※この作品はR-18です。

役満で上がると惚れられる   作:黒岩

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疑惑のデート

 どんな鈍感な男でも、女から二人きりで出かけようなんて言われたらさすがに気づくだろう。

 まさかこれを、デートじゃない、なんて言う男はいない。いたら馬鹿だ。多分、漫画とかに出てくる朴念仁系の主人公。性欲ないんじゃねーのって思っちゃうくらいの奴な。あれ見る度にちょっとイラってする。というか、女の子ももっと怒った方がいい。女扱いされてないってことだから。さっさと見限っとけ。

 とまあ、俺の個人的な感想は良いとしても、少し困ったことはある。こっちなら俺も理解出来るし現在進行系でお悩み中だ。

 即ち──デートはデートでも、本気のやつなのかってこと。

 デート。それはまあ男女二人で出かけて、楽しく遊んで、親睦を深めるような行為のことである。

 当然、ちょっと気になる相手や、一緒に出かけてもいいかも? とか思う程度には、相手に好意や信頼を置いていなければデートというものは成立しない。嫌いな相手ではそもそも一緒に出かけてすらくれないだろう。そういう意味で、多少の好意があることは疑う余地もない。

 だが、デートというものは、実はそれほど重いものではない。軽くもないが、それだけで恋愛的な好意を持っていると浮かれるには早すぎるのだ。

 恋人同士でも何でもない男女が行うデートというのは、ちょっとしたお試しのような要素も含まれている。

 つまり、この人と付き合ってもいいのか、この人は自分にちゃんと好意を抱いているのか、などと自分と相手をテスト、確認のような意味合いを持つのだ。

 実際に二人で出かけてデートしてみて、色々と合わなくて楽しくなかったり、そもそもそんなに好きじゃないなと気づいたり、甲斐性が無かったり、そもそも人間的におかしいと思ったり、お互いに相手を見極め、駄目ならそのままお友達のままっていう話もよくあることだ。

 故に、デートに誘われたくらいじゃ舞い上がるには早すぎるのである。それを分からずに、デートだから両思いみたいなもんだと思ってがっついて失敗する男もいるだろうから、その辺りは気をつけた方がいい。

 まあ両思いだという可能性も高いが、それでも少し落ち着いて相手や状況を見た方がいい。そして確実に見極めて適切な行動を取れば、ゴールは目前である。後は少しの度胸があればいい。

 ……なんて、色々と講釈垂れてみたが、そう上手く行けば苦労しないだろうな、というのも理解出来る。

 まあ俺なんかは、デートは……キャバ嬢と飲みに行ったくらい? それくらいしか経験がない。結局何も無かったし。

 後は良子やはやりさんとかとは二人で出かけたことはあるが、良子とはそういう感じじゃないし、はやりさんとも食事に行くくらいだった。故にこうやってちゃんとしたデートをするのは、初めてといえば初めてである。そう考えるとちょっと緊張しそうになるが、まぁ俺だってもう大人である。女性経験だってある。別にデートくらいでドギマギするほど初心ではないのだ。

 だが心情的には不安というか疑念が渦巻いている。まあオカルトのことだ。

 今回デートに誘われたのは、果たしてオカルトの発動で好意を抱かれたからなのか、それとも本当に偶然、琉音が行けなくなったから、別に俺ならいいかと軽い気持ちで、二人でちょっと出かけてみようって思った程度なのか、それを見極めなければならない。

 問題なのは栞が元々、二人で遊園地に行ってもおかしくないくらいには俺が信頼されてるだろうってことだ。

 これが元々嫌われてたり、明らかに初対面くらいの状態で誘われるなら惚れられたと分かりやすいのだが、普段の状態でも、栞ならありえる。ありえるからこそ、オカルトが効果を発揮してるのか分からない。

