うひぃぃぃぃっ!
……というのが正直な第一印象。
――メイクを落とされて、ほんッッッッとうに、良かった……。
『成美』は心の底からおもう。
舞台化粧のまま修錬校・教官と対面したら、舎監にオナニーを見つけられた候補生どころの騒ぎではない。おそらく恥ずかしくて、いたたまれなかっただろう。このビェルシカ・スタイルでさえ身の置き所がないのに。
その『リヒテル』といえば、いまどき見たこともないガッシリとした古めかしいノーフォーク・ジャケット。
そしてこの大柄な
《ずいぶんと――変わった格好を、していますね》
ヒョイと銀色な眉毛をあげ、強烈なジャブをはなつのを忘れなかった。
《お店では――人気者と聞きましたが?》
「うぅ……」
プラグを喰いしめるアヌスを、キュッと緊張させ、
「それは……そのぅ」
ソワソワと、『成美』は身をよじらせる
まるで、
各人各様の視線が、自分を
《それは、もう。『成美』クンは、これからが期待できる“イチ推し”ですから》
クジェチが、場を取りつくろおうとするのか、先ほどとはうってかわり、
《これもみな、探査院の皆様方のおかげかと。宮殿の方のごひいきも並々ならぬものですからなぁ。いい人材も、融通していただいており――》
「調子にノるんじゃネェや、予算
イツホクが、見たことのない凄味をはなち、ギロリとひと
すると、どういう具合か。叱られた犬のように、クジェチが
――スゴい……。
ネコミミを通していない、
もちろん『成美』は、あくまで聞こえないふり。
イツホクは、メゾン・ドールの店長より、格が上なのだろうか……?
あのチンピラ寸前の
そしてその
「あーァ、このガキが“ワケアリ”と知ってたら、手ェ出さなかったのにナァ」
「すると、この個体。『
えっ、と心ひそかに『成美』は驚く。
カイゼル
「なにぶん、こちらも元手がかかっているもので――」
「モトデかかってンのは、コッチもご同様でさぁ!」
すかさずイツホクが
カイゼル髭も負けずに、
「
「いや、ゼニはどうでもイインだが――出資者の一部と、チョィとヤバい関係になっちまって。コッチの方を、
「……どちらを?」
「丘の上ホテル」
うっ、という微妙な沈黙が、部屋に訪れる。
イツホクは卓上の鈴をとりあげ、優雅に鳴らした。
もちろんそれはスタイルで、中には何かの電子的なデバイスが仕込まれているに違いない。小さな胴体に針穴のような稼働シグナルが明滅する。
ややあって、小部屋にノックの音。
扉が開かれチリチリと音がして、青い髪をしたメイド姿の少女が入ってきた。
――!!
あの娘だ……。
心の動揺を、危うく押し隠すことに『成美』は成功する。
部屋に漂い始めた、ほのかな彼女の匂い。そして哀しげな雰囲気。
彼は横目を使いつつ、はじめて至近距離でさりげなく彼女を観察した。
大型コントラバス・ケースに偽装した、移動型・
ギッチリとその中に封入され、全身を侵され
その彼女等の中でもいちばん可愛かった子が、いまや髪をうす青く染められ、きわどいメイド服を着せられて。
それだけではない。
サテン地なメイド服の胸を中から押し破らんばかりに、乳首の浮きも露骨となった見覚えのない巨乳。
そしてチリチリと寂しげに鳴らす音。
やはり彼女も、愛香とおなじく前と後ろに
(・・・って酔って書くとイカんなw
――
と思う間もなく、奴隷メイド化された元・女子高生は背後に「S'
毛皮をまとった
《さぁサァ。お好きな方に、ご奉仕しなさいョ?皆サマ地位のあるお方だ。
《へへ、ボクこのヒト取っぴィ》
《じゃぁ……ワタシは、このお方に》
《えぇっ、じゃぁ……》
残った一人が、オズオズと『リヒテル』の方に向かいかけるが、
チッ、と鋭い舌打ちが小部屋にひびき、
《またオマエか、『
《イヤぁっ!ヤですぅ……お
とたん、小部屋に忍び込むシラけた気配。
交錯する冷たい視線と小動物めいた哀願。
あるいは半泣きのクルチザンに哀れを覚えたか。
