※この作品はR-18です。

役満で上がると惚れられる   作:黒岩

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焼き肉

「ロォン! 6400! 池田ァァッ! てめェ、その捨て牌は何だ!! 簡単な筋引っかけなんかに引っかかりやがって! てめェ、それでも風越のレギュラーか!?」

 

「ひぃっ!? ご、ごめんなさいコーチ!! でもそういう時もありますよぉ!!」

 

「──ロンです。8000。ごめんなさいね、華菜」

 

「うっ……い、いえ……キャプテンに振り込むのが1番マシですし……」

 

「それロンだ。16000。悪いな池田。珍しく高めだ」

 

「な、なんてことするし!? これでまた飛んで──」

 

「池田ァッッ!! てめェ、何飛ばされてやがる!!」

 

「す、すみませんコーチィ!!」

 

「最下位脱出するまで終わらせねぇからな池田ァッ!!」

 

「現実的に下校時間になったら終わるしかないけどな池田ァ! ……あ、でも雀荘という手がなくもないな」

 

「えっと……コーチ、東郷さん、それはさすがに……」

 

「お、鬼だ! 鬼がいるし! 助けてくださいキャプテン!!」

 

「いいから早くツモれ福路ィッ!! 池田ァッ!! てめェ、次振り込んだら許さねぇからな!!」

 

「うっ……は、はいぃ……」

 

「ん……どうしたんだ福路?」

 

「あ、いえ……その、ごめんなさいね、華菜──ダブル立直」

 

「キャプテーーーーンッ!?」

 

 ──そんなこんなで、楽しい麻雀は日が完全に落ちるまで続けられた。

 池田をひたすらにボコした俺達は、池田を連れて夕食の席を一緒しているのだが……、

 

「にゃーーー!! もう、食べまくって財布をすっからかんにしてやるし!!」

 

「好きなだけ食っていいぞ池田。どれだけ食べても値段一緒だからな。──あ、すみません、食べ放題コース4人分で」

 

「そ、それは卑怯だし!?」

 

 というわけで焼肉屋だ。やっぱ部活の打ち上げといえば焼き肉だよなって。別に何も成してないけど。とりあえず肉を食わせとけば高校生は喜ぶ。男だろうと女だろうと関係ない。有珠山高校の面々で実証済みだし、大人だって喜ぶ。

 その例に漏れず、池田は一応喜んでいるようだ。……若干やけくそ気味に見えなくもないが。これも成長と言えるか……? 

 

「私までご馳走になってしまって……ありがとうございます、東郷さん」

 

「ん? いや、元から飯にはお前達2人とも連れてくるつもりだったが……」

 

「いえ、頑張ったのは華菜ですし、私は大したことをしてませんから」

 

 隣に座る福路が相変わらず聖母の微笑みでそんなことを言う。それを聞いた池田が声を大にして、

 

「そんなことないですキャプテン! キャプテンはいるだけであたしの助けになってます!」

 

「そ、そうなの?」

 

「はい! ……だって、大人2人と食事とかちょっと気まずいし……」

 

 最後の言葉だけ小声で目線を逸らしながら言う池田。うん、まあ気持ちは分からないでもない。大人2人に囲まれての食事。しかも1人は池田が苦手とするコーチで、もう1人である俺のことも目の敵にしているのだからそうなるのも致し方ないだろう。

 福路はこの場の清涼剤である。実際、福路がいないと場を取り持てない可能性がある。

 

「池田……さっきの気の緩んだ打ち方はなんだ?」

 

「うっ、コーチ……それはですね……」

 

「あんなんじゃ全国で通用しねェからな。名門、風越の顔に泥を塗るような打牌は──」

 

 と、久保さんが隣に座る池田に説教をしている。さすがに店の中でまで池田ァッ! と声を大きくはしないらしい。まあ何気に常識人というか、大人だし、マナーは弁えている。

 ただ食事の場でも説教とかいたたまれないな……そういう時こそ福路の出番だ。

 

「コーチ。そろそろお肉も来ますし、指導はその辺りで……それに、最後の方は華菜も良くなっていました。今日一日で精神的にはかなりの成長していますし、私はこの子を褒めたいと思います」

