龍門渕の邸宅での寝泊まりは、客室とはいえ中々の居心地だった。
不眠症気味の俺もある程度は寝ることが出来るくらいには快適。俺も今度、寝具を買い替えてみようかとも思うが、寝具だけでなく、この環境にも依るところがあるだろうし、そもそも慣れたらあまり意味は無さそうな気もするのでそこは懐と要相談だ。
まぁ、ここに泊まってる間はまだ宿泊費とか食費とか浮きそうだから良いとしても、今週末からはGWだし、次の指導の準備もしなきゃならないし、そもそもGWの宿泊とか高いから色々と面倒だったりするんだよな……。
いっそその間も龍門渕に泊まれたらいいのだが、さすがにそれは無理だし、微妙に頭を悩ませる。うん、それと、頭を悩ませると言えば──
「起きろ、とーごー!!」
「おふっ……!?」
布団の中でグダグダしていると、突然の奇襲。……いやまぁ、部屋の中に誰か入ってきたのは気づいていたが、どうせメイドとか、ハギヨシ辺りだと思って、普通に起こしに来たのかと思ったら衝撃が来た。しかも高めの声。子供っぽいこの声はやはりと言うべきか、天江衣だった。
「もう辰の刻を過ぎるぞ! 早く起きて衣と麻雀を打て! 今日こそは衣を恐れさせてやる! さあ起きろ! 懈怠な生活は許さん!」
「んー……はいはい、もうちょっと後でな。後で飯食ったり色々してから……」
「ふっ、自ら逢魔時を望むとは命知らず! ……でもそれだと今日がすぐ終わってしまう! だから早く覚醒しろー!」
耳元で凄い騒いでるのが聞こえる……子供って朝は元気だよな……衣は夜の方が強いけど、夜は夜でそんな夜更しが得意という訳でもないし、ある意味ちぐはぐな力だ。
早く打てと言われて打たなきゃならない辺り、指導の単位を1日毎に設定したのは間違いだったかな、と思う。1日って、究極24時間だもんな。そんな連続で打たされることなんてないはずだが、朝から夜までってのは確かに十分あり得る。それで5000円とか俺って優しすぎる。時給幾らだよ。最低賃金も真っ青……いや、龍門渕に限っては多めの報酬なので適用されないけども。
だからまぁ、打てと言われれば打たなきゃならんのだが……もうちょっと待って欲しい。何事にも自分のペースというか、特に朝は自分のタイミングで起きたい。
……というか、今は朝勃ちしてるからちょっと収まるまでは待ってほしい。後ちょっとで収まりそうだし、それが終わってから起きるとしよう。だから、
「あー、もうちょっと待て。ほら、部屋の外出てろ。起きる、起きるから……あー、眠っ」
「そんなこと言って、
相変わらず難しい言葉で俺の状態を表している。いやほんと、起きるからもうちょっとだけ待って欲しい。そう思っていると、
「早く起きろー!」
「うおっ……!?」
今度は俺の上に衝撃。何かがのしかかってくる──というか、明らかに衣だった。衣がベッドで眠る俺の上に、正確には布団の上から乗っかって来ている。そしてそのまま、俺の腰の上で飛び跳ねて、
「こらーっ! 早くおっきしろー!」
「おふっ、わ、わかったわかった。起きるから飛び跳ねるな」
「……ほんとか?」
衣がなおも疑り深い視線を俺に向けてくるが、いやほんと止めて欲しい。起きるも何も二重の意味で起きているしな。というか、もろに衣の股の下にある。布団が間に挟まってるだけマシだが、それでも大分ヤバいことをしてる自覚があるのだろうか。……いや、ないだろうな。衣だし、子供だし。ただこんなロリとはいえ、圧迫されると変な気分になるからマジで止めて欲しい。何がおっきしろだ。もうおっきしてるっつーの(最低)。
「本当だ。ほら、もう普通に起きて会話してるだろうが」
「それは確かに……ふぅむ……」
「……なんだ? まだ疑ってるのか?」
「……いや、そうじゃない。衣は感心していた」
「感心?」
ああ、と頷く衣。俺が目覚めたことは分かっている筈なのに、何やら興味深そうに俺を眺めている。なんだ? と今度は俺の方が訝しげな視線を向けていると、衣は軽く俺の上で身じろぎしながら、
「男の身体とは中々に硬いものだな……筋肉量の差か? こうして座しているだけでも違いが分かる。身体の硬さが……」
「……ああ、うん。そうだな」
