本当の金持ちってスケールが違うよな、と時々思う。
いきなりなんだって感じだが、いやほんと、たまにこういう下らないことを考えること、誰にだってよくあるだろ?
例えば……自分が金持ちの家に生まれていたら、とか、そういうどうしようもない、“もしも”の話だ。
そんなこと話してもしょうがないと、誰もが言うし、思うことだが、なんだかんだでそういう話って結構しがちだよな。なんか意外と話が膨らんだりもするし。
だがそこらの一般人が想像する金持ちと、実際の金持ちにはそこそこの乖離があったりする。
俺達の国には金持ちが結構いるので、身近にそういう人物がいたり、話を聞いたりすることもあるだろうが……まぁ、殆どの金持ちは、自分は普通のそこらの人と変わらない。感覚は一緒だと言う。
まあ実際に、庶民的な店を利用したり、妙に所帯じみてる奴はいる。いるが、そこらの人と変わらないというのは、大体が嘘である。
意識してないだけで、金持ちとそれ以外では大きな隔たりがあるのだ。例えば……服を値段を見ずに買ったり、車検の時期毎に車を買い換えるような、金銭感覚の違いは特に大きいと言える。
そもそも育ちが違うのだから感覚が一緒になる筈がない。金持ちでなくとも、育った環境の差というのは如実に現れるのだから。
友達の家で夕飯をご馳走になったら、味噌汁とかカレーに入ってる具が違うとか、よくある話だろう。……ちなみに俺は味噌汁の具はネギと豆腐とワカメに豚肉だ。なんかちょっぴり豚汁っぽいけど、豚汁だとワカメとか豆腐とか入ってない変わり種な気がする。が、家だとそんな感じだ。
これが金持ちなんかになると、食事の時に出てくるものとかで結構な差があったりする。だからといって、金持ちらしい露骨な物を食べてるとは限らない。頻繁にステーキ食ってたりする訳じゃないのだ。
ただ、使ってる食材一つ一つが高級品だったり、食器が充実していたりするだけだ。お昼に素麺食ったり、みたいなことも全然ある。ただちょっと上品で色々入ってるだけだ。一本7000以上はする国産松茸とかな。ぶっちゃけ松茸とかそんな言うほど美味いって思ったことはないが。椎茸で良くね? まあそもそも素麺にきのこいらんけどな……ネギがあれば十分。むしろネギが1番美味いまである。マジ俺って貧乏舌。
……とまあ、それは良いとしてだ。自分では常識と思ってることが、実は世間一般とはズレていたりすることなんて例に事欠かないだろう。金持ちの常識は一般人の常識ではない。だが、彼らにとっては紛うことなき常識であるが故に、一々他人に言ったり、ひけらかしたりしない。態々人に言ったり、SNSなんかにこんな凄いことした、凄いもの買った、なんて載せてる奴らは真の金持ちとは程遠い。金をそこそこ持ってるだけの成金か、ちょっと無理をしてでも、他人よりも上だと喧伝したがってるマウント人間だ。勿論、そうじゃない純粋な人も中にはいるだろうが……まぁ、それもいいとしておこう。
ただ、なんだ。要は純粋な金持ちって俗世からかけ離れてるっていうか、1周回って漫画みたいなイメージでの金持ちだったりする。
そういう人、家は本当に少ないけどな。現代の金持ちなんて殆ど成金だし。親とか一族が元々金持ちってなるともっと少なくなる。財閥とかを経営してる一族とか、そういうのがありがちである。
俺はまぁ……プロにいたこともあって、金持ちと関わることはそれなりにある。トッププロとかはやべー金持ちだからな。前に聞いた良子の年間で稼ぐ金額なんかを聞いた限りだと、マジではやりさんみたいな人気も実力も経験もあるトッププロだと……多分、桁が違うはずだ。
だからまぁ、そこまで驚くことはない。金持ちと会ったとしても──と、俺は普段通り、自然体でいたのだが、
「でっけぇ……」
俺は正門──洋風の屋敷の前でちょっともう感心するような声を出して立ち止まっていた。