 

「きゃ、キャプテン……!」

 

「……チッ、まあお店の方や東郷さんに迷惑を掛ける訳にはいかないからな。今日はこの辺で許しておいてやる。……分かったら好きなだけ食え。今日は私と東郷さんが奢ってやる」

 

「! あ、ありがとうございます、コーチ」

 

「ふふ、それじゃあお食事にしましょうか」

 

 あっさりとこの場を収めてしまった福路。さすがの聖人力だが、何気に久保さんが……なんだろうな。もうなんかただのツンデレにしか見えないというか、池田の頑張りをそれとなく肯定してる辺りが何とも言えない。やっぱお気に入りの生徒なんだな。あれかな、好きな子に意地悪する感じか? ──言ったらぶん殴られそうだな……。

 まあでも確かに最初はおっかなびっくりだった池田も、馬鹿みたいにボコされたおかげで逆に悩みが解消されてそうというか、やけくそ気味でも元気を取り戻したので良しとしよう。一応、俺もそれっぽく声を掛けてやるか。

 

「まあ、お前はその調子でいい。その調子で明日からも練習を続けろ」

 

「な……急になんだし。さっきは、もっと練習に集中しろとかその調子じゃ駄目だみたいなこと言ったくせに……」

 

「その調子じゃ駄目だ、なんて言った覚えはないな。真面目に練習しなきゃ、勝てるもんも勝てないと言っただけだ」

 

 池田が不満顔でそう言うので先程の言葉をもう一度分かりやすく告げてやる。また落ち込まれたら困るが、今度はそうならないだろう。

 だがその代わりに、何やら考えるような、少し真面目な顔になって池田は続けて言った。

 

「……勝てるものも勝てないって……おま──東郷、さんは、あたしが天江衣に勝てると思ってるんですか?」

 

 途中で久保さんの睨みを受けてか、多少言葉遣いを直しながら池田が問うてくる。ふむ、中々難しい質問だな。

 だが俺はそんな答えをなんとなく予想しながらも答えてやる。

 

「ああ――()()()。だからお前はそのまま調子に乗って、調子を維持しつつ練習に励め」

 

「っ……そんなの気休めじゃ──」

 

「気休め? お前にはそう聞こえるか?」

 

「……そうじゃないと……?」

 

 俺は頷く。焼き肉のタレを小皿に注ぎながら、

 

「ああ、勿論、気休めだ」

 

「どっちだし!?」

 

「冗談だ。気休めじゃないぞ、うん、お前は勝てる」

 

「そう思ってるなら目を見て話すし!」

 

 おっと、ついからかってしまった。いやぁ、池田の反応が良くてついふざけてしまうが、あまりふざけすぎると真面目に聞いてくれなくなるし、一応真面目に答えてやるか。

 

「……お前、焼き肉のタレならどの味が好きだ? お店のスタンダードのタレか? 味噌ダレか、それとも塩ダレか?」

 

「普通のタレが1番好きだけど──って、自然に話を変えられた!?」

 

「変えてないぞ。ちょっとした例え話だ。多くの人が好きなのがこのスタンダードな甘辛い醤油ベースのタレだよな。焼き肉はこのタレに肉をじゃぶじゃぶつけて食べるのが1番美味い。大人から子供まで誰もが好む1番人気がこの醤油タレだ。つまり──このタレが1番、圧倒的に強いとする」

 

「私は味噌ダレ派だ」

 

「塩もさっぱりとしてて美味しいですよ?」

 

「……そうでもないみたいだけど?」

 

「話がまとまらなくなるから今はちょっと黙っててくれ……」

 