俺は何とも言えない顔で頷く。ほぼ声も棒読みだ。……いやうん。男の身体と女の身体は違う。確かに衣の言っていることは間違いではないのだが……衣、お前が感じてる硬さは筋肉って言うか、ただのチ○コだ。それも分からないのか。やはり見た目だけでなく、知識までお子様なのか? ……いや、単純に意識してないだけって可能性の方が高いな。頭は良さそうだし。
「お、おおっ? 筋肉が鳴動している……面妖な……」
いや、だからそれ、筋肉が動いてるんじゃなくてチンコが動いてるんだわ。勘違いさせてすまんな。……いや、いくら見た目が小学生みたいな幼女とはいえ、勃起したチンコの裏側を圧迫されると一応気持ちいいんだわ。衣の触れてるところ、なんかめちゃくちゃ温かいし、ぷにぷにしてるしで何とも言えない。これはもう実質素股。いや、もう実質セックスでは? 完全に入ってるよね──とか、こういうシチュと絵、漫画とかだと絶対ネタコメント付けられるやつじゃん……まさか現実で俺が体験することになるとは……貴重な体験ではある。人に言えないけど。というか、ボブ辺りのロリコンに言ったら血涙流しながら殴りかかってきそう。
「……堪能したか? 堪能したならそろそろ起きるからどいてくれ」
「あ、うん。……んっ、でも、なんだこの感覚は……? 少し変な感じがした……?」
「お前も打ちすぎて調子が悪いんじゃないか? ほら、着替えるから部屋出てろ」
「むっ、調子は悪くないっ。その証拠に、後でこてんぱんにしてやるから覚悟しておけっ!」
……まぁ、俺はロリコンじゃないので、割とあっさりとその状況を手放す訳だが……俺はさっさと衣を部屋の外に追い出しながら、何気に朝勃ちよりも微妙にギンギンになった息子を見て思う。……やっぱもうちょっと堪能しておけばよかったかな? いやロリコンじゃない。ロリコンじゃないんだけど……性欲って恐ろしいよね。ロリコンじゃないのに、ちょっとアリだと思わされた。はぁ……なんだか負けた気分だな……。
──そうして、朝から貴重な体験をしつつ、朝食を食べて昨日同様、龍門渕高校麻雀部の面々に軽く指導する。
今日は最初から衣もいる。俺と打つためらしいが、俺も衣ばかりに構ってはいられないんだよな。俺が打たないタイミングで、もう1人、余った面子を1人1人指導したり、アドバイスしていく。軽い会話を交えながら、
「井上は流れを読む……いや、流れに乗るのが上手いな」
「おっ、褒められた。それは元プロのお墨付きを貰えたってことでいいのか?」
「ああ、筋は良い。学生の内から……しかも、特殊な力を持たずにそこまで場の流れを感じ取れるのは稀有な才能だな。……どこで習った?」
「ドイツ。昔留学してたんだ。ギーセンっていうヘッセン州にある……って、分かるか?」
ドイツ。そう聞いて感心する。ドイツと言えば麻雀先進国の1つであり、世界的な強豪国だ。ランキングも常に上位で、数多くの世界的選手を輩出しているし、ドイツの麻雀リーグと言えば日本のプロが目指す1つの到達点でもある。
そこに留学していた……ということであれば、確かにそういった稀有な才能に目覚めていてもおかしくはない。確かにドイツは色々と……うん、まあ色々あるしな。俺は思い出しながら井上の言葉に頷く。
「一応、何度か行ったことはあるが……しかし、そうか。それなら相当揉まれただろう。あそこは化け物だらけだからな」
「ああ、まぁ……やりがいはあったけどな」
井上が苦笑しながら曖昧に頷く。過去を思い出してるのだろうが、まあ確かにやりがいはあるだろう。やりがいって言うか、めちゃくちゃボコられた可能性もあるけどな。ドイツの有名選手って言えばニーマンとかブルーメンタール姉妹とか、とんでもない怪物、魔物がいるし、その他にもヤバすぎる強豪がぞろぞろといる。一応今でも欧州や米国、中国辺りのプロリーグは見てるし、ちょいちょいニュースにもなるから分かる。
