※この作品はR-18です。

雀野さんはドスケベビッチ   作:モブガサ

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ぬきたし二次流行って♡



ながされて青藍島

 夕暮れに染まる閑散とした教室で一組の男女が対峙していた。

 男はいかにも粗野で、野暮ったく、下品。ニタニタと笑い、興奮で鼻息が荒く目は獣欲で満たされている。雄が何を求めているのか、誰の目にも明らかだ。

 時計の刻む規則的な運針音が支配する箱庭に少女の凛とした、それでいて親しみある声が響く。

 

「そんなに見つめられると、我(オレ)も聊か気恥ずかしくなるのだが」

 

「そりゃあ眺めるだろうよ……今からたっぷり味わう身体なんだからなぁ……!」

 

 男の熱ある声を意にも介さずフゥと息を吐き、呆れたように男の傍から離れ窓へと身を寄せた。

 下から上へ。視線がねっとりと移動していく。眼前の獲物は絶世という表現に決して言葉敗けしない美少女であった。

 夏服から伸びる手足はスラリと長く、女性の象徴とも言える双胸は見事な程に実っている。

 鍛えているのか腰がきゅっと引き締まっていて、それが女性らしい肢体をより強調していた。

 落陽に染まる街並みに感じ入ったか。薄い唇が柔らかな曲線を描き、形良い鋭い双眸はどこか楽しげで。

 腰まで伸びる絹のような濡羽色の髪が、窓から流れ込んでくる風によってふわりと広がる。

 

 

 少女は名残惜しそうに一瞥したのち、窓を閉め、カーテンにて光を遮る。

 こうして世界は完全に二人だけのものとなった。

 

「散々焦らせやがって……! お、俺の身体なしじゃ生きられなくしてやる……!」

 

「ふふ──さぁ、始めようか」

 

 乙女の小さな口から誘惑の言霊が紡がれる。清純と淫蕩のオーラ。二律背反する属性を内包する魔性を垣間見て、青年は息を呑み込んだ。

 宝石のような空色の瞳と、性欲の瞳が交わったその刹那。

 

 

 

 ────男は、理性を失い獣となった。

 

 

 

「孕めオラアアアア!」

 

「言うのが早いわアアア!」

 

「ぐえ──────────っ!」

 

 

 

「よし、今日も処女を守り抜いたぞ」

 

 可愛らしくガッツポーズを決めて、後始末を終えたあと保健室のベッドへ男を運んだ。

 

 雀野(すずの) 薙帆(ちほ)。水乃月(みのつき)学園A等部(高校生)2年生。

 セックスが日常と化した島、青藍(せいらん)島で一二を争うほどのビッチと持て囃されている少女である。

 性交経験は、ない。

 

 

 ◆

 

 

 数十年前からこの島には特別な条例が存在していた。

 名を、"ドスケベ条例"。

 アホみたいな名前のこの法を簡潔に表すのならばこんな感じだ。

 

 ──この島では誰とでも、いつでも、どこでもドスケベセックスを楽しめる。

 

 この条例に日本は沸き上がった。若者が次々と出ていき老人ばかりが取り残されていたこの島は、ドスケベ条例のおかげで観光客数が鰻登り。急速に発展を遂げ、大量の移住者の存在もあってあっという間に若返りを果たした。

 その復活劇の裏には一人の政治家の辣腕と、血の滲むような努力があったらしいのだがそこまで詳しくは知らない。

 ドスケベ条例が存在する青藍島生まれの子供たちにとって、性行為とは日常的なもの。そういった価値観を育んで成長していく。

 当然私の通っている水乃月学園の生徒たちは皆セックスを愉しみ、快楽を享受しているのだ。

 左を向けば──

 

「突かれるたびにあらゆる方向からマ〇コいじめられてるぅ♡ う、上ぇ♡ また上ぇ♡ 今度は下ぁ♡ 下ぁ♡ 次はひだりでみぎ……あぁあん♡気持ちよすぎてもうわかりません♡」 

 

「視力検査やってんじゃねぇんだぞ! わからなかったので一段繰り上がり更に穴が大きくなりますガバガバマ〇コで孕めオラ!」

 

 

「性の風紀を乱す行為は許しまオホォォ♡」

 