なんとも馬鹿でかい家だ。和風ならともかく、洋風のこんな、ステレオタイプの金持ちが住んでるような家は初めて見た。
広々とした庭まで付いてて、噴水とか庭園があって、専用の庭師とか、メイドとか執事がいるような家。これだと多分料理人とかもいるんだろうな。中々お目にかかれないレベルの豪邸である。
まあ、俺が何故そんなところを訪ねているかと言うと……ここに、俺の依頼主が住んでいるからである。
「間違いなくここだしな……」
右の方を向いて独り言を呟く。正門の横にある大きめの表札にはきちんと、“龍門渕”と雇い主の名字が刻まれていた。
「……しょうがねぇ、入るか……インターホンは……」
何とも言えない気分にはなっているが、入らざるを得ないのでインターホンを鳴らすことにする。
まあもう誰でも分かるだろうが、龍門渕っていうのは、龍門渕グループという日本でも有数の財閥、上から数えた方が早い超お金持ちの家であり、同時に、去年の全国高校麻雀選手権、女子の部で長野県代表校を務めた私立、龍門渕高校の母体、当主が理事長を務める、あの龍門渕である。
学校の方じゃないのか、とも思うが、依頼主から渡された住所がここなのだから仕方がない。実は麻雀部からの依頼じゃないのか、とも思うが、よくよく調べると龍門渕高校の団体戦メンバーに、龍門渕という名前があるのでそういう訳でもないらしい。
ならやっぱ学校にしろよ感凄いが、依頼主には逆らえない。報酬も倍以上貰ってるしな……と、俺はインターホンを鳴らす。すると少しして、
「──お待ちしておりました」
「!」
と、中から執事が現れた。もう執事としか言えない。テンプレな執事が現れた。
しかも黒髪の超イケメン。ムカつくな……イケメンは嫌いだ。いや、まあガチで嫌いって訳でもないし態度に出す程でもないが、イケメンというのはズルいから内心でちょっと文句を言うくらい良いだろう。というかなんか執事ってだけで完璧そうだし、明らかにモテそうなのがムカつく。俺も割と目の隈さえなければイケてるはずなのに……いや、でも今はオカルトのおかげでモテてるからマシだ。オカルトがないと悲惨で劣等感半端なかっただろうが、今はオカルトのおかげかそうでもない。やっぱオカルトって神だわ。
「東郷仁様ですね。私、龍門渕家で執事をしております、ハギヨシと申します」
「……ああ、はい。東郷です。今日からよろしくお願いします」
「はい。では透華様の元にご案内致します。どうぞこちらへ」
「はい、お邪魔します」
会話もそこそこに屋敷の中へ。それにしてもマジでデカいというか、豪華な屋敷だな……さすがにここまで広い家は見たことがない。完璧そうな執事もいるし。龍門渕家ってヤバいんだな……。
そして、敷地が広い所為か、中々辿り着かない。しょうがないから会話をするしかない。沈黙過ぎると気を使ってしまう大人の良いのか悪いのか分からない癖だ。
「ハギヨシさんはここに勤めて長いんですか?」
「そうですね。幼少の折りから龍門渕家にお仕えさせて頂いております」
「へぇ、そうなんですか」
「はい。それと東郷様、私に敬語は不要です」
と、言われてもな……初対面で年上の人に敬語を外すのは中々やり辛いものがあるんだが……と俺はそれを言うことにする。
「ですが年上相手には……」
「……いえ、私はまだ19歳で、東郷様より年下ですよ?」
「えっ」
は? こマ? いや、全然そうは見えないんだが……え、19歳? マジで見えねー!? 嘘つくなよ。お前、どう見ても20そこそこって感じだろ。アラサーとかには見えないが、22から24辺りだと勝手に思っていた。俺よりは年上か、あったとしても同年代くらいかと。そう思っていたらまさかの19。成人すらしてないとか……えぇ……。
「……ということは、俺の2個下の学年か……」
「いえ、私は早生まれですので学年で言えば東郷様の1つ下になりますね」
「あっ、そうなのね……」
