ナザリック地下大墳墓。第一から第十階層までで構成されるそこは、アインズ・ウール・ゴウンというギルドの本拠地だ。そのギルドに所属し、他の四十一人とともに長らく拠点を管理していたが、いよいよそれも必要がなくなる。
今日、
このゲームは、専用の機器を頭部に装着することで現実にいながら仮想世界を楽しめるDMMO-RPGという分類に属するものだ。ユグドラシルはその中でも尋常ではない自由度を誇る。七百を超える種族、二千を超える職業、六千を超える魔法。今までのゲームではあり得なかった選択肢の豊富さが、プレイヤーである俺たちの冒険意欲をくすぐった。多くのプレイヤーが、ユグドラシルを通じて未知の探求を楽しんだ。
俺もそうだ。稼働当初から今に至るまで殆ど休みなくゲームを楽しんだ。一人で当てもなく外の世界を散策して地図を作ったこともあった。仲間たちと一緒にドラゴンの巣穴に潜り、延々と湧くドラゴンたちを相手に悲鳴を上げながら戦ったこともあった。ナザリック地下大墳墓という拠点を手に入れ、俺を含めた四十二人と所有するNPCたちとともに、襲撃してきた他のギルドや単独プレイヤーたちを返り討ちにしたこともある。
もう過去の話だ。2126年に稼働し、十二年という年月を経て終わりを迎えようとしている。長く持ったほうだろう。まだまだユグドラシルに秘められた未知は解かれてはいないが、それを楽しもうとするプレイヤーの数も大幅に減ってしまったせいで未知は未知のままとなる。
「今日で終わりですね……」
しみじみと語るように言ったのは、第九階層にある部屋の中央に置かれた円卓に座る骸骨。漆黒に染まるアカデミックガウンに身を包み、価値の高い装飾品で彩ったその存在は、魔王と呼ぶに相応しい装いをしていた。
対面に座るその骸骨は、ぽっかりと空いた眼窩に宿る赤い黒い光を俺に向けた。
「結局、私たち二人だけになっちゃいましたね……」
骸骨――同じギルドメンバーであるモモンガさんは、円卓の席に視線を一巡させた。俺とモモンガさんの座る席以外には誰の姿もない。主を失った四十脚の椅子が空しくその場に置かれているだけだった。
先ほどまで、数人のギルドメンバーが訪れたのだが、早々に帰ってしまった。あと数時間で日付が変わり、サービスが終了する。そこまで残ったのはモモンガさんと、この俺だけだった。
「仕方ないですよ」
俺はモモンガさんの言葉に応じる。声は出せるが、口は動かない。このゲームでは表情を動かすことまではできず、表情アイコンなどを使って感情の機微を伝える。俺は今、悲しさを示すアイコンを頭上に表示させた。
「皆、現実での生活がありますから」
勿論、俺もそうだ。だが、俺はそこまで現実での生活を重要視していない。
俺たちの住む世界は、人間によって完全に汚染されてしまった。環境は破壊され、地球は動物や植物が住める土地ではなくなった。外出する際には専用の防毒マスクが必須で、室内では常時空気清浄機がフル稼働している。
空は有毒物質を多量に含んだ大気で覆われ、四六時中真っ暗だ。踏み締める大地も死んでいて、まさに灰色の惑星。富裕層だけがアーコロジーと呼ばれる建造物の中に住み、環境を自在に操った作られた楽園で日々を送っている。俺のような貧困層の人間にはまるで縁のない話だ。
そんな世界だから、俺のように現実を諦めて惰性で生きている人間も多いだろう。
俺には夢はない。ただの会社員として安い給料と長い労働時間で使われる。その辛い現実を和らげてくれるのがゲームで、ユグドラシルはその最たるものだった。悲しさはあるが、所詮はゲーム。次の代用品を探すまでだ。
「それより、次やるゲームの話をしませんか?」
「……そうですね」
モモンガさんは暗い感情を振り払い、努めて明るい声を出して賛同してくれた。
俺とモモンガさんは、別のゲームでも行動をともにする予定だった。元々ギルドメンバーの中では仲の良いほうで、最後まで残った二人ということもあって俺たちは強い絆で結ばれている気がする。俺が一方的に思っているだけかもしれないが。
モモンガさんとの会話は弾み、時間が過ぎていく。もしも今日、この場に俺一人だけが残っていたら、ここまで残ろうとは考えなかったかもしれない。一人ほど寂しいものはない。
「あ、そう言えば」
モモンガさんが何かを思い出したように言って、人差し指を宙に伸ばした。ゲーム内で使用できるコンソールだ。簡単に言えばメニュー画面のようなもの。すぐに魔法を使えるようにショートカットを設定したり、キャラクターの装備を変えたり、所有するアイテムの使用などを行うことができる。
