午後の練習が始まる時間までドキドキしながら待っていたが、一応、池田は練習に現れた。現れた。現れたのだが……。
「……ツモ。1000、2000」
「…………っ」
──午前中より、明らかに覇気がない。
今も俺のツモ和了りで親被りを食らったというのに、少しびくっとしただけでほぼ無反応で点棒を寄越してきた。
いや、まあ地味にこちらを睨んでいるから完全に意気消沈したという訳ではないだろう。
俺に怒られたことが気に入らないのか、だが正鵠を射ているのを自覚し、練習を真面目にしようとしているが、天江衣という脅威を思い出してやはりビビってるのか、それともやっぱりこちらがムカつくから集中しようにも出来ないのか……。
まあ、人の心なんて完全には分からないからな。どれが正解かは不明だが、色々と渦巻いているんだろう。それで吹っ切れて強くなってくれればいいんだが……今は微妙に調子を落として弱くなってるから困るな。
大人しくなったからこれで福路を落とすのには都合が良いのだが……その肝心の福路の方がな──
「……華菜、大丈夫?」
「っ、はい、大丈夫です……気にしないでくださいキャプテン。その、食べて眠くなってるだけですからっ……!」
「……そう……あまり無理はしたら駄目よ? 少しでも気分が優れないとか、調子が悪かったらいつでも言って?」
「……はい、ありがとうございます。でもほんとに大丈夫ですから」
「……華菜……」
と、こんな感じで池田を凄い心配してて何とも言えないのよな。
まあそれはそれとして役満来ないかな、と思って打っているが全然来る気配はないしな。普通に麻雀打ってるだけなので嫌でも池田の消沈振りが目立つ。
そのせいか久保さんが池田に喝を──入れるのかと思ったが、今はまだ遠巻きに見て眉間に皺を作っているだけだ。どうでもいいけど、久保さん、その顔と勢いが怖がられる原因だよな……周囲の部員達もいつ怒声が来るのかとビクビクしてるし。
いやもう、なんか騒がしい池田が大人しいってだけなのに、妙に空気が悪い気がするから困る。いや、そのことで福路がちょっと心配そうにしているのも原因か? やっぱキャプテンである福路が困っていると周囲もざわついてしまうのだろう。心情的に。全体的に打ち筋に勢いがない。
まぁ、そもそも風越女子の部員は強豪校なのにそこまで際立ってはいないというか……まあそこそこのレベルでまとまってはいるが、結構平凡なんだよな。牌効率なんかもそんなには悪くはないし、理論的なこともよく分かっている。
だがそれだけだ。どれも一流には程遠い。全国レベルではない。良くて地区予選決勝レベルってところだ。
やっぱ福路一強の次点で池田。それから大きく離れて……うーん、そうだな……このメガネっ娘の吉留さんや、後は何気にドムが部員の中ではマシってのが何とも言えない。どちらも手堅い打ち方をする良レベルの打ち手って感じ。強キャラではないけど、良キャラってレベル。例えるならそれくらいだ。
まぁ、昨日久保さんに言ったとおり、福路と俺と常に打つことで全体的なレベルを底上げ出来ると見ているのだが……なんだろうな。別に悪い指導をしてるって訳じゃないんだが、これで龍門渕に勝てるかって言うとそんな感じもしないから困るな……。
部員が多い弊害と言うべきか。80名近くを指導し、それなりに出来る面々に絞ったとしても10名程だとしても、打てる数には限界があるし、個人に集中して強化することが難しい。
これが有珠山高校の時みたいに5人ギリギリとかであれば、端から5人で団体戦を戦い抜くしかないのだからいっそのこと腹も決まるし、5人が強くなればいいだけだからそういう意味で楽ではある。指導もしやすい。
だけど団体戦に出るメンバーはランキング5位以内の部員とはいえ……変動だってあるし、正直福路と池田以外はいつ入れ替わってもおかしくないから誰を強化すればいいのかってのが中々見えてこない。
個人的には眼鏡ちゃんこと吉留かなぁ……俺の経験上、美少女って高確率で麻雀強いし、どうせ指導するなら可愛い子が良い。完全にえこひいきになるが、それでも吉留は現状ランキング3位だし、指導するのはおかしなことじゃないしな。これで胸があれば……全くないからなぁ……可哀想に……。
