強大な相手と思えてしまって、ローンメイルは戸惑う。
「お前、俺を恨んでいたのだろう?ならば、俺だけを狙えばよかった。だが、後ろにいるニーミへ手を出そうとした」
静かに告げながらゼロはライトセーバーを構える。
「お前が俺を許さないように、俺もお前を、許さない」
「黙れ!」
激昂しながら振るわれるダブルブレードライトセーバー。
二つのダブルブレードライトセーバーを回転させながら迫ろうとするローンメイル。
ゼロはライトセーバーを振るう。
一撃で、片側のダブルブレードライトセーバーが真っ二つに切り裂かれた。
「なっ!」
驚きながらも片方のダブルブレードライトセーバーでゼロのライトセーバーと戦う。
ダブルブレードライトセーバーを回転させながらゼロを近づけさせないようにしようとするが、片側の射出部分が切り裂かれた。
「だったら」
ローンメイルは地面を蹴りながらゼロへ一撃を振るうとみせかけて背後にいたZ23へ狙いを定める。
Z23が悲鳴を上げるがそれよりも大きな悲鳴が響いた。
「う、腕が、俺の腕がぁあああああああああ!」
ゼロによってローンメイルのダブルブレードライトセーバーを持っていた腕が切り落とされる。
地面へ落ちた腕をみて、後ろへ下がるZ23。
苦悶の声を漏らすローンメイルは雪の上を転がる。
無理矢理ローンメイルの体をフォースで起こしてゼロはライトセーバーを突き付けた。
「お前を逮捕する」
「逮捕?何を抜かす、マスターを殺しておきながら俺を逮捕というのか!愚かな」
「ジェダイは平和を守る者達だ。だが、お前のやっていることは不要な争いを招いているんだ」
「愚かな!」
ローンメイルは笑う。
「お前は、お前達は何もわかっていない!この戦争も、全て、何の意味もない!お前達がやっていることも所詮はシスの掌の上だということを理解していない!いずれは!」
ローンメイルはフォースを用いて、千切れた腕からダブルブレードライトセーバーを引き寄せて、ゼロを狙う。
しかし、動きを読んでいたゼロはライトセーバーで迷わずにローンメイルの心臓を貫いた。
「がっ、この、ジェダイ、殺しめ」
笑みを浮かべながらローンメイルは雪の上に倒れる。
ゼロはライトセーバーを握り締めて、夜空を見上げた。
「また、か」
悲し気な表情を浮かべるゼロの姿をZ23は何も言わずに見ていた。
「将軍!」
その時、ぞろぞろと雪の道をトルーパー達がやってくる。
先頭にいるのはヘヴィだ。
後ろには瑞鶴、高雄、そして、綾波の姿があった。
「これは……」
「ローンメイルは叛逆を起こした罪で俺が処罰した」
「そう、ですか」
「ヘヴィ、報告を頼む」
「了解です」
敬礼をとるヘヴィ。
こうして、この基地での戦いは終わった。
翌日。
「この基地は新たなジェダイが着任することになった。俺達は次のオーダーが発令したために基地を離れる。それまでは各自、準備をするように」
ゼロはトルーパー達へ告げると一人、基地内の通路を歩く。
「将軍!」
そんなゼロへヘヴィが声をかける。
「その、お話があります」
「何だい?」
「えっと、その、申し訳ありませんでした!」
「……すまない、謝罪されることをした覚えがないんだけど」
突然の謝罪にゼロは困ったように頬を指でかく。
「自分は将軍を吹雪の中、見捨てるような選択を取りました。貴方に兵士として見込まれていたというのに」
「そのことか」
ゼロは笑みを浮かべる。
「俺は気にしていないよ。キミの選択は部隊を守るものとしては正しいものであるからね」
「そうですが……」
次の言葉が出てこないヘヴィの手をゼロは握り締める。
「キミは立派に兵士として成長している。だから判断が間違っているなどと考えてはいけないよ、それと」
ゼロは笑みを浮かべる。
「おめでとう、キミは本日付けをもって、軍曹へ昇格となった」
「え」
驚きを隠せないヘヴィの肩を叩いてゼロは笑みを浮かべる。
「そういうわけだから、これからも頑張ってくれ」
「あ、え、あの、将軍」
「部隊の帰還準備を進めておいてくれ、俺は基地を見て回るから」
ヘヴィが止める暇もないまま、ゼロは通路の奥へ向かっていった。
「将軍!」
通路を歩いていたところでゼロは一人の艦船と出会う。
「キミはニーミだったかな?」
「はい、先日はありがとうございました」
淡々と話すがその表情は暗い。
「別に、俺はなにもしてないよ。それより」
小さな笑みを浮かべて。
「漏らしたことは黙っておくよ」
「え、なぁああああああ!?」
顔を真っ赤にして大きな声を上げるZ23。
ローンメイルとの戦いのとき、Z23は殺されるという瞬間、少しだけ漏らしていた。
周りに気付かれることなく自室に到着した時に気付いてあたふたしたことは秘密である。