モモンガさんはアイテムボックスを開いているようだ。
「どうかしましたか?」
俺が聞くと、モモンガさんは唸った。
「はい。アイテムボックスを開いたときに見慣れないアイテムが入っていたのを思い出して」
これなんですけど、とモモンガさんはアイテムを取り出した。
それは表面が七色に光る不思議な箱だった。鍵穴はなく、すぐに蓋を開けられるような構造。精緻な意匠が施されていて、これ単体で見ても芸術品と呼べる代物だ。ただのアイテムとは思えない。
「箱ですか」
「箱ですね。詳細は全く不明の」
「いつからあったんですか?」
「正確なことはわからないですが、多分今日?」
「えっ」
モモンガさんの言葉を受け、俺も簡単にアイテムボックスを漁ってみた。
しかし、それらしき物はなかった。アイテムボックス内は小まめに整理しているため、突然増えたアイテムがあればすぐにわかる。
「俺は持ってないです。運営がプレイヤー全員に記念で与えたものではないみたいですね」
「何か条件があるんでしょうか? それとも、別の何か手に入れた……?」
モモンガさんは顎に手を当て、考え始める。
少しの間ぶつぶつと呟いていたモモンガさんに対して、俺はある提案をする。
「思い切って使ってみませんか?」
「え?」
「いや、今日が最期なわけですから、試しに使ってみるのも面白いかなぁと」
「うーん、しかし」
「モモンガさんが手に入れたアイテムなんですし、大丈夫ですよ。たとえそれが
世界級アイテム。他のアイテムとは違い、一つ一つが唯一無二の効力を発揮するアイテムだ。内容によって様々だが、中には運営にシステムの一部変更を求めることができる物もある。希少価値が高すぎるもので、アインズ・ウール・ゴウン全体では十一個保有している。これは、ユグドラシルに数多あるギルドの中でも最高保有数だ。
ちなみに、モモンガさんも一つ保有していて、ここからでは見えないが体内に赤い宝玉を宿している。赤く光る眼窩の光とよく合っていて、魔王然とした外見を引き立てている一因にもなっていた。
「使っちゃいますか」
また考え込んでいたモモンガさんは、気軽な口調で言った。
「使っちゃいましょう」
俺もモモンガさんの背を後押しすると、モモンガさんは大きく頷いた。
「それじゃあ、使いますよ」
今日は最期の日。何が待ち構えていても怖くはない。俺が見ている前で、モモンガさんは箱を開いた。
『パンドラの箱が開かれました。所持者の種族をランダムに変更。ギルドに所属する一部のNPCの性別変更。アンデッドを含む異種族間での繁殖の有効化。ギルドに所属するNPCの結束向上。ユグドラシル内に存在する全資金とアイテムを所持者の拠点に集約。etc……etc……』
「え?」
「は?」
俺とモモンガさんが疑問の声を上げた瞬間、世界が光に包まれた。
次に目を覚ましたとき、俺は広々としたベッドの上で、メイド服を着た黒髪ポニーテールの美女と口づけをしていた。口づけだけではなく、俺の股間で雄々しく勃起した熱い男根が美女の花弁の中心に突き立ち、奥深くまで中に収まっていた。温い何かが肌に触れるのを感じ、口づけを中断して下腹部を見ると、綺麗な膣から溢れ出た破瓜の血が白いシーツを汚していた。
俺は気持ち良すぎて頭の中が殆ど空っぽ状態だった。汗の滲んだ褐色の筋肉質な体を精いっぱい動かし、相手を求める。それを受け止めてくれるメイドの美女は、嬉しくて堪らないといった様子で涼しげに整った顔を緩めている。
その顔に覚えがあった。アインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバー、弐式炎雷さんが作ったNPC、ナーベラル・ガンマだった。戦闘メイド、プレアデスの一人で、種族は
どうして、そのナーベラルと俺が男女の交わりを果たしているのか。
何もわからないというのに、俺は体だけを動かした。ナーベラルと見つめ合い、舌を伸ばして絡め合う。切れ長の目に宿る熱を帯びた眼差しを見ているだけで愛おしく、ナーベラルの中に俺の分身を何度も押しこんだ。
そんな俺たちの横には、一組の男女がいた。
腰の辺りから漆黒の翼を生やした黒髪ロングヘアの美女。白く、扇情的なドレスに身を包む妖艶な美しさを誇る彼女の頭には、ねじれた一対の白亜の角が伸びている。
その美女に俗に言うだいしゅきホールドで生まれたままの体を拘束された美男子もまた、美女と同じ漆黒の翼と一対の角を持っていた。しなやかな筋肉を纏った肉体と、同性ながらぞっとするような美形の男は盛った獣のように腰を動かし、美女の膣奥を禍々しい欲棒で掻き回している。その膣からも、ナーベラルと同じ純潔を失った証が垂れ流れている。