 久保さんと福路が好きなタレを言い出したのでちょっと黙っててくれとお願いする。そうか……長野って愛知と一緒で味噌派が多いのかな……ひょっとして。まあ久保さんはそれでなんとなく分かるが、福路は塩派か……まあタレをじゃぶじゃぶつけて食うイメージは確かにない。この後すぐに分かることだが、お上品に頂きそうだ。焼き肉1つ取っても育ちが出るな。この場に限って言えば圧倒的多数派という訳でもないらしい。好みで言うと、普通のタレが1番美味いけどな、正直……天ぷらとかもそうだが、塩をつけてあっさりと、とかいう奴をあまり信用出来ないというか、通ぶってるだけじゃねーの? って言いたくなって困る。福路みたいな上品な女の子や、大沼さんみたいな渋い人が言うならともかく、そこらの男とかは、“いやー、焼き肉とか天ぷらは塩だわ。素材の味がね? あ、お前には分かんないかw”──みたいなことを言ってきて、タレやつゆ派を下に見てきたりするから困るというか、絶対味とか分かってねーだろって言いたくなる。

 まあそれはともかく、俺は池田に言う。3つの小皿にそれぞれのタレを入れながら、

 

「この醤油ダレが1番強く圧倒的だ。それに比べたら、味噌と塩は悪くはないが劣ってしまう。だが両者の優劣は……まあ味噌だとしよう。味噌が塩と比べて強い……そして池田、お前は“塩”だ」

 

「あたしは塩……? ……醤油が良かったなー」

 

「塩も美味しいわよ、華菜」

 

「キャプテンが好きならあたしは塩でいいし!」

 

「なんで味噌じゃねぇんだ池田ァッ!!」

 

「ええっ!? そこを怒られても困りますコーチ!」

 

「……話を進めてもいいか?」

 

 直ぐに話が脱線するので、焼き肉のタレなんかに例えなければ良かったな……と思ってしまう。そして久保さん、別に味噌じゃないだけで怒る必要はなくないか……? 怒るとこそこかよ。

 とりあえず話を続けようと咳払いし、

 

「そして、天江衣が“味噌”だ。そして醤油は多くのプロ。天江衣でも敵わないような怪物、一部のトッププロだ」

 

「……つまり……?」

 

「分かるか? プロからすれば、天江衣もお前も、五十歩百歩。同じ高校生の枠にいる存在でしかない。であれば、だ。お前が負けるとも限らないだろ? プロと比べれば、天江衣とお前の差なんて大したことないからな」

 

「そういうことに……なるのかー……?」

 

 池田が腕を組み、首を傾げて唸る。まあ悩むのも当然だろう──実際、池田が負ける確率の方が圧倒的に高い訳だし。

 実際のところ、天江衣はプロに入ってもやっていける。この眼で見ていないので確かとは言えないが、一部のプロを駆逐し、トッププロの世界で戦える逸材かもしれない。

 だがそれでもだ。それでも天江衣はまだ高校生で、池田も同じ歳の高校生。そうなると、池田を納得させる根拠、理由付けは色々ある。俺は池田に向かって迫真の顔で言ってやる。自信をつけさせるために、

 

「敢えて言うが……池田、お前は十分強い。調子にノッてもいいくらいにはな。天江衣に、今はまだ僅かに及んでないというだけだ」

 

「あたしが、強い……」

 

「ああ、お前は強い。例えばだ。お前、自分が全国の女子高校生の中でどれくらいの順位にいると思う?」

 

「えっ? あたしが、全国で?」

 

「ああ、適当でいい。思った順位を言ってみろ」

 

 俺はまだ俺の話に半信半疑な様子の池田を促す。池田は迷いながらも、

 

「……ひゃ、100くらい?」

 

「ほぉ、思ったより自己評価は高いな?」

 

「う、うるさいし」

 

 少し恥ずかしそうにする池田。が、俺はそれほどからかわずに話を進める。なぜならそれほどズレてはいないからだ。

 

「だが、それほどズレてもいない。俺の見立てだと、お前の強さは全国1万人と言われる女子高生雀士の中で──」

 

 俺は言ってやる。掌を広げ、

 

「──50位以内には入る」

 

「50……」

 

「ああ。1万人の中のベスト50だ。上位1%どころか、上位0.5%。同年代でお前に勝てる奴を探す方が、本来なら難しい」

 

 俺は池田にそう断言してやる。実際、それほど間違ってはいない。高校生という枠の中で池田を越える奴はそれほど多くはないだろう。頂点からはまだまだ遠いが、それ以外の同年代と比べれば鬼のように強いはずだ。

