※この作品はR-18です。

役満で上がると惚れられる   作:黒岩

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「すみませんっ! 遅れました!」

 

「あはは、大丈夫大丈夫。時間ピッタリよ。──勝ってきなさい!」

 

「……はいっ!」

 

「和ちゃん、頑張ってね!」

 

「はい」

 

 中堅戦が終わった後の竹井にそう声を掛けられ、宮永にも声を掛けられ、和はそのまま副将戦へと向かっていく……なんとか間に合って良かったな。さすがに遅れたらヤバかった……というか和はよく切り替えられるな。さっきまであんなに淫乱だったのに……女ってすげぇわ。俺はまだちょっと身体がふわふわしてるってのに。

 

「……仁さ──東郷さんも、見ててくださいね……」

 

「お、おう……頑張れよ」

 

「はいっ!」

 

 ──と思ったが前言撤回。こいつ……秘密にしろって言ってるのにそんな意味深なやり取りで今日イチの笑顔を見せるな。嬉しいが、他の部員が見てるんだが? 匂わせにも程がある。これだと付き合ってるかどうかまではわからないが、和の好意はひょっとしてバレバレなんじゃないだろうか……そんな懸念を覚えながら俺は副将戦を皆と観戦するために席に座る。

 

「あの……東郷さん」

 

「……ん? どうした宮永?」

 

 そして席に座ると少しして宮永が隣に掛けてきて話しかけてくる。……正直宮永とはそれほど接してないし、清澄の部員の中では一番話しにくい相手だ。宮永も、なんとなく苦手意識を持ってると思ったのだが……そうでもないのか? とりあえず会話には応じる。なんなら試合の為に気分を解してやるか。

 

「和ちゃんとのお食事、どうでした?」

 

「あー、そうだな……まあ普通に良かったぞ。良い気分転換になったし、和も喜んでた」

 

 実際には食事には行ってないし、味わったのはおっぱいのフルコースだ。後で念の為メニューとか調べとくか……しかし和が喜んでいたことには間違いない。なのでそう言っておく。

 

「えっと……あ、和ちゃんって料理が上手なんですよ!」

 

「ああ、そうらしいな」

 

「そうなんですっ。だから、その……今度味わう機会があれば良いんじゃないでしょうかっ」

 

「……味わう機会があれば良い? ……ああ、まあ……そうだな」

 

 ……こいつ、一体何が言いたいんだ? 話というか言葉がおかしくて何が言いたいのかちょっとよくわからない。どういう意味だ? 味わう機会があれば良いかと言われても、そうだな、としか返せないんだが……。

 

「あっ……その、ですね……和ちゃんはとってもお淑やか……とまではいかないかもしれませんが、物静か……思ったよりはそうではないかもですけど、友達思いで優しいですし……上品……上品……じょ、上品ですし、学校でも人気があるんですよっ」

 

「お、おう……」

 

 なんだこの下手くそなセールストークみたいな話は……宮永、お前絶対営業は向いてないな。受付とか接客とかも向いてない。ぽんこつ感が凄いというか……なぜか和の良いところを話しているが、何げにディスってもいないか? こいつ──って、んん? セールストーク……売り込み……って、まさか──

 

「え、えーっと、その……ですね……」

 

 自分でもあまりうまく行って無さそうなのは分かっているのか、しどろもどろに次の話までの間を作り出す宮永。……俺の勘が正しければこいつは──

 

「──あっ! 東郷さんは、どういう女性がタイプなんですか?」

 

「──えっ?」

 

 唐突……いきなりそんなことを聞かれて俺は間の抜けた声を出してしまう。

 こいつ、そういうことを臆面もなく聞けるのは……どうなんだ? そういう質問は勘繰られるというかだな……というか予想は多分正しいな……。

 

「ちょっと咲ちゃん……」

 

「え? 優希ちゃん……あ、すみません東郷さん。話の途中で……ちょっと外しますね」

 