「そのおっぱいで風紀を守るのは無理でしょ! デカ乳と一緒に風紀委員特有のクソ雑魚ケツマ〇コを後ろから同時責めしてやるよ孕めオラ!」

 

 どこもかしこも孕めオラ。

 一応言っておくと島民の女性全員が妊活時以外、常にピルを服用しているため孕むことはまずない。誰が言いだしたんだろう。何故この言葉が青藍島の伝統になっているのだろう。

 右を向けば──

 

 

「HRMORAAAA!」

 

「…………!」

 

 えぇ……。

 精巧なドラゴンの着ぐるみを身にまとった男がこれまた精好な車の着ぐるみ女子と性交している。

 これが三次元のドラゴンカーセックス……! なんという圧倒的存在感。

 相方が沈黙しているのは技術向上に伴うハイブリッド車特有の静音化を表現しているのか、無機物の鉄塊に過ぎない車が声を出すはずがないというリアリティに即しているのだろうか。判断に迷うところである。

 性の乱れる青藍島とはよくいったもの。そこいらで行われるセックスもハイレベルだ。

 そんな光景を尻目に廊下を歩いているとコソコソと噂話が耳に入って来る。耳が良いのがそれなりの自慢だけど今は塞ぎたい気分です。

 

「聞いたか? 雀野さんの話。またヤった相手の記憶を飛ばしたらしいぜ」

 

「怪物的(モンスター)マ〇コの異名は健在か。くぅ~! ビッチさに磨きがかかってまたエロくなってやがる……!」

 

「この前はSSの"妖刀ムラハメ"先輩もマン堕ちしたと聞くぞ」

 

「マジで!? あの百戦チン魔の"妖刀ムラハメ"先輩が!?」

 

「憧れちゃうなー。毎日膣トレやってるけど追いつける気がしないよ」

 

 バトル漫画で初登場した有名キャラのように私のことを噂している。同性の別人の話だと思い込みたいが現実そんなにスイーツじゃない。

 私まだセックスエアプなのに、処女なのに。

 これも全てお父さんのせいなのだ。

 

 

『薙帆。お前おじいちゃんのとこに行け。転入の手続き諸々全て終わらせておいたから安心しろ』

 

『え?』

 

『あー。そうだ肝心なこと言い忘れてた。我が娘 雀野 薙帆よ。高校卒業までの間、青藍島で処女を守り通すこと。是、静乱流免許皆伝における最終試験の課題とする。……返事は?』

 

『う、うっす! ……え?』

 

『よーし良い返事だ愛してるぜ~おやすみ~』

 

『ええー!?』

 

 こうして私は次の日青藍島に送り込まれた。あまりにも展開が早すぎる。

 というか青藍島出身じゃなくても今のご時世、既に経験済みの子が多いと思うんだ。私のこと最初から処女だと決めつけてるの酷くない? 事実だけども。

 それはともかく。私の父は静乱流という、一子相伝の殺人拳の伝承者である。一昔前の世紀末系漫画みたいな話だが事実なのでしょうがない。

 雀野家に生まれた男子は、皆例外なく呪いを浴びて生を受けるという。それを打破すべく誕生したのが静乱流の起こり。実際父も祖父も呪われていて、凄絶な鍛錬の末に克服したそうだ。不謹慎だけど一族総出で呪いに立ち向かうなんて、私の家系、正直とっても格好良い……!

 

 大昔はその技を活かして暗殺稼業を営み、数多の命を奪ってきたらしい。もっとも時代も移り変わったことでお爺ちゃんの代からは要人警護が主な仕事になったそうで。

 お父さんは今表舞台にあまり姿を現さない、とある大物政治家の護衛に当たっているとかなんとか。

 ちなみに名前の通りこの島発祥、この島由来の拳法名だ。父の実家でもある。私は今お爺ちゃんの家に住まわせてもらっているのです。

 

 普段仕事のない日は幼い私に家事を任せてずっとグータラしてるだけのお父さん。夜中ふと目が覚めた時、庭で演武をしている父の後ろ姿を見た。

 ──綺麗だった。

 あんな風になりたいと。私は一瞬で武術に魅せられてしまったのだ。私は勢いのまま庭に飛び出してお父さんに教えてくれと頼み込んだ。

 お父さんの困ったような、嬉しそうななんとも言えない表情を私は一生忘れないだろう。

 父は自分の代で静乱流を終わらせるつもりいたらしく、当初は私に教えるつもりがなかった。だけれど私は結構頑固者のきらいがある、らしい。家にいる間、四六時中付き纏って二年近く頼み込み続けてたら父は折れた。

