和にオカルトが効いているかどうかは気になるが、清澄高校での指導、仕事を途中で止める訳にはいかないし、手を抜くことだって出来ない。
だから俺は逸る気持ちを一旦心の奥底に閉じ込めながら、眼の前のおっぱ──じゃない。眼の前の麻雀、仕事に集中する。集中出来てないな……とはいえ、だ。
「──ツモ。1600、3200」
「ぬおっ」
「普通にやるわね」
「……はい」
俺は染谷の最後の親番でツモ和了りし、対局を終わらせる。──これで、俺の1位だ。
まあ確かにインターミドルチャンピオンである原村和に、片岡と須賀よりも強い2人、染谷と竹井がいるとはいっても、こちとら元プロであり、簡単には負けないし負けられない。
集中は少し切れたかもしれないが、だからといって負けはしない。実力もこちらの方が上……とはいえ、気になることはあった。
「……染谷は対応力があるな。打ち方が堅実で悪くない」
「まこは普通に上手いわよ。経験だけなら私よりも上だからね」
「そりゃあどうも。……なんか地味だと言われているような気がするけえ、褒められてる気がせん……」
染谷を褒め、竹井もそれに同調してくると、染谷が微妙そうな顔をするが……まあ、ちょっと思ったがそんなことはない。ちゃんと褒めている。
というか他人事じゃないからな。俺もよく打ち方が地味とは言われるし。
ただ麻雀において地味というのは堅実ということ。安定してぶれない打ち筋を持つ雀士は基本がしっかりしているため、応用も効いて、対応力もあり、強い。コンスタントに勝率を伸ばせるプロに向いている打ち方でもある。
ただ半荘一回か二回、個人戦だとそれよりは多いが、少ない対局で勝たなければならないインターハイなどではあまり向いてない打ち方だな。そういうのは感覚派やオカルトを持つ者……ここぞという時の勝負強さを持つ者が有利となる。
染谷は……染め手が少し得意という程度で、他はどんな打ち方にもある程度対応出来るバランスの良い雀士だな。相手を選ばず、誰とでもある程度は戦えるが、想定外の事態には少し弱く、オカルト系の雀士とは相性が悪そうだ。団体戦なら次鋒とか副将が向いているだろうか。オカルト持ちが比較的多い先鋒や大将には向いておらず、臨機応変さが求められる合間のポジションが似合うだろう。
……とはいえ、こいつら人数足りてないから団体戦出れないけどな。そういう意味ではこの竹井も惜しいか。
「竹井は……悪待ちが多いな。捻くれた打ち方だ」
「あら酷い。これでも繊細で純粋な女子なのに……駄目かしら?」
「…………」
あっ、なんか和が凄い何か言いたそうにしてる。多分、デジタル派の雀士としては物申したい部分があるのだろう。
まあそうだとしたら気持ちは分からんでもない。ただ、俺はそれを否定しない。
「──いや、その打ち方がお前に合ってるというならそれで良い」
「矯正しないんだ?」
「する必要がない。基本を弁えないでその打ち方をしてるなら問題だが……お前はそういう訳でもない。ましてや……半荘一回程度では俺には分からないが、結果が出てるんだろ?」
「分からないと言いながら分かってるじゃない。大体そんな感じよ」
「なら良い。お前はそれを伸ばせ」
と、俺は正しい打ち方に矯正する必要はないと言い切る。
悪待ち。少ない待ちで待つ事をそう言う。麻雀ってのは基本、確率が高い方を求める競技だ。待ちは多ければ多いほど、和了れる確率が当然上がる。そういう意味で、悪待ちというのは可能性の低い方に賭けることから、悪い待ち、悪待ちと呼ばれる。
ただ悪待ちを選択する状況は少なからずある。そっちを選んだ方が和了った際の点数が高いとかであれば、低い可能性に賭けて、高いリターンを得ることは当然意味がある行為だ。
しかし、この竹井は点数が変わらない状況や、酷い時は点数が下がるにも関わらず、悪待ちを選択していた。
その打ち方は下手をすれば、素人にも思える打ち方で、デジタル派の雀士からすれば訳が分からない、不条理な打ち方に見えるだろう。そこらの麻雀講師、指導者であれば矯正することもあり得るかもな。
ただ、それは竹井の持ち味を殺すことにもなり得る。それで結果が出るというなら好きにさせればいい。
それに俺が見た限り、竹井のそれはちょっとしたオカルト……とまではいかないが、ジンクスに近いところがある。
おそらく、悪い待ちの方が良い結果が出る──とか、本人は考えていたりするんじゃないかと。
ぶっちゃけそうとは限らないと思うが、本人の意識ってのは重要だ。
