遅めの夕食を食べて旅館の部屋に戻ってきた俺と和はしばらくゆったりとした時間を過ごした。
「今更だが、和があの“のどっち”ってのは知った今だと納得がいくな。打ち方が似てる」
「私も、今思えば仁さんが“ヤクマル”さんだというのは気づけたはずですね……最初見た時から見覚えがありましたから。んっ」
「和もそうなのか。俺の打ち方なんてそこまで特徴あるものじゃないと思うけどな」
「そんなことは──あんっ、東郷さんも元プロですし、それを聞いてから東郷さんの昔の対局とか調べてみたりもして、んっ……あの、さっきから胸を揉みながら話すのは何なんですか?」
「のどっちのおっぱいが気持ちよすぎて自然と手が伸びるだけだ。あー、温かくて気持ちいいー……」
「ね、ネットの名前で呼ぶのはちょっと恥ずかしいんでやめてくださいっ」
恥ずかしがるところは多分そこじゃないと思う。そう思いながらも、ナチュラルに手を動かし続ける俺。
椅子に腰掛け、和を膝の上に。そして机に俺が持ってきたノートパソコンを置いて何となく麻雀をしながら俺は和のデカ乳を後ろからもみもみ。そしてそのまま雑談だ。
なんというか、いつでも揉めるおっぱいって感じで最高だな。和の方も段々と慣れ……まではいってないか。顔赤くなってたりするし。でも許されてる感はある。
それに身体も火照ってきてて温かいし、後ろから抱いているので髪からはいい匂いがするしでなかなか趣が深いのだ。あれだけヤッたのにまた勃起するくらいには。
「名前の由来はやっぱ実の名前からなのか? 可愛い和に合う可愛い名前だもんな」
「~~~っ……も、もうっ! そんな恥ずかしいこと耳元で囁かないでくださいっ……しかも、押し付けながらとか……」
「ん? 何が押し付けられてるんだ? ちょっと分からないから教えてくれ」
「……仁さんのエッチ……」
軽く睨まれるように目を向けられるが、そんな和のお尻の下では俺の肉棒がギンギンに主張を続けている。
おっぱいも気持ちいいが、和は全身柔らかくてスベスベで張りがあって気持ちいい。女性らしく実ったお尻だってちんちんを擦りつけたくなる素晴らしい形をしており、そして実際にやってみるとやはり気持ちいい。
しかも可愛い反応が返ってくるのだから男からしたら堪らない。雄の本能をめちゃくちゃに刺激されるというかな。美少女って性欲の歯止めが効かなくなる要素しかなくて困るよな。乳を揉む手も止まらない。
「……仁さんこそ、んっ、ヤクマルって名前、何か由来でもあるんですか?」
「ん? あー、まぁ、いや……特に由来はない。子供の頃に適当に付けただけのアカウント名だな」
「へぇ……それじゃあ結構昔からやってるんですね」
「……まぁ、麻雀は小学生の時からやってるからな……と、そんなことより眠くはないか? もう4時になるが……」
「先程寝ましたからそれほどでもないですけど……お昼頃に眠くなってしまいそうですね……今日が学校じゃなくて良かったです」
「そうか……なら何かしたいことはあるか?」
やれることもそんなにないけどな。パソコンと携帯があるから多少は時間は潰せるが、それ以外だとやはり、
「……それじゃあ……もっとイチャイチャしてみたいです」
「……もう十分イチャついてる気もするけどな」
「ま、まだ足りないですっ」
おおっ、グイグイ来るな……ちょっと吹っ切れたか?
和がこちらに向き直ったかと思えば赤面しながらぎゅっと抱きついてくる。押し付けられる和の瑞々しい身体。特におっぱい。肉棒に自然と血が集まる。なかなか萎えさせてくれない凶悪なエロ可愛さだ。
「それじゃあベッドに行くか」
「はい……エッチは駄目ですからね?」
それは振りか? 我慢出来ると思うてか?
