──プロ2年目の冬。俺は戦力外通告を受けた。
一般にも、戦力外通告という言葉はそれなりに浸透していると思う。有名なドキュメンタリー番組もあるし、コアなファンであれば今年は二軍選手の誰が戦力外通告になったのかと態々チェックしているだろうし、実際に麻雀雑誌の後ろの方にも小さく戦力外通告された選手のリストが載る。
だがまさか自分がそうなるとは──まあ、思わないこともなかったが、それでも実際にそうなったことは非常にショックな出来事だった。
前日、自分が住んでいるアパートの一室。ベッドに寝転がりながらタイトル戦をテレビで見ていると、突如として携帯の着信音。表示されている相手が自身の所属するチームの本部長であることを理解すると慌てて電話を取った。そして一言、
『明日、スーツを着て、本部まで来てほしい』
この発言に、俺は携帯を落としかけるほどの衝撃を受けた。その意味が分からないはずもない。一昔前の会社員で言うところの、肩たたきに相当する言葉。
プロ雀士がスーツを着て試合や練習に望むことは珍しくもない。が、それは個人のタイトル戦やリーグ戦などの服装の自由が認められている試合くらいである。プロチームに所属するなら、チームのユニフォームなどを身に着けて試合に望む。まあ、一部、スター選手などはトレードマークとも言える自身の個性的な格好をして試合に望むこともなくはないが、二軍で鳴かず飛ばずの成績を収める自分には縁のない話であり、その例には含まれない。
普段の服装、試合や練習に臨む時は、紫色のジャケットにワイシャツ、紺色のスラックスである。これは従姉妹からプレゼントされたもので、微妙にスーツっぽく見えなくもないが、そう認識しているとしたら態々スーツで来いなんて言わないだろう。むしろ疑念が確信に変わってしまった。
ただでさえ最近は不眠症気味だというのに、結局殆ど眠ることが出来ないまま翌日。自身の車を運転してチームが所持する練習場所兼、チームのスタッフ、職員なども働いているビルに向かうと、そのまま応接室まで通され、これまた話は直ぐに済んだ。
──戦力外通告。
プロ2年目。まだまだ引退するには早すぎる、そもそももう少し長い目で、育成感覚で見て欲しいところであったが、現実は厳しかった。
1年目の新人戦でそれなりの活躍をし、それなりの成績を収めていた時とは考えられない事態だ。
それもこれも、1年目に所属していたチームが、経営会社が潰れたことによって一緒に解体されたことが原因の一端だと思う。
残った選手たちはプロ麻雀連盟や他のプロチームとの協議によって、比較的均等に、選手それぞれと交渉の末に各チームに移籍することになり、自分も何とかそこに滑り込んだ。
しかし自分は1年目の最初の方こそそこそこ活躍していたとはいえ、それからは成績も悪く、二軍生活が板についてきた身。新しいチームでも結果は振るわず、そのままプロ2年目に突入。
何とか食らいつこうと自分なりの努力を続けてきたが、今日この日に戦力外通告を受けてしまった。
眼の前が真っ暗になるとは正にこのことだろう。自分は今まで、麻雀には結構本気で取り組んできたはずだった。
「……いや、そんなことはない、か」
そう思いかけて、直ぐに訂正する。そんなのは、中学の終わり頃までの話だったと。
家に帰って書類を置き、机の上に置かれた薄汚れた麻雀牌や牌譜を見て自嘲気味に笑う。
これをどうしようか。このままゴミ箱に突っ込んでやろうか。いや、でも。
そんなことを考えていると、従姉妹からの連絡。近くのお店で食事のお誘いだ。
きっとお祝いも兼ねてだろう。従姉妹は今年、プロ1年目にして、シルバーシューター。そして当たり前のようにルーキーオブザイヤー(新人賞)を取り、幸先の良いプロ人生を歩み始めたところだ。
そしてプロ2年目。プロ麻雀せんべいの紹介だと、ドランカーと称された東郷仁は、早くも戦力外通告だ。
さしずめプロ雀士の光と影か。カードでも、俺はハズレ扱いだが、従姉妹は結構なレア物だ。
持つものと持たざる者の差を改めて感じ入る。やはり、俺は従姉妹や他の選ばれた連中とは違うのだと。
プロ雀士の中には、時折、奇妙な力を持つ者がいる。
これは俺達雀士の中では有名な話だ。人によっては高校生、あるいはそのずっと前から奇妙な力で麻雀を打つ者がいる。
牌が偏ったり、特定の役で上がりまくったりと、様々な力がある。
それを知る者達は、オカルトと呼んでいる。かく言う従姉妹もオカルト持ちだ。
そして俺にはないもの。子供の頃からその存在を知り、痛感しながらも、ついぞそういうものは発現せず、結局はデータ型なのか、直感型なのか、よく分からない打ち手となった俺にはないもの。
それがあればどんだけ楽だったか、と。中学の頃から大会にそういう奴らが現れはじめ、高校に上がる頃には馬鹿らしいと情熱を殆ど失いかけていた。
しかし麻雀名門校に入ってしまったのと、それでも今までの経験からそこそこ打てることもあって、男子の部でそこそこに活躍。晴れてプロになれたのはいいが、結果はこのザマだ。
「何がドランカーだ。ふざけやがって……こちとらまだ二十歳だっての……」