その秘密がこのジェダイにばれていたことに彼女は大慌て。
「な、なんで、そのことを!というか!セクハラですよ!」
「本当は良くないことだよ、でも、ほら、キミの表情が明るくなった」
「え?」
ゼロの指摘に彼女は驚いた表情を浮かべる。
「不器用な人ですね!」
「申し訳ない」
「あぁ、もう、次に会う時はそういうところを徹底的に指導させてもらいます!」
「そうだね、また、会おう」
「はい!あ、それと」
Z23はきょろきょと周囲に誰もいないことを確認すると。
「助けてくださってありがとうございます!お礼をいいたかったので、それでは」
去っていくZ23の後姿をみて、ゼロはぽつりと呟く。
「真面目ちゃんだなぁ」
「みつけた」
通路を歩いていたゼロへ声をかける者がいた。
「シュペー?」
「探したよ、ゼロ」
小さな笑顔を浮かべてやってくるのはアドミラル・グラーフ・シュペー。
「ねぇ、抱きしめて」
「え?」
「抱きしめてほしいの、だって、お別れなんでしょう?」
シュペーの言葉にゼロは小さく肯定する。
「そうだな、俺達は次の戦場へ向かうことになる」
「わかっている。だから、忘れないようにゼロの温もりが欲しいの」
「その言い方は周りを誤解させるからやめた方がいい」
「誤解?しないよ」
無垢な瞳がこちらをみつめる。
「私、ゼロが欲しいの、だから、抱きしめて」
両手を広げて近づいてくるシュペー。
ゼロは戸惑い、考える。
「あまり、そういうことは」
「駄目?」
「えっと」
「してくれないなら、お姉ちゃんに告げる。そうしたら撃たれるかもね?」
「わかりました」
さらりと脅された事実にゼロは渋々という形ながら従うことにした。
両手を伸ばしてシュペーを抱きしめる。
女の子の香りやシュペーの柔らかい体が伝わってきた。
「いいなぁ、ゼロと一緒にいられる子は」
「どうだろうな、ジェダイと一緒にいるということは戦場へ出続けるということだし」
「益々、羨ましい。私は戦うために生み出されたし」
「そうかもしれない、けれど、シュペー」
「ん、もっと、もっと強く抱きしめて」
シュペーからの懇願にゼロはさらに強く抱きしめる。
「嬉しい、ゼロの温もりが感じられる。ゼロに包まれている。幸せ」
「そろそろ、いいか?いかないといけないところがあるんだ」
「仕方ないかな」
渋々という形で離れるシュペーだが、その表情は笑顔だ。
「ゼロが補充できた」
笑顔を浮かべる彼女の言葉にゼロはなんといえばいいのかわからない。
「じゃあ、また会おうね?約束だよ」
「約束」
言葉を交わしてゼロはシュペーと別れる。
「ふふ、ようやく二人っきりになれたぜ」
彼女と別れてすぐにゼロはZ1に捕まった。
個室に連れ込まれてベッドの上に押し倒される。
「あの、レーベ?」
「お前、大丈夫か?」
こちらを覗き込んでくるZ1は心配そうな表情を浮かべている。
「大丈夫って?」
「いや、大丈夫ならいい」
あっさりと解放されたことにゼロは驚きながらベッドから離れようとする。
瞬間、彼女がゼロの唇を奪う。
逃げる暇もないまま、舌で口内を蹂躙されていく。
「何、を」
「忘れるなよ?」
真剣な表情で彼女はゼロをみる。
「お前にはこのレーベ様がいるってことをな!」
胸を張って笑みを浮かべる彼女の姿はとても強く、輝かしくみえた。
雪が降ることなく快晴の中でゼロは格納庫へ向かう。
そこではトルーパー達が次の戦地へ移動する準備をしている。
ガンシップへ弾薬や機材などを運んでいくトルーパー達の間を抜けていき、ガンシップの傍で座り込んでいる綾波の姿を見つけた。
「綾波?」
「……ゼロ?」
「大丈夫か?」
「よくわからないのです。なんか、奇妙な感覚なのです」
「フォースに目覚めたからね」
「……ゼロと同じです?」
「そうだな、俺と同じになりつつある」
「綾波はどうなるです?」
いつも通りの表情に見えるが綾波は不安に包まれていた。
ゼロは視線を合わせる様に片膝をつく。
「大丈夫、その力を使いこなせるように俺が教えるから」
「綾波はジェダイになるのです?」
「それはわからない。だが、フォースの使い方を誤れば、暗黒面へ繋がる危険がある。俺が教える。正しいフォースの使い方、いや、寄り添い方かな?」
「本当です?」
「約束する。綾波」
「信じる、です」
綾波は艦船だ。
しかし、今回の事件でフォースの力を使いこなせるようにしなければならないだろう。
このことをジェダイ評議会がどう言ってくるかはわからない。
色々と覚悟を決めなければならないだろう。
嬉しそうにほほ笑む綾波のすがたをみながらゼロはそんなことを考えていた。
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