牌効率、確率だけではない、何かが潜む麻雀という競技では、本人の意識、姿勢が結果を分けることもある。
理論的な考え方ではないため、一般には受け付けない思考だが、プロであれば、それがデジタル派の雀士であってもその何かがあると考える者は多い。
自分には適用されていないかもしれないが、相手にはあると考える。プロのデジタル打ちってのは、相手のオカルト要素を取り込んだ上でのデジタル打ちだ。
「……それにしても、初見でよく対応出来たわね。元プロとはいえ、ちょっと悔しいわ」
「そこは経験の差だが……まあ、悪待ちと分かっていれば、相手としても対策は出来る。お前はその対策に力を入れるべきかもな」
「ま、それは分かってるわ。どうすれば対策出来るかも……ね?」
少し思案顔になっていた竹井だったが、俺がそういうと、くすり、と竹井が笑みを浮かべて頷く。
実際、悪待ちは、相手の裏をかくことが出来るなど、メリットがない訳ではない。1つの戦術として有効な打ち方だが……当然、それを続けていれば相手はそれを知る。
悪待ちの可能性が高い、悪待ちの方が良い結果が出ると相手が知れば、それに合わせて打ち方を変えればいいだけのことだ。守りが固いプロや有名な選手であればこの程度は軽々と避けてくる。悪待ちしてくることも織り込んで、当たり牌を割り出せばいいのだからな。
まあ、口で言うほど簡単な事じゃない。……ぶっちゃけ、それに関しては俺も理論で躱してるというよりは……いや、いいか。まあ経験みたいなものだが、デジタル派の雀士もデータを完全に頭に入れている訳でもなければ、完璧な牌効率で打っているという訳でもない。それに近いことはしてくるけどな。デジタル派はその性質上、理系や頭の良い奴が多い。……これを言うと、感覚派などのオカルト雀士は頭が悪いって言ってるみたいで中々口に出しづらいのだが、あながち間違ってはないから困る。統計を取れば絶対そうだろうしな……オカルト派の雀士ってこう言ったらなんだが、妙に気が抜けたり、天然だったり、アホっぽい奴が多かったりするし。
この竹井も頭は悪くないのか、基本はオーソドックスなデジタル打ちだし……団体戦だと先鋒か中堅か大将か……どこでも悪くないな。
その3つは各学校、エース級を出してくることが多い。先鋒は言わずもがな、大将も勝負を決定づける大事な役割。中堅も文字通り中盤、難しい判断を強いられるポジションでもあるため、ここに強い選手を配置するところも多い。
清澄で考えると、先鋒は和か竹井……ああでも、片岡って点数計算出来ないっぽいし、しかもそのオカルトの特性からして、先鋒の方が良いかもしれん。ということで先鋒。次鋒は染谷。中堅と大将は和と竹井だが……まあ、これはどっちでもいい気はする。というか和はどこでも大丈夫そうだから空いているところに入ってもいいかもしれない。
──まあ、どっちみち団体戦メンバー足りないから考えてもしょうがないけどな。地味に惜しい。それにこのメンバーじゃどう足掻いても龍門渕、正確には天江衣に勝てないし、全国出場は絶望的。夢のまた夢だ。個人戦なら竹井や和は全然可能性あると思うけどな。団体だと無理。
まあ、天江衣とか宮永照級の魔物がいきなり入部してくるみたいな都合良すぎる奇跡が起きればいけるんじゃね? ──と、そんな夢みたいなことが起きる訳もない。役満級か、それ以上にキツいかもしれない。参加するだけなら1名部員を確保するだけで良いので楽かもしれないが、数合わせで今から全国に行くのは厳しいのは言うまでもない。もしくは須賀辺りに女装してもらって……でもなんか微妙に似合いそうだなこいつ……。
ただまあ、団体戦が無くとも個人戦があるので、そちらで頑張れば良いと思う。長野県予選は確か3名まで全国に行けたはず。3名か……衣が個人戦に参加しないし、割と行けなくはなさそう。美穂子が、まあ確定としても、竹井や和もワンチャンあるだろうな。後は透華とか池田とか……本命はその辺りか。うん、やっぱ個人戦だな。
「……さて、とりあえずこれで全員と打ったが……まだしばらく打つか」
「当然でしょ? 部費が勿体ないし、東郷さんにはずっと打って貰うわよ。……と、言いたいところだけど、程々に休憩は入れるから頑張ってね?」
「……ま、そうだな。出来ればお前ら同士の対局も後ろから観戦させてもらいたいし、そんな感じでいいだろ」
「うわぁ……プロと打つのも見られるのもどっちもキツそうだ……」
「だらしないぞ犬! 元プロくらい倒せないで甲子園に行けるか!」
「甲子園は野球じゃ……」
「…………」