 ただ天江衣は……ベスト50どころか、本当に魔物であれば全国で五本の指に入ってもおかしくない。

 それを敢えて言わず、池田にはそれだけを伝える。ちなみに福路であれば、全国でもベスト20……もしくは16か、それ以上に入ってもおかしくないだろう。

 ただどちらも天江衣に敵わないだけ。全国クラスの打ち手であることには変わりない。

 俺は池田の強さを更に強調するように言う。久保さんや福路は黙って聞いてくれていた。福路はともかく、久保さんはちょっとあまり過剰に褒めるなと止めてきそうだったが、思うところがあるのか眉間に皺を寄せながらも黙っていた。

 誰の介入もない中、俺は池田に更に強調するように続ける。

 

「当然の話だ。お前は名門、風越女子の特待生。1年生ながらもレギュラーに選ばれ、校内ランキングも2位。福路という全国上位の選手を除けば、お前に勝てる同年代はほぼいない。それは十分誇っていいし、調子に乗ったっていい強さだ」

 

「……でも全国には──」

 

「──ああ、そうだな。()()()()()()()()()()()()()。お前は本来、全国に行って当たり前の選手だ。それくらいの才能がある。多くの選手と比べたら、お前は牌に選ばれた側の人間。勝って当たり前の人間だ。実際に、殆どの勝負には勝ってるんだから調子に乗ったって構わないんだよ」

 

「調子に乗ったっていい……」

 

 池田にも思うところがあるのか、小声で俺の言葉を反復する。

 まあ普通の指導者なら気を引き締めろ、調子に乗るな、お前はまだまだ弱い、と諌めるようなことを言うものだが、俺としては強いなら強いと誇ったっていいと思う。何故ならだ。俺は池田に言ってやる。

 

「ただ、相手を侮るな。軽んじず、お前の実力を素直に出し切ればいい。そのためなら幾らでも調子に乗れ。自分が負けるなんてあり得ないと思うような、ある程度の傲慢さ、図々しさってのがトップ選手には必要だ」

 

「……でも調子に乗ってたら、怒られたり、ウザがられるし」

 

 まあそうだけどな。だが、それがどうした。

 

「ならウザがられろ。相手が嫌がるくらいにな」

 

「ええっ!? むちゃくちゃだし! ……でも、そんなんでいいのか……?」

 

「ああ、別にいい。……というかだ池田。実際に強く、ある程度の実績を持つような奴が大口を叩いたりすることを調子に乗るとは言わない」

 

「え、じゃあなんて……?」

 

 俺は言ってやる。池田に何よりも必要なものを。

 

「そういうのはな──“自信”って言うんだよ」

 

「!」

 

 池田の眼が見開かれる。俺はその驚きを確認しながらも逃さず言葉を続けた。

 

「自信を持ってる選手は強いぞ池田。そういうタイプの選手は、勢いに乗らせると手に負えない。──そしてお前は、そういう選手になれる……」

 

「東郷……さん……」

 

 池田の眼に炎が、光が灯る。

 そこで俺は更に言ってやった。現実的に、

 

「……かもしれない」

 

「──どっちだし!」

 

 半目になった池田にツッコミを入れられる。いやまあ、だってそんなのわかんないし……確かなことは言えない。もう肉も来たしな。

 

「そんなのお前の頑張り次第だ。俺は知らん。そんなことより肉食うぞ」

 

「なっ……くぅぅっ……一瞬でも感動仕掛けたあたしが馬鹿だった……!」

 

「ふふ、まぁまぁ、華菜。そろそろご飯にしましょう」

 

「ふん……おい福路、焼くのは任せたからな」

 

「はい、任せてください」

 

 と、久保さんの声に応えて肉を網に乗せていく福路。そしてそれを管理して、適切なタイミングでそれらを裏返し、各々の皿へと分けていく──って、福路はやっぱお奉行タイプというか、肉を率先して焼いてくれるタイプか……いるよな、そういうやつ。いると助かるタイプの人間というか、やたらと焼きたがる奴は。ただ、下手なのに焼きたがるのもいるので、そういう奴は微妙にありがた迷惑なのだが、福路は料理が上手いだけあってそれも適切だった。

 

「はいどうぞ、東郷さん」

 

「ん、悪いな」

 

「いえ……ありがとうございます」

 

 福路が肉を焼いて俺の取皿に置いてくれる……って、んんっ? 今なんでお礼言われた? 言われたよな? 俺が肉を焼いてくれたことに対して、悪いな、って言ったら、お礼で返してきたよな? 