 だから俺には慎重かつ大胆な行動が要求される。オカルトが発動していると見ればこっちも相手を窺う必要もなく、俺の事好きなんだからこっちからアプローチを掛けるみたいなことをしても喜んでくれるだろうが、そうでない場合だと嫌がられる可能性もあるので、あんまり直接的な行動は取れない。かといって、何もしないままだと真偽が分からないしな、うん。

 だからまあ、俺はある意味、普通のデートのような緊張感を持って臨んでいた。臨んで、今は待ち合わせの最中なのだが、

 

「遊園地、遊園地ね……最後に行ったのいつだっけか……」

 

 そう、これから向かうのは千葉にある有名なテーマパーク。千葉の癖に東京の名を持つアレだ。え? アレって何かって? おい馬鹿やめろよ。分かってんだろ? 名前を言ってはいけないあの方だぞ。あの方っていうか場所の名前だけど。名前を言ったら居場所が特定されて恐ろしい目に遭うあそこのことだよ。ハハッ。だから言えないんだ。

 俺も昔、子供の頃に連れて行ってもらった憶えが微かにあるくらいで、殆ど憶えてはないが、一応行ったことはある。恋人や家族にも大人気の場所だ。いや、作品は大量に見たんだけどな。家にビデオとかあったし。なんだかんだで面白いからな、今見ても。たまーに懐かしくなって見たくなる。

 なんかそう考えると普通に楽しみだな。あの懐かしのキャラクターに会える。幼児退行したい気分。色んな意味で。

 しかし、待ち合わせの人気スポットで待ち合わせしてる訳だが、なんかあれだな。こういう場所って皆浮ついてるし、恋人ばっかでイチャついてるし、ちょっとイラってするな。なんかマウント取られてる気がする。被害妄想。だがお前らが俺相手に優位に立てるのも栞が来るまでだ──とそんな噂をすれば遠くから栞が。よし、お前ら震えろ。あれが俺のデートの相手だ。

 

「……せ、先輩、お待たせしました……! その、遅くなってごめんなさい」

 

「……いや、俺も今来たところだから気にするな」

 

 と、デートでありがちな受け答え。別に遅刻してる訳ではなく、約束の時間の15分前にはやってきた栞は、俺がいるのを見て少し小走りで駆け寄ってきた。

 私服の栞は、やっぱり可愛かった。俺は思わずまじまじと見つめてしまう。

 グレーのチェック柄で丈が短めのコルセットスカートに黒のオーバーニーソックス。昨日と同じく、その太腿の絶対領域が眩しい。昨日は白だったか。それにやっぱりスタイルが良いからか、身体のラインが際立つような服を着ても似合うのだ。

 上はノースリーブニットで、肩から掛けるタイプの鞄が──というか、パイスラになってる。パイスラである。パイスラじゃないか! 最高すぎて三回思った。

 栞の、JKとしてはかなり大きいおっぱいが、ただでさえノースリーブニットでなんか強調されてエロいのに、さらにそこにパイスラである。ヤバい。めっちゃエロい。あ、通りがかった男が今チラッと見たな。見てんじゃねぇよ。これは俺のだ。金取るぞこら。

 

「……今日の服も似合ってるな。さすがは栞。お洒落だな」

 

「あ、ありがとうございます。嬉しい、です……えへへ」

 

 ──は? クソ可愛い。何身体の前で手組んでもじもじとしながらはにかんでんの? 腕を前で組まれるとおっぱいの谷間が左右から腕に挟まれて余計に強調されてエロいんだけど? どうかって聞かれる前に、こっちから褒めてやったらこれだよ。恐ろしい奴め……。

 でもまだ分からん。これって惚れてんのか? 普段通りか、単純に二人で出かけるからちょっと浮ついてるって可能性もなくはないから確信が持てない。これで惚れてるってんなら腕でも組んでもらって、そのおっぱいを腕で感じたいところだが……いや、それだとちょっと股間が立ち上がりそうだし止めといた方がいいかもしれないけど。

 

