※この作品はR-18です。

玲瓏の翼【18禁版】   作:珍歩意地郎_四五四五

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007:貞操帯のこと、ならびに妖しげな晩餐のこと

「――それじゃな」

「 ――Zu・dess」

 

 相変わらずの調子で、最後にそんな言葉をのこし、黒メガネたちを乗せた黒塗り(リムジン)のテールランプは、自動運転で夜道をしずかに遠ざかっていった。

 あとには、制服姿の下に貞操帯をギッチリと填(は)められた『ポンポコ』が、左手に通学用フライトケース、右手には支給されたスポーツ・バッグ――この土日の着替えが入っている――という格好で、独(ひと)りポツンと枯葉散る門のまえに、見捨てられたように残される。

 

 腕の時計を確認。

 時刻は……二二時を少し回ったところだ。

 

 彼はいったん荷物を置き、自分の肩を抱いてこする。

 秋も深まり、吐く息に白さこそ混じらないものの、夜になるとすこし冷えた。

 ここまで遅くなったのは、黒メガネたちに連れられ、有名ホテルの高層階にある高額(たか)そうなレストラン『サラヴァン』で、彼らが言うところの『領収書つき晩メシ』をしたためてきたからに他ならない。

 

 この前は『モルフォ』先輩で、今度はいけ好かないオヤジふたりに置き去りかと彼は、やるせなげにあたりを見回して。

 

 高級住宅街らしく、まわりは静かだった。

 

 近くの常夜灯に季節はずれの蛾が二、三匹。鱗粉(りんぷん)をまきちらし、儚(はかな)げにまとわりついている。同時に、その街灯の蒼みががった光は、路上の石畳(いしだたみ)の文様を冷たく浮き立たせ、あたりの景色のわびしさに、ひと刷毛(はけ)加える効果となっていた。

 

 ふり向けば、木立に半(なか)ば隠れるようにして、借り上げ寮らしきマンション状の建物が、門の鉄柵を通して見える。開けようとするもガチャリと手ごたえがしてビクとも動かない。インターホンを見つけ、おそるおそるそれを押すと頭上の強力な防犯灯がともり、しばらくしてスピーカーからいかにも寝起きのようなピントのボケた女の声が不機嫌そうに、

 

「ウィスキー(W)・ノヴェンバー(N)を……」

 

  とっさに言われ、一拍おいてW/N(ウィングネーム)のフォネティック・コードだと気づいた彼は、アセりながら、

 

「あ、あのっ――ポポっ、『ポンポコ』!ですぅ……」

 

 インターホンの上から緑色のフラッシュが閃く。何となく額がジーンと熱くなる感覚。あぁ、コレがそうかと彼は胸のうちで感心しつつ、待つことしばし。

 

「東宮管轄(とうぐうかんかつ)・瑞雲修錬校、候補生1016『ポンポコ』。照合終了」

 

 背丈の三倍以上ある重そうな格子門が、カン高いきしみをたてて横に開いてゆく。木立の向こうの寮は、ごく普通の大型マンションに見えた。植栽(しょくさい)のあちこちに見え隠れする、監視カメラのLEDをのぞいては。

 

 車寄せに近づくと、分厚いガラスで出来た二重の自動ドアが時間差で開閉し、目の前にひとけのない広いロビーが展開する。フロントにも<CONCIERGE>と札の立つカウンターにもひと気はない。

 

 ――と、すこし先で、管理人室らしき小窓から、マニキュアを塗った白ブラウスの腕がヌッとのび、キーを差し出しチャラチャラ……。

 こわごわそれを受け取ると、ピシャリ、無愛想(ぶあいそう)に小窓は閉まった。

 

  ――ちぇっ……なんだぃ。えぇと1124……11階かな?

