風越女子麻雀部では基本、日曜日の練習は午前中だけらしい。
一応生徒に配慮して用事があれば休めたり、隔週で休日だったり、学校のイベントや状況を見て練習休みはそれなりにあるそうだが、名門校であれば毎日の様に練習することも珍しくないので、意外と緩く感じる。今日も、本来は休みだったという。
だが今日は俺がいるので、希望する奴らはそのまま残って俺の指導を受けたり、練習──自主練とすることが出来る。
まあ割と普段から言えば部室を開けて自動卓を使わせていたりはするそうだが、日曜日は残る奴が多そうだ──というのは久保さんの談。
つまり俺は今日も昨日と同じく夕方頃まで麻雀を打つ、そして指導する訳だが……まあそれはいい。仕事だしそれはしょうがない。明日になれば部員はまた学校で、俺は授業が終わってからの指導になる訳だしな。ある意味土日こそが本番だと言えるな。
だから本当は十分な睡眠を取って備えたかったんだがな……。
「……もう朝か……」
ホテルの部屋のカーテンって結構光を遮ってくれるが、それでもまあ朝になれば分かる。太陽の光がカーテンの端から僅かに漏れてるのを見て俺は溜息をついた。
今日はいつにも増して眠れなかったな。1時間か、2時間か、多分そんくらいしか寝ていない。何度も寝ようとベッドで横になって目を瞑っていたが……まー眠れない。眠れないんだよなぁ、色々と考えてしまうしよ。
後はまぁ、体力が有り余ってたりするんだろうな。疲れ切ってしまえば眠れたりするからちょっと身体を動かしたりもしてみるのだが、多少の運動くらいだとそんな疲れないし、やっぱり眠れない。
まあ倦怠感で眠る方法として自家発電を──要は射精しまくれば眠れたりもするが、出来ればそれはしたくないし、結局俺は横になりながら考え事をひたすらにしたり、妄想の中で俺の女達や、落とす予定の福路とエロエロしてみたり、それでムラムラして余計に眠れなくなったり、そうなったらまた考え事に没頭したりを朝まで繰り返してしまった。
朝飯を食えば多少は元気が出るが、それでも時折眠くなったりはするし、さすがに身体が怠い気もする。……これで眠れたらいいんだが眠れないから困る。俺の身体、やっぱおかしいわ。
ただ、美少女の体温を感じながら寝ると割とよく眠れる。柔らかいし温かいし、マジで良い抱き枕になる。たまにムラムラしてしまって睡眠欲よりも性欲が勝つ時もあるけど。
まあたまーに別の弊害もあったりはするが……それは今はまだいいだろう。そこまで深刻じゃないし。
そんなことより俺は福路のおっぱい枕で眠りたい。もしくは膝枕。抱きながらでも可。
2日間、福路美穂子という美少女を見てきたが、やっぱり美少女というのは良いものだ。新しい娘は、まだ落としてない娘はめちゃくちゃ魅力的に感じる。
別に落とした娘に魅力を感じない訳じゃないし、むしろ今でもめちゃくちゃヤりたいが、それでも新しい女の子相手の高揚感は特別だ。見ているだけなら目の毒にもなるが、これが落とせる、ヤれるとなると楽しくてしょうがないし、めちゃくちゃムラムラする。
今も頭の中でまとめた福路へのちょっとした対策を思い、俺はどうしても口の端を歪めてしまうのだ。ほぼ徹夜明けなのでテンションも高い。思わず独り言だって呟いてしまう。
「それにしても……こんだけ真面目に考えたのは久し振りだな……」
麻雀で相手への対策。プロ相手のオカルトとかだと対策とか、どうせ無理だろって感じで諦めることも多かったが、今回は久し振りに真面目に考えた気がする。それを思うとエロって偉大だ。麻雀への情熱が中途半端な俺をここまでやる気にさせてるんだからな。
