久しぶりに予知夢を見た。
内容は酷いものだった。
人気のない場所で少女と青年が言い争っている。
やがて激高した青年に押し倒され少女は性的暴行を受けてしまう。
場面が変わりおそらく寮の屋上。
性的暴行を受けた少女は泣きながら屋上から飛び降りてしまった。
そこで僕の意識は覚醒した。
「なんて夢を見たんだ僕は……」
非常に目覚めが悪い朝になってしまった。
「どうしたの?」
制服にエプロン姿の桔梗が心配そうに顔を覗き込む。
「嫌な夢を見てしまってね」
「そっか。大丈夫?」
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとね」
「ううんっ」
頭を撫でると桔梗は布団の中に潜り込んできた。
「今日も抜いてあげるね♡」
「よろしく頼むよ」
すっかり朝の日課になった桔梗のフェラチオ。
「んちゅっ……ぢゅるっ……」
桔梗はいつも美味しそうに僕の愚息をしゃぶってくれる。
一度だけフェラ直後の桔梗とキスしたけど、あまりにも精液が苦くて吐きそうになった。
それからフェラした後に桔梗とはキスをしていない。
「んぶぅ……あ、ぐっ……」
桔梗は指示しなくても喉奥まで愚息を受け入れる。
そして時間が経つにつれて、強く口をすぼめて吸うように扱く。
「ぢゅぷぷっ! んぐぅっ! んぼぉっ!」
桔梗の鼻の下が伸び、顔が歪む。
彼女の綺麗が顔を変に歪めることに興奮を覚えてしまう。
「桔梗、もう出る……!」
桔梗の頭を掴み、自ら腰を動かして、絶頂に向かう。
「おぶっ! ん゛ん゛っ!」
「くっ……!」
桔梗の口内に、大量の精液が注ぎ込まれる。
「んぶぁ……♡ おぶぅ……♡」
恍惚な表情を浮かべて、美味しそうに精液を飲んでいく桔梗。
「美味しいの?」
「んっ♡」
桔梗は嬉しそうに頷く。
「ならいいけど」
僕には精液の何が美味しいのかまったく理解できない。
けど桔梗が幸せそうなのでよしとしよう。
☆☆☆
「おはよう」
今日も僕たちBクラスは平和だ。
平田はみんなに笑顔を振りまいてるし、池は小鳥と会話をしているし、須藤は英語の教科書を読んでるし、幸村はクラスメイトに勉強を教えてるし、綾小路は何を考えてるのかよくわからない。
いつもと変わらないBクラスの日常だ。
ただこの平和なBクラスで日常が脅かされている生徒がいる。
「おはよう、佐倉さん」
佐倉愛里。
物語の当初はヒロインポジションだった美少女だ。
「あ、桜庭くん。おはよう」
人見知りが激しい佐倉だが、僕とは笑顔で挨拶を交わす仲になった。
これもめげずに毎日挨拶をした結果だ。
「今日も一日頑張ろうね」
「う、うん」
佐倉は原作2巻でストーカーと対峙することになる。
原作では綾小路と一之瀬が彼女を救ったが、この世界では悲惨な結末を迎えることになる。
予知夢で自殺をした少女。
それが佐倉愛里だ。
このままでは佐倉はストーカーにレイプをされて自殺をしてしまう。
そんなバッドエンドは回避しなければならない。
「佐倉さんは夏服買わないの?」
「ポイントがもったいないから。それに学校はどこも冷房が効いてるし」
「確かにそうだね」
佐倉を死なせるわけにはいかない。
なぜなら―――彼女は生前の親友が好きだったヒロインだからだ。
親友が知らないこの世界でも、僕が佐倉を見捨てたら、彼は悲しむと思う。
だから僕は全力で佐倉愛里を救う。
「桜庭くんも衣替えしないの?」
「しないよ。理由は佐倉さんと同じ」
「そっか」
「うん。それじゃまたね」
「うん」
佐倉に別れを告げて自席に座ると、仲良くお喋りをする綾小路と堀北の姿があった。