「……ああ」

 

 そして話を聞いていたらしい片岡が宮永に声を掛けて外へ連れ出す。

 それを見送りながらだ。俺は確信する……今のはおそらく、和を俺に文字通り、売り込んでいたのだと。

 和の良いところを言って、好きな女性のタイプを聞き出そうとする……こんなのは人の恋路を応援するような目的でもなければ聞かない筈だ。バーや飲みの席でもあるまいし。ましてや大人しめの女子高生が大人の男性へする行動としてはおかしい。

 これは多分、宮永が……というかあの分だと多分片岡もか。あの2人は和の俺への好意を知り、それを応援するために行動していると見て間違いない。まあ和のさっきみたいな言動が普段からならそりゃバレる……なんかだんだん和のイメージが変わるな……もっとしっかりしてるかと思ったが、思ったよりわかりやすい……下手したらもっと露骨にイチャついてきそうなレベルだ。恋は人を変えると言うが、和もまたわかりやすく変わってる。

 だがさすがに既に関係を持ってることは言ってないだろう。多分、和としてはあれで十分秘密にしてるつもりだし、友達2人にも言っていない──が、気づかれているために、応援されていると。

 改めて考えると地味に面倒な……これからも和は無意識に好きな男の存在を匂わせる行動をしそうだ。なんというか、プレゼントを送ったら毎日身に付けたり友達に意味深に自慢したりするのだろう。しっかりしてる様でも初めての恋愛だとそういう事には疎いということか……年齢相応とも言える。

 まあ面倒とはいえ、決定的でなければ問題はないが……もしかしたら決定的なことをしてしまうかもだし、一応和にも後でそれとなく言っておくか──っと、通知だ。

 

「ん……」

 

 俺は携帯を取り出し、相手は誰だとそのチャットの相手を見る。そこに書かれていた名前は──龍門渕。

 

『右側、一番前の席に来て下さいまし!』

 

「は……?」

 

 俺はその文面を見て、頭に疑問符を浮かばせながら右前方に目を向けると──げっ。見覚えのある金髪……。

 

「……何やってんだお前」

 

「ふふふ……変・装っ! ですわっ!」

 

 俺は億劫ではあったが、一応立ち上がり、竹井に知り合いがいると一応声を掛けてから席を離れる。右側の一番前の席。そこに座っていたのは、サングラスを掛けただけの龍門渕透華だ。

 

「……観戦しに来たのは辛うじてわかるが、変装してる理由がわからん。もう一度聞くが、何やってんだ?」

 

「だって私がそのままの姿でこんな人の多いところにいたら目立ってしまうでしょう? 目立つのは大好物ですが、今はお忍びの観戦。こんなところで注目を集めるつもりはありませんわっ」

 

「……あー……もしかして、さっきまた後でって言ってたのは……」

 

「ふふん。さすがは私が認めた方。その通りですの。──共に観戦しますわよっ!」

 

 やっぱりか……まさかと思ったが、透華節が炸裂してる。はぁ……仕方ない、と俺は溜息をついて再び携帯を取り出して操作する。

 

「…………」

 

「ちょっと? 勝手知ったる仲とはいえ、人との会話中に電話をするとはマナー違反ですわよっ」

 

「お前も知ってる相手だ」

 

「……? 誰ですの?」

 

「──ハギヨシ」

 

「ちょっと!! まさか連れ戻させようとしてませんっ!?」

 

「大声出すな。お前の方がマナー違反だぞ──っと、繋がったか。もしもし」

 

 俺は透華のツッコミを無視して電話に集中する。すると相変わらず涼やかな余裕のある声が聞こえてきた。

 

『おや、東郷様。電話とは珍しいですね。どうかしましたか?』

 

「いや、お前んとこのお嬢様が他の連中に黙って他の試合を見に来てしかも俺に付き合わせようとしてるんだ。だからさっさと迎えに来てくれ」

 