ただそれも、福路との対局で役満を張らなければ始まらない。逆にそうなれば、また最高の時間を過ごせるのだと──俺は着替えて準備を整えると、ホテルを出て風越女子高校へと向かった。
──というわけで、俺は一昨日、昨日と引き続き風越女子麻雀部の部室へとやって来た訳だが……。
「立直だし!」
「!」
「っ……これで……通──」
「通らないし! ロン! 立直一発! 純全帯三色一盃口ドラ4の一本場は……36300! ふふん、裏ドラが乗らなくて残念だし!」
「さ、三倍満……ッ!」
……ほー、なんか池田がやたらと調子いいな。
俺の視界の先──俺が座ろうとしていた横の卓では池田が他の同級生にとんでもなく高い手を直撃させて飛ばしていた。それもランキングがそれなりに高い相手……10位以内には入ってた奴らだ。
昨日の午後は俺に凹まされて調子が悪かったってのに、昨日の特訓のおかげかもう調子を取り戻してしまっている。……調子に乗りまくっててなんかちょっとイラッとする。
「ふっ……今なら東郷さんにも余裕で勝てるし」
「ああ? 寝言は寝て言え。もしくは勝ってから言え」
「昨日は沢山寝たからもう寝れないし、当然勝ってやるし! なにせ今朝の華菜ちゃんは絶好調だからっ!」
どやァァァ、と得意げな顔を浮かべて胸をそらす池田を見て俺は思う。うぜぇ……と。いや、うん、俺が言ったことなんだけど、マジで鬱陶しくなったな……。
正直、これから福路を落とすため本格的に役満を狙いに行く俺にとっては厄介な邪魔者でしかないというか、そういや池田が邪魔だから大人しくさせようとしたのに、これではまた振り出しだ。どうせ福路との間に入ってきて邪魔するんだろうしな。
だが今はマジでちょっと待ってて欲しい。どうせ言うことなんて聞かないだろうが俺はダメ元でも言う。
「後で相手してやるから今はあっちで対局でもしてろ。福路や他の奴の指導もあるんだからな」
「む……仕方ない。絶対後で倒してやるし!」
「……あ?」
俺はその言葉が予想外過ぎて間の抜けた声を出して内心で思う──言うことを聞きやがった?
あの池田が素直に俺の言うことを? どういう風の吹き回しだ?
俺は思ったことをそのまま口に出す。池田に向かって眉を潜めつつ、
「お前……なんか悪いものでも食ったか?」
「? 別に食ってないし……って、そうだ敬語使わないと怒られるんだった……昨日も帰りにコーチで怒られたし……というわけで、絶対倒しますから! 東郷さん!」
「……気持ち悪いから使わなくていい。なんか違和感が凄い」
「えっ……いや、それじゃあ困るし──困るんですけど!? あたしの方が怒られる!」
「いやそんなん良いから……マジでどういう風の吹き回しだ? 俺に敬語とか……」
ちょっと池田が急に敬語を使って普通の生徒みたいになったので気持ち悪くて問い質す。幾ら久保さんに怒られたからと言っても、昨日まではそれでもタメ口で目の敵にしていたというのに、今更そんなことで訂正するのかと。
ただなんか……池田は聞くと何か思うところがあるのか、軽く目を逸らして言った。何やら不服そうではあるが、
「……やっぱ、プロの……元プロの指導しに来てくれる人には失礼だと思っただけだし」
「ああ? 今更か。昨日まではあんなに反抗期だった癖に」
「ふふん、華菜ちゃんは毎日成長するんだし! というわけであたしに敬われて貰うからな!」
「なんで上から目線なんだ……」
別に敬われてる気は全然しない。ただ……なんだ。ある程度は認められたのか?