 

 キーのタグを読みとり、深閑(しんかん)としたうす暗い空気のなか、白黒の市松模様(いちまつもよう)なタイル張りがつづく肌寒い廊下を、心細げな足取りで進んでゆく。

 

 通りすぎたラウンジ・コーナーで、ヒソヒソとわらう声。

 

 えっ!と、ふり返るが――誰もいない。

 エレベーターで目的の階までのぼり、ようやくあてがわれた部屋を見つけて中に入った彼は、入り口わきに立つ等身大の鏡を見つけると、扉を閉めるのも早々に制服を脱ぎすて、なにはともあれ全裸となり、自分のからだを再点検する。

 

 黒く、そして光沢のある素材で作られた、▽型の薄型オムツともいうべき“貞操帯”を填められた少年が、恥ずかしげに鏡の向こうから『ポンポコ』を見つめていた。下腹部にピッチリと食いこんでいるそのデバイスは、まるで皮膚の一部にでもなったように、はずせる気配すら感じられない。

 彼は『フィット・ルーム』での出来事を思いおこす。

 

「こんなの先輩たちが付けてるなんて……聞いていませんよ」

「は?当然よ。一年坊には絶対に知られないよう、上級生には脳教導で口止めしてるもの。なんのために一年とそれ以外の校舎が分けられていると思って?だいたい、初年度のうちにC・ベルトを受領するなんて例外もいいトコよ?……まぁ、ダレかに気に入られたンなら、いまのうち“後ろ”に慣れといた方がイイかもネ。あンた、年上に好かれそうだし……けっこう“ジジィ殺し”になったりして」

 

 女医の顔にうかんだ、意味ありげな、ほの暗い笑みがゾロリと脳裏(のうり)に。

 

 実を言うと、貞操帯の話はウワサの程度で聞いたことはあった。でもまさかこのような悪趣味なモノとは。やはり仲間が少ないと、アンテナが低くて損だな、と彼は悲しいくらいに実感する。同時に、『山茶花』が言っていた“愛玩品”云々(うんぬん)の咄(はなし)も、いまとなっては途方もない重みで、肛門(アヌス)と尿道(ユリスラ)の疼(うず)きと一緒になり、胸のうちにヒタヒタと不安を運ぶ。

 

 あらためて鏡をみると、胸の部分には薄い湿布状のバイタル送信用PCが生体接着剤で貼りつけられていた。いまこの瞬間も、心拍、発汗、血液粘度、等々を管轄(かんかつ)の医療センターにおくり続けているのだろう。

 

 前髪を持ちあげ、鏡に顰(しかめ)めつらをよせてみる。

 刺青(いれずみ)と言われていたが、別段そんなモノは見えない。ただ言われてみれば、すこし額が突っ張る――ような気がする。女医の話によれば、これで上級生用校舎のゲートが、フリーパスになるらしい。

 

 もともと薄かった体毛が完全に無くなっている。

 みょうにツルツルした手ざわり――そして光沢。

 まるで自分が、永続性敵性地域で活動する航界士に支給されるというウワサの“RSOドロイド(個人用アンドロイド)”にでも改造されてしまったような。

 離床準備棟に行く前の自分と、いまの自分では、なにか決定的に変わった、いや変えられてしまった被虐的な印象。

 

 小用(オシッコ)をもよおし、トイレの扉を開けたとき、その思いは強まる。

 

 通常の洋式便器ではない、騎乗型コクピットのシートを模した“またがって座る”タイプの便器が、トイレの中央に鎮座(ちんざ)していた。壁にある使用方法のプレートを見れば、尻形の鞍をのせた低めの木馬に大用と小用のユニットがあり、そこにこの貞操帯をのせればイイらしい。何のことはない、赤ん坊用“おまる”の大人版だ。つかまるところも、ちゃんとある。

 

 ――ふぇぇ……。

 

 午後の『フィット・ルーム』で白衣の一群に嬲(なぶ)られた恥ずかしさが、意外な強さで鮮明によみがえってくる。

 だが自然の欲求にはかなわない。

 赤いビニールを張った鞍状のシートにイヤイヤまたがり、おおまかに腰を浮かせ気味に座ると、強力な電磁石がはたらき自動的に位置あわせされ、ガチリとシートにロックされる。膀胱(ぼうこう)の中のものが勝手に吸い出されてゆき、うしろの穴の方は、貞操帯に仕込まれたプラグのセンサーにより用便なしと判断され、自動的に通電がとまると電磁ロックは解除された。おそるおそる尻をさわるが、何も手に付かない。