 それから流派を継ぐかは置いておいて、ひとまず私は稽古をつけてもらった。

 辛い修行も必死に耐えた。女の子の私にとっては猶更地獄の日々だったが辛抱した。

 飄々とした父は修行に関しては大変厳格だった。いつも限界ギリギリまで追い込まれ、心臓が止まる度に静乱流心臓マッサージで蘇生させられた。

 私には天稟があったようで、お父さんはスポンジのように技を吸収していく娘の姿を見て内心とても喜んでいたとか。それで次第に育成熱が上がっていたとか。

 でももう少しこう何というか手心というか……。

 

 まぁ中々にバイオレンスな日常だったが、それでも愛されていたという自覚はある。あるのだが。

 

 それにしたって大事な一人娘を青藍島に送り付けるとはどういうことよ。

 今度会った時は半殺しに……はちょっと可哀想だから、ビンタした後に高級ディナーを奢ってもらうのだ、うん。

 

 閑話休題。

 青藍島で、ある年齢を超えた人間はセックスを求められたら基本的に応じなければならない。それは条例にも書かれており、正当な理由もなく断れば立派な条例違反となってしまうのだ。

 まず私は一人称を我(オレ)にして痛い子を装って水ノ月学園転入デビューを果たし、人を遠ざけようとした。だが男の子の性欲はそんなものでは止まらなかった。

 そこで私は代々伝わる秘伝の一つ。側頭部を両手で抑え込み、記憶を司る海馬へ絶妙に加減した"気"と"振動"を与え、対象の記憶を抹消するという奥義で密室に誘い込んだ男子を次々と葬ってきた。

 射精していないと不自然すぎるため私は常にオナホとローションを携帯し、超振動させたオナホで射精させてその場を凌いできたのである。最初はおっかなびっくりで顔を真っ赤にしていたが繰り返しやっていれば嫌でも耐性はつく。機械的に処理できるようになり、最近はワンスイングのみで射精させる技を身に着け、効率化にも成功し早く家に帰れるようになった。

 

 おかしいなぁ。私や友達に襲い掛かる悪漢を瞬殺して見知らぬ老子に『伝説と謳われたあの絶技をお目にかかれるとはのう』と見抜かれ周囲に凄い凄いと持ち上げられるのが理想の静乱流初お披露目だったのに。

 どうして私はファンタジーに片足突っ込んだ武術を死ぬ思いで習得しておいてやってることがオナホコキなんだろう。冷静に考えたら泣きたくなってきた。

 

 そんなこんなで誤魔化しているうちに、気が付けばこんな噂が立っていた。

 

 ────セックスしたらその間の記憶が吹っ飛ぶ。究極の膣穴を持つ学生が存在する、と。

 

 決して大きくない、閉鎖された島なので噂はあっという間に広まり、私を誘ったことまでは記憶のある男子全員がそれを真実と認めた。

 それに加えて噂に尾ひれが付きまくり

『雀野薙帆は本土の男に食べ飽きて青藍島にやって来た現代のアマゾネス』

 というのが今では青藍島民の共通認識になってるらしい。どういうことなの……

 いつの間にか私は変態ドスケベビッチアマゾネスの称号を手に入れていましたとさ。ちくしょう。

 悪口にしか聞こえないがそこはこのドスケベ島。ビッチとは最高級の誉め言葉であり羨望の対象なのだ。

 訂正することも叶わず。また処女であることがバレたら条例違反者として本当にえらいことになってしまうので、私は島中のみんなを騙してる罪悪感に苛まれながらも保身のために必死になって約半年を大胆に、コソコソと生きてきたのであった。

 

 

 

 さて、授業も無事終了したことだし、とっととこの性の魔窟から出ていくのが吉。今日は金曜日だから、土日は家に引きこもってだらだら漫画が読めるのだ。

 頑張って身に着けた気配遮断術があれば通学路など基本的に問題なし。

 問題なのはこの逃げ場所の少ない閉鎖空間と──。

 