「それじゃあ行くか。子供の時以来だからな。普通に楽しみだ」

 

「あ、そうなんですね。私は家族で3年くらい前に来ましたけど……でも、先輩と一緒ですし、私も楽しみですっ」

 

「……おお、そうか。ならせっかくだし、楽しまないとな」

 

 あれ? やっぱりこれ惚れてるのか? ヤバい。ユキとは別の意味で分かりにくい。何気に昨日久し振りに会った訳だし、以前からこうだった気もするからちょっと分からん。平常心で対応してみたが、微妙に会話が成立してない気もするし、俺もちょっと混乱してるかもしれない。

 ともあれ俺は栞を伴って、テーマパークへと向かった。周囲の独り身の男から、先程の俺のような視線が来る。やっかみの視線。だが今の俺は無敵。見ろ、俺のデート相手は巨乳JKだぞ。しかも超絶可愛い。お前らの嫉妬の視線など、一瞬で優越感に変換される。なるほどな、デートにもこういう楽しみがあるのか。なんか間違ってる気もしないでもないが、まぁ、彼氏や彼女を自慢したくなる奴らの気持ちが分かる。今度からSNSでそういうの見かけても優しい気持ちになれそう、多分。いや、おっぱい美少女だったら嫉妬するな。だから見ないようにしよう。

 とにかく、そういう訳で俺と栞は遊園地へと向かっていった。

 

 

 

 

 

「それで、琉音はどうしたんだ? 仕事か?」

 

「あ、はい。急に仕事が入ったそうなんです。それで、今日は二人なので……こういうところに行くのもどうかなと」

 

「ほー、そうか。あいつも、ちゃんとプロの仕事してんだな。てっきりバックレて来たのかと」

 

「あはは……琉音さんが聞いたらまた怒りますよ? もう」

 

 栞が苦笑しながら俺を嗜める。が、その様子も楽しそうであった。

 ……というか、今日はまた一段と可愛く見えるな……。

 いや、普段も可愛いんだが、今日のよそ行きの、ちょっと大人っぽい装いを見てると、女子高生の瑞々しさと大人の色気のようなものが入り混じってるような、正に卒業を控えた今の栞のような魅力を感じる。むき出しの肩とか超エロい。抱き寄せてスリスリしたい。こんな美少女特有の白いスベスベの肌、ほっそりとした無駄な肉がついていない肩や腰の間には、重量感たっぷりの爆乳があって……うーん、やっぱ堪らんな……。

 そんな子とデート。それを実感すると口元がだらしなくニヤけてしまいそうである。しかも俺に惚れてるかもしれなくて、そうだとすれば俺の女になるのも目前……ともなれば、優越感が凄まじい。

 だが確実ではないし、ずっとただ駄弁っている訳にもいかない。色々とアクションを起こしてみなければならないが、

 

「わぁ……人、結構いますね?」

 

「春休みシーズンはまだとはいえ、さすがだな」

 

 遊園地の園内。人はそれなりにいた。

 とはいえ、GWやクリスマス、夏休み冬休みの長期休暇や祝日に比べれば空いていると言えるだろう。

 ただそれでも人が多いのはさすがの知名度、集客力といったところか。春休みはまだもうちょっと先とはいえ、今年度ももう後一月だし……いや、理由はよく分からんが、意外とこの時期は人がいるのかもしれない。

 やっぱ地方の遊園地とは違うな、と思う。俺の地元、九州と言えば、三井グリー○ランド。知る人ぞ知る熊本県の遊園地だが、これは多分、九州民か修学旅行なんかで行ったことある奴しか知らない。そこそこちゃんとした遊園地なんだけどな。昔友達と3、4階建てのお化け屋敷を大声で駆け回ったり、水を被った状態でマイナス30度の世界みたいな、名前は忘れたけどそういうのが体験出来る施設で髪の毛が凍って出てきたのを見て爆笑した憶えがあるが、今考えるとやべー奴らだな……。