「わたくしは犬ではありませんことよっ!」

 

『なるほど……事情はわかりましたが、生憎と私はそちらに向かえません』

 

「あ? なんでだよ。いいから来い。お嬢様の身の保証はしねえぞ」

 

「なんだか誘拐犯みたいなこと言ってますわねっ」

 

『いえ、近くにいれば向かっても構わないのですが、今私は衣様とまだお屋敷にいますので……』

 

『ハギヨシっ! 何処ぞの有象無象と電話しているんだ?』

 

『東郷様です。代わりますか?』

 

『何っ!? とーごーか! なら代われ!』

 

「代わるな代わるな。今はお子様と会話してる場合じゃねぇ」

 

『聞こえているぞとーごー! 衣はこどもじゃないっ!』

 

「持ちネタ出来て偉いなー。でも新ネタはないのか? そろそろ飽きたぞ、それ」

 

『衣は芸人じゃないっ!』

 

「その返しは芸人みたいでいいぞ。さすがだな」

 

『むむむー! 怫然! 今日という今日は許さぬぞとーごー! 根の国に送ってくれようか!』

 

「はいはい、また今度ネットで対戦な。わかったからハギヨシに代わってくれ」

 

『む……約束だからな! 与太郎には針千本!』

 

 相変わらず衣の言葉はよくわからん……そう思っていると衣が電話をハギヨシに返した。

 

『では、そういうことで』

 

「待て待て待て。お前までふざけるな。何も解決してねぇよ」

 

『透華お嬢様のことはお任せします。今はまだお嬢様の試合時間ではないのでしょう?』

 

「いや……そりゃそうだろうけどな」

 

『なら付き合ってくださると助かります』

 

「……チッ、なら指定の口座に1億振り込め」

 

「まさかの身代金要求……!? って思ったより安いですわね。それでしたら簡単に払えてしまいますわ」

 

「無視し続けようと思ったがそれは無視出来ねぇ……普通は払えねーよ!!」

 

『楽しそうですね……ではまあ今度食事でも奢りますよ』

 

「チッ……メチャクチャ高い飯要求してやる……牛○だ。それも一番高い食べ放題のコースに飲み放題もつけてやる」

 

『凄くリーズナブルですね。それでは交渉成立ということでよろしくお願い致します』

 

 そう最後に言って、ハギヨシとの電話を切った。……結局、このお嬢様に付き合わなくちゃならないのか。

 

「交渉は終わりましたの? それで、私は幾らになりました?」

 

「約6000円だ」

 

「私の値段、安すぎですわっ!?」

 

 ショックを受ける透華。なんというか、相変わらずノリが良いというか喧しいお嬢様だな……まあ変にお堅い奴よりは話しやすいが。

 まあどうせ透華はこの和の試合だけ見たら帰るだろうし、それくらいは付き合ってやるか。なので俺は透華の隣に座って和の試合を観戦することにした。

 

 

 

 

 

 長野県予選会場E卓の観戦会場から一度出た宮永咲と片岡優希は話し合いを行っていた。

 会場内では試合が始まるところであり、仲間が戦っているのだから応援するのが普通だが、その仲間の為でもある。

 

「えっと、どうしたの優希ちゃん。何かマズかったかな?」

 

「いや咲ちゃん……あの聞き方だとまるで咲ちゃんの方が気があるみたいだじぇ……」

 

「えっ……結構頑張って和ちゃんの良いところアピールしたつもりなんだけど……」

 

「それもちょっと不自然だったじぇ……」

 

「そうかな……」

 

 そう。というのも何を隠そうこの2人は──和の想いに気づいていた。

 

「早いとこのどちゃんの恋を実らせないとこれから合宿とか大会の泊まりの度にアレが起きてしまうじょ……」

 

「うん……あれね……」

 

 というより気付かされていた──和の例の行為によって。

 そのせいで2人は中々眠れず、悶々とする日々を過ごすことになっていた。なので、その原因を早めに解決するべく、そして一応友達の恋を応援するということで行動を起こしていた。

