青銅のマスクの下で涙目になった『成美』が一息ついて、周囲に気を配る余裕がでると、こんどは隣の大皿でチョッとした騒ぎが起きているのがわかった。
かさ高な首輪のウラでシャントが痛いため、あまり動かせない不自由な首を何とかミリ単位で動かし、マスク越しに横目にすれば、その皿では、やはりひとりの少年が、拘束された皿の上で、ボール・ギャグの
こちらもまたアヌスを拡張され、そこに太いソーセージを幾本も、まるでショット・ガンに
皿の傍らには、まだ“未装填”のソーセージが、山と積まれて。
そして“弾詰まり”をおこすたび、薄笑いを浮かべた舞姫や酌女たちが、若い女特有のザンコクさを発揮して、少年の腹をモミほぐし、再度、ヌルんッ!ヌルんッ!と仕込んでゆく光景。
「
自分が
「内臓破裂でコワされちゃう仔もいるのよ?」
「このまえの仔なんかとうとうオカしくなっちゃって」
「アレは可哀そうだったわねェ。とうとうフタなり人形にされちゃって」
「結局、産業廃棄物あつかいで焼却処分されちゃったみたい……」
――…………。
そして
取り澄まし、着飾った品性下劣な「鶴光でオマぁ~」な賓客の波が去り、ようやく『成美』はホッとため息をつくと、せまい視野から、ひといきついた華麗な広間の光景を、眼球の動きだけをつかい、ながめわたす。
大皿の上で、だらしなく弛緩する『肉欲の容器』と化した“備品”たち。
店にとって都合の良い、性的な
クスリのおかげでボッキを強制されつづけ、いまやソースでテラテラとする幾本もの若い竿。その亀頭は、はた目にも痛そうなほど充血して。
ちかくで、すすり泣きの声がする。
見ると、例のソーセージを腹に仕込まれた大皿だった。
お客様に
当然、いったんは周囲から止めが入ったものの、どうやら相当な権力者らしく、最後はヒヤヒヤと見守る舞姫や酌女のもと、されるがママとなって。
いま見れば、ヒリ出せなかったソーセージが、ようやく下まで降りてきたのか、便意に苦しみ、アブラ汗を流して。しかしアヌスには、サーヴ用のシャッターがガッチリとハメ込まれているので、いくらイキもうとも“備品”の粗相は許されない。
それに対し、『成美』の中は“大も小も”そして乳房の中までも、モノの見事に“完売御礼”となっていた。
仕込まれたホワイト・ポタージュと、周囲に並べられた料理用のソースは絶賛されて、手ひどく扱われる事もなかったが、その代わりに幾度も追加の「注入」を受け、悶絶を繰り返したものだったが。
いまでは身体の中に熱い白濁ソースを注がれるたび、せつなく、もどかしい感覚が芽生えてしまうありさま。
オークションの前に余興で行われた審査会では、料理の出来映え、容器の美麗さの点で“金賞”を受賞し、銀色に染められた頭上に
まるで――ひとりのマゾ奴隷の誕生を
ふと、『成美』は初めてゲシュタルト・スーツを装着された時のことを思い出す。
あの時も、女医の手によって貞操帯で後ろをズップリと犯され苦しんだものだが、やはりそのうちクセになっていたような。
今また“尿道”を開発され、歪んだ
事態は進行の度合いを増し、ヘンタイ度のレベルも昂進している。
――状況の
彼方で行われる演奏を中継するため、“少年が侍る大皿の広間”に設置された巨大な
やがて、古楽器の室内楽とともに生体オルガンの“演唱”がはじまる。
――もう少し……ゆっくりできそうかな。
モジモジと、『成美』は拘束されるスケベ椅子の上で前立腺のあたりに力をいれ、尿道のカユみと、そしてアヌスの
だが、そんなはしから期待を裏切り、背後より会話が近づいてきた。
「――エゲつないコト、ぎょーさん、されるよっテ――見てみィ」
今夜のイベントに遅れた集団だろうか。
最初の盛り上がりが過ぎたこの時刻に客人が入ってくる気配。
場
うしろの大皿でシャバシャバと、液体が受けポットに流される音。
かすかに漂う、オニオンスープの香り。
やがて一行が視野のとどく範囲にやってきたとき、『成美』の目は青銅マスクの奥で見開かれる。
どこかで見たようなニンフ。
まだ硬いつぼみのような身体に、露出の多い妖精の衣装を張り付かせている。
工事中の校舎で、クラスメイトと“触りっこ”をしていた光景。
“七つのヴェールの舞い”でオペラグラス片手にこちらを凝視していた
――シモーヌ!……うんンン……ッ♪
回想がとぎれたのは、自分の乳房を彼女がおそるおそるといった風を装い、露骨に爪を立てて
そこには、
彼氏と思われるツレの勇者は、大皿に備えつけのリモコンを押した。
――あぁ……っ!