 どういう意味だと思うが、特に何もない可能性もある。というか、タイミングを逃して聞きそびれてしまう。福路は池田や久保さんにも肉を置いて回った。そして再び肉を──って、よく見たら福路の右目が開眼してるじゃねぇか! しかもそれの効果か、肉の管理が完璧だ。網やテーブルの状況を完全に把握し、適切なタイミング、適切な場所、火加減で肉を焼いている。えぇ……何その無駄な応用力……いや、無駄ではないけど、やっぱリアルでも応用出来るのね……。

 ──と、そういや昨日今日との対局で、福路の力を大体推察出来たんだよな。池田とのことで手一杯だったが、明日からはその対策が打てるかもしれない。

 ぶっちゃけ池田への指導云々でそれっぽいことを言いまくってやったが、俺の目的はあくまでも好みの美少女に役満をぶち当てて惚れさせてエロいことをすること。その目的を考えると、今日の対局は俺にとってかなり有益だった。

 福路の能力の考察が大分捗ったし、役満をぶち当てるための布石を打てる──まぁ、出来るかどうかが肝ではあるが、問題はないだろ、多分。というか大丈夫って信じないと挫ける。これで駄目なら俺では攻略出来ないことになってしまうからな。なんとかヤりたい、もとい、やりたいところだ。

 まぁ、今は肉の時間だから性欲よりも食欲が勝ってるので煩悩に塗れてはいない。肉にタレをじゃぶじゃぶつけてご飯と一緒にかっこむ。美味い。たまにキムチとかとも一緒に食べたり、たまにタレを変えたりして肉とご飯をかっこむ。これが美味いのだこれが。焼き肉は肉も美味いが、肉と一緒に食べるご飯も美味い。

 まあ去年からは、酒と一緒に食べる肉の味も体験して、悪くはないとは思った。うん、それもそれで良いものだった。

 だが……焼き肉と酒の場合、酒もメインになってしまうので、食事っていうか“飲み”って感じだ。酒と一緒だとご飯はいらなくなるが、それはそれで微妙というか……なんかご飯が恋しくなる。焼き肉食うと言ったら肉とご飯をめちゃくちゃ食べまくりたい気がするのだ。

 酒も良い。酒も良いんだが……そこが悩ましいところなんだよな。かといって、酒もご飯もってなると胃の容量が中々な……。

 まあどちらにしても、今は高校生と一緒だし、そもそも車で来てるうえ、帰りは送っていかないといけないので酒はNGだ。正面の久保さんも似たような理由で酒を頼んでないのだろうな。

 

「……ふーっ、東郷さん、焼き肉来ると、お酒が飲みたくなりませんか? その、ビールとか……」

 

「分かりますけど、俺はビール、そんなに好きじゃないんですよね。ハイボールとかサワー系なら……」

 

「あー……若者のビール離れってやつですか」

 

「久保さん、俺と1つしか歳違わないじゃないですか……」

 

 どうやら久保さんは酒を、特にビールを飲みたくなる派らしい。まあよくいるタイプだ。珍しいことじゃない。ただ、全員がビール頼むと思って、“とりあえず人数分生中”とか言う奴は消えてほしい。なにがとりあえずだ。こっちはビールそんなに好きじゃねぇんだよ。勝手に俺の飲むもんを決めるな。俺は他人になんて言われようがグレープフルーツサワーとかを飲むんだよ! カシスオレンジとかも! 女子大生みたいなチョイスとか言うな。柑橘系が好きなんだよ! そもそも苦いのがそんなに好きじゃない。甘い方が美味しいに決まってる。子供舌とか言うな。辛いもんも好きだから。わさびは食えないけど。唐辛子とかの香辛料系ならそれなりに辛くてもいける。そうすると後でアイスクリームとか甘いものが食べたくなる。なんの話だ。飯の好みって人それぞれなんだよって話か。