 

「我々の安眠のためにはなんとしてもくっつけるしかないじぇ! 元プロも悪い人じゃないみたいだしな!」

 

「うん……でもどうすれば良いんだろう……和ちゃんのアピール……男性の好きなもの……」

 

 咲は誰かと付き合ったことなどないし、男性の友達もほぼいない。唯一の男友達が京太郎くらいだ。ゆえに自信なさげに考え込み、優希も似たようなものだが、しかしそこで指を一本立てて優希がはっとして案を出す。

 

「わかったじぇ! おっぱいだ! のどちゃんのあのおっぱいがどれだけ良いものかアピールするんだじぇ!」

 

「ええっ!? 流石にそれは恥ずかしいよっ!」

 

「でも男はおっぱいが好きな筈だじぇ! 東郷元プロもきっとそうに違いない!」

 

「う、うーん……どうなんだろう……でもそういうアピールはどっちにしろ出来ないよ……」

 

「そうか……でもそれ以外には思いつかないじぇ。……あ、咲ちゃんは京太郎の好きなものとか知ってるのか?」

 

「え、何で京ちゃん?」

 

「男の好みは男から調べるのが1番なのだ!」

 

「えー……でもそこまで知らないんだけど……」

 

「そうなのか……」

 

「うん……好みって言っても……好きな食べ物とか漫画とかスポーツとか芸能人とか動物とかしか……」

 

「──結構知ってるじぇ」

 

 優希はツッコんだ。だが咲としては本当にそんなに知らないつもりだった。

 

「そうかな……でもこれは中学の時に──」

 

 その理由を説明しようとする。

 だがその時。紫色の髪の少女とすれ違い──咲は怖気を感じて瞠目した。

 

「────!!」

 

「……咲ちゃん?」

 

「えっ……あ……」

 

 優希に声を掛けられ、ようやく動くことが出来た。

 それまでは振り向くことも……動くことすら躊躇われた。

 咲の中の第六感がそのすれ違った少女の何かを感じ取ったのだ。

 額に汗を掻き、表情を険しいものにした咲。そしてそれを見た優希が首を傾げる。今しがたすれ違った少女の後ろ姿を見て。

 

「今の人がどうかしたのじぇ?」

 

「……今の人……」

 

「?」

 

 咲はそれを伝えるべきか迷う。気の所為かもしれないからだ。

 

「……ううん。何でもない」

 

「……? おかしな咲ちゃんだじぇ。もしかして……こっちに目覚めたか!! 美少女だったし!」

 

「違うよ!」

 

 咲は妙な勘違いを受けたことを慌てて否定しながら胸を撫で下ろす。嫌な気配はもう感じない。やはり気の所為だろう。

 咲はもう一度だけその少女を見る。背中の空いたショルダーオフのニットを着た紫髪色のボブカットの少女。

 その少女の気配が──()()()()()に似ていたことを、咲は気の所為だと切り捨てることにした。

 

 

 

 

 

『──ツモ。1000、2000です』

 

「これは……やはり“のどっち”ですわね……!!」

 

 ──そうだぞ、とは言わない。別に教える必要もないからな。既に確信を持っているみたいだし。

 何はともあれ副将戦は和の圧勝だった。

 おかげで会場は盛り上がっているし、隣の透華も“ぐぬぬ”と言った顔で唸っている。自分より目立たれるのが嫌いなのは相変わらずだ。

 

「これは決勝は心してかからなければ……私が圧勝して目立てませんわっ!!」

 

「勝つことは確定なんだな……まあ、頑張れ」

 

「あら、私達を応援してくれますの? やはりコーチとして正式に──」

 

「違うわ。どっちも応援するってだけだ。どこかに肩入れはしねぇ」

 

「強情ですわねぇ。……なら私は行きますわ」

 