……まあ、またヤりすぎて気を失うのもアレだし、処女だった和への負担もある。パイズリとかフェラくらいで我慢してやろう。
「仁さん……♡」
そういう訳で、俺は服を脱ぎ捨て全裸になった和と一緒にベッドに──って、あれ? おかしくない? エッチは駄目と言いながらなんで全裸になる必要があるんですかね……(困惑)。でもそれ見て股間は更に硬くなった。当たり前なんだよなぁ。
「またこんなに大きく……はぁっ……♡ んっ……♡」
「うおっ……和ぁ……いきなりそれはヤバいっ……!」
和の方が実は望んでるんじゃないかという疑いを持ったまま、俺はベッドに入り、和としばらくイチャついた。――結局胸で4回、口で2回ほど抜かれたんですけどね! 俺も大概だが和も元気あんなぁ、おい!
「ふぅ……」
俺はベッドの上で満足気に息を吐く。
時刻は……もう昼前。あれからかなり時間が経った。
つい先程、和を家の近くまで車で送り届けてきたところである。無事にオフ会、もとい、オフパコは終了したと言えるだろう。
和も満足してたしな。帰り際はちょっとアレだったけど……なんというか、離してくれなかった。こんな感じで、
『和。そろそろ帰らないのか?』
『まだ大丈夫です……んっ、もっとキスしてください……ちゅっ』
『いやまあ……また会えるからいいだろ? 明日は学校で……』
『……でもそれが終わったら仁さん、行っちゃうじゃないですか』
『まあそれはそうだが……連絡は出来るし、ちょいちょい会うことは出来る』
『いつ会えるんですか?』
『まあ、今月は長野にしばらくいるしな。後は……あっ、和がインターハイで全国に来ればまた会えるかもな』
『全国……』
『ああ。俺もその時には用事で東京に行くから会えるぞ』
『…………分かりました。頑張ります』
『……おお、頑張れ』
『はい。それと……連絡先を交換しましょう』
『ああ。それじゃあ送っていくから準備してくれ』
『はい』
──とまあ、こんな感じの会話をした訳だが、なんだろう。惚れ方が半端ないので言葉の節々から好意を感じるというか、マジで旅館を出る直前までくっついてきてたので理性を保つのが大変だった。
連絡先も交換したし、これから頻繁に連絡が来るんだろうな……というのも、他の女達もそうだし、大体わかるし慣れている。おかげで俺の携帯は忙しいのだ。
何にせよ、これで6人だ。俺が落とした女の数。1人でも得難い美少女を6人も抱いた。
その事実を改めて自覚すると、頬が緩んでしまいそうになる。この圧倒的優越感。支配感。ハーレムの精神的な快感を感じてしまい、それだけで勃起できそうなくらいである。
以前にはやりさんや良子、栞と4Pをして、頭が馬鹿になりそうなほどの快楽を楽しんだ。今でも時折それを思い出してニヤついたりムラムラしてしまうほどには気持ちのいい多幸感に溢れた体験だったが……俺がその気になれば、6人全員と、7Pだって出来る。
男1人の俺に対し、巨乳美少女が6人。
俺の身体が女の子達の身体に埋め尽くされる光景を想像すると堪らない。ただのエロい妄想だが、それはもう非現実的な夢ではなく、可能な現実の話なのだ。
それを思うと股間に血が集まりそうになる。さすがに今更自分で抜くことはしないが、それでもこの想像がいずれ来る最高の快楽を後押ししてくれるだろう。オカルト様様だな。
それにこれからも女の子を増やせるし……あー、今俺ヤバい幸せだな。
まあ美少女とのエロの後なので素直にそう思う。しばらく時間が経てば他の悩みが噴出してそうも思っていられなくなるが、今は──
「……腹が減ったな」
うん、そうだ。腹減った。
夜中にラーメンを食べはしたが、それから何も口にしていない。口にする暇がなかったのだ、和とイチャつきすぎた所為で。
和を送っていく時も割と急いでいたのでどこかに寄ることもなかったし、普通に腹が減った。
まあ性欲の次は食欲でも満たしにいくか。さっき外に出たばっかりだが、もう一度外に行くとしよう。
と、俺は鍵やら携帯やら財布やらの標準装備だけを手に部屋の外に出た。するとその直後、