「……? えっと、なんでしょうか、東郷さん」
「……今の局の──8巡目か。捨てるならこっちの牌が良かったかもな」
「あ、はい。そうですね……私もそう思います。その、実は捨てる時に思ったんですが、他家とは点差があったし、危ない橋を渡る必要はないかなと思って躊躇してしまいました。結果、それで逆転されてしまいましたが……」
「後から河を見てみればこっちが最善だったと気づけることはよくあることだ。まぁ、何度も打って経験、記憶してけば自ずと正解を引ける確率も上がる。お前は判断力は悪くないし、セオリーに縛られずに自分の判断にもっと自信を持った方がいいかもな」
「そ、そうですか?」
「ああ、自信を持って頑張れよ。練習に費やした時間は裏切らないからな」
「は、はいっ! ご指導、ありがとうございますっ」
吉留が俺の指導にお礼を言う──まあ、何気にビビったというか、一瞬胸を見ていたことを気づかれたのかと思ったし、声を掛けられて内心焦ったが、なんとか誤魔化せて良かった。
それに今もそれっぽいことを言えたしな。うん、いや、別に嘘をついてる訳でもないし、ちゃんと思ったことを言ったまでだが、最後の言葉とかはあまりにも適当というか、無難すぎる。練習に費やした時間は裏切らないとか、別に誰でも言えそうな言葉だ。裏切らないとも限らないし。調子を上げさせるための言葉だと思えば安いものだし、別にいいかって感じだが、これでお礼言われるんだから指導って気持ちいい。プロ時代からそうだが、割と無難なこと言うだけでも感謝されるからプロの立場ってすごいな……って思う。
それと、そうだな。次は一応、ドムの整備でもするか。──さあ見せてもらおうか、風越軍のモ○ルスーツの性能とやらを……!
「ド……ゲフンゲフン、んんっ──深堀、今のは……高めを狙ったのか?」
「? ……はい。裏目に出てしましましたが」
「お前は堅実な打ち方が持ち味かと思ったのだがな。高めを狙って振り込むとは珍しいこともあるものだ」
「……ここで負けると順位が下がる可能性もあるので慌ててしまいました」
「慌てるな。下手に動くとかえって当たる」
「? はい。それは……そうかもしれませんが、どうにも迷ってしまい……」
「うろうろ逃げるより当たらんものだ。私が保証する」
「……私? ……いえまあ、確かに振り込まなければ……」
「どれだけ高い手を張ろうとも、当たらなければどうということはない」
「……あの、さっきから妙に格言めいてるのは一体……?」
「和了率の低さが、団体戦の結果を決める決定的差でないことを教えてやれ」
「…………なる、ほど…………?」
「では私はこれで失敬するよ」
「……あ、はい。ご指導ありがとうございます」
ふっ、まあこんなところでいいだろう。良い整備──アドバイスが出来たと思う。……ドムの名前、一応憶えてて良かった……ちょっと危うくそのままで呼ぶところだったし。
なんというか、こういう体型の奴を見ると、昔、風俗に行った時のことを思い出す。爆乳ボディが最高だと客引きによって連れてこられた俺を待ち構えていたのはドムが可愛く見えるほどのモ○ルスーツ。格ゲーで言うと女になったエド○ンド本田みたいなのが出てきたのだ。いやもう……あれは地獄だった……あれで俺はソープの詐欺度というか、当たり外れの厳しさを知ったのだ……ふっ、認めたくないものだな……自分自身の、若さ故の過ちというものを……ちなみに、この手のかっこいい名言はその時の客引きの兄ちゃんと仲良くなって沢山教えて貰った。
まあ実際、ドムこと深堀はこれでいい。長所を伸ばす方針だ。堅実なデジタルタイプの打ち手。それなら無理をすることなく、防御重視で行くのも手だ。
団体戦であれば、点数を増やすことも重要だが、それが無理なら被害を最小限に留めて次に回すことも重要である。深堀はエースが集まる先鋒や、大将に据えられることはないだろうし、堅実に次に回すことだって立派な戦術である。