「ん? 大将戦は見ていかねぇのか?」

 

「必要ありませんわ!! ──ということで送ってくださいまし」

 

「1人で帰れよ……はぁ……まあ行くぞ」

 

「それでこそですわ」

 

 一応ハギヨシに頼まれた手前、1人で行かせるのは気が引ける。何もないとは思うが一応だ。こんなのでもお嬢様だしな。

 

「それで午後は私達の試合を観戦しに来ますの?」

 

「ん、いやちょっと見てもいいが……一応他の試合で見るところもあってな」

 

「あらそうですの。でも確かに私達の試合の観戦は明日の決勝でも構いませんわ!」

 

 透華が自信たっぷりにそう言うが、実際その通りではある。龍門渕が決勝まで行けないなんてことはありえないし、風越も似たようなものだ。

 だから午後からは鶴賀の試合でも見に行って……ああ、その前のお昼は風越……というか美穂子から誘われてるんだよな。美穂子のことだから弁当でも作って来てそうだ。正直かなり美味いし期待出来る。

 そんなことを考えながら透華と歩いていると、龍門渕の面々が見えてきた──向こうも気づいたようだな。

 

「あ、透華と東郷さん」

 

「てめーどこ行ってたんだよ!!」

 

「原村和は“のどっち”でしたわ!!」

 

「帰ってくるなりそれかよ!!」

 

「ふーん……あ、東郷さん透華を送ってくれてすみません」

 

「別にいいぞ。身代金が貰えるしな」

 

「え、なんですかその冗談」

 

「冗談じゃない。お嬢様の面倒を見る羽目になった代金としてハギヨシに請求した」

 

「……いくら?」

 

「約6000円。焼き肉に連れて行かせる」

 

「安すぎますわよねっ!! 一に智紀からも何か言ってくださいましっ!!」

 

「身代金は良いんだ……」

 

 国広がいつもの透華に苦笑いする。沢村は相変わらずパソコンを弄っているが、一応話は聞いている。井上が1番呆れていたが……あ、そうだ。

 

「お前らも焼き肉来るか?」

 

「え、いいんですか?」

 

「ハギヨシの金だろ」

 

「だからいいんだ。あいつの財布を少しでも痛めつける」

 

「それなら庶民のお店ではなくて私行きつけの最高級焼肉店などどうですの?」

 

「行きたい……」

 

「それは痛めつけ過ぎだよっ!」

 

 ──ということで夜はハギヨシの自腹で焼き肉を食べに行くことになった。ざまあみろハギヨシめ。月初めの大出費で月末には節約しなければならないという地味な悩みを味わえ……と思ったが龍門渕の執事とか絶対メチャクチャ貰ってるし、そもそも住み込みだから食事とか出てくるよな……くそ! なら遠慮なく食ってやる! 

 

 そして俺は龍門渕と別れ、風越女子と合流しようと廊下を行く──

 

「──へぇ……夜は焼き肉行くんだ……いいなぁ♡」

 

「っ──!」

 

 ──そしてその声は突然、俺の背後から聞こえてきた。

 気配が全く、直前まで感じ取れず、一瞬モモかと思ったがすぐにそうではないと理解る。

 なぜならこの声は……知っているから。

 

「私もお腹空いたし、連れて行ってほしいな~♡ ね、ね、後で連れて行ってくれない?」

 

「……………………お前、いつ来た?」

 

「今日だよ~。ここにいるっぽいって聞いたから来ちゃった♡」

 

 俺は振り向かず、立ち止まったままその少女と会話を行う。

 そしてその甘ったるい声から紡がれる言葉に眉をひそめた。

 

「……お前1人か?」

 

「うん♡ 久し振りに会いたいな~って思ってね♡ だから誰にも来ることは伝えてないよ♡ 安心して♡」

 

「…………なら何しに来た?」

 

 その言葉は辛うじて信用出来るが……その背後にいる者は信用出来ない。

 少女は相変わらず媚びるような可愛らしい言動で答える。

 