「あっ」
「ん?」
旅館の廊下に出ると、そこをちょうど歩いていたのは旅館の従業員が着るような紺色の作務衣を着た猫目っぽい若い男の姿。
俺を見るなり“げっ”と言わんばかりの顔で顔を強張らせたその男を、俺は見知っていたためごく普通に呼びかける。あくまでも普通に、
「……池田ァッ!! こんなとこで何してやがる!!」
「ひ、ひぃっ!? し、仕事ですっ東郷先輩!」
「オーナーのお前自ら仕事か! 結構なことだな! よし、それじゃあ俺に付き合え! 飯行くぞ!」
「な、何がそれじゃあなんすか──ーっ!?」
と叫ぶ男と肩を組んでそのまま連れて行く。
まあ折角だし、飯でも奢ってやろうという先輩の粋な計らいだ。決して暇つぶしに絡みにいった訳ではない。
実際、こいつには今現在進行系で世話になっているのだ。この池田──あ、池田と言っても風越のあの池田ではない。
こいつは今、俺がこの高そうな旅館に泊まれている要因であるちょっとした縁のある相手。
高校の後輩──チーム獅子王の中堅だった男、池田一樹であった。
「まあそう緊張するな。ここは俺の奢りだからよ」
「いや緊張しますよ……東郷先輩と2人きりで飯とか……あの頃の東郷先輩を知る人なら……自分が気が弱いのは知ってますよね?」
旅館の直ぐ近くにあるとある料亭。ランチもやっているお店にやってきた俺は眼の前の後輩に気安く声を掛けてやる。
まあ俺としても久しぶりな相手ではある。先週に偶然再会したばかりだからな。
名前は池田一樹。下の名前が最初出てこなかったのは内緒だ。
身長170センチで中肉中背。白糸台高校出身で、俺の1個下の後輩であり、チーム獅子王の中堅。そしてまあ……こいつが自分で言ってるようにだ。
「ああ、お前パシリが似合う奴だったもんな」
「改めて真正面から言われると微妙にグサッとくるんですけど! いやまあいいんすけどね! 自分からやってたことですし……」
そう、こいつはなんというか……気が弱いのと、ちょっと雰囲気的にパシリにされやすい奴なのだ。
いじられキャラとも言えるだろう。このどことなく猫っぽい顔とか……どことなく、最近出会った奴を思い出すが。
「……お前、風越に親戚の子供とかいないのか?」
「え? 急になんすか? 別にいないですけど……?」
「……いや、いないならいいんだけどな」
池田が首を傾げて頭に疑問符を浮かべているが、首を傾げたいのは俺の方だ。同じ長野出身で池田という名字。しかもこの顔つきはどう考えても関係があるようにしか見えないが、全く関係ないっぽいのがなんとも言えない。
さしずめ、男版池田というべきか。……いや、こいつも池田だし、というか俺が最初に知った池田はこいつなので、むしろ池田──ああ、ややこしいな。池田華菜の方が女版池田と言うべきはずなんだが、女版の方がキャラが濃いのでなんかそう思ってしまう。
「……それにしても今更だが、お前が長野で旅館経営してるなんてな。随分と出世したな」
「そんな良いもんじゃないっすよ……親の家業なんで継いだだけですし、仕事は大変だし、できればもうちょっと遊んでいたかったっす……」
「ああ? でも彼女はいるんだろ? しかも結婚する予定の」
「──そうなんですよっ!!」
「うおっ、声がでけぇ……」
俺が出会った時に聞いたことを改めて口にすると急に声のボリュームを跳ね上げさせた池田(男)。まだお昼には少し早い時間で周りに客がそんなにいないから良いものの、周りに人がいればもっと厳しく注意する声量だ。
「ああっ、すみませんっ。いやでも東郷先輩には先週にも言ったかもしれませんけど、うちの嫁──いや、まだ彼女なんすけど、実質嫁がね……うへへ、なんか嫁って言うの恥ずかしいですねぇ。いやでも嫁なので嫁って言いますけど、その嫁が本当に良い子で──」
……凄まじく鬱陶しい。この照れた感じで惚気を聞かされるとウザいというか殴りたくなるというか。俺がハーレム状態でなければ殴ってたかもしれないな。
ただ、そう。なんでも結婚を前提に付き合ってる彼女がいるらしい。なんでも相当な美人とこいつは言うが……、