 ただまあ、こういう人混みは……まぁ別に好きじゃないし嫌いだが、我慢出来ない程でもない。

 プロの仕事やってると大勢の人の前に出ることも多いしな。後は並ぶのも慣れてる。俺、行列が出来るタイプの飯屋とか、意外と並ぶのが苦じゃないタイプだからな。特に人と一緒なら延々と駄弁ってるだけで時間経つし、勿論好きじゃないが我慢は出来る。

 ただまぁ、なんだ。この状況を利用しない手はない。

 俺は柄にもなくちょっとドキドキしながら栞に何気ない感じを装って言う。

 

「……せっかくだし、手でも繋いでいくか」

 

「! て、手ですか?」

 

「ああ、まぁ、嫌ならいいが……」

 

 と、聞き返されると思わずそんな逃げ腰になってしまう。いや、うん。つい気を使っちゃうんだよな……。

 だが栞は少し驚いた様子でいたが、俺がそう言ったところで勢いよく、

 

「つ……繋ぎます! せっかくですから……」

 

「お……おお。それじゃあ……」

 

「あ……」

 

 栞の左手を右手でそっと握る。栞の手は女の子らしくスベスベで華奢で、触るだけでも気持ちよかった。

 しかもこちらを頬を染めながらチラチラと見て意識してるようで、

 

「……よし、それじゃあ行くか」

 

「は、はいっ。行きましょう!」

 

 二人で園内を進むが……これはどうなんだ? さすがに確定か? 惚れてない相手に対してこんな感じになるか? 

 栞の手はスベスベで体温が感じられて気持ちいいが、ちょっぴりしっとりともしているようだった。いや、これ俺の手汗か? どっちだ? それともどっちもか? 

 分からないが……とりあえず、俺達は手を繋いだまま先に進む。すると早速、

 

「わっ、先輩! ○○ッ○ーですよ! ○○ッ○ー!」

 

「あんまり連呼するなよ……色んな意味で狙われるぞ」

 

「えっ?」

 

 栞が頭に疑問符を浮かべる。うん、まぁね。はしゃぎたくなる気持ちは分からんでもない。

 ただこういうマスコットってこうしてると──絶対寄ってくるよね。

 

「──!」

 

「あっ、こっち来ました!」

 

「近くで見ると意外と大きいよな、この着ぐるみ」

 

「……! ……!」

 

 マスコットの着ぐるみが大げさに手や首を振って着ぐるみじゃないと訴えている。こういう身振り手振りなんかもきっちり練習して合格しないと駄目だったりするんだろうな……ドリームランドの裏事情はあんまり考えない方がいいな、うん。

 思わず、給料幾ら貰ってんの? 手取りは? ボーナスとかある? とか聞きそうになったが、さすがにそれをすると中の人が困るので自重する。いや、中の人なんていないんだ。うん。彼らは本物のドリームランドの住人。そういうことにしておこう。

 

「せっかくだし、写真でも撮ってもらうか?」

 

「あ、私撮りたいです! 先輩、一緒に撮って貰いましょう!」

 

「ああ。……お願いできますか?」

 

「──!」

 

 グッ、とマスコットがサムズアップ。そして○○ッ○ーは手招きして遠くの仲間を呼んだ。○○ル○だ。アメリカの大統領ではない。声がヤバいアヒル野郎だ。いや、他のキャラクターもそうだが、あんな声どうやって出してるんだ……。ちなみにイヌ公は他の客のお相手中。大変そうだな。なんか子供にウザ絡みされてるし。こらこら後ろから叩いたり中をどうにかして覗こうとするんじゃない。お前のその軽率な行動の所為で次の日には魂が入れ替わるかもしれないんだぞ……と心の中で注意したところで状況は変わらない。子供ってのは残酷なものだ。イヌ公がこっちに助けを求めてる気がしたが俺には何も出来ないんだ。悪いなイヌ公。精々、次の転生先でも探しておくんだな。