早生まれ。ということは来年の1月から3月辺りが誕生日で、今年度に20歳になるという訳だ。まあ俺の誕生日は4月の初旬で、同い年の中では一足早く年齢が上がるし、今はまだ4月下旬ということもあって、今年19になるのかと勘違いしてしまったが、まあそういう言い方もあるよな。今年に何歳になるとか。
ただこいつは一応1個下で……うん、まだ良かったな。何故かちょっと安心した。1個下でも驚きだが、まあ俺もよく年齢を間違われるしな……目のクマとか、雰囲気で初対面の人には24、25辺りに思われることが多いし。そういう意味ではハギヨシと俺は似てるのかもな。光と影的な。どっちもイケメンだし。……いやごめん、調子乗ったわ。一応、イケメンカテゴリにはギリ入るかもだが、ハギヨシには敵わねぇ……ハギヨシが上の上か上の中なら、俺は上の下くらいだわ。性格もクズだし。勝てるのは性欲とかかな? 最低過ぎる。
「……んー、まぁ、そう言うなら敬語は崩すが……」
「はい。私としてもその方が落ち着くのでお願い致します」
「おお……根っからの執事なんだな」
「ありがとうございます。ですが東郷様も……根っからの雀士と言いますか、普通の人とは違う気配を漂わせておりますね?」
「はは、さすが執事。お世辞が上手いな」
「いえいえ、お世辞ではありませんよ。透華様にお呼ばれするだけはあると思いました」
「褒めすぎだ」
屋敷の長く広い廊下を歩きながらハギヨシの言葉を聞く。いやこいつ、さすが執事というか随分と相手を褒めるのが上手だ。お世辞過ぎるが、嫌味な感じも、露骨な感じもしないので、例えそれがお世辞でも悪い気はしない。冗談が上手い奴だが、人から好かれたりする奴ってこういうお茶目なところがあるんだよな。くそっ、やっぱり性格までイケメンなのか……? まあ真のイケメンって普通に良い奴も多かったりするから困るんだよな……責めるとこがなくてブサメンからすると劣等感半端ないっていうか、少しくらいなんか嫌なところがあってくれ、って思ってしまう。まぁ、俺がブサメンとか言うと世の中のモテない男性の方々に失礼なので、謙虚は程々にするけどな。俺は容姿だけで言うなら割と見れる容姿。ほんのりイケメンである──あっ、イケメンの悪いとこ思いついたわ。このハギヨシみたいなガチのイケメンって、イケメンだよねって言うと、そうでもないって遠慮してくる奴がいるけど、そういうとこは悪いところだと思う。絶対そんな訳ないしな。見るからにイケメンなんだから自分でも分かってるはずだし。謙虚も過ぎると嫌味に聞こえるやつ。俺だって自分がそこそこのイケメンであることは分かってるしな……そこそこ止まりでオカルト無しだと全然モテない上にクズだからアレだけども。オカルト無しでもモテまくるイケメン共、マジで羨ましい。
「東郷様も元プロですし、やはり幼少の時から麻雀を打ったり、もしくは何か特別な事をしていたりするので?」
「……いや、特には何もやってないけどな。麻雀を始めたのは確か小3の冬くらいだったし、別に物心ついた時から麻雀を打ってたって訳でもねぇよ」
「……そうですか。でしたら、相当努力されたんでしょうね」
「努力はそこそこだから才能がちょっとあっただけだろうな。プロ、クビになってるし」
「なるほど。東郷様は自分のことをそう評価しているんですね」
いや、評価っていうか……純粋に思ってることを言っただけだけどな。言ってしまったとも言うべきか。
まあ俺の麻雀への熱は中途半端になっていったし、高校の時にはもう努力なんて殆どしていない。そういう意味では俺には才能か……もしくは、それまでに積み重ねてきた経験と知識があったからプロになれた。
そしてプロになって少し努力を再開したが……やっぱり駄目で、俺は結局堕落した。
そして今では女の子を堕としてエロいことをするために活動していて……うん、やっぱクズだな。なーんでこんなクズがお呼ばれしてるんですかねぇ……こう言うのもなんだが、皆見る目がないのでは?