つい今年、酒を飲めるようになったばかりなのに、1年目からそういう異名をつけられたのも微妙にムカつく。打ち方がころころ変わり、まるで酔っ払いを相手にしているようだからドランカーらしいが、麻雀なら打ち方を配牌や相手、点数状況で変えるのは至極当然のことであり、無理矢理付けられたようにしか思えない。
後は多分、見た目や服装も相まって、どこかの怪しいホストみたいだからだろうか。
不眠症になってから目の下のクマは取れないし、この半目気味の眼は遺伝だからしょうがない。見た目はそれほど悪くないと踏んでいるのだが、やはり纏う雰囲気が良くないのだろうか。一向にモテたことはないというのに。
運が悪い。巡り合わせが悪い。つまり、持っていない。いや、持っていない奴でもプロで活躍している者はいるのだから言い訳に過ぎないのだろうが、それでもガキの頃からオカルトと関わってきた身としてはそう言わざるを得ない。
「オカルト持ちなんて消え失せろよ……くそっ、つーか、これからどうするんだ俺……」
従姉妹から誘われた食事に、なんだかんだでオーケーと返してしまい、そのまま車に乗り込みながら頭を抱える。当然だが、麻雀ばかりやってきた自分に就職など難しい……と思う。いや、経験がないので分からないが。
2年のプロ雀士生活、とはいえ二軍なので給料はそれほどあった訳ではないので貯金も心許ない。数ヶ月か、あるいは切り詰めれば一年くらいは生活出来るかもしれないが、それ以降は何かをしなければならない。
雀荘で稼ぐってのも悪くないか……と思うが、どうだろうな。腐ってもプロで、そこらのアマチュアに比べれば鬼のように強いはずだが、麻雀は運要素も高いし、時折オカルトを持っていたりとヤバい奴もいる。安定して稼げるかどうかは不安なところだ。
もしくはどこかの学校や実業団で麻雀のコーチとかはどうだろう。麻雀教室を開くとか。ただまあ正式に雇われるなら色々と売り込まなければならないし、そもそもこんなプロといっても中途半端な自分を雇いたがるところがあるのだろうか。
それでもどうにかする必要はある。迷った末に自分の携帯のSNSアカウントと殆ど更新されていないブログに、“麻雀打ちます教えます。一日5000円”と、自分で見ても引く、中々に酷い募集を書き込んでしまった。
それも、戦力外通告を受けたばかりの精神だからだろう。誰がどう思おうと気にならない。これ以上の最悪など存在しないのだから。
「っと、着いたか……」
待ち合わせ場所のお店に近い繁華街のパーキングエリアに車を止めて降りる。プロの契約金を使って見栄で買ってしまったこの中古のレクサスも売っぱらってやろうかと思う。これを売ったらもう一年くらいは遊んで暮らせるかもしれない。
我ながらクズみたいなことを考えていると、約束のお店も見えてきた──が、ここに来て行きたくないな、と思ってしまう。
先程の連絡で、従姉妹と一緒にあの人もいると聞いたし、ぶっちゃけこのテンションで会いたくない。というか深くは考えていなかったが、戦力外通告の俺がどの面下げて祝いの席に同席するのだろうか。空気が死ぬだろ。
「バックレるか……?」
人が行き交う繁華街。適当な場所で立ち止まり、足を迷わせる。
こうやってると本気でホストの客引きか何かだと思われないだろうか。いや、こんな目の下にクマがある男についていく女はいないだろう。
改めて行くかどうかを迷うが、やはり急用が出来たと言ってキャンセルした方が良いのではないかと思う。祝いの席で空気を殺してしまうのはさすがにどうかと思うし、もう1人でやけ酒でも煽るか、風俗でも行って一瞬の快楽に身を任せてみるかとも思う。
そんな風に迷っているとだ。不意に横の路地から声を掛けられた。
「──お主、オカルトを持っておるな?」
「は?」
声の方向に振り向けば、そこには声と全く同じイメージのしわくちゃの老婆が小さな机と水晶玉と共に椅子に腰掛けていた。
如何にもな胡散臭い占い師。こういう繁華街らしいといえばらしいが、
「……悪い。言ってる意味が分からないな。おばあちゃん、大丈夫かい?」
「お主にはオカルトがある。それも、今日目覚めたばかりのオカルトがな」
これでも一応はプロ。いや、元プロ。エンターテイメント。興行だってするし、人前に顔を見せる職業だった。
故に丁重に接してみたが、老婆は言葉を変えなかった。再度念押しするように告げられ、こちらの表情も笑みから真顔に変わってしまう。
「オカルト、ね……よく分からないが、どんなオカルトがあるって言うんですかね? あれですか、背後霊が憑いてるとか」
まあ実際に憑いてたら従姉妹が感知し、親戚がいる鹿児島の方まで行ってお祓いとかされるのは目に見えてるのでないだろうかと思いながら言う。
こうやって会話が成立している時点で、相手の術中にはまっている気はしたが、今の俺を縛る者はない。待ち合わせも放棄しようと思っていたところだ。
故に老婆との会話に付き合ってみたのだが、次に告げられた言葉は、予想の斜め上を行くものだった。
「役満を上がると惚れられる」
「……は?」
「お主が役満を上がれば、同席していた女子は惚れる」
……この婆、大丈夫か? 病院とか連れて行った方がいいか?