 わずかに香る、消毒用アルコール臭。

 

 小さい方はアダプターをつければいつでも出来るが、大きい方はこのタイプの専用便器でないとダメだと聞かされている。心細い声で『ポンポコ』は呟(つぶや)いた。

 

「……だいじょうぶかなぁ」

 

      ―――――――――――――――――――――――――

 

「本当、大丈夫なんですか?この個体。有望株ってドコ情報です?」

 

 モニターが並ぶ暗室の中、徹夜続きの目をした男が、背後からの声を受けると、監視モニターの画面をみつめたまま、袖をまくったYシャツに刺青(ほりもの)が目立つ腕をのばし、あくまでモニターから眼を離さず、手もとの資料を肩ごしに渡した。

 

 書類をめくる音。

 葉巻の煙が、モニターの光に白く、くねりながら拡散、消えてゆく。

 

 そのモニターの中では、全裸に黒い貞操帯姿といった少年が、大の字でベッドにひっくり返り天井を向いて、なにやら考え事にふけっている。間接照明のみ点けられた部屋は薄暗いのだろうが、画像補整で幼さの残る顔は、よく見えた。

 

「あぁ。『カッコウ』のタイプⅣ、ですか。瞬間的に、認識野強化が可能な型の?代償(かわり)として感情面の因子を多少、抑制してるんですよね?正確な判断のため」

「ひでぇ話さ。不妊治療の若夫婦に仕込んだはいいが、数年後、こんどはその夫婦に自然妊娠の子供(ガキ)が出来て、この仔(コ)はお払い箱だとヨ。責任もって飼え、と。まったく今どきのアホ夫婦は」

「思考的なバイアスは、ないんですかね?」

「若干、引っ込み傾向なところはあるが、先天的なものじゃァねぇ……ハズだ。『エースマン』のやつも太鼓判を押してた。『突き落としてやれば、それなりに這(は)い上がってくる“最高にクソ可愛い、クソひな鳥”だ』と」

 

 舌打ちが、モニタールームの狭い部屋に響いた。

 それに対し、葉巻を一服するあいだの沈黙。

 

「あぁ……おめェは――ヤツがきらいだったな」

「あの下品さは、好きにはなれません」

「いずれにせよ、月曜だ。ここで心配なのは、どうも計画が外に漏れている兆候(ちょうこう)があるッてことサ。偽装されたアクセスが、最近はミョウに目立っている――慎重(しんちょうに)に、やらんと」

「しかたないですね。このご時世、金を出せば尻尾(シッポ)をふる裏切り者は、どこにだって居ます」

 

 フン、と鼻を鳴らす気配。

 

「ま、金は大事だからな。コッチもこの候補生サマの監視をしているだけで、二日間分の特別手当がつくんだ」

「しかし、一秒も欠かさず監視というのもツラいですよ」

「仕方あるめェ。いつだったか前任者がチョット眼を放したスキに、監視対象のガキに飛び降り自殺をされた轍(てつ)は踏みたくねぇしヨ?」

 

 まァのんびりやるサ、と男は別のモニターのスイッチをいれる。

 ニュース回線の画像が、AIアナウンサーのなめらかな喋(しゃべ)りを流しはじめた。

 

      ―――――――――――――――――――――――――

 

 《では次のニュースです――》

 

  シャワーを浴びたあとベッドにひっくり返った『ポンポコ』は、壁に備え付けのモニターをぼんやりと眺める。画面の中では探査院・本院前のフェンスらしきところを、機動隊の一団に監視されながら、プラカードの列が行進していた。

 

 [神の怒りに耳を傾けよ]

 [人類はその本分を識(し)れ!]

 [電気料金の値上げ絶対反対!]

 [食料税の無慈悲な導入断固阻止を!]