まぁ日本のニュースだと、ドイツという世界最高峰リーグで活躍するワールドレコードホルダーさんがいっつも記事になってるけどな……いやもう、あの人マジ化け物。確か、はやりさんとは小学生の時からの知り合い、中学高校と同級生で同い年の親友なんだよな……一回だけ会ったことあるけど、あの人だけは……マジで出会った瞬間にちょっと震えた。というかはやりさんの同級生は黄金世代過ぎるというか、そもそもはやりさんの出身である島根県が魔境過ぎる。魔境っていうか、もう魔界だよね。はやりさんの友達とか漏れなくトッププロばかりだし。しかもその殆どが海外のトップリーグで活躍してたりする世界的な名選手ばかりでヤバい。同窓会とかしたらもうその面子で日本代表が結成できそうなくらいにはヤバい。混ざったら消し炭になりそう……って、思い出した。俺、その化け物黄金世代の1人に呼び出し食らってるんだった……あー、どうしよ、行きたくねぇ……名古屋に戻ったら行かざるを得ないんだろうが、行きたくねぇ……。
「お、おいどうしたんだ? 急に頭抱えて……」
「……ああいや、悪い。ちょっと思い出したことがあってな……はぁ、井上はなんでドイツから帰ってきたんだ?」
「……? あー、まぁ、透華に熱心に勧誘されたし、色々思うところがあったんだよ。そんで日本で麻雀することにした訳だ」
詳しいところは教えてくれなかったが、どうやら透華に勧誘されたらしい。……というかここの部員は衣を除いて皆透華が連れてきたっぽいな……大体何の為かは見当が付くが、まあそれはいいだろう。他人の事情、過去を必要以上に聞き出すのはあまり良くないしな。それよりも問題は、
「……なるほどな。とはいえ井上。その打ち方はお前の長所ではあるが……流れに乗るだけではそれを乱された時に辛いぞ?」
「っ……中々痛いとこを突いてくるな。でもまあ、それならそれで面白いと思ってるからオレ的には望むところだ」
「自信があるのは良いけどな。流れなんてガン無視。無理やり自分の打ち方を通してくる奴も沢山いる。謂わば、流れを自分で創り出すような奴らだ。……いるだろ? 身近にも」
「……確かに、衣には全然敵わないな。あー、そうか……流れを作る、か……」
「流れに乗る。断つ。奪う。それらだけじゃない。もっと幅広く流れを使え。例えば……流れを創ったり消したりすることが出来れば、お前の打ち方にも幅が出てくる。特にお前は先鋒だろ? 先鋒には特異な打ち手……他校のエース級も出てくるからな。それくらい出来ないと全国だと厳しいぞ」
「……難しいこと言ってくれるな……でもまぁ、そうだな。考えてみる、か……」
そうしろ、と井上にアドバイスを送り、次の対局に臨む。……いやまぁ、相変わらず偉そうな指導だよなって。プロをクビになった分際では説得力も何もありはしない。
ただ実際、井上は天江衣や龍門渕透華に続く3番手と言っていい実力を持つ、特異な打ち手だし、伸びしろは大きいように見える。というか、やっぱ龍門渕って強い。そして風越がちょっと可哀想。確かに、全員が全国レベルの打ち手で、しかもその内1人は魔物とか、そりゃ負けるわ。全国でもかなり強い方だもんな、多分。というか透華が色んなところからスカウトしてきたって考えると、中々にこう……学生レベルだとやってることが桁違いというか、そういうのはプロとか強豪校の手口だっていうのにな。これも財力が為せる技か。
まあその財力に釣られて指導しに来てる俺に言えたことじゃないけど。……うーん、これ、風越勝てるかなぁ……指導した手前、ちょっと贔屓したくもあったんだが、実際に龍門渕にも来てみると厳しく思える。しかも、俺の指導に効果があるかどうかは知らないが、絶賛強化中だし。いやー、厳しそう。仕事なんで指導はちゃんとやるけどな。風越は頑張ってくれ……ということで次のアドバイス。
「──この局面、あなたならどうしまして?」
「そうだな……3位の相手は6巡目立直……しかし1位の親との差もあるし、こちらは聴牌取れば満貫以上確定で1位に直撃取れば逆転か……最下位も1副露で和了りを狙ってる……まあこれなら降りてもいいかもな。どっちかが勝手に1位を削ってくれる可能性も高い」
「でもこの局面、実際には8巡目に最下位が倍満を和了ってこちらが3位転落。聴牌で両面に取っていればこちらが先に和了っていましたわ。結果論と言えばそれまでですが、ここは押してもいいのではありませんの?」
「とにかく稼がなきゃならん個人戦で考えるなら押した方が良いとは思うけどな。団体戦だとこの卓の状況で聴牌取るのは中々にリスキーだ。明らかな危険牌を切って勝負に出ることもない。それに、3位に落ちたとはいえ、1位との差は結果的に縮まってる。何もしなくても削ってくれるならそれに越したことはない。まくるのは次の局か、次の味方に任せればいい」