池田に認められても別に嬉しくともなんともないが、まあ、それで池田が俺を目の敵にしないというならやりやすいし助かる。そういう意味では嬉しいな。後はまぁ……成長したならそれでいい。俺のやることがなくなって助かるしな。
「……はぁ、分かったから向こう行ってろ」
「押忍! 了解です師匠!」
「誰がお前の師匠だ」
「ま、間違えただけだし!」
と、池田は最後に訳の分からない言い間違いをして別の卓へ移っていった。いや、マジでなんなんだ? 昨日の肉にヤベーもんでも紛れ込んでたのかと疑ってしまう。まさか俺のあの程度の薄っぺらい言葉だけで俺を見直した的な? いやいやまさか……でも今の反応を見てみると……。
「ふふ、華菜ったら、すっかり元気になって……ほんと良かったですね」
「──っと、福路。待たせて悪いな。お前には今日も俺と打ってもらうぞ」
池田の反応になんとも言えない気持ちになっていると、背後から福路が声を掛けてくる。振り向くと相変わらずの美少女っぷりだ。右目を閉じているのも相変わらずである。
今日こそはお前を攻略してやると、強い気持ちを心に抱いていると……そこで気づく。福路が後ろ手に何か包みのような物を持っていることを。というか、なんか見覚えがある。俺がその答えを出しかけると、それよりも前に福路が俺の言葉に頷きつつ、
「はい。今日もよろしくお願いします。……あと、それとなんですが……その、これをどうぞ」
「お……」
と、後ろ手に持っていた物を差し出された。眼の前で見るとはっきりと分かる。これは……弁当だ。
「あれ? 今日……というか昨日は別に今日の分の弁当は頼んでなかった気がするが……わざわざ作ってきてくれたのか?」
「あ……はい! そうなんです! 今日も朝から指導をしてくださる訳ですし、外に買いに行ったり食べに行くのも大変でしょうから一応……その、ご迷惑でした?」
「いや、そんなことはないけどな……むしろありがたい。お前の料理は美味かったし、飯を食いに行く暇も確かに省けるしな。ただ、悪いと思ってな」
「いえ、気にしないでください。私も、その……つい作ってしまったというか、朝起きてから勝手に手が動いてしまったというか……ですからその、私が勝手にやったことですので、東郷さんは……ええと、とにかく、気にせず頂いてくれると……」
「……? あ、ああ、分かった。わざわざありがとな」
「……はい。こちらこそありがとうございます」
だからなんでお前がお礼を言うんだ……弁当もそうだが……あ、いや待て。もしかして池田の件のお礼か?
一応、客観的に見れば俺が池田の調子を良くしたように見えなくもないしな……そのことで面倒見の良い福路が俺に対して礼をしないといけないとでも思ったのかもしれない。それならば分からなくもない。福路は聖人だし、実際昨日もタイミングが合わなかったが、普通に今日も弁当を作ってくると約束をしてたかもしれないしな。
ただ……なんだ? 福路にしては微妙にしどろもどろというか歯切れが悪いな……目も逸らしてるし……そんなに弁当を作ってきてしまったことが恥ずかしいか?
見ようによっちゃあ弁当を好きな人とか気になる異性に渡して恥ずかしがってるようなワンシーンに見えなくもないが、まさか役満をまだ上がってすらないのに俺に惹かれる筈もないしな。それはない。男としては勘違いしたくなるが、好ましい人と恋愛感情は別だし、良い感じに見えても実際はただちょっと頼りになる大人として信頼してもらってるくらいだろうな。しかも福路だし、誰に対してもこんな感じだろうし。
……ある意味風越女子が女子校で良かったかもしれないな。共学なら多くの男子が勘違いしまくっていただろうし、福路なら頼まれれば好きではない男性であっても弁当を作ってきそうだ。それで強引にデートに誘われたりとかして……まあ断る時は断るだろうが、相手が普通の人であれば抵抗無く親しくしそうだし、というか女子相手でも惚れられてそうではある。今どき珍しくもないし……ただ身持ちは固そうなんだよな。好きなったらすっごい一途で尽くしそうでかなり魅力的だ。なんかエッチなこと頼んでも恥ずかしがりながら頑張ってやってくれそう。健気な感じで。ヤバい、興奮してきたな。ちょっと落ち着こう。今はまだその時じゃない。