「今日も仲が良いね。まるで夫婦みたいだ」
「桜庭、何を言ってるんだ?」
「それは幻覚よ。あなたはクスリでもやってるのかしら?」
息もぴったりじゃないか。
綾小路は僕と堀北の方が仲が良いと言っていたけれど、綾小路と会話をしてる方が堀北は楽しそうだ。
あれだけ暴言を吐けば当たり前だろうけど。
「そろそろ先生が来るよ。静かにしたら?」
「お前がからかってきたんだろ……」
「あなた、本当にいい性格をしてるわね……」
僕に呆れた二人は大人しく前を向いた。
放課後。僕は桔梗と二人で寄り道もせずにまっすぐ寮に帰った。
「要、あれ」
「ん?」
桔梗が指を指した先にはポストに手紙を入れている男性の姿があった。
男性は僕たちの存在に気付くとそそくさと去っていった。
「あの人が手紙を入れてたのって佐倉さんのポストだね」
ストーカーは愛の手紙でも入れていたのだろう。
しかしあいつがポストに投函したのを目撃できたのはラッキーだった。
これで佐倉に探りを入れるきっかけを作れた。
「なんか気持ち悪い人だったね」
「そうだね。ストーカーだったり?」
「佐倉さん、可愛いもんね」
「桔梗の方が可愛いよ」
「知ってる♡」
僕に褒められてご機嫌な桔梗。
「……でも佐倉さんが可愛いのは否定しないんだ?」
「っ……」
前言撤回。
やっぱり桔梗は地雷がわからないから怖い。
☆☆☆
私は中学三年までグラビアアイドルの仕事をしていた。
初めは自分が変われるきっかけになればいいと思った。
確かに仕事中の私は変われたかもしれない。
グラビアアイドルの雫は明るく元気な女の子。
それがファンのみんなの印象だと思う。
でも本当の私は違う。
人付き合いが苦手で、相談事ができる友達も一人もいない。
だから私はここまで苦しんでいる。
グラビアアイドルの仕事に疲れた私は全寮制のこの学校に入学した。
ただファンとの繋がりは断ち切れなくて、ブログに毎日自撮り写真をアップロードしていた。
でも最近はブログの更新が滞っている。
理由はストーカーに悩ませているからだ。
始まりは私がデジカメを購入するため家電量販店に行ってからだった。
おそらく対応してくれた店員さんに私が雫だと気づかれたんだと思う。
その日からブログに気持ちが悪いコメントが投稿された。
それだけだったらまだよかった。
私はストーカーに住所を知られてしまった。
デジカメを購入した際に、延長保証の申込書に住所を記載した。
私の住所を知ったストーカーは毎日大量の手紙をポストに投函している。
今日も15通入っていた。
中身は怖くて見ていない。
「なんでこんな……」
学校から寮に帰るまでの道のりが怖い。
食材を買い出しに行くまでの道が怖い。
いつストーカーに襲われるかわからない。
事務所の先輩がストーカーに襲われる事件が発生したことがある。
自宅の玄関先で待ち伏せされ、そのまま暴行を受けたらしい。
その先輩は精神を病んでしまって、事務所を退社してしまった。
愛情と憎しみは紙一重だ。
もし私のこのストーカーの歪んだ愛を拒絶すれば、尋常ないほどの憎しみを向けられると思う。
そうなったら私は先輩のように襲われるかもしれない。
怖い。
誰か助けてほしい。
でも私には悩みを相談できる友人が一人もいない。
先生に相談して物事を大きくしたくもない。
ストーカー被害に遭った女だとみんなに知られたくない。
知られたら絶対変な目を見られてしまう。
「だったらどうすればいいの……」
このままストーカーの影に怯える生活を送らないといけないのか。
そんなの私の精神が持つわけがない。
だから誰か助けて。
私の心が壊れる前に誰か。
「……一人だけいるかも」