「ええ、その考え方も分かりますけれども、団体戦だからこそ、個人戦程リスキーではない。同じ面子と半荘2回を打てて、点数にも余裕があるなら、勝負に行ってリターンを取りに行った方が良いのではなくて?」
「そういう考え方もある。その辺りは意見が分かれる……個人の好みやスタイルによるだろうが……俺なら勝負しないな。いや、リーグ戦とかでならありかもしれんが、トーナメント戦で勝ち抜けなら怖い場面だ。倍満にこちらが振り込んでいた可能性を考えるとな」
「……そうですわね。確かに、こちらが聴牌に取ったら相手もそれに合わせて捨牌を変えているでしょうし、先に別の相手が和了る可能性もありますわね。ええ、これ以上は仮定になりますけども……それでも、わたくしなら押しますわ」
「いや、それでいいと思う。リスクを分かった上で攻めるなら良い。牌効率や確率が全てじゃないからな。そういった自信が良い結果に繋がることもある」
「ふふん。もっと褒めてもよろしくてよ?」
「……はいはい、凄い凄い」
対局を抜けてる1人──透華が自ら質問してくる。
その結果に透華は鼻を高くしているのだが……こいつはあまり言うことがないな。
研究も分析もよく出来ている。というか、プロでもここまで研究してる奴は少ない。というか、なんでガッチガチの研究室の出した研究結果とか持ってんだよって一瞬真顔になった。
なんでもハノーヴァーの研究所に依頼を出してるらしいが……これも財力の為せる技か。普通はこんなこと出来ない。
しかも財力だけじゃない。熱量がある。
龍門渕透華は膨大な牌譜を、データを持っていて、それらを一打ずつコツコツと再生しながら研究し、自分の解釈と違っていたところは徹底的に追求して、それを理解しようと努める。
それにデジタルの打ち手ではあるが、それだけではなく、時にはデジタルを逸脱する……なんと言うべきか。まあ、言うなら目立つ打ち方をして、それで結果を出している。
それに、駄目なところがあってもそれを自分で理解していて、それを即座に修正出来るし、する。
……というわけで何も言うことはないな。うん。放っといても勝手に成長するやつだわ、これ。
まあそれを言うなら俺の指導なんてなくても皆遅かれ早かれ成長するだろうから元も子もないが、透華は牌効率とか理論のことだけで言うと、プロ並──いや、もしかしたらプロ以上に麻雀というものを理解している。
強いて言うなら、オカルト関連への理解だけは多少劣っているかもしれないが、そっちを強めるとデジタルの良いところも消えそうなので何も言えない。そもそもオカルトへの理解なんてプロや指導者の中でも出来てる奴は少ないしな……えーっと、誰だっけ……そういうのが得意な選手も昔いたよな……名前はド忘れしたけど、はやりさんの知り合いに居た気がする。
まあそういう意味でなら、俺はオカルトの感知だけならまぁまぁ出来るので、ある意味得意分野だ。
そして実は、そのセンサー的に、この龍門渕透華は引っかかってる訳だが……本人はそういう素振りを全然見せないし、今はまだその才能が眠っているとか、覚醒してない感じだったりするんだろうか。もしくは何か条件があるとか。……うーん、天江衣並……とまではいかないが、割と迫れるくらいのヤバそうな感じもするんだけどな……まあ見れなくて良かったような気もするし、指導的には見れないのが残念な気もするが、透華本人にそれをする気がないのならしょうがない。こちらとしては気に留めておくくらいしか出来ない。
まあ透華は良いとして、後の2人──沢村と国広については、特にオカルト的な何かはなく、普通に強い感じの打ち手だった。強いて言うなら、沢村は対戦相手の牌譜を研究して、それに合わせた打ち方をするデジタル派。透華に近いが、デジタルというかデータ派って感じで、国広はもっと堅実に強い。割とバランスが良いタイプで、どんな打ち方もある程度は出来る器用な打ち手だ。
……こっちも特別言うことはない。まあ無難に指導していく。
「へぇ、沢村はゲームが趣味なのか」