 その間、平和なこちらはとりあえず、栞の携帯を○○ル○に渡して撮ってもらうことに。そうして、俺と栞は並んだのだが、

 

「!」

 

「え? なに? もっと近くに寄れって?」

 

「あ、はい。……これくらいでいいですか?」

 

「っ……」

 

 栞が頭を近づけてきた。ふわっと栞の髪からほのかな甘い香りが。俺は一瞬動揺したが、直ぐに気を取り直して写真撮影。笑顔を浮かべろという命令がアヒル野郎から下されたので、一応笑顔を浮かべる。まあこれでも人前に出るプロだ。普通に笑うくらいは出来る。そうして写真を撮ってもらうと、ようやくその香りから解放された。

 

「なんというか、いつ来ても撮っちゃいますよね。こういうの」

 

「そうだな……そして、いつも切ない気持ちになる」

 

「えっ? ど、どういう意味ですか?」

 

「気にするな。俺達はただこのドリームランドを楽しめばいい。思う存分な」

 

「? なんだか意味深ですね……?」

 

 栞は分かっていないようだったが、分からなくて正解だ。多分、子供の対応を上手く捌けなかったイヌ公は後で先輩から注意されるんだろうな。もしくは同情されて優しい言葉を飯とともに奢ってもらえるか。出来れば後者であることを俺は願う。

 ……まあそれはそれとして、再び栞と手を繋いで進む。うん、やっぱ気持ちいいな。それに、美少女とこうしていると意味もなく気分が高揚してくる。美少女のバフ効果ってのは凄いよな……。

 そして、俺達は普通にデートを楽しんでいくのだが、

 

「先輩、次はアレ乗りましょう!」

 

「おー……懐かしいな。子供の時に乗った気がする。よし、行くか」

 

「はい!」

 

 まあ、特に言うことはない。いやあるけどない。栞が可愛いってくらい。それと俺が段々と普通に楽しくなってきたってくらいだな。

 いや、こういう遊園地って行く前はそんなに気乗りしないんだけど、行ってみるとやっぱり楽しいもんだ。俺はまぁ、出無精だからな。用事がなければ外に出たくはない。別に家の中に居続けても苦じゃないタイプだし。かといって人に誘われたり外食や好きなもののためなら出れる、普通によくいるタイプのどっちかっていうとインドア派なタイプだ。運動とかも好きなんだけどな。ただやるまでは面倒って思っちゃうよな。

 ともあれ、普通に楽しみはじめていたんだが、

 

「それじゃあ、昼食買ってくるから席取って待っててくれ」

 

「はい、ありがとうございます先輩。えっと、お金は──」

 

「学生に払わせるほど駄目な大人になったつもりはないぞ。ってわけで俺に奢られろ。大人しく座っとけ」

 

「……ふふ、もう……相変わらず強引ですね。分かりました」

 

 栞を席に座らせ、俺は園内のフードコートで昼食を買うことにする。栞の食べたいものを聞いて、俺の方は……まぁ、適当でいいか。ここって意外と色々あるんだよな。まさか中華料理まであるとは。後、隣だとカレーが美味いらしい。カレーもいいな。しかし、この後のことを考えるとあっさりしたものの方がいいか? 一応夕食も一緒だろうし。

 とかなんとか考えて歩いていると……途中で、目についた少女がいた。

 

「むぅ~……ない、ない~……私のお小遣い……」

 

 ……なんだあの金髪少女……。

 辺りを探して歩いている……中学生、か? いや、高校生かもしれないが。かなりの美少女が何やらうーうー唸りながら不満顔で辺りを見回っていた。

 金髪の長い髪に、妙にあざといような、自分のことを可愛いと思ってそうな自信ありげなファッションの美少女だが……なんだろう。どこかアホっぽい匂いがする。

 だが微妙に困ってる様子でもある。財布でも探してるのか? いやまあそれならさっさと係員にでも伝えた方がいい気もするがな。

 俺はなんとなく、そこで立ち止まる。いや、こういうのはなんだろう。プロの癖なんだ。人前に出るプロ雀士。実質芸能人のように人から注目される俺達なんかは、こう言ってはなんだが、普段の生活でもちょっと粋な行動を、というか、見られてる前提で行動しろと言われていた。