「……そうか。写真とかないのか?」
「え? いや、東郷先輩。もう見たことあるじゃないっすか」
「は? いや見てねぇよ。誰だよ」
「えっ、いや、うちの中居さんで1人かなり若い娘がいたと思うんすけど……会ってないっすか?」
「中居……あっ、そういやなんか見たような……」
池田の言葉を聞いて思い出す。確かに、こういう旅館の従業員にしてはえらく若い、しかも美人がいて気になっていたが……あれがそうか。なるほど。
「死n──結婚はいつするんだ?」
「今なんか物騒な言葉が聞こえかけたんすけど!?」
「気の所為だろ。俺は普通に喋ってるだけだ死ね」
「な、なんか語尾おかしくないっすか?」
「おかしくない。……いや、でもそうか。あの年上好きでパシリで気の弱くてヘタレのお前が結婚か……」
「ま、間違いじゃないですけどもうちょっと良い印象はないんすか……?」
他の印象、と言われてもな……ぶっちゃけ、高校時代の俺は周りにそんなに目を向けていた訳じゃないし分からない。これだけ憶えてるだけでも印象深い方だ。
それにだ。こいつが言うように、あの頃の俺は荒れてたのもある。
むしろそんな関わり合いになりたくないであろう先輩を泊まらせたこいつの行動が不思議でしかないが……この際だ。聞いてみるか。
「……そんで、俺なんかを泊まらせて良かったのか?」
「え? それはどういう……?」
「別に今は高校時代でもないしな。無理して先輩だった俺を立てなくてもいいんだが……」
「えっ……あっ、まぁ……そう言われればそうなんすけど……いや、その……」
俺がそう言ったことで池田はしどろもどろになり、微妙な空気がその場に流れる。
そのことを申し訳なくは思うが、実際、俺を一々泊まらせる必要はなかっただろう。
先週、偶然にも泊まるホテルやらを探してる最中の俺と再会して、態々家が旅館だから家に来ないかなんて言う必要はないはずだ。嫌ってる先輩ならなおさらな。別にそのことを誤魔化しても、先輩だった俺を邪険に扱っても俺は怒りはしない。そう伝えたつもりで、別にお金だって払うし今直ぐべつのとこに移ってもいいのだが、俺の後輩だった池田は視線を迷わせていた。
しかししばらくして呼吸を整えると、少し落ち着いた様子で喋り始める。
「……正直、東郷先輩には……その、感謝してます」
「…………は?」
予想外の……あまりにも意外すぎる言葉が飛んできて俺は面食らってしまう。
パシリにしていた後輩が俺に感謝?
……いや、感謝する要素なんてないだろ。そう思った俺は正直にそれを口にする。思わず半笑いで、
「……はっ、冗談も上手くなったな?」
「い、いやっ、冗談じゃなくてマジっすよ。……そりゃあ東郷先輩は確かに先輩の中ではぶっちぎりに怖かったっすけど……感謝してるのは本当っす」
「……感謝、ねぇ……俺がやったことなんざチームに入れてやってこき使ったり厳しく指導したりしたくらいだけどな」
「そりゃ厳しかったし東郷先輩は噂通り怖かったっすけどね……それでも自分が麻雀部でそれなりに活躍して大会に出れたのは東郷先輩やボブ先輩のおかげですし、それに……それ以外にも助けてもらってますから」
──助ける? 何のことだと俺は眉をひそめる。
そんな俺の様子を見て池田は軽く笑った。思い出すように、
「やっぱり忘れてるんすね……いやまあ東郷先輩にとってはあんまり大きなことじゃないかもしれないんすけど……ほら、東郷先輩が2年で自分が1年の時の夏、憶えてないっすか?」
「……悪い。憶えてないな」
「はは……まあ、そうっすよね。でも聞けば思い出すかもしれないっすから言いますけど……あの頃、自分に彼女がいたのは憶えてるっすか?」
池田がそう言ったことで俺もおぼろげだが少し思い出す。
「あー……そういやいたな。一瞬だけ」
「そうそう、一瞬だったんすよ。あの後、結局別れたっすからね……でも、その時は普通に好きだったんすよ。夏祭りにデートに行ってたくらいには」
と、行って池田は語りだし、俺も思い出す。確か、池田の言うように4年前の話だったか……。
──4年前。