「ともきー、結構強くてネットだとランキング? とかにも乗ってるくらいなんだよ」
「……照れる」
「そうなのか。俺もゲームはたまにやるが……そういや、最近はあまりやってないな……」
「後でする? 古いのから新しいのまである」
「ともきーが乗り気だ……」
──とまあこんな感じで普通に……いや、これもう指導っていうか普通に雑談だけどな。普通に雑談してる。
一応、麻雀もちゃんとやっているのだが……なんというか、健全だなぁ……いや、なんていうか、全然役満聴牌しないし、めちゃくちゃ健全な時間を過ごしてる気がする。朝はちょっと怪しかったけど。
というか、どれだけ打っても衣がいる時はそもそも聴牌確率が激減するせいで役満もクソもない。昼だからマシで、まだある程度はやれてるが、それでも敵わないしな。だからほんと健全。役満和了るなら衣がいない時なら可能性があるが、衣が俺と打ちたがる所為で、まず試行回数が少ないので、生憎と役満の気配はまだない。……一応、出来たらやろうと思ってるんだけどな……候補としては、沢村か国広か。この様子じゃ期待出来無さそうだがな。
そんなこんなで指導しつつの休憩時間。ちょっとしたお菓子とかを食べつつ、寛ごうとするのだが、
「──どれがいい?」
「早速かよ……格ゲーとFPS以外なら何でもいいぞ」
沢村がゲーム機とソフトを大量に持ってきた。……いやまぁ、良いんだけど、休憩時間にガッツリゲームか……久し振りだから一瞬身構えてしまった。
1番最近にやったのってスマホのアプリとかだもんな。いわゆる流行りのソシャゲーだが、俺は殆どソシャゲーをやらないが、一応唯一やってるのがある。というかこれも一応麻雀ゲームだ。キャラで戦う能力麻雀ゲームだけどな。
キャラが能力を持ってたりして、麻雀を有利にするとかいう……別にフィクションでもなんでもないけどなって思っちゃう系のゲームだが、一応俺はそれをプレイしてる。若者の間では結構流行りのものだ。この間も、池田がアカウント持ってたのでフレンドになってキャラを貸し出してやった……って、池田ァッ! 俺のおっぱいちゃん達を使っておきながら負けてんじゃねぇっ! ちょっと携帯開いて確認しつつ、内心で叫んでおくと、気を取り直してゲームに臨むのだが、
「何で格ゲーとFPSは駄目?」
「……その2つはちょっと……特に格ゲーは昔結構やり込んでたからな……色々と思い出が……」
「……そう聞くと気になる」
と、沢村が格ゲーを選ぼうとする。いや、マジで止めといた方がいい。自慢じゃないが、俺はその手のゲームは得意分野だしな。高校時代、ボブと一緒にゲーセンに通ってた時期があるが、あまり勝ちすぎると反対側から台パンの音が聞こえたり、酷い時は灰皿がブーメランみたいに飛んできたりする。ゲーセンって怖い。まあここでそういうことが起こるとは思えないが……。
「──お、なんだゲームか……って、智紀が負けてる!?」
「しかも完封負けだよ……えぇ……」
「とーごーはプロゲーマーだったのか?」
「智紀が物凄い顔になってますわ……」
「……ヤバい……」
……だから言ったのに……しかも、よりによってまぁまぁヤバいゲーム選んでるしな。力こそが正義。いい時代になったものだ……。
ともあれ、この手のゲームは勘弁して欲しい。こっちとしてもちょっと色んな意味で疲れるし。というかこういう時はもっと和気あいあいと楽しめるパーティ系のゲームとかレースゲームとかの方が良いだろ……なんか衣もちょっとやりたそうにしてるし。
「ならとーごー! 次は衣と勝負だ!」
とか思ってたらマジで勝負を仕掛けてきた。……いや、今のを見て勝負仕掛けてくるのか……まぁ、別のゲーム選ぶから良いけどな。
「衣はこう見えて強いんだぞ! 純よりは強い!」
「去年の誕生日の時の話か……あの時はオレも調子が……」
「あの時は大変だった」
「わたくしが歌を作った時ですわね!」
「ああ、そんなこともあったよね。確か……」
「「「「ころたんイェイ~」」」」
「──急にどうした?」
いきなり5人が謎のフレーズをハモったのでツッコミを入れる。いやマジでなんだその歌は……妙に耳に残るな……ころたんイェイ~…………衣の誕生日の略か? でもイェイはどこから……いや、なんとなく付けただけなのか?