『リヒテル』は、鼻で大きくひとつ息をすると部屋を数歩あゆんで、クッションのついた肘掛けイスを
ほかの少年たちも、思い思いのスタイルで
カイゼル
《『
《いぇ男爵、めっそうもない。『
イツホクの言葉に、
――やっぱりアレを見られてたんだ。
ガン!と頭にタライが落下してきたような感覚。
常連客にこそ
自分たちの生徒が起こした、風俗的な
始末書モノでは済まない、探査院きってのスキャンダル。
しかしこの時どうしたことか、『成美』は夢の中で施術され・造られた女の秘部が、キュっと締まり、恥知らずにも
観られてしまった!という被虐感。
ピアスを
太ももを、無意識のうちにモヂモヂとすり合わせる。
「マネごとだなんてトンでもない!」
テーブルの下で脚の間に正座される高級公子から、股間に軽い
「アレはまさしく!――まさしく芸術だったじゃないか!」
そう言ってから、スーツの男や『リヒテル』の冷たい視線に出会い、気まずそうに口をつぐむ。さらには、撫でさすられていた股間をビクビクっ、と
「彼は――いや“彼女”?は、どうしたいのかな?」
沈黙を保っていた
「
「うッ。そ、そうだ――な……ゥクッ!」
周囲から目の届かない影でズボンのチャックを開けられて、担当の公子にコッソリ
「本人の意志は……だいじだな。ウン」
《実際のところ。彼は、この後どうなるんです?》
スーツの男が、カイゼル髭を白い目で見ながら音声を
《この子たちのように、奉仕用の高級公子にするのか、あるいは、なにか別の目的があるのか。“西”の贈答品とするには、あまりに値がハネあがっているようですが? “『
イツホクは効果を高めるためか、微妙な一拍。
そして、一団を見回してニヤリとするや、
《お分かりに、ならないと?》
《いえ、
《 “アイドル” にする!という選択肢もアリですよ、みなさん!》
いきなりサテンドールのマネージャーは、高らかに宣言するような身振りで、
《この子の
呆気にとられる一団をよそに、イツホクは、かたわらに控えていた青髪メイドに棚からコニャックを取らせると、自分のスニフター・グラスに注がせて香りを
《
《はぁ……そんなものですか》
《舞台やシネマ。共感情報野にリンケージした露出とパフォーマンス。各方面ともコラボする、最高にリッチで、パワフルな展開をお約束、ってワケ。おたくの
《……》
《聞けば、粗末な扱いしてたらしいですねェ。訓練だ、試験だ、戦闘だと。なるほど “プチ家出” したくなる気持ちも、わかりますテ。
イツホクは、『成美』が身の上ばなしで
《おおかた、修錬校の格をあげる手駒と、ベンリに使ってたンでしょう》
三人の男たちは虚を突かれたように、一瞬鼻白んだ。
やがてスーツの男がふたたび『成美』の方を向き、改まって、
《キミは――どうしたいのかね?修錬校に戻るか、ココにいるか》
「……」
《この子たちのように、時には性的奉仕をする高級公子になって、一時的にでも優雅な生活をしたいと言うのかね?あるいは本気でアイドルになれるとでも?》
男たちの、圧力をもった沈黙と視線。
それが一身に自分に集まるのを感じ、『成美』は少したじろぐ。それにカイゼル髭のこちらを見つめる視線が、ピチピチなズボンの股間に集中しているので、いかにもやりづらい。
《航界士候補生がいいか。それとも、パピヨン候補生がいいのか……》
「ボクは――」
またもや彼は入校試験の時、口頭試問官の前で感じた緊張を「心的構造」そのままに思い出しながら、いちど大きく息を吸って、
「ボクは――ただ。その、
その一言は、清澄な水面に放った小石が精密な同心円を描いてゆくような効果を、この古風な小部屋に与えた。
男たちは、顔を見合わせる。
スーツ姿が、またもヤンワリと、
《死にたくない、とは……どういうコトかな》
「――
ボソリと呟いた、この一言。
それは「小石」が「岩」になったぐらいの効果があった。
ザワリ、と一団が動く。