 

「東郷さん、どうぞ」

 

「おお……って、さっきから焼いてばっかりだな。お前も食べろよ──ほら」

 

「あっ……」

 

 福路が俺の取皿に肉を置いたタイミングで、福路が焼いてばっかりなことに気づいたので、トングを使って明らかに焼けてる肉を福路の取皿に入れてやる。焼く係に自然となってる奴ってそればっかりになって食えない奴とかいるよな。気を使いすぎてる奴によくいる。

 まあそういう奴にこそ食べさせてやりたいよな。……逆に気にせず差し出される肉にひたすら齧り付ついてるネコ娘にはおあずけしてやりたくなるが……まあ今日は頑張ってたしな。この激辛タレカルビをくれてやろう。俺も食べてみたが普通に美味しいぞ。受け取れ。

 

「池田、これ食べるか? 結構辛いが美味いぞ。それとも辛いのは無理か?」

 

「ふっ、見くびるなし。あたし、辛いのとか結構食べるからなー。これくらいどうってこと……」

 

「……東郷さんは、優しくて良い人ですね」

 

「えっ? そうか?」

 

「にゃっ!? 辛っ!? なにこれ辛いっ!」

 

「あれ、そうか? よく味わってみろ池田。辛く感じるのは最初の一瞬だけだ。味わえば美味く感じるぞ。もし無理ならいいが、試しに米と一緒に食ってみろ。お勧めだ」

 

「ん……? あれ、確かに美味しいような……辛いけど美味しい……辛ウマ……」

 

「池田ァッ!! 美味しいならまだまだあるぞ! 食べてみろ池田ァッ!」

 

「んぐ……はむ……確かに慣れて普通に美味しく感じてきた──あっ、でもこれ後からくるタイプだしっ!?」

 

「はい、とても親切で良い人だと思います」

 

 あれ? 眼の前が見えてないのかな? それとも右側が見えてないんだろうか。右目閉じてるし。左に座る俺を見ている福路だが、正面では池田と久保さんがぎゃーぎゃー言ってる。その原因は俺なんだが……まあ池田なら普通に食べるかなって思ったんだが、ギリギリ駄目か? 激辛とは言うが、俺とか久保さん、何気に福路も普通に食べれるくらいの辛さだ。チェーン店の激辛なんて名前負けしてるというか、割と万人が食べれるくらいの辛さで落ち着いてるからな。辛そうなのは見かけだけだったり、もしくは後からちょっとクるくらいだったりする。

 ただ無理なら無理強いはよくない。辛いのが苦手な人に無理矢理辛いのを食べさせるとかパワハラとかいじめになるからな。良い大人が面白がってそういうことをしてはいけない。マジでよくない。東郷お兄さんとの約束だ。良い子達はそういうことをしてはいけないぞ!

 まあ、俺とボブみたいな対等な友人同士とかだと、ロシアンルーレット的な遊びもしたりするんだが……そういうのは立場が対等で、お互いに納得してるから問題にならない訳で、無理矢理だと訳がちが──うん、この話はやめとこう。今は福路の話だ。ええと、俺が親切で良い人か……。

 

「今日も、部員の子達に色々と親身に指導してましたし……」

 

「いやまぁそれは……やるべきことを当たり前にやっただけなんだが……」

 

「ふふ、東郷さんにとっては当たり前なんですね。そういうところ、私も見習わなきゃって思います」

 

「……いや、それこそ福路は十分優しくて気遣いも出来てると思うが……」

 

「えっ、そうですか?」

 

「ああ。お前ほど出来た高校生はいない」

 

「え、えっと……そんなことは──」

 

「そうだ! キャプテンほど凄い高校生はいないし!」

 

 と、福路の褒め言葉に俺が思ったことを口に出していると、池田が割って入ってきた。まあ深く考えることでもなければ、食事中の軽い会話なので池田と同じように福路を褒めてやる。こいつも自己評価が低そうだからな。褒めて伸ばすのが俺のトレンドだ。

 