まぁ、それはともかくちょっとしたゲーム大会が開かれる。家なだけあって自由だ……風越ならそうはいかない。まあ練習中は皆真面目なので別に良いと思うが、普通の学校ならできそうにないしな。
「……それにしても、今日はちょっと熱いね……」
「あら、空調は効いている筈ですが……なんでしたら私服に着替えてきてもよろしいですわよ?」
「そうするよ……」
「お、じゃあオレも」
「私も……」
……いや、そもそも何で今まで全員メイド服だったのかと。朝からメイドの仕事でもしてたのか? 敢えて気にしないようにしていたが、最初見た時から何とも言えない感じだった。
まあ着替えてくるというので俺は先に衣や透華と軽く遊ぶ。透華はともかく、衣はこれ、別にそんなに強くないよな。何故あんなに自信満々だったのか。俺はコントローラーを操作する衣に向かって笑みを向け、
「どうした? このままじゃ負けるぞ?」
「む、むむ……五月蝿いっ。ここから逆転──あっ」
「はははっ! よそ見してるからだ!」
「むぅぅっ! 生猪口才っ! 話しかけて集中を乱すとは卑怯な!」
「乱される方が悪いんだよ」
「ふふんっ! 華麗にショートカットですわっ!」
有名なレースゲームを楽しむ。というか透華は意外とやり込んでるのか? これは……なんか意外と上手いな。お嬢様ってゲームやらなさそうだけど、やはり偏見に過ぎないというか、透華はデジタル派だし、こういうのも割と出来るのか? 身近にゲーム好きがいるからってのもありそうだが、少なくとも衣よりは強い。
とはいえ何気にこのゲームも油断しなければ俺がこのまま1位で終わるな。
と、俺は割とリラックスしながらコントローラーを操作していると、部屋の扉が開いて3人が戻ってきた。なんだ、着替え終わったのか──って、ぶっ!?
「着替え終わったぜーって、お? 今度は結構いい勝負してるな」
「何故か東郷さんの集中が乱れたのでわたくしが大逆転ですわ!」
「衣も疾風迅雷の勢いで追い上げるぞっ!」
「結構楽しんでるね……でも東郷さんの方はちょっと苦虫を噛み潰したような顔に……どうかしたんですか?」
「眉根を寄せてる……?」
「い、いや……何でもない。気にしないでくれ……」
俺は平静を取り戻しつつ、ゲームに集中する……が、くそっ……何がどうかしたんですか? だ。お前の格好の方がどうかしたのかって問い質したくなる。
他の2人……井上と沢村は普通の私服だ。別に言うことは特にないのだが……国広の私服はヤバい。風紀的に問題はないとはいえ、この服は痴女では?
トップスもスカート? もどっちも露出が凄い。水着よりも露出が凄い。肩とかお腹とかが丸見えなのはまだ良いとしても、スカートがスカートの役割を果たしていない。なんか輪っかとベルトみたいなので止めているが、丈は膝上何十センチって感じで、お尻がほぼ丸見えだし、上半身も、辛うじて胸の部分をギリギリ隠してるのみで、動けば色んなところがチラチラと見えてしまいそうである。ギリギリで決定的なところが見えないのはどういうカラクリなのか。いや、マジで集中出来ないから止めてほしい。
いやまぁ、確かに、最近はこの手のよく分かんないレベルで露出してる服も多いというか、羞恥心を投げ捨ててる感じの奴が多い気がする。それと、こういう服を見ても何とも思わない聖人も多い。俺みたいな普通に性欲旺盛な奴には嬉しいやら苦しいやら……というかこいつ、良い尻してんなぁ……小柄で小ぶりだけど、それがまた……って、ヤバい。そんなこと考えてたら負けちまう。あー……。
「わぁい、衣の勝利だ!」
「ワンツーフィニッシュですわ!」
「……あー負けた……」
「あれ? 急に失速したぞ」
「エンジントラブル?」
「いや、これゲームだから……」
透華と衣が勝ち誇り、負けた俺の後ろで3人が呑気に会話しているが、国広は自分の所為だとは露ほども思っていないっぽい。いやほんとムラっとするというか、困る。おっぱい聖人の俺を悩ませやがって……流儀には反するが、本気で落としてやろうか……? いやまぁ、厳しいんだけどな。若干そう思うが、龍門渕での滞在は風越程長くはないし、期間内だと無理ゲーなんだよな、多分。このまま健全に過ごすしか道がないので、精々後で思い返すことくらいしか出来ない。この昂りは次の学校で発散するしかないか……と、俺は妄想で次の高校の麻雀部員を勝手に巨乳にしつつ、龍門渕での2日目も特に何事もなく終えられた。
次回か次次回で龍門渕編は終わる……かも。その後は清澄です。おっぱいです
皆の熱い感想、待ってる