さすがに少し心配になるが、続く言葉にはドキリとさせられた。
「お主、待ち合わせをしとるじゃろう」
「っ……」
言い当てられ、動揺しかける──が、それをすんでのところで堪える。おかしな推理じゃない。
なにせ自分は、ここで立ち止まっていたのだ。不自然に。数メートルの範囲で足を迷わせ。繁華街のど真ん中でだ。見ていれば、誰かと待ち合わせをしていると思ってもおかしくない。
占い師とは、少ない情報から相手を見抜くことに長けていると聞く。今のも、俺の機微からそうだろうと推測したのだろう。
別にバレたところで何がどうなるという話でもないのだが、どうにもこの手の心理戦には隙を見せないようにしていた癖もあり、隠し通してしまった。その上で問いかける。
「どうだろうな。だが、もし待ち合わせをしていたとしたらどうだって言うんだ?」
「その相手の女子らとの卓で、役満を上がってみせるがいい。さすれば、お主は幸福となるだろう」
「──役満を上がれ? ははっ、面白い事を言うな」
女性と当てられたのはどうでもいいが、その相手との卓で役満を上がれ、というのも最高にふざけた占いだ。
そんなことは不可能に決まってる。麻雀の世界に絶対はないにしろ、極めてゼロに近い。良くて数%といったところだろうか、俺があの2人相手に役満を上がるというのは。
冗談にしては面白い。少しツボに入ってしまった俺は、財布から千円札を取り出し、老婆に差し出す。
「面白い占いを聞いた。ありがとな、お婆ちゃん。お代は書いてないが、これくらいでいいか?」
「お代はいらぬよ。儂は、ただ導くだけじゃ」
「まあそう言わないでくれ。何も渡さずに立ち去ったんじゃ外聞が悪い。ここに置いておくからな」
と、お代はいらないと言う老婆に対して、千円札を置いてその場から立ち去る。
ほんの少しだが、気力を取り戻した。いや、一過性のものでしかないので数分後には自分の状況を思い出してブルーになると思うが、この一瞬だけは気力がある。
人間なんて単純なもので、悪いことがあっても、少し良いことがあったり、逆に良いことがあっても、悪いことがあればその瞬間は忘れてしまえるものだ。
まあ、プロ生活に思ったより未練が無かった可能性もあるが、とこれまた後で思い出したらブルーになりそうなことを考え、俺は待ち合わせ場所へと向かった。
「遅いですよ、ブラザー。十分の遅刻です」
「ああ、いや、悪い。少し道に迷ってな。後、俺達は兄妹じゃないだろ。従兄弟だ。英語だと……なんて言うんだ?」
「カズン、ですが、言い難いのでブラザーでいいでしょう」
「思ったより適当だよな、お前は……」
待ち合わせ場所。指定されたお店の前に着くと、パンツルックの女性の姿があった。
髪色は同じ。身長は160センチくらい。上半身にはカーディガンを身に付け、その胸元は街行く一般女性と比べてもかなり盛り上がり、思わず目を奪われそうな谷間を覗かせる──そんな控えめに言っても美女の姿。
戒能良子。俺の従姉妹で、小さい頃からの幼馴染。
歳はこちらの一つ下で、麻雀の実力は俺より遥かに上。今話題のスーパールーキーの姿がそこにはあった。
彼女からの誘いを受け、やってきた俺だが、相変わらずの美女っぷりに眼のやり場に困ってしまいそうになる。
「……はぁ」
「どうかしましたか、仁。今日は一段とクマが濃ゆいようですが」
「何でもない……それより、はやりさんは?」
「店の中ですよ。先について待っているようです。オーダーもしているようなので急ぎましょう」
ああ、と頷いて俺は良子と共に店の中へ。
そこは個室があるタイプの小洒落たレストランだった。ここらに住んで一年経つが、俺も知らない店。
中に入って名前を告げると、そのまま店員の案内を受けてとある一室に通される。良子が扉を開けると、そこからは可愛らしい声が聞こえてきた。
「よしこちゃんに東郷くん! 待ってたよ~」
「お待たせしました、はやりさん」
「お久しぶりです。すいません、遅刻してしまって」
「いいよいいよ。待ったとは言ったけど、たいして待ってないからね☆」
ふりふり、と可愛らしく手を振って迎えてくれたのは、良子以上に有名なプロ雀士だった。
瑞原はやり。牌のお姉さんとしても有名なアイドル雀士だ。
彼女を見ると、思わず溜息が漏れそうになる。
はやりさんは相変わらず可愛いな……。
綺麗で長い髪をツーサイドアップに纏めた小柄な女性。年齢を感じさせない童顔さや肌のツヤ。
そして何より、カットソーから覗く良子以上の乳の谷間が、こちらを惑わせる。
その爆乳に顔を埋めてみたいと懸想したことは一度や二度ではない。
良子は従姉妹であるため、顔立ちやスタイルが好みであっても半ば諦めがつくが、プロ1年目に彼女と知り合いになってしまい、俺は下心が湧いてしまうのをいつも抑えてきた。
いや、厳密には抑えきれていないだろう。下心があり、当然出会う度に話しかけているし、露骨にはなってないだけでずっと狙っているのだから。
ただまあ、そんなものは夢みたいなものだ。なにせはやりさんはあの牌のお姉さんで、ハートビーツ大宮に所属するトップ選手。
グラビアにも頻繁に登場し、男性プロどころか、日本中に男女問わずファンがいる。
彼女の前で考えるのも何だが、彼女のグラビアにお世話になっている男子も相当いるだろう。
そんな無自覚に性の対象を振りまく彼女と知り合いになり、なおかつこうやって食事にも参加出来るのだから、俺は恵まれている。
プロ1年目で彼女と仲良く会話していただけで、次の試合で同卓した全員が俺を狙ってきたくらいだ。
というか、今年に入ってからの数少ない二軍の試合も、良子が従姉妹だということがバレて狙い撃ちにされたくらいだ。俺の成績が落ちた理由、それなんじゃないか……?