『花火、綺麗だね……』
『そ、そそそ、そうっすね……!』
そう、その時自分は人生で初めて出来た彼女、美奈ちゃんとの夏祭りデートで良い雰囲気になって──
「って、待てこら。てめぇ……高校1年の夏の大会前にそんな羨ま──けしからんことしてやがったのか……!?」
「い、いやいやいや! 未遂ですよ! だから話の腰を折らないで欲しいっす!」
池田の必死の説得に俺は一先ず落ち着いて話を聞くことにする。話の内容によってはしばくけど。
改めて4年前のこと。
『池田君……』
『美奈ちゃん……』
──そう、夏祭りが行われた神社の境内裏。人気のない場所で良い雰囲気になり、今まさに大人の階段を登ろうとしていたところに、
『こんなとこで何やってんだ、お二人さーん?』
『っ!?』
『!?』
──その時、6人くらいの見るからに不良みたいな奴らが声を掛けてきたっす。もう日焼けしてるわピアスしてるわタバコ吸ってるわ服装はDQN丸出しだわで如何にもな連中の登場に自分と美奈ちゃんは驚いたっす。
でも自分は勇気を出して一歩前に出て、
『な、ななななんですか……?』
『あー? こっちが何やってんだって聞いてんだよ。殺すぞ』
『ひっ……』
──でもそのドスの聞いた声と睨みにビビって腰が引けてて、しかもその間に不良達は距離を詰めて美奈ちゃんの方を見ると、
『おっ、結構可愛いじゃーん』
『浴衣姿可愛いー。ねぇ、俺達とも遊ばねぇ?』
『今俺達暇しててさぁ。せっかくのお祭りだし、遊ぼうぜ』
──と、そんな感じで不良達は美奈ちゃんに目をつけて明らかにたちの悪いナンパをしてきたっす。
『い、いや、その、ごめんなさい……私……』
『ちょっとくらいいいじゃん。帰りも送ってやるしさー、こんな奴といるより俺らといる方が楽しませられる自信あるぜ?』
『そーそー。俺らの方がイケてるしな!』
『俺達ここらじゃ結構ブイブイいわせてんだぜ?』
『い、いやです……私、もう帰りますから──あっ!?』
──美奈ちゃんがその場から逃げようとしたその時、彼女の手が不良の1人に捕まって、
『いいから来いよ。なあ?』
『っ……!?』
『み、美奈ちゃんっ──がっ……!』
自分が美奈ちゃんに駆け寄ろうとした瞬間、自分は殴られ、地面に蹲まってしまって。
『お前はすっこんでろよ』
『ごめんねー。彼女さん、俺らが貰ってくから』
『いやっ、やめてっ! 離してっ……!』
『あー、うっせぇな。さっさと車連れ込もうぜ』
『うぐっ、あっ……!』
──そうして地面に蹲るしかなかった自分の眼の前で、美奈ちゃんは不良達に連れて行かれてしまいました。
自分の無力さに打ちひしがれ、眼の前で彼女が連れて行かれる悔しさ、絶望が胸に落ちた──そんな時です。
『──YOYO! お前ら何やってんだYO!』
『あ?』
何やら聞き覚えのある声と共に、見覚えのある人達が不良達の前に現れたんです。
『なんだお前ら?』
『なんだじゃねぇんだYO! こっちのセリフだぜイェア! 女の子を攫うなんてありえないヒェア!』
『……なんだこの黒人、頭イカれてんのか?』
『おいテメェもどっかいってろ。見世物じゃねぇぞガキ』
『黒人って呼ぶなYO! オレにはボブっていうパパとママから貰った名前があるんだZE! それとこっちはオレのブラザーだぜイェア!』
『……おいボブ。こいつらもアホだが、アホなだけにお前だと話が通じねぇし、ちょっと黙っててくれ』
『オーケーだぜブラザー!』
──と、言って不良達の前に現れた2人こそが、白糸台高校男子麻雀部、チーム獅子王の2人、東郷先輩とボブ先輩だったんです。
白糸台高校の中で最も恐れられる不良の2人の登場に、当時の自分は助かったというよりさらなる絶望が胸を占め──
「──おいちょっと待て。当時の俺のどこが不良なんだ。別に普通だっただろうが」
「授業をサボったり先輩や他校の生徒と喧嘩したり深夜に出歩いたりする時点で十分不良っすよ……ましてや白糸台って一応進学校ですし……まぁ、確かに今思えばそこまで不良って訳じゃなくても、そこそこ素行が悪いだけでも十分不良扱いっすよね。うちの学校じゃ」