というわけで俺は4回に1回程度は休んで対局を見る感じで練習に参加することにした。これでいい。これで和のおっぱいを後ろから、上から眺めることが出来る。やったぜ。
……しかし和は大人しいな……役満……ローカル役とはいえ役満をぶち当てたのに最初以外、特に変化はないし……いや、これはやはりユキパターンか? 微妙に似てるし、2人きりになったら誘われちゃうか? ──やっべぇ、待ちきれねぇぜ……あー、ヤりたい。早くヤりたい。実は龍門渕にいる間、何も出来なくて結構溜まってるし、もう辛抱堪らんな……練習の手を抜くわけにはいかないとはいえ、俺は早く和で抜きたい。いや、和に抜いてほしい。
俺は股間に血が集まり、ムラムラするのをなんとか耐え凌ぎつつ、次の対局に集中した。……どうでもいいけど、和が対面だとやっぱ見ちゃう。牌よりものどパイを見ちゃう。今日のクズポイント。
──そんなこんなで、放課後。早速、和にアタック……といきたいのだが、その前に部活中の和の様子を思い返しながら、俺は和と2人きりになる機会を待つ。
役満は当てた。つまり、オカルトはおそらく発動している……のだが、練習中の和は俺を……気の所為か、避けているような気がするのだ。先程も、
『あ、お茶菓子が切れたわね。須賀君、ちょっと買ってきてくれない?』
『はい。分かりました』
『東郷さんも何かいるなら須賀君に頼んでくださいね?』
『えっ』
……と、そんな感じで須賀が竹井に買い出しを頼まれる。それを聞いて俺は何気なく、
『……買い出しか。なら俺が金を出すから適当に買ってきてくれ』
『え、いいんですか?』
『ああ、どうせ購買だろ? 好きなもん買ってこい。俺も食うからな』
『おお、太っ腹だじぇ! ならタコス!』
『タコスはお茶菓子じゃ……いや、今更か』
『あら、悪いわね』
『おお。……原村も好きなもの頼んで良いぞ』
『っ……えっと、私は遠慮しておきます……』
『のどちゃん、勿体ないじぇ~』
『そうよ。せっかくだから頼んじゃえばいいのに。メニューの端から端までとか』
『おんしは遠慮を知らんのか……』
『……いえ、せっかくですが……』
と、そう言って遠慮しながら、俺の視線から逃れるように顔を下に向け、距離を取る。
俺の申し出を遠慮するだけならまだしも、その距離感が初対面にしても遠い気がするのだ。
……ただ、だからと言って嫌われてるとは限らない。これも、好きの裏返しの可能性だってある。
恋するあまり、顔をまともに見られないとか、恥ずかしくてつい心にないことを言ってしまうとか、そういう女心というものがあるはずだ。美穂子とかがそれに近かったし、反応が分かりにくいという意味ではユキもそうだった。
だから2人きりになって確かめてみるまでは、まだ分からない。最初の反応的にイケてる気がするのだが、100%ではないので確信を持った大胆な行動は取りづらい。
だからさりげなく、あくまでもさりげなく、俺は原村に接触する──と、考えていると早速、
「──原村。もう帰るのか?」
「! ……東郷さん、ですか。はい、今帰るところです」
練習が終わった直後に、さっさと部室を出て校門から少し離れたところに車を移動させて止め直し、なんとなく一息ついているような感じで佇んでいると、原村が1人でやってきた。
この時点で1つの関門をクリア。何しろ、原村が他の……まあ、多分須賀はないにしても、片岡などの他の部員と一緒に帰る可能性だってあったからな。
とはいえ、もし俺に惚れてるなら考え事がしたいとか言って、同じ帰り道でも1人で帰る可能性はあるし、そもそも帰り道が被っていない可能性、もしくはもっと大胆に俺と2人きりになりたくて1人になる可能性だってある。
だからまあ、1人で帰宅する可能性は意外と無くはないとは思っていたが、期待通りに進んだ。
それなら次に進む。まあ学校の近くだし、そんな明らかな言動は取りにくいが俺は何気なく話をしようと、
「今日はお前も含めて、実力を見せてもらったが、さすがはインターミドルチャンピオンだな。高いレベルのデジタル打ちだった」
「……はい、ありがとうございます」
和はそう言いながらも浮かない表情……というか、全然顔を見て話してくれない。
やはり恥ずかしいのか。それとも──うん、まあいい。続けよう。
「麻雀に対する真剣さが窺える良い姿勢だった。明日もよろしくな」
「っ……はい……明日も、よろしくお願いします……」
まあ見せてもらったのは主におっぱいだけどな。──とか言ってる場合じゃない。今、少し反応したな?