「ん~……本当に久し振りに会いたいなぁって思っただけなんだけどなぁ……あ、でも1つだけ理由はあるよ♡」

 

「……何だ? また物強請りか?」

 

「違う違う! そうじゃなくって──」

 

 少女は相変わらず笑みのままで告げた。しかもそれは──

 

「──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()思って確かめに来たの♡」

 

「……!!」

 

 ──思考が止まった。

 どうしてこいつがオカルトのことを知っている? なぜ? 誰にも言ってない。どこでバレた? どういうことだ? 

 

「まあどうやら目覚めたみたいだし……今日はもう帰ろうかなぁ♡」

 

「っ……!! ──おい待て恋!!」

 

 俺は振り向き、その少女の名前を声に出し、呼び止める。

 見ればやはりあいつだ。身長は160程でスタイルの良い露出の高い服装を身に着けてる泣き黒子。言っちゃあなんだが美少女でもある俺の妹、東郷恋は既に会場を後にしようと歩き出しているところだった──だが俺が呼び止めたことで僅かに立ち止まって振り向くと、その紫色の瞳が俺を捉え、声を紡ぎ出す。

 

「フフ♡ またねお兄ちゃん♡」

 

「いや待て!! お前、なんでそのことを……!!」

 

「ん~~……でもここで話すようなことじゃないし……話されたらお兄ちゃんも困るでしょ? だから続きは家でね♡」

 

「っ……」

 

 確かに、誰が聞いているのかわからない場所でそんなことを話すのはマズい。

 だがついて行ってでも聞きたい気持ちもある。……なぜ俺の妹がそのことを……! 

 

「あ、そうそう。そういえば私も麻雀始めたんだよね♡」

 

「……は!? お前が……麻雀……?」

 

「えへへ♡ お兄ちゃんと一緒だね♡ ……ってことで、出来れば早めに帰ってきてね♡」

 

 ──それじゃ、と軽い調子でそれだけを告げて恋は帰っていく……が、俺はそれを必死に呼び止めた。

 

「おい待て!」

 

「待たない♡」

 

 恋が去っていく。歩いていく。

 それを見て、俺は諦めた。追いかけずにその場で立ち止まり、黙って成り行きを見守る。

 すると数分後──目元に手を当て、泣きべそを掻いた恋が戻ってきた。

 

「うっ……ぐす……お兄ちゃ~~~ん。ホテルまでの道、わかんなくなっちゃった……」

 

「…………だから待てつっただろ……方向音痴なんだから…………というか、どうやって1人で来た?」

 

「知り合った男の人に連れてきて貰ったの……」

 

「……相変わらずビッチだな……」

 

「ヤリチンのお兄ちゃんに言われたくなーい……」

 

「ヤリチンとか言うな!」

 

「ぶー、お兄ちゃん先に言った癖に……というかちょっと精液の匂いするんだけど、もしかしてさっきまでヤってたの?」

 

「…………やってない」

 

「嘘だぁ~~うわぁ~~お兄ちゃんってば昔は私のこと変態呼ばわりしまくってた癖に、今はこんな場所でしてるんだ~~へんた~~~い♡」

 

「うぜぇ……くそっ……やっぱ1人で帰れ。男引っかけりゃ帰れるだろ」

 

「ああんウソウソ! ごめんなさいするからちゃんと後で送って♡ ね?」

 

 はぁ……と俺は溜息を吐きながらも結局、後で妹を送っていくために妹をそこに留まらせることには成功した……が、俺は後で、留まらせたことを凄まじく後悔する羽目になるのだった。




仁くんの妹の恋ちゃんです。起爆剤であり、核心を握ってます。全国編の布石をそろそろ打っておく。
ということで次回か次次回で県予選を終えて、長野の旅館でエロ。それが終わったら第一部終了で第二部の全国編になりますのでお楽しみに。

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