 

 ハンドスピーカーを持ったムサい中年のオヤジが、神だ罰だと叫んでいる。 

 

 ――なんのこっちゃ……。

 

 ニュース・アドレスを、手もとのタブレットで適当に次々変えると、様々な画像が流れてゆく。

 代替医療設備に不審者が侵入し、移植用の人体部位を盗みだした話題。

 新型AB(対・事象面)M納(ミサイル)入をめぐる、防衛商社と外界省の贈収賄疑惑。

 外象人と日本人のあいだで奨(すす)む異象結婚。

 新生児限定で蔓延(まんえん)する新型ウィルス、

 外象風レストランの新メニュー、

 芸能人の結婚……。

 

 アホクサ、と『ポンポコ』はモニターを消すとベッドを跳ね起き、窓辺に。

 奇妙な寮だった。

 窓が全部磨(す)りガラス状となっている。しかも指ではじいた感じ、かなりブ厚い。そして開けようとしても最低限の換気を満たすためか10cmほどしか動かない。その狭いすき間から見た外は隣の建物の外壁となっており、寮の外を満足にうかがうことは出来なかった。

 

 ――ふぅん……。

 

 とどめに、『牛丼』たちに映像メールを送ろうとしても“圏外”と表示されるしまつ。手持ちの個人用端末を壁のソケットにつなげばいつものサイトにも接続出来るが、どう考えても部屋のつくりがアヤしい。閲覧履歴は、まずダダもれだろう。

 彼は、この週末に読んで完全に頭に入れておくようにと渡された練習機のコクピット・マニュアルを、通学用フライト・ケースから引っ張り出した。

 

 ため息。

 

 週明け、実技補習のあとテストに出るから、といわれては仕方ない。

 分厚いそのマニュアルは、急造のコピー物らしく、ぞんざいに綴(と)じられ、しかもところどころ黒く塗りつぶされている。ページもだいぶ飛んでおり、ジェネレータとハードポイント装備品の項目がゴッソリ抜けていた。そもそも機体概念図と三面図が欠落していては、どんな姿か想像もできない。

 

 ――なんだよコレ。旧(ふる)い造りだなぁ。「多事象面・統合最適設計」以前の機体じゃないの?……事象震度4の存在空間をAIの完全自動操縦で界破(かいは)可能ってホントかコレ?……うぇ。AIから完全独立モード?その場合、全部マニュアルでやれってか?脳負荷60%マシ?おいおい……海馬(かいば)が死ぬって。

 

 『ポンポコ』はコピーの束をベッドに放り投げた。そして窓辺によると鼻だけを突き出し、外をながれる夜気の薫りを嗅いだ。

 次いでふと、先ほどまでいた高層ホテルのレストランを思い出す……。

 

 

 重く、秘めやかな薄暗い空間。

       大きく肩の開いたイヴニング・ドレスの若い婦人たち。

 

 首もとに幾重にも巻かれた真珠のネックレス。

       二の腕まで覆う、輝くほど白い長手袋(ロングアーム)の艶やかさ。

 

 対する男たちの方といえば、いかにも省庁の官僚然とした仕立ての良さそうな三つ揃(ぞろ)え。あるいは宮廷の内殿(ないでん)勤務服や、礼装軍服に並べた勲章のきらめき。

 

 天鵞絨《ビロード》、サテン、シルク、真珠、金の留め具、水晶の香水入れ。

 革手袋、ステッキ、勲章用リボン、装飾拳銃、銀製の名刺入れ。

 

 (……なぁに、あれ?誰かのお手つき?)

 (護衛がついてるからな。相当のお方(かた)のモノだろう……なるほど、高価そうだ)

 (イイ趣味してるわねぇ……“市場”に出たとして、幾らぐらいかしら?)