実際の真偽は不明だが、この2人と食事をしていると知られたら今まで以上にボコされていたかもしれない。
そういう意味では、プロを止めてよかった。いやよくない。良いわけあるか。
「ど、どうしたの東郷くん……? 今日は一段と頭を抱えてるけど……」
「チームから厳しいことでも言われましたか? まあ、ネバーギブアップの精神で頑張ることですよ」
「ああ、いや……ちょっとな……」
俺の様子にはやりさんが少し困惑しながら心配してくれ、良子もなんだかんだで励ましてくれる。いや、うん。状況的には恵まれている。それは自覚している。
しかしだ。この2人に俺への恋愛感情なんて欠片もないだろうし、そもそも二軍の、いや、クビになった元プロと人気女子プロなんて釣り合いが取れていないにも程がある。
それ故に、プロ2年目に入ってからは俺も半ば諦めているのだ。どうあっても仲の良い友達止まりだと。
二軍と一軍のスター選手の日程の違いから、会う回数も激減した。プロに入って最初の方は、別チームではあっても、それなりに会って仲良くしていたようにも思うが、今は2ヶ月に一度でも連絡を取れれば良い方だ。
はやりさんも、機会があればこうやって誘ってくれるが、やはりスケジュールの問題もあり、忙しいので中々会えない。それでも変わらず接してくれるこの人は、本当に優しいんだな、と思う。
俺なんて麻雀の実力もなければ熱意も中途半端、今までなあなあで麻雀をやってきた下心満載のクズだと言うのにだ。
はやりさんとよく一緒に食事に行っている時期、はやりさんの無防備さにムラムラしすぎて、食事を終えたその足で風俗に向かったような男だ。あまりにも虚しい上にはやりさんとは比べることも出来ない相手だったので、さすがに即風俗というのはやめたが、結局は性欲を抑えきれずにはやりさんや良子、他の女子プロのグラビアや妄想で自家発電を繰り返してしまっている。
男なら普通のことで気に病むことはないはずだ。事実、高校生くらいまではそれくらいどうということもなかったはず。
ただ、彼女たちの純真さを実際に接することで感じていると、なんだか自分がとんでもないクズな気がしてしょうがない。いや、実際にクズなことには違いないが。
それに、はやりさんを狙っているはずなのに、他の女性にも目を奪われ、そちらで抜くこともある訳で、男としてはおかしくないと思うかも知れないが、純愛どころか恋愛のれの字もないような汚れっぷりなので、正直、まともな人と接してると俺がおかしいんじゃないかって思う。
とどのつまり、俺は結局、性欲で相手を選んでるどこにでもいるようなクズ男で、ヤれる相手がいれば迷わずやっちまうような、典型的なダメ男なのだ。漫画でよくいるようなラブコメ主人公にはなれない。ヒロインの美少女からのエロい誘惑とか、2秒で落ちる自信がある。なんなら、なんで拒否出来るんだとムカつきすらする。こいつらイ○ポなのかと。
だがまあ、リアルな関係の中で下心満載の行動は取れない。ましてや腐ってもプロ雀士。人気商売でもあるのだ。酷いことは出来ない。
とはいえ最近ではプロ界隈でも重婚したり、浮気相手との子供を腹に宿しながら対局するような、何とも言えない事だってある。この国の風紀は色々とおかしいのだ。いやほんと。
そのせいで女性同士で恋愛する人も増えてきているとかで、なんとも止めてほしい。ただでさえ有り余る男性の孤独死が加速する。いや、羨ましかったよな、重婚したニュース。俺も両手に花といきたいものだ。はやりさんと……良子でも、まあ、いい。もしくは佐藤アナウンサーとか。野依プロとか。三尋木プロなんかも趣があって良いかも知れない。ロリと巨乳を侍らせるってロマンだよな。
「それじゃあ今日はよしこちゃんのシルバーシューターとルーキーオブザイヤーを祝って──……かんぱーい!」
「……乾杯」
「チアーズ、です。二人共、ありがとうございます」
そんなクズみたいなことを考えていると、はやりさんの音頭で祝いの食事会は始まった。ああ、2人の純真な笑顔が眩しい。こんな時にエロい妄想するとか、俺って本当に最低のクズ。でも乾杯した時に2人の胸がたゆんっと揺れたのは最高だった。やっぱりクズいな。
「えへへ、よしこちゃん。あの対局はすごかったね☆ はやり、感動しちゃった」
