「――へぇぇ、そう言う
まさに
『成美』は自分の口が、かってに動くのを、ボンヤリと感じた。
「
薬が効いているはずである『成美』の
不敵な笑みを浮かべ、イサドラとその三下を、
先ほどまでの“男の仔”っぽさや、あざとい雰囲気など、みじんもない。
荒涼、あるいは冷酷な鋭利。または古参兵のような、
イサドラ配下の脳筋な二人でさえ、なにか異様なモノと
「アンタ……誰だい」
「アンタ、だぁ?」
イサドラの問いに、ヘッ、と『成美』は唇をまげ、レオタードの腰に手をあて、尊大に、
「クソ
ハッ、と彼女が顔色を変える。
「
「ケッ!どの口がほざくか。ガキぃ、こねくり回し「人形」にするのが趣味な、
【年増】というアオり
「言ったわね……アタシは少年たちを、最適解な
「よく言うわ悪趣味なブタが。聞いてあきれらァ」
「
ダンス教師は、さりげなく乗馬用のムチを壁にかけ、かわりに、となりで輪にして下げていた、ロシア式の長い一本ムチを手に取ると、それを一旋。ヒュン、と空気を鳴らし、黒い触手のように延ばすと稽古場の床に打ちつける。
スパァァン!と
たぶん、おぼえの悪いメス人形の素材を、ドヤしつけるためのモノだろう。
次いで、うしろに控える脳筋風味な手下ふたりにツケツケと、
「イイから、こいつ、ハヤく格納しちゃいなさい!」
後ろのゴツい顔は、困惑した面持ち。
やがて、互いにうなずくと、『成美』に向かって襲いかかった。
踊り子はイスをジューチカに向かって投げつけた。
相手がひるんだ間髪をおかず、「青」に向かい、
頑強そうなアゴを嫌って軌道修正したノドぼとけに、相手のガードより
「チッ!しかも戦闘タイプ!――なんて
イサドラが、歯の隙間から
気道をツブされチアノーゼを出して、床で転げる相方に意識をうばわれ、スキの出たジューチカに、トウ・シューズは再度、汗を
着地したところに背後の殺気。
素早く横転、きわどくその上を、ムチが風を切って
ヘッ!♪
破壊衝動の
――!……一瞬。
積乱雲が林立する
紅蓮の炎を吹き、
その背後には、潮汐力が心配になるほど大きく浮かぶ衛星が、ふたつ。
セントラル・ピークが印象的な大クレーターをうかべて……。
イサドラが繰りだす二撃目。
長く延びたそれを、パール色した長手袋をはめる腕がつかむ。
もう片方は、手近にあったバラの花束が刺さる鋳物製の大ぶりな花瓶をひっつかみ、姿勢チェック用にしつらえた壁一面の大鏡に向け投げつけた。
耳に
壺を投げつけた反動を使い、グイと一挙動で引き寄せたムチを、絶妙のタイミングで“フィッ”とゆるめるや、相手が姿勢を崩した瞬間を狙い、ムチをたるませる。それで相手の頭上に輪を作り、イサドラの首をグルン、と一巻き。
ぐぇっ、ッ!と、ひきガエルのような肺の漏れ音。
「ハ!婆ァにゃ、お似合いの死にザマだぜ!」※
そのまま一気にインパクトを当て、相手の首をへし折ろうとした
スタジオの大扉を蹴り破り、チンピラ顔をしたスーツ姿の一群がドヤドヤと
『成美』の記憶は、そこで、とぎれた……。
弾力性のある無音の闇の中で、『成美』は目覚める。
せまい。蒸し暑い――ナニよりキツい。
まるで専用の
身体がダルく、なにかフワフワして。
身体はおろか、指すら動かせない。
頭も、何かピッチリとしたもので覆われ、口はもちろん舌も動かしづらく。
腕はどうやら背後で真っすぐ一本にまとめられ、足はM字開脚したような形で固定されているような。
身動きしようにも、汗でヌラつくゴムめいた弾性が、すぐに体を押し戻す。
……アタマが。だんだんとはっきりしてきた。
舌が動かせないのは、何か太いものをノド奥まで差し込まれているせいだ。
両方の鼻にも
眼球には、なにか大きめのコンタクトレンズのようなものが張り付いており、まばたきするたびに、違和感。
下半身が、あつい。
感覚がジワジワともどってくると、チンコが痛いほどボッキしており、貞操帯をハメられたときのようにカテーテルが入れられているのがわかる。しかも特段に太いらしく、アヌスに力をいれると前立腺のあたりがムズムズと
そして、そのアヌス……。
いつも挿入されるキノコ型をした排泄用プラグとはちがう、太さのそろった棒のようなものが挿入され、それが非常なゆるやかさで前後運動をしている感じ。
きわめて微妙な、ふしぎな
その感覚に
――こんなことじゃ……!