──と、こんな感じで同卓していた奴に軽く指導をしたところで、久保さんの声が響いた。
「おぉし! 全員聞け! 今からはレギュラーも交えていつものランキング戦だ! 対戦表を張るからその通りに席に着け!」
バン、とホワイトボードを叩いて部員全員に久保さんがそう告げると、部室の空気が少しピリピリし始めた。ホワイトボードに張られた対戦表を皆が見て卓に着き始める中、俺も久保さんの元へ向かって問いかける。
「久保さん。自分は……」
「東郷さんも見て回ってくれますか?」
あ、はい、と久保さんの言葉を承諾。相変わらず、部員相手と応対の差が凄くてこっちが戸惑いそうになる。
まあしょうがない。部員同士の対局だし、少し休憩か。出来ればもうちょっと試行回数稼ぎたいところだったんだがな。
しかしこの部室のちょっと緊張したひりつくような空気には覚えがあるというか、校内ランキングを決める対局ともなればしょうがないだろうとも思う。
白糸台でもあったからな。というか強豪校だと結構ある。部内での対局戦績でランキング作って強いやつから順番に団体戦のメンバーになる──みたいな感じで。
まあ例外もあるっちゃあるけどな。その最たる例が白糸台。1番強い“チーム”が団体戦に出る方式はあまり他の学校では見ない方式だ。
名門である風越女子も、他の学校のように校内ランキングを作っているらしい。さっきまでは俺も入って打っていたし、普段の対局とは違うのだろう。俺に負けて勝率下がるのはノーカウントみたいなものだし、ランキング上位の面々と回し打ちをしてたのもあるしな。今からは全員、適当に振り分けて部員全員──それこそ入部したての1年生ですら、ランキング上位の2、3年生と打てる絶好の機会であるため、多くの部員が緊張しながらも試合のようなやる気を見せている……いや懐かしいな。俺もよくこういうのやったけど、ぶっちゃけ白糸台のランキングとかあってもなくても変わらないし、割とどうでも良かったんだよな。負けると調子に乗るだろうから全力でぶちのめしたけど。他の部員は超気合を入れていたはずだ。
とりあえず俺は福路や池田を見たり……後はそうだな。あまり見てない1年生の部員でも見てみるか。もしかしたら掘り出し物があるかもしれない。二重の意味で。ぶっちゃけ真面目な方の意味だと、まだ入部したてだから飛び抜けるような才能を持ったやつはいないとは思うが、一応は見ておくことにする。
程なくして対局が始まり、自動卓の音、牌を打つ音が連続する。俺は部室を歩き回って適当に対局を見て回るが、さてさて……。
「久保さん、一応ランキング見せてもらえませんか?」
「ん……ああ、そうですね。ではこれを」
と、久保さんは自らが持ってるファイルの内から3枚ほどの紙を渡してくれる。
それは順位が書かれた紙だ。1番上に福路美穂子、その下に池田華菜、その次に吉留未春……と、知った名前が書かれている。
……というか紙で管理してるんだな。ランキングって結構変動するんだろうし、データ管理すればいいのに。
久保さんって結構アナログなのか? タブレットがあれば一々印刷する必要もない気がするんだが……まぁ、そこは俺がケチをつけることでもないので何も言わないが、風越程の名門ならそれくらいの備品を取り揃えられていてもおかしくない気もする。
白糸台でも、最近はレギュラー用に何台か用意されていたりするし、強豪校ならその辺りの設備、備品にもお金が掛かっているものだ。
でも確かに、久保さんって見た感じ昔のヤンキーっぽいんだよな……高校時代を思い出す。やたらと絡まれたからな。よく知っている。
ちょっと聞いてみようかと思うが、聞くのは今じゃないな。タイミング的に。今はとりあえず真面目に見てやるとしよう。
まあ知った奴らはいいとして……うーん、なんかパッとしないな……別に見どころのある奴もいそうにない。
誰か1人くらい良さげな奴がいてもいい気がするんだが──お? でもなんか調子良さそうな1年はいるな。糸目の。2年、3年が集まった卓でトップか……ええと、名前は…………あれ? どこだ?