 (下世話な。しかし小生なら二〇〇両は……)

 (嗇(しわ)い。当方なら、最低四〇〇は出すぞ?アレは、なかなかイイ)

 

 そんな物憂(ものう)げな、謎めいたヒソヒソ声の林の中を、奥まった窓際の席に陣どり、金剛石(ダイヤモンド)をぶち撒けたような下界の光景を横目に、自分は勝手にオーダーされたお子様ハンバーグセット。黒メガネ二人組は、シェフ推奨のコース料理。領収書をもらえばコッチのもの、という魂胆(こんたん)が見え見え。ワイン・リストの革装丁に、よだれをながす様をみても、それは明らかだった。

 

「お二人の仕事は……なにかの警護なんですか?」

 

 年代物らしき高価(たか)そうなワインを、ソムリエからおそるおそるサーヴされていた二人は、顔を見あわせ、ひょうきんな顔をするだけで話にならない。

 

「……やっぱり探査院の所属なんでしょ?」

 

 黒メガネたちは、ふたたび顔を見合わせると、

 

「無明(むみょう)の闇への眼差しを――あらぬ方へとひた注(そそ)いでも」

「真実の認識には、ほど遠し。心せよ候補生、そも何者なりしか」

「……じゃぁ、候補生って。なんなんです?」

「きれいは汚い」

「汚いはキタナイ」

 

 二人してワインを前菜(オードブル)の上に吹き出し、これまた話にならない。

 眉をひそめるソムリエ。

 あきれた『ポンポコ』は、前菜をクチャクチャ咀嚼(そしゃく)する二人組から顔をそむけ、窓の外を充たす闇をながめる。

 高層ホテル周辺のエリアは、一面の宝石箱だった。が、彼方のところどころに、まるでハサミで切りとったような暗い区画がある。軍事施設?公園墓地?それにしては数が多い。

 あの、と『ポンポコ』はワインで口をゆすいでいた二人組に、

 

「むこうにポツポツある、あの灯りのない場所って――なんです?」

 

 大人ふたりは、大窓の外をつまらなそうに一瞥(いちべつ)したあと、

 

「擁立(ようりつ)議員・連座(れんざ)責任法」

「投票シタカラニハ、ソノ議員ニ責任ヲ」

 

 なにを言ってるか、さっぱり分からない。そんな『ポンポコ』をいたぶるように、二人の大人はニヤニヤと訳(わけ)知り顔で、やってきた伊勢エビのスープを前に、彼のほうを上目遣いのまま、音を立ててすすりあう。

 

 『ポンポコ』も、目の前に運ばれた『お子様も大満足!外象牛の厳選ハンバーグ・オニオンスープ付き』をフォークで味気なくつつきながら、ぼんやりと考える。

 

 尻穴にズップリと刺さる排泄プラグの違和感がつらい。

 

 イスにも、太ももの裏を使って、前のめりに座るしかないのがせつない。

  サラ……サー『デザート・モルフォ』も、こんな感じを味わっているんだろうか。あのブラン・ノワール組の姉サンたちも?それとも“本物”の専用貞操帯は、こんな違和感がないのか……。

 

 

 寮の窓の外を、救急車のサイレンがドップラー効果で滑っていった。

 ヒンヤリとした夜気に、木の香りが濃くにじんでいる。

 

 《天気予報です。境界面を超えて進んできた低気圧が、九州エリアに大雨を……関東地方も朝から…》

 

 そういえば、と『ポンポコ』は、『牛丼』たちが今日の昼休み、教室のすみに集まり、彼女持ち限定の集団で、テーマ・パークにいく計画をしていたのを思い出した。あいにくと、この土日は雨らしい。

 

 「――フフッ、ざまぁ……」

 

 そう呟いたあと、さすがに『ポンポコ』は自己嫌悪。

 

 冷えてきた彼は窓をしめると、部屋に備えつけてあったシルク素材のようなガウンを素肌のうえに羽織(はお)る。

 回線を閉じ、一面ブルーなモニターの光が部屋を照らすにまかせたまま、物憂げな風情でベッドに身体を横たえ、なにやら急転直下(きゅうてんちょっか)の気配がある自分の人生行路を、虚(うつろ)ろな表情(かお)のまま沈思黙考・再検証する。

 

 窓の外を、またサイレンの音……。

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