「そういうはやりさんは最後の対局、やられてましたね。良いやられっぷりでした」
「はやっ!? あ、あれは咏ちゃんが一枚上手で……う、うう、思い出したらちょっと悔しい……」
「あー……あれは三尋木プロ、うまかったですよね。でもはやりさんも、当たり牌何枚も抱えながら振り込まなかったじゃないですか。あれはしょうがないですよ。三尋木プロ、あの対局だとかなりノッてましたしね」
「そうだよねっ。ほら、東郷くんはそう言ってくれてるよ、よしこちゃん!」
「いやー……まあいいですけど。そう言う仁はどうなんですか? 来シーズンは一軍に上がれそうですか?」
「東郷くんなら大丈夫だよっ。一番最近の試合だと、結構調子出てきてたもんね?」
「……あ、あー……そ、そうですね……はい。来シーズンは頑張りたいです」
食事が始まってしばらく、3人の麻雀プロ。いや、元プロが混ざったその席だと、話題は必然的に麻雀の話になる。
そうなると、不意に良子が俺にとっての激痛な話題を振ってきた。はやりさんもそれに乗っかってきて、俺はそれに答えざるをえなくなるが、なんとかはぐらかす。はぐらかせたと思いたい。
だが良子は眼を細めた。やばい。そう思ったのも束の間、やはり問いかけてきた。
「……もしかして、また何かあったんですか? 先程から時折、上の空になっていますよ」
「……いや、それは……」
「もしかして悩みとか? もし話せそうな事なら遠慮しないでね☆」
「う、うーん……」
2人のその問いかけに、俺は悩む。
いや、どの道バレることであるため、今言ってもいいのではないかと思い始めてるのだ。
後でバレて、なんであの時言ってくれなかったの? ってなったらそれはそれで困る。優しいはやりさんと、なんだかんだで優しい良子だ。後で凄い怒られそうだし、はやりさんくらいになると悲しんでくれそうなのが更に困る。
だから今言ったほうがダメージは少ないのではないかと思った。だから俺は、おそるおそるそれを口にする。
「いや、まあ……ついさっきの事なんですがね……」
「うんうん☆ それで?」
はやりさんが笑顔で先を促してきたので、俺は告げた。苦笑気味に、
「……チームから、戦力外通告を受けてしまいまして……ははは、いやー、急すぎて笑えてきますよねー……」
「なーんだ。そんなことだったんだ! それならはやりに…………え?」
「…………は?」
2人の表情が、動きが、空気が、固まる。
やってしまったと俺は思う。分かっていたことなのに。
俺が自嘲気味な笑みを浮かべることしか出来ないでいると、はやりさんが驚愕の様子で前のめりになって言った。
「そ、それって大丈夫なの!? って、大丈夫じゃないよね!?」
「……なんで先にそれを言わないんですか?」
やはりこうなった。良子の視線が痛い。はやりさんはエロい。いや、前のめりになると谷間がめっちゃ見えるから止めて欲しい。
「ほ、他のチームとかに移籍は? 誘いとかないの?」
「……プロテストを受けて別のチームに入るという方法も無くはないですが……」
「……まだ何も考えてないんすよね……何分、つい先程のことなので……とはいえ、今の俺がプロテストに合格なんて……」
いや、まあそれも考えなくはなかったが、ただでさえ狭きプロの門。地方の独立リーグとかならワンチャンあるかもしれないが、トップチームに入れるなんて夢はないだろう。それが出来るなら俺はとっくに一軍にいる。
だからまあ、思う。2人が心配してくれているのが分かったからだろうか。少しは前向きになれる。活力が湧く。
「……でもまあ、幸いにも貯金はまだあるし、元プロってことでコーチとかの道とかも無くはないし、その辺りを考えてます。まあ、それが無理なら、適当に……最悪、実家に戻ればいいし、生活に困ることは……」
「そ、そうなんだ……」
「…………」
はやりさんが困ったように頷くが、良子の方は無言だ。
その場の空気が暗いものになる。こうなるとさすがの俺も、エロい妄想で現実逃避なんてしていられない。
何か明るい話題があればいいのだが、それもない。なんだろう。最近、はやりさん似のAV女優を見つけてそれでシコったんだけど、ありえないくらい濃いのが出たとか? ──口が裂けても言えないことを思いつくとか、さすがだな、俺。
