057: 〃 (3
それからは、「なに」を、「どう」されたかは、わからない。
気が付けば、『成美』は、両腕を頭上にしたM字開脚。
あられもない姿で拘束されたまま、リフターらしきもので吊されて。
ひとけのない、タイル貼りのうす暗い廊下を進んでゆく。
キリ、キリ、キリ……。
車輪の
完全に自分が“備品”へと洗脳されてしまった心象。
マスクのせいで見えない視界外の局部が、熱をもって潤む。
装着する
どこかで悲鳴。
断続的な、力のある鞭の音。
古風な電話のベルが、とおくで鳴っている。
延々と続く灯りの一部が、かすかにチラついて。
彼方のT字路に、ストレッチャーを押す白衣の一群……。
空気がヒンヤリするように感じるのは、自身の裸が火照っているせいか。
背中から、声がかかる。
「ずいぶんと、お
「――へぁ……?」
口を犯すボールギャグは外されていた。
だが長いこと装着されていたため、アゴや舌がしびれ、まともに言葉が出ない。
ダラしないフェラ顔のまま、廊下をすすむマヌケな姿。
ヨダレが胸に垂れ、苛立たしく、そして恥ずかしい。
口唇が熱をもったように
感覚が戻りつつある口腔をさぐれば、舌にまでピアスをされた気配。
おまけに口の中が、いままで感じたことのない変な味が。
ノドにも、ゲル状のようなモノがカラんで。
「
またうしろからの声。
――だれ……?
あたまがボンヤリして、なにもかんがえられない。
「イイもの、観せてあげましょうか……」
リフターが、少し停まり、本来行くはずだった廊下のT字路を、逆に進む気配。
廊下ですれ違う、聴診器を首からさげた白衣の中年たちが、ニヤニヤと見下ろしてくる。
重い扉を開いたとき、そこは宴のハネた夜会の会場だと分かった。
いまだ空気に残る、人の気配。
香水の残り
老婦人の
時として、精液や、嗅ぎなれた愛液の気配も。
物欲と、劣情と、打算と、はたまた
それら
防火用の非常扉から入ったところは、「緑の広間」だった。
うち捨てられた
なせか赤いヒールの片方だけが。
紙吹雪や紙テープ。クラッカーのなごり。
それらを踏みつけ、あるいは避け。
『成美』は恥ずかしく吊るされた格好のまま――。
“赤”の広間を通り、
“白”の広間を横切り、
“紫”の広間を抜けた。
そして、
最後の“黒”の広間……。
むき出しな石張りの床へ、斜めに鮮血めく光彩を投げかけて。
その巨大な血と闇との
目を凝らせば木馬がポツンと設置されていた。
リフターを
木馬の背からは、垂直に黄金のポールが突き出て、馬上の人影を固定していた。
――人間……!?
一瞬、『成美』はゾクリとするが、すぐに
鼻の隆起の以外は、わずかに顔の凹凸を模した頭部。
呼吸口が、どこにも見当たらないことが人形と判断した理由だ。
鏡面仕上げのようにテカらせた身体。
ところどころに鮮血色を映して。
「どう?――美しいでしょう……」
ゆっくりと規則正しい音とともに、背後からの声。
だが、セコンドを刻む音が――みょうに間のびして聞こえるのは気のせいだろうか。
「これを、コウすると……面白いのよ?」
背後で、電子音が一度。
すると、黒く
「――
えぇモチロン、と上機嫌に背後の声。
「この子はネ?調子に乗りすぎたの。だからご主人様に、バツを受けているのよ」
「……」
「彼女は、昔アナタがやったのと同じように、身体に管を通しているわ――それも、気管までね。だから彼女、お尻の穴で呼吸をしているの。そして視覚や聴覚はもちろん、頭部にも直接、奴隷教育用のプログラムが流れて……もう一週間になるかしら。どうやら順調な仕上がりぐあいみたい」
「!!
――あんなところに、一週間も!
『成美』の悲鳴まじりな驚きに、大丈夫よ、と背後の声が笑いをふくみ、
「筋肉は衰えないよう低周波で動かしてるし、それにパルスの
「……」
「知能も性格も、それどころか肌の質感や、性器の具合。おまけに人間だったころの『初音』とかいう
聞くほどに恐ろしい説明を、背後の声は、
だが――どうしたことだろうか。
目の前の残酷な光景に、『成美』は、有りもしない乳房の先端がとがり、下腹部の割れ目が
回らない口で、この“備品”が、なにか応えようとした、そのとき。
巨大な柱時計が、うなり始める。
やがて、あの聖ミカエルの旋律が、このたびはやけに重々しく、
調子がやむと、輪をかけて
それにつれ、文字盤の下にある小窓がひらき、黄道十二宮を模したものか、一つ鐘が鳴るごとに「羊」「牛」「双子」の黒ずんだ銀色をしたミニチュアがあらわれて、ゆっくりとレールを滑ると、反対側の小窓へ消えてゆく。
最後の「魚」が姿を消し、これで終わりかと思われた、次の瞬間。
“13番目”の鐘が鳴った。
――え……?