俺の認識が正しければ、その美女はアルベドという名前だった。玉座の間に配置されたNPCで、ナザリックにいる七人の階層守護者と呼ばれる存在をまとめる守護者統括という立場だったはずだ。製作者はギルドメンバーのタブラ・スマラグディナさん。
「んっ、ぁっ、モモンガ様ぁ……」
アルベドは今、モモンガと呼んだ男と舌を触れ合わせている。角同士が邪魔そうだが、ぶつからないように器用に舌先で戯れて、唾液の音をぴちゃぴちゃと奏でている。
っていうか、横にいる人はモモンガさんなのか? モモンガさんはアンデッドの中の
何だかよくわからなくなってきて混乱しながらも、俺はナーベラルを愛する。何故だか異様に性欲が湧き上がる。
「クルス様……」
顔を離すと、ナーベラルが切なそうな声を上げて俺の名前を呼んだ。
「んっ……」
俺は黒い髪を揺らし、再びナーベラルとディープキスする。アルベドを見習ったのかどうかは知らないが、俺の腰に両足を巻きつけてくるナーベラル。その両足に抱かれた腰を高速で動かし、欲望を高め、身に宿る欲望と一緒に精を吐き出した。
小刻みに震える肉の棒で膣を塞ぎ、亀頭で子宮口に栓をしながら大量射精。何度も腰が震えた。頭がおかしくなりそうな快楽の暴風に晒される中、横にいるモモンガさんの呻き声を耳にした。
モモンガさんも射精したようだ。アルベドの大切な場所まで子種が注がれているだろう。俺も負けじと、ナーベラルの中で現実ではあり得ない量の精液を送り込む。
「クルス様、お慕いしています……」
曇りのない眼で、俺に憧憬と愛情を向けるナーベラル。それを見て、射精直後の男根はすぐに硬さを取り戻し、ナーベラルの体を内側で力強く支配した。
「どうぞお好きなだけ、私の体をお使いください……」
現実で出会えることはないだろう超絶メイド美女に誘われて、断れるはずがなかった。
俺は考えるのを後回しにした。まずは性欲を解消してから考えようと、種付けプレスを再開する。モモンガさんと横並びになってそれぞれの相手と交わり、好きなときに好きなだけ膣内射精をする時間を送った。
合計で、いったい何発射精した頃だろうか。俺がナーベラルの柔らかい胸を口に含み、色白の肌に生える桜色の蕾を舌で撫でていたとき、横から声を掛けられた。
「く、クルスさん……」
横に視線を向けた俺が見たのは、アルベドの豊満な胸に顔を突っ込んで深呼吸しながら喋るモモンガさんだった。そんなモモンガさんの頭を覆う黒い髪を、アルベドは「くふふふっ」と奇妙な笑い声を上げながら撫でていた。
どうしてその状態で話しかけようと思ったのか。しかも、腰振ってるし。あ、射精した。
「な、何ですか? モモンガさん」
「あとでお話したいことが……」
若干引きつつ応答した俺に、モモンガさんが続けた。話したいことと言われて、思い当たることは多すぎる。
もうとっくに、ユグドラシルのサービス終了時間は過ぎている。なぜ、俺たちはまだゲームの世界にいるのか。
ユグドラシルはR18に該当する行為は禁じられている。なぜ、こうして性行為を楽しむことができているのか。
そして、NPCがまるで生きているかのように行動するのは何故なのか。
完全に状況に理解が追いついていない。だが、今はやはりそれどころではなかった。
「あととは、いつくらい……?」
「あと……五発、いや十発くらい射精したら」
「……了解」
モモンガさんの提案に乗った俺は、ナーベラルの胸の谷間に顔を挟んだ状態で体を動かす。モモンガさんを参考にして深呼吸してみると、甘くていい香りがした。股間に悪い香りで、セックスが捗った。
結局、俺たちが円卓の間に戻って現状に頭を悩ませ始めたのは、NPCに二十発ほど種付けをして精液ボテにした後だった。
アルベドとナーベラルは白濁液と唾液に塗れた全裸で、第九階層にあるモモンガさんの自室で気絶している。ごぷりと膣から精液の濁流を流し、アヘ顔を浮かべる二人にたっぷりと顔射し、尿道口に残った精液をディープフェラで吸い取らせてからここに来た。
しかし、まだヤリ足りない。状況を整理した後で、それぞれお目当てのNPCを自室に呼んで種付けセックスをするつもりだ。俺とモモンガさんの女性に対する趣味は少し異なるようで、種付け対象が被らず、争うことはなかった。
他のギルドメンバーが作ったNPCを穢して罪悪感はないのか。そう問われれば、俺とモモンガさんはおそらくこう答えるだろう。
「ムラムラしてやった。後悔はしていない」、と。