まあそうは言っても人が人を見抜くのは難しいからしょうがない。人を見抜く目を持ってると自称する世の人事職やお偉いさんも、ぶっちゃけ見抜けてるかって言うとなんも見抜けてない。自分が気に入った人間を良い奴だと適当に言ってるだけだし。マジで人の本性を見抜ける人間はほんの一握り。それこそ──
「──着きました。それでは東郷様、先にお進みください」
「ああ……って、ハギヨシ……で良いか? ハギヨシはもう行くのか?」
「いえ、私は後ろから。お付き致しますので、東郷様はどうぞお先に」
そんなこんなで部屋に着いた俺はハギヨシに先に進むことを勧められるが……なんかこういうのって普通、執事が扉を開けてくれるものじゃないのかとちょっと不思議に思う。
まあそこまでおかしなことじゃないが、なんかハギヨシから視線も感じるし……いや、まさかとは思うが……俺の後ろを狙ってるのか? それなら確かに──って、待て待て。さすがにそれはない。ないと思う。ないと思わせてくれ。俺にそういうケはない。俺はノーマルなんだ。
「……如何なさいましたか?」
「……ああ、いや、なんでもない」
扉の前で立ち止まって頭を抱えていると、背後からハギヨシの疑問視する声が届き、なんでもないと扉に手を掛ける。うん、何もない。ちょっと気にしないようにしよう。これから仕事だし。一応元プロとしてちゃんとしようと、俺は扉を開けて、
「──ようこそいらっしゃいましたわねっ!!」
「…………」
「わたくしが
えっ、なんかテンプレお嬢様が出てきた……テンプレ執事にはテンプレお嬢様ってか? お約束過ぎて呆然としてしまう。
バンッ、ともし漫画なら見開きで効果音が背景に付くような勢いでその龍門渕透華という……まあ美少女ではあるか、その美少女は自信満々といった様子で名乗りを上げた。
金髪の、少しウェーブのかかったロングヘアー。そんでアホ毛でツリ目気味で強気そうなお嬢様か……なんかアレだな。そういうの好きな奴がいたらどストライクそうというか、お嬢様属性をこれでもかと盛り込んだ奴である。
まあ胸がないので俺としては普通。いや、美少女なので悪くはないが、やっぱおっぱいが欲しいんだおっぱい……変な語尾つけるな。でもお嬢様とかそういうキャラって特徴的だったり変な口調、語尾つかうよね。全く、変な語尾でキャラ付けとかやめて欲しいザウルス。
「……東郷仁。元プロです。依頼して頂いてありがとうございます。態々倍以上の報酬まで頂いて──」
「遠回しな美辞麗句やよいしょは結構ですわ! 敬語も使わないで結構! あなたに求めるのは麻雀。それ以外にありませんわ!」
と、またしても勢いよく言われてしまう。まあ確かに、金持ちでお嬢様ならそういうやり取りというか、ごますりとかお世辞は嫌いかもしれない。まあ一応指導として来ている訳だし、そういうことなら──と、普段どおりの口調で喋ろうとしたが、
「……それに、褒めるならもっと直接的に褒めてくださいまし! 美しいとか凄いとか目立ってるとか!」
「そういう問題なのか……」
続いてそう言われて、げんなりとツッコミを入れてしまう。ああ、うん。やっぱりなんか変な子だわ……最近変に自信過剰だったり、キャラが濃い奴と会うことが多い気がする──池田ァッ! お前のことだからなぁっ!!