「…………」
「というわけで話を続けますけど……」
『婦女暴行は犯罪だぞ。目撃者もいるからな。未遂だけでも十分通報ものだが、今なら見逃してやるからさっさと放してから帰れ』
──と、東郷先輩は不良たちにそう言いました。至極もっともな言い分っす。
しかし不良達はそれを聞き入れるどころか、より一層睨みを利かせて、
『ああっ!? テメェらフザケてんのか!?』
『舐めてんじゃねえぞゴラッ!!』
『言いたくねぇが、俺らのバックには本物もついてんだぜ! 分かったらさっさと消えろや!』
その言葉に自分や、おそらく美奈ちゃんも震え上がりました。
でも東郷先輩達はお互いに目を合わせて、
『……おいブラザー。ブラザーでも話が通じねぇじゃねぇかYO』
『……うるせぇぞボブ。ちょっと今穏便な解決方法を考えてんだから黙れ』
『もう無理だと思うぜイェア。こんなこともあろうかとブラザーの為に武器も持ってきたYO』
『…………まぁ、使うかどうかは置いといて貰っとく』
『いや、もう100パー使うと思うYO。めっちゃ囲んできてるしな! HAHAHA!』
ボブ先輩が服の背中の部分に入れていた木の棒を取り出して東郷先輩に手渡す。東郷先輩は物凄く嫌そうな溜息を吐き、ボブ先輩は何が可笑しいのか陽気に笑っていた。
そしてボブ先輩の言う通り、不良達は2人を取り囲んで今にも殴りかかろうとしてるところであり、そんな状況でどちらも何故そんなに余裕そうなのか分からなかった。
『調子乗ってんじゃねぇよ。お前ら2人とも半殺しだからな。全裸にして写真取ってそこらに捨てていってやる』
『あー、ヤバいヤバい。普通に頭イカれてんじゃねぇか……』
『YOYO、ブラザー。それにはオレも同感だが、そういうこと言うと挑発になっちまうぜイェア』
ボブ先輩の言う通り、それを聞いた不良達は明らかに怒気を滲ませた後、
『──死ねごらぁっ!!』
一斉に2人に襲いかかった。
自分は怖くてそれを見ていることしか出来なかった。
このまま全員リンチにされて彼女は襲われてしまうのだと怯えていた。
だが数分後。終わってみれば、
『HAHAHA! 口ほどにもないとはこのことだYO』
『あー、結局こうなるのかよ……くそっ、こんなことなら関わるんじゃなかった……』
『うぐっ……あぁ……やめでくれ……やめでくれよぉ……』
陽気に笑うボブ先輩と何故か悪態をつく東郷先輩の周りには、逆にボコボコにされた不良達が地面に蹲る──そんな光景が広がっていた。
リアルの喧嘩なんて初めて見たのでよく分からないが、印象に残ったのは、やられても分かりやすく気絶するのではなく、ボコボコにされて地面に蹲って子供のように泣きじゃくるか、一目散に逃げていくかのどっちかであること。
それと、2人の先輩が不良6人程度では相手にならないほどに強いことだった。
そこでようやく自分が助かったことに気づいた。美奈ちゃんも地面にへたり込んではいるが無事である。
『しかしブラザー。こいつらヤクザがどうこうとか言ってたけど大丈夫かYO? ついにオレ達の戦いも仁義ない感じになっちゃったりするのかYO?』
『んなわけあるか。こいつらが適当言ってるだけだろ。ガチだったとしてもヤクザがこんなガキの喧嘩如きに落とし前つけにくるなんてありえねぇからな』
『でもファミリーに危害が及ぶのは怖いぜイェア』
『いや、お前の親父……元海兵隊の高級将校なんだろ? じゃあ危害なんて加えられねぇだろ、多分』
『……それもそうだぜヒェア。でもブラザーは平気なのか?』
『いや……俺も問題ねぇよ。というか、だからありえねぇっての』
『そうか……残念だYO。どうせなら100億の幼女を守ってみたかったYO……』
『養護施設開いたりタクシードライバーになったりするのか? ……いや、そんなふざけたこと言ってる場合じゃねぇ。もう行くぞ』
『帰りにたこ焼き買って帰ろうぜブラザー。そんでブラザーの部屋でオールスマ○ラだぜイェア』
『……はぁ、なんでもいいから行くぞ』
と、2人はそんな適当なやりとりをしてその場から去っていきました。