尿道を刺激されるものの“タンク”は、とうに空だった。
前立腺をムダに刺激され、スケベ椅子の上で二度、三度、はしたなく腰をふり、身体を駆けめぐる快楽から逃れ
初老の男は、まったく仕方ないなという身ぶりで、
「なんだ、ソースもカラかぃな――おーぃバヨネッタ!?」
やや久しくして。
キリ、キリ、キリ、と……微かな
その音の正体をイヤというほど知る『成美』は全身に鳥肌をたてる。
今度は
バイタル・センサーが、すかさず身体の緊張を察知。
首輪のプラントから薬液を注入し、彼の面差しはトロンとしたモノ欲しげな痴呆顔に。
ひとりが大皿の残り物をかたずけ、新たに前菜や料理がならべる。
そしてもうひとり、『成美』のアナル・プラグにワゴンからのびた管を、わざとのように手荒く接続すると、チャキリ!冷酷な音をたてロックして。次に事務的な手つきでスイッチが入れられ、ダイヤフラムのコックがひねられる。
ィィィィンン……ドプッ!――ドプッ!――ドプッ!――!――!
――あぁぁぁぁっ!……うんっ♪……うんっ♪……うんっ♪……
下腹部は、ふたたびスープで満たされてゆき、擬似チンポをノド奥まで呑みこまされた口をボール・ギャグで淫猥に塞がれている『成美』は、たまらず鼻にかかった甘いよがり声をあげた。
「……ふぅぅぅん……ぅぅぅうん♪」
身悶えにつれ、首輪の鈴がコロコロと鳴り響き、大ぶりなイヤリングがキラキラと輝く。
射精を受けたような困惑。
征服されてしまった被虐感。
ふたたび小波のようにヒタヒタと彼を押し包む。。
そして、今また子を孕んだようにふくらんでゆく腹部。
ボッキ
――あぁ……また。
ガックリと『成美』はうなだれた。
心まで犯す変態的な“しかけ”に、がんじ絡めな形とされてしまった自分。
まるでメゾン・ドールという巨大なクモの巣にとらわれ、糸を巻き付けられた
さはあれ、そこに彼は一抹の倒錯的な甘美が、自分の中を侵食する気配があるのを否めない。
不思議な充足感。まるで――ようやく
だが、つぎに酌女が巨大なシリンジを手にするのを見て『成美』の心は絶望に打ちひしがれる。
――イヤ、お願い!もうそれだけは……
オマエは団鬼六の小説に出てくる登場人物かよと、心のどこかでセルフ突っ込みしつつも、『成美』は妖艶な緊縛婦人のように、ナヨナヨと力なく
しかし――ホンモノの絶望は、その次にまっていた。
フイと初老の男が視界をはずれたかと思うと、やや離れたところで、
「失礼ながら――
陽がかげるように『成美』の視野は暗くなる。
――まさか……。
もし、かさ高な首輪でアタマを固定されてなければ、絶望のあまりグラグラと揺れていたことだろう。
鈴口にカテーテルの取り付けが進行しているのも、もはや気にならないほどに。
聞き覚えのある声……。
それが、初老の男と何事か会話を交わしながら近づいてくる。
やがて――狩りの女神『ディアナ』のコスプレをしたミラ秘書官が、大皿の中央に飾られた自分を、
ヒッ!と身体を硬くし緊張するが、意外にも相手からの反応はない。
永遠とも思える、十数秒……。
わずかに自信をつけた『成美』は、それでも心持ちヒヤヒヤと彼女を観察する。
すこし、
ひと
対して勇者が、いかにもな“
「珍しいですな。こんなところに御光臨とは」
「……」
「市場の競りに――ご興味が?」
「じつは……知り合いの子が、出ていないかと……心配になって」
「うへぇッ!?――いや失礼。出品者に、お知り合いが?」
「いえ」
微妙な一拍。
「まさか“
ミラの顔が、自分の顔に寄せられるのを見て、『成美』は、蝶型の青銅マスクで目もとのみ隠される顔を、拘束される姿勢がゆるすかぎり引き反らせた。
「さすがにちがう……とは、思います……が」
ネコのように細められる、ミラ秘書官のまなざし。
心臓のバクバクが止まらない。
形を変えた、究極のかくれんぼ。
反対に、ふと、いまここでバレたら、どんなことになるだろう、と予想する。
ミラは、どんな顔をするだろうか。
驚きのあとに来るものは……。
それとも……ほかの何か?
