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冬は寒い。外は人間の生息する温度ではないので、遊ぶなら屋内だろうと、ボウリング、ビリヤード、カラオケ、ダーツ、ショッピング、映画館、水族館、美術館、博物館、プラネタリム、ボルダリング、バッティングセンター、酸素バー、窒素バー、塩素バーなど、様々な遊びを得意気に並べると、卯月ちゃんはピクリとも眉を動かさずに、しばらく無言で立ち尽くしてから小さく息を吐いた。
「今日は○○さんの部屋でのんびりしたいですね」
それはエッチしたいという意味だろうか。思わず目を輝かせると、卯月ちゃんは押しとどめるように胸の前で両手を広げて、申し訳なさそうに首を振った。
「今のは誤解を招く発言でした。思考の9割がエッチなことで満たされてる○○さんじゃなくても、そう解釈したと思います。私のミスです」
「違うんだ」
「今日は生理で少しだるいので、文字通りのんびりしたいという意味でした」
なるほど。聞いたところによると、卯月ちゃんは幸いにも生理痛は軽い方らしく、デートや日常生活はもちろん、アイドル活動にもほとんど支障はないという。だから会う時も、今日は生理だろうかと考えることはまずないのだが、時にはひどい日もあるのだろう。
「俺は全然構わないけど、帰って休んだ方がいいんじゃない?」
心配してそう言うと、卯月ちゃんは悲しそうにため息をついて瞳を伏せた。
「エッチができない私になんて、用はないってことですか……」
「いや、まったく違う。怒るよ?」
「そういえばだいぶ前に、○○さんに怒られたいみたいな話をしましたね。どうぞ怒ってください」
悪びれずにそう言って、卯月ちゃんがいたずらっぽく笑う。どうやら俺が思うよりは大丈夫そうだ。生理は、ひどい人はベッドから起き上がれないとか、電車の中で倒れるとか、そういうこともあると聞いた。電車に乗りながら念のためもう一度確認すると、卯月ちゃんは明るく笑った。
「たぶん、私の『ひどい』が、他の人の『普通』くらいだと思います。今日も別にボルダリングをしろと言われたらできるくらいの体調ですが、○○さんが挙げた中では、酸素バーに一番惹かれました」
「酸素バーってどうなの?」
「それは私の台詞です。選択肢に出てきたくらいなので、○○さんは行ったことがあるのかと思いました」
呆れたように卯月ちゃんが言った。正直、まったく興味はないのだが、卯月ちゃんとなら行ってみてもいい。要するに、卯月ちゃんとならなんでもしてみたいが、もしバンジージャンプをやってみたい言われたら、俺は辞退して記念の動画撮影に専念したい。
シートが空いたので並んで座ると、卯月ちゃんが俺の肩に頭を乗せた。ジャケットが厚いので温もりはおろか、重みすらほとんど感じないが、視覚的にドキドキする。
「もうじき、いっしゅうきですね……」
卯月ちゃんが向かい側の窓から外を見ながら、しみじみと呟いた。俺は思わず息をのんで卯月ちゃんを見下ろした。
一体誰が死んだのだろう。共通の知り合いではないと思う。そもそも俺はまだ、身近な人間を誰も失っていない。付き合い始めてもうじき1年になるが、卯月ちゃんの口から人が亡くなったという話は聞いたことがない。
俺は眉間に皺を寄せて唸った。聞いてもいいのだろうか。だが、人が亡くなった話を忘れていたというのは、あまりにも失礼である。息を止めたまま小さく頷くと、卯月ちゃんは口元だけ綻ばせて目を閉じた。
「いっしゅうきは何か特別なことがしたいですね。クリスマスに行ったお店とか、また行きたいですけど、新しいお店も開拓したいです」