「……それじゃあこっちも始めるぞ」
「はい、よろしくお願いします」
俺が対局を始めると声に出すと、福路が挨拶し、他2名の部員も挨拶をしてくる──って、吉留と……もう1人は確か、文堂だったか。1年の。えー、何気にここの部員の中ではマシな2名じゃねぇかよ。ちょっと面倒だな……。
というか覚悟はしていたが、やっぱりツモ和了りだと福路以外の面々も落ちそうな上、不確定な感じもあるから直撃を取らないといけないな……さて、頑張ってみるか。
と、俺はしばらく普通に対局を進める。一昨日と昨日と同じだ。大体福路が優勢。俺もまあ頑張るが、福路がトップで俺が2位。吉留が離れて3位で文堂が最下位。だがなんとか飛ばされないように食い下がっている。やっぱり何気にやるな、こいつ。吉留も判断に迷いが少なくなってるし、微妙に面倒だ。俺が面倒に思うってことは強くなってるってことなので、面倒は褒め言葉みたいなもん。褒めてる場合じゃねーけどな。というか、やっぱ真面目に指導したせいで自分の首締めてるな……これ……手を抜くわけにはいかないとはいえ困るな、ほんと。
しかも手も……まあそれなりに良い手牌が来ることはある。配牌の時点で和了りまで一向聴とかはな。そういうのはまあ来るんだが、肝心の高い手──役満には中々出来そうにないし出来ない。
役満を上がろうと思うなら、やっぱある程度配牌の時点で出来上がってないとキツいんだよな。ただそれが中々来ないから役満ってのは役満な訳で……はぁ、ほんと俺のオカルト使い勝手悪すぎる……勝ったら落ちるとかで良くね? こんな馬鹿なオカルト持ってる奴の顔が見てみたいわ。俺だけど。
内心で幾ら愚痴ったところで役満は来ないし、普通に麻雀するしかない。そんなこんなでオーラスに入って俺の親。ここで連荘して一応機会を増やそうと思った矢先のことだった。
……き、来たァァァァ!! 来たぞ池田ァッ!! 一昨日と同じ! 字一色の二向聴だァァッ!
内心で思わず叫んでしまう。というか、ここ最近久保さんの池田ァァッ! を聞きすぎて思わず池田を呼んでしまった。いやでも、この役満が出来そうな時の手牌って誰かに見せたくなるよな。池田でも誰でも。オンラインゲームで超レアなアイテムツモった時に似てる高揚感。どっちかっていうと俺の場合、そういう時に役満上がった時に例えることが多いんだが、それはまあどうでもいい。とにかく役満だ役満!
後はなんとかするだけ……これを福路に振り込ませるだけなのだが──これが厄介なのだ。
対面の福路の眼は、既に開眼している。これはすなわち、福路特有のオカルト……正確には準オカルトと言うべきか。福路特有の能力を発動している証拠だ。
俺はこの2日で福路の能力を考察し、一応、それをある程度突き止めてやった。当たってるかは知んないけど。多分当たってるはず。
その答えは──簡単に言えば、場の把握である。
右目を開眼し、河の状況や相手の手牌などをほぼ丸裸にしてしまう能力。別にスケスケだぜ、って訳じゃない。透視出来るとかなら強すぎる。福路王国完成。風越コール起きそう。福路なら眼力持ってそうだし。というか、よく考えれば福路の能力はそれに近い。
何故なら……福路は、対局している三者、相手の癖や挙動、視線の動き、打ち筋を完全に見切ることで、相手の手牌を理解し、場を操っているからだ。
めちゃくちゃな能力だと思ったが、多分これで合っていると思う。福路が右目を見開く意味や、その視線の動きを見てなんとなくその答えに至った。
俺はこう見えて視線に敏感だ。女子並か、それ以上に。誰かに見られてるとか、どこを見ているとか、そういう視線はある程度分かる。多分俺が女なら、胸とか尻に来る視線を感じまくって辟易としているだろう……女じゃなくてよかった。
そして俺のその感覚を信じるなら……福路は俺の挙動や視線の動き、手や指の動きなどの細かい動きをかなりの速度で見て計算している──と思う。