 まあ昨今、別にちょっとアレなことをした程度でバッシングを受けるような厳しい風紀の社会ではないとはいえ、良いことをした方が良いには決まってる。特に子供や老人相手には、優しくしておくのがいい。

 だからまぁ、俺は声を掛けることにした。明らかに困ってるだろうしと善意で、

 

「……ちょっといいか?」

 

「ふぇ? え、何? ナンパ? ──え~? 幾らあわいちゃんが超可愛いからって、いきなりそういうのは~……うーん、どうしよっかなぁ~?」

 

 は? なんかいきなりドヤ顔で調子に乗り始めたんだが。何この子。やっぱ馬鹿なの? 

 と思ったが、まあいきなり声を掛けたらそう思われるのも無理はないと思って告げる。出来るだけ優しく、

 

「いや、財布でも落としたのかと──」

 

「うーん。でもおにーさん、顔立ちは悪くないけど、目の下のクマは凄いし、なんかやさぐれたホストっぽい! それに麻雀も弱そうだし、可愛すぎて麻雀も強いあわいちゃんとは釣り合わないかなって。だからごめんなさい!」

 

「ナンパじゃなくて財布でも落としたのかって聞いてんだよっ!」

 

 声を掛けただけで振られる俺。というか、とんでもなく失礼な奴だった。誰が麻雀弱そうだ。プロとしては弱いが、強くはないだけで全体的に見れば弱くはない。だから中の上か下の上くらいの人が正しい。言ってて悲しくなるな……。

 ちょっとツッコんでしまったが、その少女には一応届いたようだ。小首を傾げたその少女が、

 

「え? ナンパじゃないの? こんなに可愛いのに?」

 

「可愛いからって声掛けてくる奴が全員ナンパだと思うなよ……自信過剰か」

 

「え~? だって私可愛いもん。可愛さレベルで言うと、美少女レベル100くらい!」

 

「……とにかく、財布か何かでも落としたんじゃないのか?」

 

「あっ、そうだった! ねー、財布見なかった? 私みたいに可愛い感じのやつ」

 

「その説明じゃ分かんねぇよ……」

 

 やっぱりこの少女は馬鹿なのかもしれない。いや、中学生ってこんなものだろうか。妙に自己評価の高い奴だが、美少女であることには違いないので何も言えない。

 俺は溜息をつきつつ、

 

「というかお前、1人なのか? 親か友達は……」

 

「あー、うん。友達と一緒に来たんだけどね。ちょっと喧嘩しちゃって皆どっか行っちゃった」

 

 何気ない調子で言う少女。俺はげんなりする。

 

「喧嘩って……なんだ、アトラクション決めで揉めたのか? どっちが悪いか知らないが、すぐにでも──」

 

「ううん。なんか高校に入ったら麻雀部に入ってインターハイに出て~とか言ってたから、弱すぎて絶対無理だから諦めた方がいいよって言ったら怒っちゃった。ホントのこと言っただけなのにねー?」

 

「あー……」

 

 大分やべー奴だった。いや、うん。全部こいつが悪いじゃねーかって。

 ただなんだろうな。俺はあまりそれに強くは言えない。昔の俺も似たような発言を部内や他の格下に言い続けてきたしな。

 俺はなんとなく他人事とは思えないので、少し眉を顰めながら言ってやる。その少女に、

 

「……お前、それは事実でも面と向かって言わない方がいいぞ。因縁付けられて面倒だからな。思うだけならどうにもならないし、見下すのは心の中だけにしとけ」

 