どういう意味で反応したのかは分からないが、まだ探れる余地はある。ほんの僅かに不自然だからな。俺はなおも会話を続けて糸口を探る。次は……そうだな。
「……原村、あまりこういうことを言うのもなんだが……人の顔を見て喋った方がいいぞ?」
「あ……す、すみません。いえ、分かっては……いるんですけど……」
「人見知りなのか? それとも、男が苦手とか?」
先程よりも更に反応したのでそこを突いてみる。すると原村は少し、何かを思うような表情を見せた後、眼を細め、
「そう……ですね。人見知りという訳ではありませんが、男の人は、その、あまり得意ではありません……」
「……そうか。それは悪かった。なら話しかけたのは迷惑というか、困らせたな」
「そんなこと──」
と、顔を上げて原村が言う。しかし言葉を途中で止める。何かに気づいたように、再び顔を下に向けて目線を横に逸らす。俺は一応その先を促そうと試みるが、
「? そんなこと?」
「……いえ、なんでもありません」
いや、なんでもあるだろ。そういう反応を見せるってことはそういうことだ。俺を誤魔化せると思うなよ。漫画やドラマとかで見るような鈍感な男と俺は違う。なんでもないって言っただけで納得はしない。明らかにおかしい反応を見せたなら怪しむ。それが出来る。そういうお決まりを知ってるからこそでもある。
だから俺は僅かに確信を持って、告げた。一応、周囲に人があまりいないことを確認してから、
「……もしかして、俺が気になるのか?」
「! いえ、そんなことは……な、ないですっ。ありえませんっ」
そう言うと和は過剰なくらい動揺しつつ反応した。ははは、可愛い奴め。もう今の反応で分かったぞ。貴様、俺に惚れておるな?
「隠さなくてもいい。……実は……俺も、お前のことが妙に気になっていてな」
「~~~っ、や、やめてください……何を言ってるんですか……」
和が顔を赤くしている。あー、ヤバい。可愛い。もうすぐこの子を俺のモノに出来ると思うと興奮してきたな。俺は口元の片方を僅かに歪め、
「というか、俺は何が気になっているかまだ言ってないと思うんだが……原村は何だと思ったんだ?」
「! そ、それは……」
「……お前が望むなら、俺はいいぞ。少し、2人きりで話してみないか?」
と、言って俺は僅かに距離を詰める。
珍しく口説きに掛かるが、これも、沢山の女の子を堕とした賜物とも言える観察眼、経験則から出来ることだ。
こいつは、和はもう俺に惚れている。もういける。もう抱ける。だからこそ、少し押しにかかる。
まるでドラマや恋愛漫画のキザ男の様に自信を持っていける。我ながらどうかと思う。一歩間違えれば勘違いしてる恥ずかしい男だが、そうではない。この口説きは成立してるはずだ。
「わ、私は……」
その証拠に、和は俺をようやく見上げて、何事かを口の中でもごもごと呟いている。ふっ、やはり恥ずかしくていっぱいいっぱいなのか。恋愛経験は皆無のようで好ましい。別に処女じゃなきゃ嫌だってこともないが、美少女の初めてを奪えるのは優越感が凄く、一種の快感すら覚える最高の瞬間だ。
俺好みのおっぱい美少女を出会ったその日に堕とす。──その最高の瞬間を、俺はこれから迎える。
「なんだ? 遠慮せずに言ってみろ。お前の本心を」
「……私は……私には……」
と、俺は和を促し、それを聞く。深呼吸し、息を整えて僅かに落ち着いた和は、俺をまっすぐに見て、それを言い切った。
「わ、私には──す、好きな人がいるんですっ」
「…………えっ?」
その瞬間──俺の思考も動きも、その表情も、全てが止まった。
だが和は変わらず動き続ける。口は回り、呆然とする俺に向かって頭を下げると、
「ですから……そ、その……失礼しますっ!」
そう言って、小走りにその場から立ち去っていった。
残された俺。俺はそこから動けないまま、それを見送るしかない。
だがやがて、脳がその状況を理解し始める。嫌でも理解する。
……え、は? 何? す、好きな人が……いる?