対戦表に書かれた名前と手元のランキングの書かれた紙を見比べてめくっていく。1枚目にはおらず、2枚目にもいない。3枚目となって……っと、ようやく見つけた。文堂星夏か。78位……微妙な順位過ぎるが、それにしては悪くない……か?
見た目は普通。そこらで見る女子高生だ。容姿に優れている訳ではないので対象外だが、単純に麻雀の腕の方だと意外とやれる方かもしれない。
少なくとも昨日今日と打ったランキング10位から5位辺りの奴らとはそれほど腕に差はないように感じるし、今も対戦してる相手はランキング20位程度の相手に快勝だ。まあ一回くらいならまぐれでもあり得るが、これが2回3回と続くとなると……ふむ、まあ今の所そこらの何の特徴もない連中よりはマシだな。
対局を終えて息を入れている文堂を見て、少し悩む。一応、何もしないのもアレだし、軽く声でも掛けてやるかと、
「お前、中々やるな」
「わっ!? と、東郷プロ……!?」
声を掛けると驚かれた。何やら動揺している。なんだ?
「……なぜそんなに驚いてるんだ? あと、俺はもうプロじゃないからな。プロと呼ぶ必要はない」
「あ、いえ……すみません。その、プロと会うことなんて殆どないもので」
「ほー、風越ならプロの1人や2人──って、いや、そういや1年か。入学したばかりならそりゃ会うことが少ないってのも納得だ」
「はい……ですから少し、び、びっくりというか、緊張しています」
どうやらプロと会うのは初めてらしい。まあ厳密にはもうプロじゃないので初めてはまだなんだけどな。
でも風越ならそのうち嫌でもプロと会うことになる気がする。というか、そうか……久し振りにこういう反応見たな。
もしかしたら俺のこと知ってんのか? と思っていると、正にその答えを示す行動を文堂が取った。
「……あ、あの……出来ればでいいんですが……」
「あ? どうした?」
「こ、このカードに、サインを……サインをいただけませんかっ!」
「うおっ、びっくりした……って、これは……げっ」
と、ポケットから取り出したカードとともに頭を下げられる。
それは見覚えのあるカードだった。プロ雀士カード。しかも見覚えのある顔。というか俺だ。
ああ、もしかしてさっきのプロ麻雀せんべいってこいつの……と納得してしまう。多分そういうことなんだろう。コアなファン。マニアってやつだ。
「実は、東郷プロが来るって聞いてから、どうにかサインを貰おうかと思ってて……家からカードを持ってきました。なのでどうかよろしくお願いしますっ……!」
「……いや俺はいいが……俺のサインなんているか? しかももうプロじゃないただの男のサインだぞ」
「いやいや! 東郷プロのカードはプロ1年目の第一弾にしか収録されてないので結構レア度高いんですよ!? だからカードもサインも貴重です!」
えぇ……というかこいつ、俺じゃなくて俺のカードがレアで箔を付けたいだけなのでは……?