いやでも実際、麻雀やってる奴って変な奴多かったりするし、高校での有名選手やプロとかヤベー奴だらけなので慣れてもいる。お嬢様キャラくらいならまぁ……よくいる……こともないが、キャラ的には薄い方の筈だ。多分。ということで気を取り直してその部屋の面々を見てみると、
「へぇ、今度はプロか。って、目の下のクマ凄いな、おい……」
「うわぁ……確かに、あれはヤバいね……ちゃんと寝てるのかな……?」
「……調べたけど、どうやら不眠症気味らしい……」
広々とした部屋。自動卓が1つ置かれたその部屋のソファーには、3人の少女が座っていた。
1人は長身。男……ではないか。男っぽいが、女だ。長身でボーイッシュというよりかは、マニッシュな少女。余裕で俺より身長高いのは何とも言えないな……うん、容姿が醜い訳ではないが、無しだ。というかイケメンに見える。
そして次の1人は……頬に、なんだ、タトゥー……か? 星型のタトゥーを付けた可愛らしい黒髪の少女だ。短めのポニーテールで……何故か手錠を両手に付けてる。えぇ、なにそれ……もしかしてそういう趣味の子なの? ……ちょっとエロいな……うーん、有りっちゃ有りだ。胸はないけど華奢で可愛いし。
そして次は黒髪ロングで眼鏡。パソコンを手に持ったインドア系の……ん……? んんっ? これは……どうだ? おもちの気配がする。身体の線が出ない緩い服を身に着けてるので分かりにくいが……隠れ巨乳か? 可能性としてはあり得る。そうでなくともこの面子の中では大きい方だろうし……有りだな。
「はいはい! 座ってないで自己紹介ですわ! 一応、使えるかは分かりませんがお客様ですのよ!」
「引っかかる言い方だな……」
俺が内心で品定めという名の評価を下していると、龍門渕透華が手をパンパンと叩いてその場の面々に自己紹介を促した。すると全員が立ち上がり、俺の前に並ぶ。そして透華が、
「ここにいるのが龍門渕高校麻雀部のメンバー! 1人いませんが、そちらは後で紹介致しますわ!」
「オレは
「ボクは
「メイド2号の
「よろしく……って、全員メイドなのか?」
「全員、龍門渕家で雇っているメイドになりますわね。全員同学年で団体戦のメンバーですわ」
「マジかよ……」
中々に特殊な環境だな……って、ん? 麻雀部のメンバーって、
「というか、麻雀部ってこれだけなのか? ここにいる4人と、あの天江衣だけ? 長野県代表校だってのに随分少ないな」
「あら、衣はさすがにご存知ですのね。ええ、以前の龍門渕高校の麻雀部は去年、わたくし達が殴り込みをかけたところ、全員退部してしまったので、今はわたくし達だけですわ──って、衣は知っていてわたくしは知りませんの!?」
「透華が時間差でショック受けてる……」
「ははは、懐かしいよな。透華がいきなり、殴り込みですわ! っていきなり物騒なことを言うから驚いたもんだ」
「まさか暴力に訴えかけるとは思わなかった……」
「じ、実際に殴り込んだ訳ではありませんわ! 道場破りのようなものですの! 以前の麻雀部は旧態依然としていて、進歩もなく、見ていられない有様でしたので、看板を乗っ取ったまでですわ!」
いや、それでも中々ヤバいけどな……うん、しかしそうか。やはり特殊というか、龍門渕高校は他の高校とは全然違う環境にあるみたいだな。
メンバーというか部員も5人だけ。去年の代表校ではあるが、強豪校と言うよりは、突然現れた台風の目。去年のダークホースだ。昨年は全員1年だったのに、長野屈指の強豪校である風越女子を下して全国に名を轟かせた。まあ良い感じのドラマがありそうな高校。テレビとか雑誌記者とかが好きそうだな、こういうの。
というか、部員は少なく、この4人が打ってる姿をまだ直接見てはいないものの、確かな風格のようなものを感じるし、少数精鋭という言葉が似合うチームだ。……いやなんか、風越が可哀想になるな……風越は美穂子と池田以外はこの面子に敵いそうにないのがなんとも……一応指導はしてやったが、今年の県予選もかなりキツそうだよな。
「天江衣は欠席で……ん? というか、そういう事情ならここが部室にでもなるのか?」
「そうなるな。いやだって、俺達ここに住み込みで働いてるし、部室を使うよりこっちでやった方が便利で快適なんだよな」
「だねぇ……学校だとちょっと他の人の視線が気になるし……」
「それに、いつでも引き籠もれる……」
「ふふん。屋敷に部室以上の設備を作るくらい、わたくしからすれば朝飯前ですわ!」
「まぁ、たった5人だからそんな豪華な設備はいらないんだけどね」
「おかしとか飲み物とか幾らでも出てくるのが重要だよな」
「椅子が気持ちいいのと、通信速度が快適……」