いやほんと、本物のはやりさんとは比べるべくもないってのに、失礼な話だ(そういうことじゃない)。
ともあれ、自分から明るく何か言っても空元気に見えそうで何も言えない。場合によっては余計に空気が落ち込みそうだし。
そんなことを考えていると、はやりさんは思い出したように両手を胸の上で叩いて言った。
「そうだっ。麻雀、しよっ?」
「え、麻雀?」
「うん。ここのお店、奥に個室の麻雀スペースがあってね? 後で軽く打とうかなって思ってたの!」
いきなり何を言い出すんだこのエロ可愛い人は、と思ったが、そうだったのか。まあ、それほど悪いチョイスではない。
麻雀をすれば、相手の心や、考えていることが何となく分かったり、打ち解けてしまったりすることがある。プロ雀士である俺達にとって、麻雀とはただの競技の一つではない。
「……そうですね。オーケー。そうしましょう」
「決まりだねっ☆ それじゃあ店員さん呼ぼっか!」
良子も頷くと、はやりさんは立ち上がって早速店員に雀卓が使えるかを聞きに行った。
結果は大丈夫だったようで、俺と良子も直ぐに立ち上がり、はやりさんの後に続くと、そこには自分の家のワンルームほどの大きさの個室に、慣れ親しんだ自動卓が置かれていた。
3人で席につく。卓をサイコロで決めることは敢えてせず、皆思い思いの席に座った。
「えへへ……3人で打つの、久しぶりだね」
「……そうですね。前に打ったのは3ヶ月ほど前でしたか」
「あー、確かそうだったかな……」
その時は、俺が最下位だった。いや、というか大体いつも最下位。最下位以外を取ったのは、2回か3回くらい。それも、良子がプロに入って直ぐの時の事だ。
今では良子も立派なトッププロ。高校時代よりもかなり腕を上げているし、はやりさんの方は言うまでもない。
俺では勝てるはずのない2人。持つ者と、持たざる者の差。
今回も、俺はそれを痛感することになる。
──はずだったのだが、
「オーラスだね」
「はやりさんがトップですか。なんとかまくりたいところですね」
「いやぁー……相変わらず容赦ねぇなぁ……」
三麻を始めてしばらく、オーラスとなり、今の順位ははやりさんが一位で良子が二位で8000点差。
そして俺はそこから更に1万点ほど下がり、最下位。
ここまでいつも通りだ。
故に今回も負けるなぁ、と気軽に打っていると、配牌が終わる。それを確認して心で思う。
……九種九牌かぁ……何とも言えねぇー。
三麻だし、さっさと北抜いとくか、とも思うが、どうだろう。逆転するならそれなりに高い手を作らなければならないが。
……ダメ元で国士でも狙ってみっか……。
九種九牌とはいえ、国士無双はそんなには出てこない。まあ役満の中ではそれなりに上がりやすい方かもしれないが、プロになってから役満は一度も上がったこともないのだ。学生時代や非公式のこういう対局でならそりゃ和了ったこともあるが、やはりプロ相手だと中々厳しい。
そこでふと、何かが降りてきたように思い出す。
そういえば、さっきの老婆が言ってたな……役満で上がると、女性から惚れられるとか──はっ、そんなことあるかよ。
あったら苦労しない。というかもしそんなオカルトがあるなら全力で役満だけを狙う。役満狙いはキツいとはいえ、それだけを狙い続ければ絶対に無理というほどでもない。今まで何度も対局してるし、一回くらいなら可能性があるかもしれない。
そしたら今頃、この2人は俺の性奴隷も同然な訳だが……。
我ながら、どうしようもない妄想をしてしまう。まあそういうエロ同人やAVの設定みたいなオカルトがあればの話なのだから仕方ないだろう。少しくらい考えてみることは。
この世にオカルトがあることは知っていても、自分が持っている訳もなければ、そんな都合のいい力がある訳でもない。
でもまあ、最後にこの2人相手に役満決めて終わるってのも、気持ちいいかもな……。
と、珍しく哀愁を感じるようなこと思ってしまう。自分でも引く。気持ち悪い。俺はそんなキャラじゃないだろう。
ともあれ対局は進む。山からツモり、一九字牌以外を捨てていく。
──するとどうだろうか。
……マジで来やがった……国士無双十三面待ち!