が、その直前にこちらを見て、
『……おい』
『っ! は、はいっ!』
何を言うのかと身構えていると、東郷先輩が、
『お前らも、今日はすぐ家に帰れよ』
『え、あっ……はい』
自分と美奈ちゃんにそう言って、今度こそ2人は去っていきました。
「──と、こんなことがあったんすけど……思い出しました?」
「…………」
俺はその話を全部聞いて真顔になる。そして頭を抱えながら、
「……なんだそのNTRエロ漫画の導入みたいな展開は。お前、そんなことに巻き込まれてたのか……」
「そうなんすよ……いやぁ、あの時は怖かったっす……結局、あの後頼りないとか色んな理由つけられて彼女とは別れたんすけどね。でも、東郷先輩とボブ先輩には感謝してます」
「なんだ、その……不良が実は良い奴で人知れず人を助けてた的な展開は。そんなこと、実際にありえるのか?」
「あり得たんだからしょうがないっすよね。だからまぁ……ちょっとした恩返しみたいなもんで……家で良ければ幾らでも泊まっていっていいですよ」
「……それは助かるが……」
俺はなんとも歯がゆい気分になる。
何故か感謝を覚えられているが、ぶっちゃけ、そんなことは大したことないというか、そもそもその件は憶えているがそんな感動的な良い話でもない。
「……俺は……」
「? なんですか東郷先輩?」
俺は言いかける。
喉元までその言葉が出掛かる。自分のことを、その本性を口にしかけ──
「……ああ、いや……何でもない」
「……? そうっすか。あ、それじゃあこっちから聞きたいことがあるんですけど……」
「……なんだ?」
俺は気を取り直してその質問を耳にする。話さなかったことを安堵し、同時に別の負の感情を胸に秘めながら、
「今日一緒にいた可愛い女の子は……あれ、東郷先輩の彼女だったり?」
「――池田ァッ! そのことは誰にも喋るなァッ!!」
「えっ!? なんでですか!?」
「何でもだ! 喋るな。秘密にしろ。いいな?」
俺は有無を言わさずそれを黙秘するように言う。突然の言葉に先程までの落ち込んだ気分が完全に消し飛んだが、代わりに焦らしてくれる。
まさかJKと付き合ってるって表立って言うのはさすがにちょっと……駄目過ぎる。
だから固く口止めさせる。何がなんだか分からない池田は首を傾げていたが、昔の関係性もあっておずおずと、
「は、はいっ。東郷先輩がそう言うなら……でも先輩と一緒にいた娘可愛かったっすよねぇ……どこかで見たことある気もするんですけど……」
「あんまり探るならお前の学生時代の恥ずかしい秘密をお前の嫁に喋るからな」
「そ、そそそそれは勘弁してくださいっ! 分かりました! 絶対に他言しません!」
よし、これでいい。これでバレる心配はないな。ふぅ、安心安心。これでこれから旅館に連れ込んでも変にバレる心配はないな。そんなに長く泊まる予定もないけども。
しかし今日はとりあえず、
「よし、それじゃあ飯を食え。俺は昼からまた用事があるからな」
「えー……? 東郷先輩から誘ったんじゃないですか……」
「何か言ったか?」
「何でもないですっ! はいっ! 池田、飯を食べます!」
と、最後は昔のようにハキハキと返事をする体育会系のノリで締めておいた。
……まぁ、出来る後輩を持って俺はなんとも運が良い。恵まれてるな、と思いつつ、明日からもまた続く指導とハーレムへの道程を思考することにした。
そして、何気なく震えた携帯を見ると、
『仁さん。明日もご指導、よろしくお願いしますね?』
という和からのチャットが和の写真と一緒に飛んできていた。
……何故か胸の谷間の部分を緩めたエッチな写真だった。
それを見て、明日も暇があれば犯そう、と俺は固く決意した。
のどっちは攻略完了かな? 次回から原作開始です。仕事収めに帰省もして暇になるので早ければ明日か明後日には投稿します。
皆の熱い感想、待ってる。
【参考程度に】清澄高校で好みの子は誰?
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