どうやら俺のファンという訳ではないらしい。純粋なマニアだ。プロ雀士カードの。たまーにこういう奴はいるが、どいつもこいつも似たような感じだ。
俺の高校の後輩の倉橋って奴もオタクでそういうコレクションが好きだった筈だ。確かプロ雀士カードも集めていたはず。語らせるとウザいと評判らしいが、先輩であり怖がられていたであろう俺の前で語る訳がないので俺はよく知らない。あいつも、プロ1年目の俺のカードとか持ってたりするんだろうか……いや、ないな。顔も見たくないだろうし。破り捨てられてても不思議じゃない。
まあ今となっては俺のファンも貴重だし、たまにはファンサービスしてやろう。この後の事を考えると可哀想だし。
「……これでいいか?」
「ありがとうございますっ!」
「いや、いいけどな。ただ……まぁ、気張れよ」
「……はい? それはどういう──って、あっ」
「…………文堂ォ……!」
頭を下げてお礼を言う文堂の元から離れる俺。顔を上げた先にいるのは怒りの形相の久保さん。うん……まぁ、練習中にサインなんて貰ったら怒られるよね。そりゃあそうだ。これは仕方ない。
「文堂ォッ!! てめェ、練習中にサインを強請るとはいい度胸だ!! 随分と面の皮が厚い1年もいたもんだなァ!?」
「ひっ、す、すみませんでしたコーチ!!」
俺のせいじゃない。俺のせいじゃない。いやほんとに。俺は普通に声掛けただけだしな……悪い気はするが、俺に責任はないはずである。
久保さんの怒声と謝る文堂の声を尻目に別の卓を見ることにする。他の部員も気が気じゃない様子だが、なんとか耐えてくれ。福路も、そんなにオロオロしなくてもいい。眼の前の対局に集中してくれ。後、やっぱおっぱい大きい子を側で上から見下ろすと胸の膨らみがよく分かってエロかった。抜ける。それと池田ァッ!! お前はもうちょっと頑張れ! このまま調子悪いままだと本気で俺が悪い感じになっちゃうじゃねぇか!! それは避けたい。なんとか立ち直ってくれないかな。久保さんのお気に入りの生徒潰したとか後でめっちゃ怒られそうだし。福路からの評価も下がりそうだし。ここはなんとか評価をあげたいところだ。
というわけでせっかくだ。俺の愉快な教え子の助けを借りよう。俺は携帯を開いて以前に参加させられた有珠山高校麻雀部のグループチャットに書き込む。
東郷『落ち込んでて調子が悪い奴を慰める方法を求む』
よし、これでそのうち返信が──って、もう来たぁ!
獅子原『お腹をいっぱいにする!』
岩館『女の子なら可愛くお洒落だよね!』
真屋『先生が抱きしめる』
本内『褒めるのが素敵です』
桧森『そもそもどういう子か分からないことには……何で喜ぶかは人それぞれですし……』
獅子原『まー、チカみたいな気分屋だとね。機嫌悪い時は何しても機嫌悪かったし』
桧森『な』
岩館『あー、噂の1年の時のチカセンってやつね。相当暴れまわってたっていう』
本内『チカちゃん、そんなに悪だったんですか……?』
桧森『暴れまわってないし悪でもないわよっ!!』
真屋『ダークサイド……かっこいいですね』
岩館『えっ』
本内『えっ』
獅子原『皆聞いてくれ。今、近くにいたチカに直接ぶ』
桧森『なんでもないからっ!』
東郷『お前ら……いつもこんな会話してんのか……?』
カオスなチャット欄を見てげんなりする。賑やかで良いことだが、賑やか過ぎる。というか桧森は獅子原に一体何をしたんだ……? まさかぶったのか? さすがの悪だと感心するがどこもおかしなところはない。
そんな愉快な北の大地の住人達のチャットは随分と役に立たないようなので自分で考えるしかないか……と思ったその時、個人の、ユキの方からチャットが届いていた。
『いつも通りの先生でいればきっと大丈夫です』
……いやユキ。なんか信頼してくれてるのは伝わるし有り難いんだが、具体的なあれこれがなくてなんとも……いつも通りだからこうなってるんだよなぁ……。
『あと、また自撮りを取ってみました。受け取ってください』
と、しかもついでのように、ユキから下着姿の自撮りが送られてきて──って、おおい!!