小窓から、なにか出てきた。
観れば、ベルと大鎌を持ったガイコツが、小窓から現われると、レールの途中で止まる。そして精巧にもM字開脚で茫然と見上げる『成美』の方を向き、ガイコツの腕が、ふられた。
ベルが――正確に13回。
チリリ……チリリ……チリリ……と寂寞たる印象で。
鳴らされたあとは、ふたたび反対側の小窓へと消えてゆく……。
そのあとは、すべてが、止まった。
光の血潮が差し込む、漆黒の間。
木馬に拘束されるゴム人形の赤い照り
重々しい振り子を凝固させた柱時計。
まるで、
空気さえもが停止するような、呪縛する空間と化した、無音の広間。
黒いラバー人形がいちど大きく痙攣して――動かなくなる。
「ふん、なによ――悪趣味ネェ……」
背後の声が、めずらしく動揺をみせ、
「さ、いくわよ……
先ほどのT字路をすぎ、しばらく行くと、通路の両側にいくつもの扉がある区画に入った。
うしろの人物が、そのひとつの扉を開けると……。
なかは、漆黒の部屋。
小窓から洩れ落ちる深紅の光。
中央には、先ほどと同じくチェスタフィールド調の革ソファーめく木馬。
そして丸みをおびた木馬の背中からは、大小あわせて二本の
横腕が二本突き出る金色のポールが、ひくい天井までのびて。
何のことはない、あの「黒の広間」の、ミニチュア版だ。
ヴェネチアン・マスクの視野外左右から、
もはやおなじみとなった感のある二人組。
金髪の『ゾーロタ』。
銀髪の『シリブロ』。
「おまえたち!あとは、頼んだよ」
背後からの声に、彼女たちは
「おまかせ下さい、
「あとは我らが、この仔ブタを」
スッ、と背後の気配が、薄暗がりに溶けるように。
――え……?ちょっと……。
下にはもちろん、黒々とした
「ムリ!ムリれすムリ!」
「あらァ、どこが無理なのかし、ら!」
視野が一気に広くなり、部屋の造作が良くわかるように。
それと同時に、自分の身体も。
「あぁ……っ!」
『成美』は、
もはや、
少年の身体ですら、なかった。
ナヨナヨとした柔らかみに包まれた身体。
驚くほど豊胸された双のふくらみと、その頂に
さらに白い連山を超えて、その奥を覗き見れば、先ほどまでソースを
しかも、その恥丘にはモルフォ蝶が、あたかもこの個体は、
「調教済み・納品可」
ということを証すがごとく、その美しい羽根を誇らしく拡げていた。
――こんな……こんなことって!
悪夢が、とうとう現実に追いついた……追いつかれてしまった。
黒の広間で覚えた“淫らに濡れる感覚”が、現実となって目の前に
それが、本当に自分のオマ〇コからの
乳首のボッキが、もどかしかった。
熱くシコってそれをクリクリとなぶって欲しい。
巨乳にされたバストを激しくモミしだき、いぢめて欲しい。
そんな『成美』は、自分が全体、どんなメスにされたのか見てみたくてタマらなかった。看れば肌はツルツルに脱毛され、無機質的な光沢が全身を
過去に仄聞したウワサ話。
実際に見た無残な光景。
そんなものが一気に脳裏に浮かび上がって。
すると、そんな“彼女”の心根を察したかのように、
「鏡をご所望かしら?……ナルシストさんねェ」
ごらんなさい、と金髪に示された台車付きの古風な姿見。
アンティークらしい、銀幕もくすんだその大鏡に見事なフチ飾りに囲われて、『成美』の眼は己の変わり果てた姿に
豊かに結い上げられた金髪。
煽情的なアイラインに彩られた哀しそうな眼。
品のよい鼻筋
そして、ボッテリとした深紅の口唇。
赤い首輪には、幾つもの環が冷たく輝いて。
両わきから、彼女は女たちにオッパイをグニグニと揉まれる。
待望の感覚に、不覚にも『成美』は軽くよがり声をあげてしまう。
それが身体の奥にゆらぐ淫火を、さらに煽りたてるようで、せつない。
シコり切った乳首の根元に――すでに穴が開けられていたとみえ――なんなく飾り輪を通すと、冷たく輝くその輪に小ささのワリには重みのある金色の鈴を取りつけた。
余韻のながい、澄んだ音。
ズッシリとした感触が、麻酔もなく乳首ピアスを施術された時の夢を喚びおこす。恥じらいや、戸惑い。なによりその激しい苦痛も、いっしょに。
――そんな。それじゃアレは……現実?
キメの細かい、シミひとつない肌。
見るからに柔らかそうなふたつの丘。
その豊乳にくらべ驚くほどくびれた胴。
なよやかなヘソを過ぎれば……。
安産型と言ってもいい、ムッチリとした腰つき。
折り曲げられ拘束される、肉感的な、ボリュームのある太もも。
あまりな肉体改造のされように、もはや半ば諦め、脱力しながらイヤイヤと『成美』は首をふった。
「
休日だし台風だしやることないんで更新。
シャンパンが切れたので買ってきます。
壁|ノシ