フルえる胸のうちに高まってゆく、耐えがたい
もし、肌を褐色に染められていなかったら、顔を火照らせ、一発でバレていただろう。
勇者は、酌女が巨大なシリンジを手に、注入の機会を待っていることに気付き、
「ドャ――いや、どうだねシモーヌくん、やってみては」
「いいんですか!?」
そういえば、コイツは“フェムタチ”だったな、と『成美』は準備室の記憶をサルベージする。と、身構えるまもなく、渡されたシリンジを抱え込むや、このニンフは抑えきれない
「――!!!!!!!!!!!」
ボールギャグに
固縛された美麗な大皿の上で『成美』は、あらん限りの力で
(あぁ……っ――!)
シモーヌ
お前の頭の中は 不思議なことだらけだ。
お前はレスボスの匂いがする。
お前は男をいたぶる獣の匂いがする。
お前は
お前は処女の涙をよろこぶエルジェーベトの気配がする。
お前は嫉妬の
お前は……。※2
逃避反応か、そこまで自動的に浮かんだ連想は、やがて膀胱が限界に近づいたことで、断ち切られた。酌女があわてて止めに入っていなければ、内臓破裂の憂き目を見ただろう。
限界を超えた容量を注入された『成美』は、初老の男の慈悲だろうか、少しばかり大目に尿道を開放してもらう。
赤いペースト状の美しいソースが、おチ○ンポの先からユルユルとながれ、料理にかけられた。
しかし――そのあとが、
「さて、次はワシ――わたしの番だ」
そう言うや男は、おもむろに皿の端に立てかけてあった大きな羽を取ると、赤い涙をにじませるように見えるおチンポの本体から、先端から、ウラすぢから。ソフトに――ソフトに、愛撫を始めた。
鈴口、カリ首――ふたつの宝玉。
(あぁっ!イヤぁっ!――そんな!)
いままでとは違った、超音波振動のような痺れ。
スケベ椅子の上で尻は激しく前後に揺れ、タプタプと香辛料入りの乳を
快楽を貪るように、はしたなくも腰を使い、首の鈴をコロコロとかろやかに鳴らしつつ、アナルのプラグを食い
不意に、若々しい
登りつめた『成美』は、ビュルっ!ビュるぅぅッ!と、二度、三度。
尿道が痛むほどの信じられない絶頂とともに、ソース混じりの精液を、ハワイ島の溶岩のごとく、激しく噴出する。
あまりの快楽に揺さぶられた全身が毛穴と言う毛穴を、ぜんぶ開いたように。
膀胱に貯められた赤いソースは、精液と混じり薄ピンク色に変わってた。
それを剣闘士は満足げに見やり、
「コレやがな!――通は、このソースをイワさなアカん!」
サウナあがりのように汗を流しながらグッタリと腰を折る、その頭上から、突き放したような声が、冷水のごとく
「――では、みなさん。どうぞお
力なく上半身をもたげると、青銅のマスクごしに、女神が放つ氷のような視線と出会う。
「や、もう行かれますか?」
「もしや、この子かと思いましたが……人まえで
声の温度が、さらに数度下がる気配。
「それに、捜す相手は――
きびすを返し、ディアナは去ってゆく。
初老の勇者や若い男女が、何か言っていた。
しょせん女だとか青いとか。
だが、『成美』の耳に、その会話は届かなかった。
《
いまとなっては“元カノ”になってしまったであろう彼女の、去りぎわの言葉。
それが、この美麗な“
『成美』は、まざまざと知覚する。
身体が。存在が。意識が。崩壊してゆくイマージュ。
細かくブレる視界。
鼓動にあわせ、乱暴にズームイン/アウトを繰り返されるように、グングンと、周囲のモノの大きさが、大小に切り変わって見えた。
――もう、候補生じゃない……ボクは……わたしは
※:J.Sバッハ:カンタータ『畏怖すべき終焉、汝等を拉し去る』(訳:珍歩
※2:Remy de Gourmont (1858-1915)の「Les cheveux」のもじりです。