七巡目にして最強とも言える待ちが完成してしまった。国士無双で特定の牌を待つ場合だと、なんだかんだで上がれないことも多いが、十三面待ちは十中八九上がれる。どんだけ振り込まないことで定評のあるはやりさんやオカルト満載の良子とはいえ、この上がりを阻止することは中々難しい。
なにせ振り込まなくとも、さすがにツモる。ここまで来たらツモる運命なのだ、と思うとやはり、
「──ツモ! 国士無双、役満! まさかの逆転勝ちっ!」
「!」
「!」
柄にもなくテンションが上がってしまう。いや、それほどにこの2人相手に役満。そして逆転勝ちなど凄いことなのだ。
最後の最後にきっと、神様が恵んでくれた奇跡だろう。いや、うん。これで少しは胸を張って生きていける。あのトッププロにも勝ったことあるんだぜ、と。
「いやぁ、最後の最後にこれとか、さすがに出来すぎな気がしますよねぇ──って、どうしたんすか?」
喜んで調子に乗ってみたのだが、2人の様子がおかしい。
役満をツモられて放心した? よく分からないが、2人がこちらを見て驚いたまま固まっている。
なんだろう。そんなに俺が役満を上がること、もとい、2人から勝ったことが珍しいのだろうか。いや、確かにそうなのだが、そんなに驚かれるとさすがに傷つくな……どんだけ雑魚だと思ってたんだ。雑魚だけど。
「ちょっとお二人さん? そんなに驚かれると、さすがに俺も傷つくんだけど……」
「──え? あ、うんっ、その、ご、ごめんねっ☆ 役満なんて久しぶりに上がられて……はやり、びっくりしたなー! ね、よしこちゃん?」
「──あ、はい……そうですね……仁も、やれば出来るじゃないですか。いつもこうなら今頃はトッププロですよ」
「それが無理だからプロ落ちしたんだよ! 心を抉るようなこと言うんじゃねぇ!」
中々に傷つくことを言ってくれる。確かにいつもこうならプロ落ちすることなんてなかったが、麻雀はなんだかんだで運要素も大きい競技。今のが実力ではなく、ただの運であったことくらいは理解している。
2人はそんなに俺の役満が珍しかったのか、妙に俺の方も見ていたが、それほどか? 良子なんかは子供の時に何回も見てると思うが。
「……東郷くんが勝ったし、今日はここで終わりにしとかない?」
「……そうですね」
「あれ、いいんですか? 俺に気を使うことはないですよ? まだ始まったばかりですし、もうちょっと打っても……」
「ううん、大丈夫! その……あ、東郷くん、今日は車? 出来れば、はやりをホテルまで送ってほしいんだけど……大丈夫?」
「……私も、送ってください」
「ああ、はい。それは勿論。じゃあ、行きますか?」
どうやら二人共、俺に気遣ってここで終わってくれるらしいが、いや、調子が出てきたのでちょっとくらい続けてもいいとは本気で思っていた。最後に負け越すのは分かりきっているが。もう少し調子に乗らしてほしい。
だがまあ、いつものこととはいえ、はやりさんにホテルまで送ってほしいと言われると、男としてちょっとテンション上がる。周りに自慢出来そうだ。ふふん、俺、瑞原はやりとホテルに入ったことだってあるんだぜ? ──普通のホテルだけど。しかもただの送り迎えだけど。悲しいが、それ以上を望めないのは理解しているので妄想で我慢しておく。
故にお会計を済ませて(一番年上で稼いでいるからとはやりさんが。女性に奢らせる甲斐性のない俺を蔑むような眼で店員が見ていた)外に出ると、車があるパーキングまで移動し、2人を車に乗せて、2人が泊まっているホテルへと向かった。
だが、
「……良子に、はやりさんも、大丈夫ですか?」
「う、うんっ。大丈夫だから気にしないで。あはは……今日はちょっと熱いかも……」
「そうですね……今日はホットな感じです……」
いや、年も明けたとはいえ、まだまだ真冬の季節だ。最近の日本は温暖化だったりするし、今日も確かに比較的暖かい方だとは思うが、さすがに熱くはない。
だがまあ、もしかしたら規格外のおっぱいを持つ2人だし、熱かったりするのかもしれない。熱が籠もってるというか。熱々のはやりパイとか、物凄く美味しそう。むしゃぶりつきたい。そんな感じのおかし作って商品化したらネーミングだけで爆売れするんじゃないだろうか。麻雀連盟、はよ。なんなら俺が陣頭指揮を取ってもいい。
「……んっ」
うっ、おお……!? 今日は最高か?
車を運転しながら、2人のことを心配していると、助手席に座るはやりさんが胸元をぱたぱたと掴んで空気を入れるように動かし始めた。
その動きに合わせて、はやりさんのそのたっぷりと実った胸がたゆたゆと揺れるし、上から深い谷間を覗かせてくれる。
シートベルトを装着し、パイスラ状態になったはやりさんの胸は、よそ見運転を余儀なくされるほど強力で魅惑的だ。危ないから今はやめて。
しかしいつもながら無防備だが、今日は特に無防備だ。あんまりエロいところを見せられると、未練が凄くなるからやめてほしい。
そんなことを考えていると、ホテルが見えてきた。名残惜しいが、はやりさんとの時間もここまで。良子とも、これからはあまり会わなくなるかもしれない。
だがそんな時だ。はやりさんがこちらを見て、
「……あの、東郷くん。良かったらちょっと上がっていかない?」
「えっ? 上がってって、ホテルの部屋にっすか? さすがにそれは……」
最高だが、下心を出すとアレなので難色を示す。好意のない相手からの下心ほど気持ち悪いものはないって昔学んだ。悲しい。
だが後部座席に座る良子も、
「グッドですね。もう少し、喋りたかったところです」
「……良子まで珍しいな。いやまあ、そこまで言うなら……」