「あれ? 怒らないんだ?」

 

「俺も学生時代は周りにそんな感じの事言いまくってたからな……経験者として言わせて貰うが、敵を作りすぎると学校でも浮くし、友達も出来ないから心で思うだけにしといた方がいい」

 

「へー、おにーさんもそうだったんだ。でも別によくない? 弱い人とか別にいなくなっても困らないし」

 

「……これでも元プロでな……いや、それはいいか、それより、現に今困ってるだろ」

 

「べ、別に困ってないもん! ──って、プロ? おにーさん、プロ雀士なの?」

 

「元だ。クビになったからな。だからそんなに強くはないが……弱くもない、はず」

 

 プロという言葉に反応したし、先程の発言内容からして、どうやらこいつは中学生で、麻雀をやってるみたいだな。それと、それなりに自分の実力に自信があるようだ。

 まぁ昔の俺みたいでなんとも言えないが、こいつは美少女だし、俺よりも勝ち組だな……とかどうでもいいことを考えてると、

 

「へぇ……元でもプロなんだ。うーん、それじゃあちょっとだけ釣り合いは取れるかな?」

 

「いや待て。なんか嫌な予感がするから先に言っとくけどな。俺は今デート中だ」

 

「えっ? それじゃあデート中なのに声掛けてきたの? ……うわぁ、おにーさんって結構アレな人なんだね」

 

「アレってなんだアレって。だからナンパじゃないって言ってるだろ」

 

 ただまぁ、複数の女性と関係を持ってるのは事実なのでこれもあまり強くは言えない。うん、やっぱアレな奴だな、俺。

 とはいえこれじゃ話が進まない。こいつ、話を脱線させるのが上手すぎる。なのでとりあえず俺はポケットから財布を取り出し、

 

「……とりあえず、これくらいでいいか」

 

「えっ!? 何、まさかあわいちゃんの身体をお金で──」

 

「違ぇよ! ほら、財布がないなら帰るお金とか色々困るだろ? 財布が見つかるかどうか分かんねぇし、そこまで面倒見きれないからとりあえず貰っとけ」

 

 と、俺は財布から5000円札を取り出して少女に突き出す。すると少女はその5000円札を不思議そうに見た後にこちらを見上げ、

 

「……これは私と縁を作って、後からフラグを立てようと……」

 

「意味分かって言ってんのか?」

 

「んーん、分かんない。フラグってどういう意味?」

 

「本当に分かんねぇのかよ……いや、まあいい。とりあえず、これだけあれば足りるだろ?」

 

 と、少女にお金を握らせる。すると少女はいきなりテンションが上がったのか、

 

「いきなり5000円貰えるとか超ラッキーだ! 私の財布に入ってたお金より多いし!」

 

「ならちょっと返せ。千円札と取り替える」

 

「じょ、冗談冗談。えっと、ありがとう?」

 

「なんで疑問形なんだ」

 

「ん~……まぁいいや。おにーさん、ありがとね! この5000円、将来100倍返しにして返すから!」

 

「あ、おい──」

 

 と、少女は最後に笑顔でお礼を言い、自信たっぷりな宣言とともに、そこから走って立ち去っていった。

 だが、なんとなくその最後の発言と、調子の良さに笑ってしまい、

 

「ははっ、100倍か……50万になるんだが、分かってんのかあいつ……」

 

 名前は分からないが──いや、“あわい”って言ってたか。ちょっとアホっぽいが面白い奴だな。中学生にしては胸もある方だったし。……いや、そこはどうでもいいか。相変わらず思考がブレないな、俺……って、かなり時間食っちまったし、さっさと昼飯買いに行くか。

 俺は栞とのデートに戻るために、再び売店へと足を向けた。




次回、デート終了。そして遂に待望の――といった感じです。最後の子は一体誰なんだろうな……(棒) あわあわあわいい。
皆の熱い感想、待ってる。
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