そういう能力を持っていながら、普段から右目を開かないのは思考力の問題か、常に開いて計算していると眼とか脳が疲れるとか、そもそも見る必要がないとか、色々理由があるのだろうが……ただ能力的にインチキくさいので、それくらいのデメリットがあって貰わないと困る。
福路は明らかに相手の手牌を見切ってしまっているし、場をほぼ完全にコントロールしてしまっている。支配ではない。支配系のオカルトという訳ではない。福路は、己の能力でそれを成しているのだ。
謂わば才能か特性か。どっちにしろオカルトじゃね? って感じもするが、一概にはそうとも言い切れない。なので準オカルトと勝手に俺は言っているが、どっちみちチート染みた力ではある。
昨日の焼き肉でも使っていたが、日常に応用出来る──というか、普段から使ってるものを麻雀に応用しているというのが正しいか。オッドアイは生まれつきのものだろうし、よくあるオカルトを偶然持っていたので麻雀に応用してみました☆ ってやつだ。遅い時期から麻雀を始めた奴に多いタイプだが、福路はどっちだろうな。麻雀歴は長いらしいが、後から発現したのか、それとも以前まではそれほどの力ではなかったか──まあそんなことはどうでもいい。重要なのは今の福路は卓上を完全に把握しているということ。そして、それだと誰かに振り込むようなことはないということだ。
高い手を流したり、相手を削るためなら相手に和了らせることもある福路だが、さすがに俺の手が役満だと知れば和了らせないだろう。役満だとバレるかどうかは分からないが、少なくとも高い手を見切ってくることは確実で、そうであれば振り込むことはない。
だからまあ……対策をする必要がある。難しいが単純なものだ。色々考えてみたけどな。結局対策としては……癖とかを変えたり、そもそも理牌をしないとかだろうか。
ただ理牌……配牌されて最初に分かりやすく並べることをしないというのは、いきなりそれをすると、“理牌をしなかった”という情報を相手に与えるし、警戒されてしまう。最初の理牌の時の手付きや並べ方なんて如何にも癖が出るところだ。故に福路は真っ先にそこを見ているだろうし、それをしなければ配牌を完全に見抜かれるようなことはないだろうが……どっちにしろ対局が進めばそれも意味がない。結局牌を捨てたりツモったりする時にもバレるからな。
ぶっちゃけチートすぎてどうしたらいいんだって感じだが、オカルトとかで無理矢理突破しないのであれば、やれることは1つしかない。
「……っ」
おっと、やっぱり気づかれたな。これじゃあ利くのはこの局だけだろう。
もっとも、それで十分だ。癖が見抜かれなければ、それだけで福路は俺の手牌を読み取れず、振り込む確率が普通の麻雀並には上がる。
とはいえこれはしんどいからあまりやりたくはないな──自分の視線や手の癖を変えるってのは。
口で言うほど簡単な事じゃないし、俺も完全には出来てないが……視線の動きくらいなら、まあ一時的に読み取られないようにするくらいなら……まぁ、って感じだ。あまり麻雀で使いたい技術ではないが、エロの為なら使ってやろう。福路を落とす為なら多少は無理をするくらい訳もないんだよ池田ァッ! 池田関係ないな池田ァッ!
……まあとりあえず、これでいいだろう。いや、頼む。これで振り込んでくれ。これが駄目ならもう無理。もう福路は諦めるしかない。ただそれはしたくない。エッチしたい。福路のそのおもちを俺の物にしたい。JK新妻プレイしたい。
最低な願いを強く思いながらそれを待つ。福路は若干だが、俺を見て険しい表情を浮かべていた。ふふふ、どうだ? 俺もこういう狡いことは出来るのだ。初めてやったが、割と上手くいっているようで何よりである。
俺はついでに視線を福路に合わせ続けながら手を進める。そして──遂に聴牌。後は福路が白を振り込めば終わる。役満、字一色だ。オカルト発動で俺に惚れる。そうすればめくるめく快楽を俺は楽しめる。
さあ、来い! 来い! 早く振り込め! さあさあ!