いや、好きな人がいることはおかしくはない。そういうオカルトだしな。俺が好きな人……になるはずだ。
だが、今の会話の流れで俺な訳がない。今のは、明らかに俺の誘いを、好きな人がいると言うことで否定した形だ。
そう考えると、断るための方便──嘘ということも考えられるが、あの表情は……いや、確信こそないが、あの表情は、恋をした女が見せるものだったような……。
「……つまり……」
俺は思わず思考を僅かに声に出しつつ、それを理解していく。
つまりだ。和には元から好きな人がいる。
そしてオカルトは……発動したかしてないかは分からないが、していたとしたら、それを上書きは出来なかった……ということになるのだろうか。
分からない。その事の真偽はまだ分からないが……今、確実に言えることはだ。
「ふ、振られた……?」
あんなに自信満々に口説いておいて──振られた。
学生を口説いて断られたのはマズい……と思うより前に、そのことに凄まじい羞恥心を感じる。
あの感じだと誰かに言いつけるような感じではない。少なからず、俺に対してドキドキとしていたようにも感じられたが……振られたのは確かだ。
「っ~~~~!」
俺は頭を、顔を押さえ、声に出せずにその場で苦しむ……あ──────!! はっっっっず! だっっっっっさ! は? クソかっこ悪っ!! え、何? うわ最悪……あーもう、めっちゃ死にてぇええええ!! はぁ? 今のはないわー……ヤバいヤバい。本気でアホじゃん。勘違いとか……ああああああ! 恥ずかしいいいいいいい!!
つーかどうすんだマジで……いや、大丈夫だとは思うが……あー、馬鹿した。え、マジ? あの感じで俺に惚れてないの? 嘘だろ……絶対惚れてると思ったのに……。
今のは我ながら、ない。間抜け過ぎる。くそっ……明日からどういう顔してればいいんだ……。
俺は夕日の中、一応車に乗り込み、しかし自分の行動の恥ずかしさにしばらく──夜まで悶絶し、同時に和を手に入れられなかったことに頭を抱えた。あー……恥ずかしすぎるぅ……ていうかおっぱい、俺のおっぱいが……。
──長野県内にあるとある一軒家。2階にあるとある少女の私室にて。
「……はぁ……」
少女はベッドに背中を預けながら天井をボーッと見ながら、先程の事を思い出していた。
少女にとっての──おそらくではあるが、初めての告白……に近い、異性からのアプローチ。
いや、告白自体は全然初めてでもなんでもないが……少女にとっては、同年代のそこらの男子からのアプローチなど、そういうものにカウントすらされていなかった。
だから少女の認識ではあれが初めて。気になった……初対面なのに、気になってしまった異性からのそれに、少女は身体が熱く、鼓動が早くなるのを感じていた。
しかし、少女はそれを断り、別の人の事を頭に浮かべる。先程も告げた、少女の好きな人の事だ。
「──さん……──っ、さん……!」
少女は約1か月前に出来た好きな人の事を思い浮かべて、右手でその大きな胸を、利き手である左手で自分の熱く濡れたそこに触れて動かす。
少女の身体はその年齢に反して、男を魅了するいやらしい体つきをしていた。
少女はあまりそのことを好ましく思ってはいないが……ただ、こうやって好きな人の事を考えながら自分を慰めはじめてからというもの、自分の身体で最も大きい部分が更に成長していることには気づいていたし、自分の中の恋心を完全に自覚出来るくらいには精神面でも成長していた。
ただ、だからといって慣れている訳ではない。少女はそういう経験は全くない箱入り娘。仲良くなった男子も皆無である。少女の事情を鑑みれば仕方ないかもしれないが、仮に男性の友人がいたとしても、この出来事を前に落ち着くことは出来はしないだろう。
何しろ──自分には、2人目の好きな人が出来たかもしれないのだ。
そんなふしだらな自分を否定するかのように、少女は前々からの好きな人の事を思い浮かべて、自分を慰めた。こういった行為だって、その人の事を思い浮かべてから、それが抑えきれなくなってからやり始めたことだ。
だが……その好きな人の、妄想で作り上げる好きな人の姿が、今日はもう1人と重なってしまい、少女は悶々としてしまう。
違う。自分の好きな人は1か月前に知り合ったその人なのだ。そう言い聞かせて、少女は机の上にある小さなカレンダー……そこに書かれている、その人と初めて出会う日のことを考え、疲れて眠る──ことはなく、再びベッドの中で声を抑えながら、自らを慰め始めた。
これを書いてる時に思わずニヤついてしまいました
次回はとうとうオフ会です。ネットのお友達、のどっちと出会えますね。いやー、一体どんな人なんだろうなー(棒) そろそろ全裸待機のお時間やねって
皆の熱い感想、待ってる。評価もお待ちしております
【参考程度に】清澄高校で好みの子は誰?
-
片岡優希
-
染谷まこ
-
竹井久
-
原村和
-
宮永咲