と、俺は結局了承する。
最後の最後くらい、こんな時間があってもいいだろう。正直、手を出せない状態で部屋に上がるとか、ただの拷問でしかないのだが。
俺は自分で自分に許可を出し、ホテルの駐車場に車を止めて上がっていくことにした。
「中はこんな感じなんですね」
「少し広すぎるかな?」
「1人だと、もうワンランク下でも十分ですよね」
部屋に着くなり、その部屋の広さ──とはいえ、めちゃくちゃに広い訳でもないが、1人で使うには広すぎる部屋に驚く。
やはりトッププロにもなると違うものだな……と、染み染みと思う。俺も、順調に成績を上げて一軍になっていれば、軽い地方巡業でもこんな上等な部屋に泊まれたのだろう。
俺ははやりさんの後ろに続いて部屋に入り、近くの椅子にでも腰掛けようとして、止められる。何事かと思うと、はやりさんがベッドに腰掛け、その横をぽんぽんと叩いて、
「東郷くん、こっち座って?」
「っ……」
思わず喉を鳴らしてしまう。
ベッドに座るはやりさん。普段から身長差で見下ろす形になる華奢で可愛い人だが、こうやってベッドに座った彼女を見ると、それだけで堪らない気持ちにさせられる。
しかもベッドに座り、隣に座ってと誘われるなど、今直ぐにでも押し倒したいくらいだ。
だがそれは出来ない。というか背後から、
「……何をしてるんですか。早く座ったらどうです?」
「あ、ああ」
良子がいつもの調子で、こちらを軽く押して座るように促す──が、いつもなら無防備なはやりさんを注意するところな気もする。
しかしまあ、たまにはいいのかもしれない。3人だと、間違いが起こることもないと考えているのやも。
だがそう思ってはやりさんの隣に、少し距離を置いて座ると、はやりさんは即座に距離を詰めてきた。
「よいしょっと」
「っ」
距離が近い。近すぎる。
はやりさんが詰めてきた距離は、まさしくこちらとの距離を埋めるもの。太腿がくっつき、こちらの腕と彼女の肩が触れ合う。
というか、その大きな膨らみも、後少し近づくだけで押し付けられそうになり、
「それでは、私はこちらに」
「っ……」
ちょっとだけ身体を逸らそうとすると、今度は良子が自分の右隣に座ってきた。
しかも、はやりさん同様にかなり距離を詰めて。その引き締まった太腿が触れ、はやりさん程ではないが、それでもかなり大きな胸が押し付けられそうになる。
……く、あっ……これ……なんだ……?
2人の身体の感触。女性らしい柔らかさと瑞々しさに満ちた感触を感じ、2人の匂いまでもが鼻孔をくすぐる。
触れ合う距離に誰もが羨むような爆乳美女を侍らせるような形になり、身体が勝手に興奮しかける。
変な、引き攣った笑みが出そうに、いや、実際に出てしまいながらも、俺は平静を保つようにして2人に声を掛けた。
「い、いやぁー、はやりさんに良子も、距離が近いですね? なんかキャバクラにいるみたいな気分ですよ」
ちょっとふざけた感じでそう言ってみたが、
「……キャバクラ、行ったことあるんだ……」
「……初耳ですね」
「……あ」
しまった。つい口を滑らせてしまい、2人のジトッとした視線を感じる。それから逃れるように、
「い、今のは言葉の綾……ってことにならないですかね……?」
「……キャバクラって、女の子とお酒呑んだりする、ちょっといかがわしいお店だよね」
「は、はい……まあ、概ねそんな感じで……」
別に普段から通ってる訳じゃないが、たまにはそういう気分の時もある。だから許してほしい。
だが2人のその視線は逸らされることはなく、
「……女の子と、エッチなこととか、したいの?」
「うっ、それは……」
「……仁はスケベですからね……」
「よ、良子。余計な事を言うな」
俺がスケベっていうか、男性が皆スケベなんだ。だから俺は悪くない。
というかいい加減にしないと襲ってしまう。2人を両手で抱きしめてそのまま押し倒し、妄想の中でしか出来ないような欲望の限りを尽くしたいと思ってしまう。
正直、もう己の股間は2人の爆乳美女の無自覚(?)な誘惑に半勃ちしてしまっている。
股間がムズムズしてしょうがない。このままだと完全に起立してしまうだろうし、はやりさんも、エッチとか口に出すのはやめてほしい。破壊力が凄い。牌のお姉さんの顔を赤らめて上目遣いしながらの、エッチなことしたいの? 発言は、冗談抜きで売れる。抜ける。その発言を聞いただけで、血が集まるのが分かった。
というか、さっきからのこの状況、まさかなのか?
「……俺は……まあ、どうでしょうね……まあ人並みにと言いますか……全く考えないといえば、嘘になりますか……」
一応、誤魔化しとしてそう言った。
だがその直後。
「……それじゃあ、その…………はやりとか、どうかな?」
「え?」
「! はやりさん……!」
なんか、凄まじいことを耳にした。直ぐには理解が及ばない。
だが次に来る感触には、否応にも理解させられた。
「……はやりは、東郷くんのこと……好き、だよ……?」
「え、あ……っ」
はやりさんは首に手を回し、少しずつ近づいてくる。
ゆっくりと抱きつき、真っ先にその盛り上がった部分が胸板に押し付けられ、柔らかく形を変えて押し広がる。
ドクドクと股間に血が集まっていくのを感じながら、近づいてくるはやりさんの顔。とても綺麗で、可愛く潤んだその表情。それが近づき、
「はやりと……エッチなこと……しよ?」
そう言って、はやりさんは俺の唇に、その柔らかく瑞々しい唇を、押し付けてきた。
えっちぃのは次回から。一応ストーリーがあるのは、その方は個人的にエロく感じるからなので、ご都合主義感満載のストーリーとなります。