「……東郷さん、その眼は……」
「お前を見てるだけだが? ──ははっ、というかお前のその眼、初めて真正面から見たが綺麗だな」
「っ……と、東郷さん……」
「ん、なんだ?」
「……なんでもないです……」
福路が俺の手牌を読み取れないことを声に出して遠回しに告げてきたが、生憎と俺は情報を漏らさない。逆にちょっとからかって動揺を誘ってみる。効果は微妙だが、全く効果がないという訳でもないか? ちょっと声が震えた。どうにも福路は褒められると照れてしまうらしい。もし落としたらいっぱい褒めてやろう。そうしてエロいことをいっぱいしてもらおうか。思考がクズになってきたな……。
そうしてまたツモり、捨てる。ツモり、捨てる。麻雀がただ進んでいく。吉留と文堂に聴牌気配はない。これでは振り込んで流すことも出来ない。今から副露させて凌ぐという手もなくはないが……それをしない辺り、2人は副露するつもりがないのだろう。そういう時もあるよな。オーラスだし、逆転を狙うなら高い手を目指すだろう。鳴いて早上がりする意味はあまりないのだから、幾ら福路が場をコントロールしていても無理なことは無理だ。やるなら福路自身が和了るか、そのまま凌ぎきるかの2択のみ。ただ自身で和了るにしてもベタオリするにしても、今までより危険はある。和了るために牌を捨てるなら、必然的に俺の待ちに振り込む確率は高いしな。
だからこそ──それはやはり、必然だった。福路が捨てたそれは、真っ白い絵柄のない牌で、
「──ロン……役満、字一色だ。48000。……はははっ、上がり止めで、逆転勝利だな」
「……!」
福路の眼が今まで以上に見開かれる。その意味は驚きだ。
明らかな驚きの表情と逆転による終局。俺の1位で対局が終了する。周囲がざわついた。
「や、役満……! しかも、キャプテンに直撃させるなんて……!」
「私、キャプテンがそんな高い手に振り込むところ初めて見ました……!」
「キャプテンが最下位なのも珍しいどころじゃないですね……」
「なっ……!? あ、ありえないし!? まさか、キャプテンが振り込むなんて……!」
部内でトップ。全国上位の打ち手として部員に一目置かれている福路が役満に振り込み、そして最下位で終わるなど、ちょっとした事件のようなものだ。
80名以上いる部員たちの視線を感じる。めっちゃ驚くやん……君たち……いやまあしょうがないけどな。元プロとか福路より下だと思われてもしょうがないし、そもそも福路との対局は2位ばっかりだったし。
ただそんな視線よりも、今は福路の様子が気になる。さあどうだ? 露骨な態度を見せてくれるのか? 今は出来れば止めてほしいが、とにかくオカルトは発動したはずだ。どうなるか見せてほしい。
俺は数秒待った。すると、福路も我に返ったのか、右目を閉じながらニッコリと笑みを浮かべ、
「……役満に振り込んだのは初めてかもしれません。ふふ、東郷さん……凄いんですね?」
「……まぁ、たまたまだ。そういう時もある」
俺は内心の高揚感は見せずに冷静な調子でそう言う。めっちゃ浮かれてるけどな! ひゃっほう!! これで福路は俺の物ォ!! おっぱいおっぱい! おまんこおまんこぉ!