俺は慌てて携帯を隠す。誰かに見られたらヤバいしな。というか、ユキはあれから妙に俺にそういうエロい自撮りを送ってくるので困る。見る度にすっごいムラムラするのだ。しかも後から──『使えました?』とチャットが送られてくるのでなんとも言えない。出来れば自家発電は控えたいんだけどな……あのロリ爆乳っ子め……今度会ったら覚えてろよ、とムラムラを溜め込みつつ、俺は眼の前の問題に取り組むことにする。
要は自信をつけさせればいい。自信を取り戻させて、ある程度強くしてやればいいのだ。
出来れば俺を目の敵にするのは止めてほしいが、もしかしたらそのことで恩義を感じて目の敵にすることを止めるかもしれないし、結果的に俺の為にもなる。ひいては福路とJK新妻プレイを目指す俺の糧となるのだ。
そして池田を強くすることは……まぁ、難しいようで簡単かもしれない。今やってることの強化版でも行えば行ける。多分。ついでにその面子なら勝手に励ましてくれるかもしれないし、計画した俺の株も勝手に上がる。
と、全てネタバレしつつ、俺はその面子に話を通すことにした。対局後に呼び出して説得する。
そして練習後に時間を設けてその企みを実行することにした。
──まあ簡単に見てもらおう。こういうことだ。
「よく来たな、池田」
「華菜……少し打ちながら話さない?」
「池田……そこに座れ」
「な…………な……!」
夕方。部室へと呼び出した池田が俺達を見て絶句する。
自動卓に座っているのは、俺と福路、それと久保さんだ。
そこに池田1人が呼び出され、空いた席に座れと言われる。それはつまり、麻雀を打つということだ。雀士であれば──いや、雀士でなくとも理解出来るだろう。この状況であれば誰でも理解出来る。
だが池田は言葉を失っている。なのでもう一度俺からも言ってやることにした。
「池田、打つぞ。これもお前を強くするためだ」
「い────いやいやいや!! ど、どんな地獄だしっ!?」
池田が我に返り、状況を理解すると慌ててそれを拒否しようとする。
まあ無理もない。池田よりも強い福路に、池田よりも強いであろう久保さんという池田が恐れる人物。一応俺も元プロで、池田よりは……うーんまあ、一応強いか……? うん、強いってことにしておこう。池田はそう思ってるみたいだしな。
そんな3人との対局は二の足を踏むだろう──が、断らせはしない。
「華菜、大丈夫。あなたならきっと乗り越えられるわ。私もコーチも東郷さんも、皆華菜のことを信じているの」
「きゃ、キャプテン……そう言ってくれるのは有り難いですけど、この面子で打つとかさすがの華菜ちゃんも──」
「つべこべ言わずに座れェ、池田ァッ!! 今日は私直々にお前を扱いてやる!!」
「ひっ、は、はいっ!」
福路の全幅の信頼が籠もった視線と笑顔でそう言われ、更には久保さんの怒声による追い打ちで池田を卓に座らせることに成功する。すかさず場を決めるとサイコロを振って対局を始める。一度始まれば逃げることはしないだろう。池田も雀士の端くれならな。
「こ、こんなの……あっ、あたし、お家の門限があって……今日は早めに帰らないと──」
「親御さんの許可は取ってあるから安心しろ池田ァッ!」
「えっ」
久保さんの声に再び間の抜けた声をあげる池田。なんでも小さい三つ子の妹たちがいるらしい上、親の帰りが遅かったりするのでよく池田が面倒を見ているらしいのだが、今日は土曜日で親も早目に帰ってきているとのことなのでその辺りも問題ない。久保さんが一分でやってくれました。
「それに帰りはきちんと車で送ってやる。──そうだ、ついでに飯でも奢ってやろうか? それがあればやる気も出るだろ」
「まぁ、楽しそうでいいですね! 華菜、一緒に頑張りましょう!」
「え、あ、あの……拒否権は……」
「おら、早くツモれ池田ァ……まさか一度卓についておいて逃げるなんて情けない真似はしないよな……?」
「う、あ……」
うん。まあこれも池田の為だ。池田を強くして自信をつけさせるため。恐怖を克服させるための荒療治。
正直俺が上手い方法を都合良く見つけられるはずもなし。強くなって自信をつける方法なんてこうやって強い奴で囲ってボコボコにするくらいのものだ。スポ根漫画みたいに綺麗な解決方法なんて思いつくか。現実はひたすら練習なんだよ池田ァッ!!
「う、うにゃーーーー!? こんなの、むちゃくちゃだしーーーー!?」
お、調子が出てきたな。いいぞ池田ァッ!! 今日は朝まで──は無理だが、日が暮れるまでひたすらボコるぞ池田ァッ!!
──このあと、滅茶苦茶麻雀楽しんだ。
池田強化計画。それはともかく、アンケートでじわじわとキャップが伸びてきてて草。でもまあこの後他の子達も伸びるやろ……多分。
皆の熱い感想、待ってる