「ですわっ!?」
「……なんかノリが良い部活だな……」
「東郷様も、必要な物があればいつでもお申し付け下さいませ。滞在中、東郷様のお世話は私が担当致しますので」
ああ、そうか。滞在中は──ん? というかまさか。
「……俺、ここに泊まるのか?」
「そうなります」
「あら? メールに書いた筈ですが……泊まるところはこちらでご用意すると……」
「透華。多分、東郷さんはホテルか何かを用意してくれると思ってたんじゃないかな?」
「まぁ、普通はそうだよなぁ……まさか屋敷に直接泊まらせる。泊まれるような屋敷だとは思わないだろうし」
「ここは客室も沢山あるし、そこらのホテルより快適……」
「……なるほどな」
皆が補足というか説明をしてくれて、俺は合点がいく。そうか、お金持ちだということを失念していた。いや、気づいていたが、お金持ちの意識の差というものを忘れていたと言うべきか……。
ガチの金持ちっていうのはやることのスケールが違うというか、これだけの屋敷を持ってるなら客を泊まらせるくらい訳ないということだ。いや、太っ腹だな……井上、国広、沢村が言うように、普通のホテルより快適だろうし、意外と滞在中は良い生活を送れるのかもしれない。
それに、なんだかこの面々は空気が緩いというか、ノリが良いな。風越なんかの強豪校だと、割とピリピリしてたりするもんだが、ここは皆リラックスしてる感じがする。まあ勿論、練習となれば真面目に真剣にやるのだろうが、普段は気を抜いて、快適な空間で寛ぐというか……なんかプロチームとかに似てるな。海外とかのチーム。後は、親会社が金持ちの一部のチームだとこういう環境も多いと聞く。
どちらが良いかは俺には分からないが……ある意味理に適ってるというか、新興の強豪チームらしいか。風越のような伝統もいいが、こちらも悪くはない。個人的にはこちらが羨ましい。慣れているのは風越みたいなところだけども。
今のところ、不安要素は皆無だな。まあ堕とす相手が……まだなんとも言えないのがちょっと俺的に思うところはあるが、不安要素ではない。あるとすれば──
「……それじゃ、早速打つか? それとも──もう1人に会わせてくれるのか?」
「そうですわね……ハギヨシ、衣は?」
「今は別館に戻っておりますが、お連れ致しましょうか?」
「……ふむ。でしたら先に練習を済ませましょう。夜になったらもう一度練習として……衣に会わせますわ」
「畏まりました。ではそのように伝えておきます」
失礼します、と言ってハギヨシはその場から消えた。うん、いや、なんだろうな……執事ってそういう素早い動きみたいなのはデフォなんだろうか。執事は特殊な訓練でも受けないとやってられないのか。恐ろしい世界だ。
「よし、それじゃあ先に打つか! まずは俺が入るけど、いいよな?」
「別にいいけど、どうする? 透華は後にする? 最初は純くんとボクにともきーでいいかな?」
「真打ちは後から登場するのですわ! というわけで東郷さん、席に着いてくださいまし!」
「おお……うん、よろしくな」
「今、明らかに透華へのツッコミの言葉を飲み込んだね……まあそれはともかく、よろしくお願いします」
「よろしくな。元プロの実力、見せて貰うぜ」
「……よろしく」
「ああ、まあお手柔らかにな」
と──そんなこんなで龍門渕高校……龍門渕家での麻雀指導が始まった。俺は席に座り、一応、最初くらいは真面目に、やる気を出すかと思って……、
「──と、失礼します。言い忘れていましたが、お飲み物は何に致しますか?」
「あ、ハギヨシさん。俺、コーラで」
「ボクはオレンジジュース」
「アイスティー……」
「わたくしは紅茶をいただきますわ」
「はい、畏まりました。東郷様もお好きなものをどうぞ」
「えっ……じゃあグレープフルーツジュース」
「承りました。では、しばしお待ち下さい」
シュンッ、と再びハギヨシが室内から消える。……まぁ、ノーコメントだ。とりあえず、ここに来て最初の感想は──ハギヨシはヤバい、ということである。
次回はとうとうころたんです。初……でもないけど、魔物級が登場。龍門渕家の空気好き。咲日和の所為だけど。アンケートはいつも通り、興味本位と参考程度に。龍門渕だと誰が人気なんだろうねって。
皆の熱い感想、待ってる。
【参考程度に】龍門渕高校で好みの子は?
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井上純
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沢村智紀
-
国広一
-
龍門渕透華
-
天江衣