もしかしてこの子は、いっしゅうきを一周年記念の略だと勘違いしているのだろうか。冗談なら敢えてスルーしたいが、本気だったら教えた方がいい。あまり面白い冗談ではないので後者と判断して、俺は真っ直ぐ前を見つめたまま言った。
「一周忌は、人が亡くなって1年経った時にやる法要のことだよ」
静かにそう告げると、卯月ちゃんは目を開いて顔を上げた。ポカンと口を開けて俺を見つめる。キスしたくなるような距離だが、車内にはたくさん人がいるし、それは部屋に着いてからにしよう。
何も言わずにじっとしていると、卯月ちゃんは小さくため息をついて、再び俺の肩に頭を乗せた。
「なんとなく、言葉の響きに違和感はありました」
「他で使ってない? ニュージェネの一周忌とか。凛ちゃん辺りに、縁起でもないって突っ込まれそう」
「幸いにも無いですね。ラジオとかで言ったら、動画サイトに転載されて、一生ネタにされる失言になった可能性がありますね」
そう言ってから、卯月ちゃんは少しだけ微笑んで、「それはそれでおいしいけど」と付け加えた。なるほど、炎上でもないし、それくらいの話題性はむしろアイドルにはプラスになるらしい。逞しいことだ。俺だったら、時を巻き戻す秘術を求めて旅に出る。
家の最寄り駅で降りて、見慣れた景色の中を歩く。新鮮とは言えない程度には、卯月ちゃんとも何度も一緒に歩いている。
部屋に戻ると、まず暖房を入れた。アウターを脱ぎ捨てて、卯月ちゃんの体を抱きしめる。布団の上でキスをしながらごろごろ転がっていたら、だんだん体が熱くなってきた。卯月ちゃんが潤んだ目で俺を見つめる。
「エッチしたい……」
「しようか」
「実は今日、生理なんです」
「それは驚いた」
生理でもいいという意味だろうか。キスをしながら太ももを撫で回し、そのまま下着の中に手を入れると、卯月ちゃんが可愛らしい悲鳴を上げた。
「えっ、あの、○○さん?」
「あれ? そういう意味じゃなかった?」
ぬるぬるする股間に指を這わせると、卯月ちゃんが小さく震えながら俺の肩に顔を埋めた。
「生理だからできないって」
「生理でもしたいって聞こえた」
「I wish I couldってやつですよ」
「頭のいい子に見える」
今さらなので、抱き合って舌を絡めたまま、卯月ちゃんの気持ちいいところを指先でいじる。卯月ちゃんは気持ち良さそうに吐息をこぼしていたが、俺がこじ開けるように中に指を入れると、可愛らしく首を振った。
「色々汚れちゃいます!」
「布団はこの際、汚れてもいい」
「嫌ですよ! スカートも脱ぎたいし、遊びに来るたびに血の跡のある布団を見たくありません!」
卯月ちゃんが涙目で睨む。怒っているのか恥ずかしがっているのかわからないが、どちらにしても可愛い。
どうしたらいいのかわからなくなったので、指を中に入れたまま、もう片方の手でスカートを脱がせた。そのまま立ち上がると、肌と下着の隙間から赤い雫が太ももを伝って落ちた。
「本当に血が出るんだ」
思わず小学生みたいな感想を漏らして見つめると、卯月ちゃんが顔をしかめて頭を抱えた。
「当たり前じゃないですか!」
「そう言うけど、俺は見たことがない。神秘的だ」
「もうっ! 最低です! 故郷に帰ります!」
「仲良く一周年を迎えよう」
「1年続きませんでしたね。私たちのこれまでの時間が全部台無しになりました」
卯月ちゃんが無念そうに首を振る。どこまで本気かわからないが、このままではまずい気がしたので、仕方なく下着から手を抜いた。顔の前で手を広げると、人を殺した後のように血でまだらになっていて、卯月ちゃんが目を見開いて唇を震わせた。
「なんてことするんですか!」
「いや、今俺はどうすればよかった? やり直してもいい」
「人生をやり直してください! もういいから、お風呂に行きましょう!」