「ふふ、ほんと……凄いです」
「……そうか?」
「はい。なんというか……東郷さんって……」
と、俺はその先の言葉を待つのだが……福路はそこまで言いかけたところで、
「……っ、いいえその、なんでもありません。それよりも、なんだかその、凄く熱いですね。ちょっと私、最下位なので一回抜けますっ。対局、ありがとうございましたっ!」
と、席を立ち上がっていそいそと部屋を出ていこうとした。
なんだか頬は赤く、様子はおかしい。表情はいつも通りに見えるが、なんとなく、負けて悔しいという感じでもない。
やはりこれは来たか、と俺は内心でほくそ笑んでしまう。こうなればこっちのものだと、
「……そうか。確かに今日はちょっと熱いかもな。少し休憩してこい。室内競技とはいえ、水分補給は怠るなよ」
「お、お気遣いありがとうございます。その……」
「ん、まだ何かあるのか?」
俺は敢えてそう聞いてやる。何かあるのなら大歓迎だと。
だが福路はチラチラと俺の顔を見て更に顔を、かぁぁと熱く紅潮させると、
「い、いえ、やっぱりなんでもないですっ。あはは……ご、ごめんなさい、失礼しますねっ」
「……おう、そうか」
福路が部室を出て行く。その一連のやり取り。それを俺は見て思った──勝ったな、と。
もう完全な勝利だ。あの様子なら、その時は近い。ここからの時間は完全にただのウイニングランだ。ただ普通に接していてもいい。ちょっと人気がいないところで2人きりにでもなれば、後はころっと頂ける。……あー、ヤバい! 興奮してきた! やっべぇー! 美少女の赤面顔サイコー!! JK美少女! 巨乳美少女ゲット! 最高だぞ池田ァッ!! 今なら幾らでも指導してやる! 勝っても負けてもどっちでもイライラしない自信があるぞ池田ァァッ!!
そして俺はしばらくの間、部室で指導を続けた。こっからはどうとでもなる。後は仕事を終わらせるだけなんだと──そう思って美少女を落とした高揚感をしばらく味わった。
さて諸君、放課後だ──セックスだ。
練習も無事に終わり、後はもう帰るだけだ──となれば逢引してセックスだ。
午前中に役満を福路に直撃させた。そして今日一日、練習中の福路を見ていたのだが……明らかに俺の方を気にしていた。
チラチラとこちらを見たり、話しかければ顔を赤くしたりしていた。これはもう完全に惚れている──だからセックスをしても良い。合意の上であればしてもいいのだ。
だからこそ、俺は敢えて校門付近で時間を潰している。福路と会うためだ。
邪魔者はいない……はず。池田は午前中で帰ったしな。妹の面倒を見なきゃいけないとかで。俺に何回か勝ってたのがちょっとイラッとするが……それはいい。福路を落とせた喜びの方が勝る。だから快く褒め称えてやった。
学校の敷地内で会ってというのも結構危ないような気もするが、まぁ、何気に信頼されているみたいだから大丈夫だろう。久保さんとかも俺を信頼してるっぽいしな。他の部員も多分大丈夫。
となれば後は福路を待つのみ。そして偶然会った風を装って、後は流れでいけるはずだ。……まあ家の門限とか言われたらちょっと困るけどな……大丈夫だと思いたい。その場合はどうしようかな……おあずけってのも辛いが──、
「あ……東郷さん……」
「! ──福路か」
とかなんとか思考を巡らせたところで、後ろから声が掛けられる。聞き覚えのあるその声は福路美穂子のものだ。彼女は相変わらずこちらを見て、ちょっと普段とは違う感じの表情を浮かべている。笑顔だが、どこかぎこちないというか、どうしていいか分からないといった表情だ。迷っているようにも見えるが、迷う必要はない。俺に任せろ。
「今帰りか? 良ければ送ってってやろうか?」
「え、あ……その……東郷さんの、ご、ご迷惑ですし、それは……」
「気にするな。ホテルに戻るついでだしな──ほら、ついてこい」
「う……は、はい……わ、分かりました……それじゃあ、お言葉に甘えて……」