「麻雀はめちゃくちゃ強いし……」

 

「ああ、確かに強いな」

 

「勉強だって出来る!」

 

「へぇ、そうなのか。頭も良いとか、羨ましい限りだな」

 

「家事だって万能だし……」

 

「料理も美味かったしな」

 

「おまけに可愛い美人だし!」

 

「ああ、凄く可愛いと思う。良いお嫁さんになりそうだな」

 

 池田と俺が褒めて同意する。肉を食いながらの軽い会話だったが、そこで気づく。隣に視線をやると、

 

「か、華菜……なんだか、すごく恥ずかしいわ……その、東郷さんも、あまり褒めないでください……か、可愛いとか……」

 

 顔を赤くした福路が恥ずかしがった表情で顔を下に向けて目線を逸らしていた。──その様子も可愛いが、まさかそこで照れるとは、と微妙にやっちゃった感を感じてしまう。

 マジでナチュラルな茶化す感じで言っただけでいやらしい感じも他意もなく言ったのだが、まさかそこで素直な反応を見せられるとか、ちょっとなんだ、むず痒い。まだ役満ぶち当ててもないのにこうとか、勘違いしそうになるからやめろ。普通の相手にすらこうとか、惚れたらどうなるのか楽しみにはなるが、こんな満更でもないみたいな反応は男を勘違いさせるやつだ。福路美穂子、罪な女め。まあ美人、美少女はちょっと仲良くなるだけで男は皆好きになるだろうから一概に罪とは言えないけど。

 ただここでフォローすると俺の方がガチっぽい気がするので、ここは何とも思ってない感じで受け流す。よくあるラブコメでの“あっ、悪い……”みたいなのはなんかその気があるのが丸わかりだからな。普通はそういう時、何とも思ってない風を装う。大したこと言ってませんよってスタンスだ。

 他意がないなら、可愛いとか言っても問題ないからな。大人だし、むしろ子供をからかってるみたいになるだろう。……そう考えるとスルーするよりかは自然に会話した方がいいか。まあそんな感じで、後は流れで行ってみよう。

 

「……ははっ、なんだ照れてるのか? ならもっと言ってやろうか? 可愛いって」

 

「う、うぅ~~……からかわないでください東郷さん……」

 

「からかう? 素直に思ったことを言っただけだけどな」

 

「っ……うぅ……そういうの……」

 

 引き続きからかう感じで行ってみると、かぁぁ、と更に顔を赤くしながら下を向いて顔を隠し始めた。顔から湯気が出そうな感じになってる。うーん、恥じらい方も可愛いな。隙がない。ある意味で。実際、嘘はついてないのだからすらすらと言葉が出てしまう。

 

「む……そういうの、セクハラだしっ!」

 

「なんでだよ」

 

 と思ってたら池田が突然のインターセプト。福路を見かねて助けに入るが、ぶっちゃけお前も同罪だけどな。お前も褒めてた訳だし。俺だけが褒めたくらいで福路が恥ずかしがるかっていうとちょっと微妙だしな。周囲から持ち上げられ、親しい後輩からも褒められたのが大きいだろう。

 まあしかし、こういう反応を見ることが出来て良かった。惚れられた時の楽しみが増えた。これで明日も頑張れる。そして今日の夜は辛い。いや、美少女と接するのって役得だけど、後からめっちゃムラムラするから困るんだよなぁ……今日はユキからのエロ自撮り写真も来たし……あー、早くヤりてぇなぁ……。

 段々とお腹いっぱいになってくると、性欲が湧き出てくる。しかしそれを抑えて俺はなんとかその日を無事に乗り越えた──ちなみに、飯は俺と久保さんで割り勘。それぞれ車なので、池田と福路を家まで送っていった。久保さんが自然に池田を連れて行ったのはさすがお気に入りだと感心する。俺の車の助手席に座った福路はエロかった。パイスラが。だからムラムラするんだよなぁ!! そういうの!!




本当はこのまま三日目の部分まで投稿しようかと思ったけど、分量エグいことになるので分割。次回はまた打ちます。それと……まあお楽しみに。明日には投稿しますので
皆の熱い感想、待ってる
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