こんな私に毎日笑顔で挨拶をしてくれる人。
彼ならもしかして……。
☆☆☆
「桜庭くん、今日は桔梗ちゃんと一緒じゃないの?」
昼休みの屋上。一人でお弁当を食べていると一之瀬がやって来た。
「桔梗は友達と食べてるよ」
「ふぅん、そっか」
「一之瀬さんも一人?」
「うん。……実は桜庭くんと桔梗に相談があって二人を探してたの」
「僕たちに?」
一之瀬の相談事ってもしかして白波からの告白だろうか。
「少しだけ時間くれるかな?」
「いいよ。昼飯食べながらでいいなら話を聞くよ」
「ありがとうっ」
僕が承諾すると、一之瀬は僕の隣に腰を下ろした。
やや距離が近いような気がするけど気のせいだろう。
「それで相談事って?」
「うん。実はクラスメイトに告白されちゃって……」
「そうなんだ」
原作と違ってすでに告白されているのか。
「いきなりでびっくりしたら返事は保留にしちゃったんだけど……」
「その表情から察するに付き合うつもりはないんだね?」
「……うん」
「なら断ればいいんじゃないの?」
「そうだけど……相手は親友だと思ってる子だから傷つけたくなくて……」
「親友?」
「相手は女子なんだ」
相手は白波千尋で間違いないようだ。
「そっか」
「女の子に告白されたの初めてだから……どうすればいいかわからなくて……」
「なるほどね」
「桜庭くん、どうすればいいかな……?」
一之瀬は潤んだ瞳で僕を見つめる。
頬が紅潮しているのは暑さが原因だろうか。
「例え相手が傷ついても断るしかないと思うよ」
「……そうなの?」
「相手も傷つくのを覚悟のうえで告白していると思う。だから一之瀬さんはそれに応えないといけない」
「応える……」
「変に嘘をついて溝を深めるより、自分の気持ちをまっすぐ伝えたほうがいいと思うよ」
「……そっか、わかった。頑張ってみるね」
ありきたりな答えになってしまったけれど、一之瀬は納得してくれたようだ。
「桜庭くんに相談してよかった」
「そう?」
「うん。……また何かあったら相談してもいいかな?」
「僕でよければ」
「ありがとうっ」
その日の夜。一之瀬からメッセージが届いた。
白波からの告白を断ったこと、しばらくぎくしゃくするかもしれないけど元の関係に戻れるよう頑張る、とのことだった。
「ふぅん。帆波ちゃんって女子にもモテるんだね」
一之瀬のメッセージを見た桔梗は興味なさげに言った。
「みたいだね。桔梗は知ってた?」
「薄々ね。帆波ちゃんたちと遊んだ時に、千尋ちゃんが異常なまでにべったりしてたからね」
「なるほど」
「要は女子同士とか気持ち悪いと思ったりしないの?」
「しないよ。百合は嫌いじゃないし」
転生前に親友が教えてくれたゆるゆりの影響だろう。
もちろんラブコメの方がジャンルとしては好きだけど。
「桔梗は?」
「私は要以外興味ないから♡」
「……そっか」
「そこはもっと嬉しがってよ~」
「ごめんごめん」
頬を膨らませて不満げな桔梗を宥める。
「それより佐倉さんはどうするの?」
「明日学校に来てたら話しかけるよ」
本当なら今日中にストーカー事件を解決したかったが、佐倉が学校を休んだため、何も進展がなかった。
「私も協力するからね」
「頼りにしてるよ」
「うんっ♡」
桔梗には佐倉がストーカーに困っているなら助けたいと相談している。
間違いなく佐倉はストーカー被害にあっているのに、断言できないのが痛いところだ。
「それじゃお風呂入ってくるね」
「私も入るっ」
こうして僕は風呂場で桔梗にたっぷりと絞られた。
まさか二時間も浴室にこもることになるとは思わなかった。
次回で原作2巻分は終了です!