多少強引についてこいと言ってみると、福路はぎこちないままに頷いて俺の後ろからついてきた。横ではない。ちょっと後ろからだ。なんか昔の日本女性の慣用句みたいな感じだな。3歩後ろからってやつ。福路には似合うといえば似合うが、俺的には隣に来てくれた方が目の保養的な意味で助かるんだけどな。そう思いながら駐車場へ。そして車のロックを解除して乗り込むと、福路も“お願いします”と言って助手席へ。シートベルトをしてパイスラに。昨日は目に毒だったが、これを今から味わえると思うと見かたがまた変わってくるな……趣深いというか……中々に唆る。というか襲いたくなってしまう。ただ初めてがカーセックスはさすがにどうかと思うし、このまま自宅まで送って、出来ればユキちゃんコース。あの時のように、そのまま家に上がってセックスが理想だが、両親がいないとかいう偶然が再び起こり得るのかと言うと……どうだろう。ちょっと不自然だが聞いてみるか。
「そういえば、福路は池田みたいに門限とかはないのか? 遅く帰ってきたら両親に叱られる、みたいな」
「あ、はい。その、家は両親が仕事で忙しくて帰りも遅かったり、泊まりの時も多いので門限という門限はないんです。実は、今日も泊まりみたいで……」
「へぇ……だから家事とか出来るのか? 料理もあんなに美味いんだもんなぁ」
「そ、それほどでもないですよ。……でも、褒めてくださってありがとうございます。その、私……嬉しいです」
あ、確かに嬉しそう。可愛い。それと朗報だ。どうやら両親は今日は帰ってこない。
やっぱ最近多いのかな。仕事が忙しくてってやつ。まあ片親とかも多いもんな。結婚とかそもそもしてなくても子供とか作れるし、最近は家庭での問題も多いという。やっぱどこも色んな事情があるもんだな。
だがそれよりもだ。家にいないというならどうするか……うーん、こう言ってみるか。話の流れ的に。
「そりゃ褒めるだろ。昨日今日と弁当もすごい美味かったしな。……あー、でももう食べれないか。明日からは福路も学校で会えるのは授業が終わってからになるしな。残念だ。もっと食べてみたかったんだが、あまり負担を掛けるのもな」
「! それなら……明日も作ってきましょうか?」
と、言われる。が、俺が求める答えはそっちじゃないので、嬉しいし是非ともお願いしたいが……敢えて拒否する。
「いや、さすがに朝や昼に会って弁当を手渡してもらうってのもな。俺も用事があるし。……あー、でも食べたいは食べたい。福路の料理、ほんとに美味しくて好きなんだけどな……」
割と本気の言葉なので不自然さはあっても演技ではない。本音の言葉だ。残念ではある。でも別の目的もあるのだ。今食べたいのは料理もだが、福路自身でもあるというだけだ。
さて、俺の言葉を聞いた福路がなんと答えるか。福路ならそう言ってくれると信じてる。だから言ってくれ。
俺が祈りを捧げて待つ中、福路は少し気恥ずかしそうに、それでいて何か考えるように下を向いていたが、やがて目線だけをこちらに向けると、
「……その、でしたら……夕食はどうでしょう……」
「夕食……今から福路の家でってことか?」
「は、はい。どうでしょうか?」
──来た。やはり聖人福路美穂子。そう言ってくれると信じていた。
俺は勿論頷く。少し遠慮してみせながらも、
「……いいのか? いや、俺は是非ともお願いしたいくらいだが……」
「はい。私も東郷さんと一緒に──あ、いえ、その、御飯をご一緒したくて……その、是非もっと、私のご飯を食べてほしいんです……」
こちらを見て上目遣いで、食べてほしいんです……、は中々に破壊力高い。うおー! 食べる食べる! そんなこと言われたら美穂子も一緒に食べたくなるだろ池田ァッ! だから池田はいないんだよなぁ……。
「……ならこのまま福路の家に向かうか。悪いが頼む」
「あ……はいっ! 任せてください!」
あー、すっごい笑顔で嬉しそう。可愛い。嫁にしたい。いや出来る。もう出来るんだよ俺ェ! だが勃つのはもうちょっと待て! セックスの予感を感じるのは間違いじゃないが、もうちょっと後だ! もうすぐだからもう少しだけ辛抱しろ息子!
というわけで俺は恋した様子の福路と一緒に、彼女の実家へ車を走らせた。……よっしゃ行くぞオラァッ!
焦らしてしまって本当に申し訳ないと思っている。だが次回はとうとうエロエロだ池田ァッ!!
皆の熱い感想、待ってる