身をよじろうとするも、それすらむなしく。
耳もとでピッ、と電子音。
聞こえるというより
《アラ――おっきしたの?》
同じく脳に沁み込むような調子で冷たい女の声。
耳の奥までイヤフォンが差し込まれている気配。
《もうすこしで目的地だから。あとチョッと辛抱なさい》
(おごぉ……)
『成美』は動かない口で、よわよわしく抗議する。
《不満そうね?でもダメ。手はじめに、あなたは可愛い男の
ご覧なさい、と冷たい女の声がしたかと思うと、目の前に光景が展開される。
簡易的な手術室のような場面。
待ち受けるのは、スピード・スケートの選手のように、顔以外の全身を黒ラテックスめく光沢でおおった無表情な女性たち。
同じく白いゴムのような前掛けをそろってつけており、ご丁寧にも頭には質感を等しくしたヘッド・ドレス。さらに口もとを防塵マスクで隠しているので、実質眼のまわりしか見えない。
そこへ運ばれてくる、意識をうしなった少年。
(――
それから先は、シーンごとに進んだ。
・施術台に寝かされた彼は、女たちの慣れた手さばきで全身を
あおむけにされ、うつぶせにされ、あるいはマンぐり返しのような姿勢で。
・ローションでテラテラな裸体の下半身を開き、タマタマの根元あたりに注射。
たちまち彼自身が今まで見たこともないほどボッキするち○ちん。
・そこへ女たちのしなやかな指が、これまた極太のカテーテルを。
軟膏らしきモノをたっぷりとつけて挿入。
・処置が終わると施術台がモーターで形を変える。
うつぶせにして無防備な腰高にされる『成美』のおしり。
・ふたりの女がカメラ目線、しかもふくみ笑いの目つきで。
左右から尻たぶをゆるゆると引っぱり――“御開帳”。
・もうひとりが、凶悪な太さの「張り形」をカメラの視野に誇示した。
(
力のこもらない『成美』の抗議。
彼は思わず目を閉じる――だが、どうしたことか、まぶたが閉じられない。
強制的に、つづくシーンを見せられる。ほほ笑みに細められる女たちの目。
注射の効果か、自分の括約筋がゆるんでゆくのを彼は強制的に観せられて。
・やがてアヌスの “*” に
まるでイタズラをするかのように当てられた。
思わず『成美』は目をつぶる。
しかし――ダメだ。画像は消えない。
そこではじめて気が付いた。
――このコンタクトレンズ、眼球に直接はりつけるモニター!?
ギュッと目をつぶると、双のまぶたにコンタクトからのびるコードが触れる。
外したくても、首すら動かせない状態では……。
《見たくないの?――でもダメ。ホォら、おいしそうにお口をあけて……》
ディルドォー、呑み込んでゆくわよォ……と女の声が、このたびは
『成美』は“
ズッ!ぬぬぬ……ぬぅぅぅゥゥ……。
見たくなさに目をギュッとつぶっていても、物が見えるのはヘンな気もちだ。
太い血管まで模したそのディルドーが自分のなかを犯し、侵入してゆくさまを、成すすべもなく見てなくてはならない。
むらさき色にテカる革状の貞操帯が、そんな前後の責め具をグィと
ついで腕も、二の腕までの長い手袋をハメられると側面につけられたジッパーで一つにされてしまい、さらにその上から細長い三角形のような革製とみえる袋でおおわれ、ベルトで幾重にも偏執的に拘束された。
場面が変わって、施術台のわきに対の形をした奇妙な箱が、よこづけとなる。
どこかで見たような形。
やがて画面のなかで頭を黒い革の装具に包まれ、M字開脚に固定された人影が、女たちによって簡易クレーンで、そのいびつな形をした箱のくぼみにピッタリと安置されてゆく。
――!これって……!
いま
イサドラに
――それじゃ……いま自分が
まっ暗な中、何とか身動きをと暴れるが、かえって疲労し酸欠でフラフラに。
ケースの中に装備された調教・洗脳用のデバイス。それが刻々とじぶんの身体に作用し、女体化が進んでいるかと思うと焦るものの、どうにもならず最後は半泣きでグッタリとなる。
映像は止まらない。
『成美』が呆然とするうち、彼は箱の中の装置に次々とハーネースなどで固定され、幾本ものカテーテルが身体に刺されるのを目の当たりに。
箱の内側にセットされた薬液パックのいくつかが拡大。
・【強力フェミショタン】
・【――男の娘化・そのまえに!――強制思考減退剤】
そして……。
・【ヨガールアナル点滴静注液5mg】
・【マゾニナールA・経口洗脳液】
最後の二つに覚えがあった。
図書館で観た、
――ミラのやつ!人形にされるのは脳死状態の女子候補生だといったじゃないか!なんで男子のボクがこんな目に……?
図書館の少女たちと自分が二重写しになる。
追い討ちをかけるように、画面がふたたび切り替わって。
そして似たような境遇の少年が
マネキンがわりに表通りのショーウィンドーに立つ無表情な少年。
女もののエッチな服を着せられ、ときおり下腹部にハメられた淫具の刺激に震え、路ゆく一般人の視線をチラチラと浴びつつ。
場面転換。
同一人物だろうか。
時代錯誤なドレスを着た老嬢に、すっかりふくよかになった体をメイド・ドレスで包み、奉仕する情景。「失礼いたします」と元・少年は女声でひざまづき、18世紀風のドレスの中に身体をもぐりこませる。ややあって、老嬢のひくい、
また画面が変わる。
ネグリジェ姿で長い髪を乱し、たわわなオッパイを揺らしながら、バーコードおやぢの
そこにはもう少年の影はない。
ただひたすら愛玩され、痴呆顔をして性をしゃぶる哀れなメス人形の
あんな風にされるだなんて……。
――イヤだ!……イヤだ!……いやだ……。
※イサドラ・ダンカンは1927年
首に巻いたマフラーがオープン・カーの後輪に
巻き込まれて惨死しました。この場合も名前が災いしたのですね。