卯月ちゃんが泣きそうな目で俺の手首を掴んで、引きずるように風呂場に導く。服を脱ぎ捨てて下着姿になると、乱暴に俺のズボンを脱がせた。行ったことはないが、風俗店のサービスはこんな感じだろうか。どうかこの先も卯月ちゃんと仲良く過ごして、そんな店には縁のない人生を送りたい。
「上は勝手に脱いでください。袖が汚れても私のせいではありません」
フンッとそっぽと向いて、下着を脱いで中が見えないように畳む。さっさとシャワーを浴び始めたので、俺も服を脱いで中に入った。
シャワーを止めてそっと背中から抱き締める。おっぱいを揉みながら白いうなじに唇を当てると、卯月ちゃんがギュッと切なそうに俺の腕を掴んだ。
少しだけ体勢を変えて、キスをしながらもう一度股間に手を当てる。しばらく触っていると、粘度の高い液体が溢れてきた。ほぐすように触りながら、いきり立つ先端を中に導く。何度やっても1回目はすぐにイキたくなるが、ぐっと堪えながら、入口付近の敏感な場所を触った。
「はぁ……んっ……」
卯月ちゃんが押し殺した声を漏らす。白い背中が艶めかしく光る。胸がいつもより少し張っている気がしたので、手をお腹に這わせながらうなじを舐めた。
しばらく触っていると、股間の中がキュッと締まってきた。卯月ちゃんが身をよじって、振り返りながら俺を見た。
「正面からギュッてしたいです」
「うん」
一度抜いて、前から入れるとその摩擦でイキそうになった。卯月ちゃんが俺の体に抱きつきながら、熱っぽい息を吐いた。
「今日はいいですよ。一緒にイキましょう」
「そうなんだ」
「たぶん……」
お言葉に甘えて、指で刺激を加えて卯月ちゃんをイカせてから、俺も溜まっていたものを中に出した。きつく抱きしめ合って、これでもかというほど舌を絡め合う。
体を離すのが惜しくてずっと抱きしめ合っていたら、卯月ちゃんの中で下半身が力を盛り返してきた。初めてエッチした日、抜かずにもう一度と考えていたら、卯月ちゃんに冷静に怒られたのを思い出した。
今日は出来そうだと、そのまま腰を振る。中がぬるぬるし過ぎるが、半分は自分のせいだろう。
入れたまま器用に後ろからの体勢に戻すと、卯月ちゃんが壁に手をついてかすれる声で言った。
「最初の硬さでこの長さだったら……」
「I wish I could?」
「知りません」
確かに一度目ほどではないが、だんだん硬さも戻ってくる。それに合わせて卯月ちゃんの息遣いも荒くなる。壁が薄いので声は押し殺している。声が聞けないのは残念だが、それもまた可愛い。
両手でお尻を持って出し入れを繰り返す。汗ばんだ白い裸体がとても綺麗だ。世界にこれほど美しい光景が他にあるだろうか。
「中に出してくださいね?」
卯月ちゃんが苦しそうに喘ぎながら、うわ言のようにそう口走った。付き合ってそろそろ1年経つが、そんな台詞を言われるのは初めてだ。官能的過ぎて、言葉だけでイキそうになる。
「今のは、ヤバイ」
「そうですか? それは良かったですね」
耳まで赤くしてそっけなくそう言う卯月ちゃんをしっかりと抱きしめて、そのまま中に出した。最後の一滴まで出し尽くしてから、二人で吐息を絡める。引き抜くと、血と混ざり合った精液がドロッと溢れた。そういえば生理だったことをすっかり忘れていた。
正面から抱き合って、たっぷりとキスをする。
「生理のたびにこれをしよう」
耳たぶに唇を押し付けながら囁く。素晴らしい提案だと思ったが、卯月ちゃんは半眼で俺を睨んだ。
「今日が最初で最後です」
「中に出してって言ってた」
「次は結婚して、子供が欲しくなった時ですね」
にこりと笑ってからかう。冗談でもときめく台詞だ。あまりにも可愛かったので、優しく抱きしめてそっと髪を撫でると、卯月ちゃんは恥ずかしそうに微笑んだ。