「あら、雀野さん。今から帰り?」

 

 ゲ──ッ。

 お手洗いからやべーお人が現れてしまった。彼女の名前は片桐(かたぎり) 奈々瀬(ななせ)。

 濃く彩られたメイクに染められた金髪。胸元を大きく開いた制服がより彼女の煽情的な魅力を引き立てている。泣きぼくろが印象的な美人さんだ。

 一言で言えばギャル。

 

「今日は先約があるのでな。早々に帰らねば殿方に申し訳が立たん。貴女もか?」

 

 いや、ギャルビッチ。

 

 そう、ギャル"ビッチ"なのだ──! 

 

「そうなのよ。童貞チ〇ポ500人切りが見えてきたところでね。今日も予約がいっぱいいっぱいで大変なんですけどー」

 

 ホラいきなり桁違いのワードが出てきましたよ。

 この通り私のようなペテン師似非ビッチとは棲むステージが違う歴戦の真正ビッチだ。

『学園の男子生徒はみな彼女の穴兄弟』『72時間耐久セックス成功者』『放課後は常に50人待ち』等々、彼女を語る上で外せない伝説的エピソードは数知れず。

 身体から発せられるエロオーラが違う。女としての格の違いに息が詰まりそうになる。

 

 私はこちらに引っ越してきてからアダルトビデオや同人CG集、エロゲ等でそれなりに勉強し、島中の至る所で行われているドスケベバトルを観察して知識を蓄えてはいるが、百シコは一姦にしかずという青藍島生まれの諺もある。彼女と日常会話(エロトーク)の一つでもすればボロが出るのは必至。

 一応言っておくと私は必要に迫られてしょうがなくエロ漫画を買ったりしてるだけだから。私はエロに全然、全く、興味がないのだ。はい。

 

 移動方向は全く同じ。校門へと向かいつつ唯一共通の趣味である料理の話題で凌ぐしかない。そう考えていると正面からクラスメイトがトタトタと走り寄って来た。

 この展開は……まずい! 

 

「あー、龍虎ビッチが揃ってる! 珍しー」

 

 滝登りできない鯉と虎を一緒にしないでほしい。

 それと龍虎ビッチってもうちょっとこう……あるでしょ! 格好いいのが! 

 

「ねぇねぇお願い! 手コキのコツ、教えてもらえるかな? 最近手コキカラオケのバイト始めたんだけど店長に生ヌルヌルいって叱られちゃって。 アクメ将軍にザ・マンと呼び声の高い二人に是非教えてもらいたいなー」

 

 あだ名が増えてる……それ絶対マンの後にコが付く奴じゃん……。

 しかし私はこの手の質問を何度も尋ねられている。既に対策はバッチリだ。

 

「ふ。指導する立場というものは相応の"格"が必要だと我は考えている。我はこの島に来て僅か半年。まだまだ浅学故に、な。すまない」

 

「もー御謙遜をー! 東京で散々暴れまわってたクセにー! 勉強とかいつも面倒見てくれるけど、ほんとセックスに関してはストイックというか、求棒者だよね!」

 

 性欲溢れる性行為に対して禁欲的とはこれ如何に。だが思った以上に簡単に引き下がってくれた。やっぱり堂々と自信を持ってお断りするのが正解だね。

 

「我の代わりと言ってはなんだが片桐、何かアドバイスしてやってくれないか? なぜだか我達は同列扱いされがちだが、我などまだまだ貴女には遠く及ばんよ。それに片桐は長年この島にいると聞く。ベテランの域に達した貴女なら、あの噂に名高い"膣ハメ回転菊一文字"と同等の熟練手コキ技を持っているのは想像に難くないからな」

 

 よーしパス成功。これで私は安全圏。しかしどうしたことか、セックスに関しては他の追随を許さないあの片桐さんが少々慌てている様子。自分で言っておいてなんだがそもそも膣ハメ回転菊一文字って何なんだろう。

 

「え、えぇ!? えーと私もC等部(小学生)低学年で一度島から出て行って、B等部(中学生)3年の頃にまた戻って来ただけだから長年いたってわけじゃないのよ? うーん……」

 

 足を止めて熟考し始めてしまった。……そうだ、片桐さんは面倒見のいい姉御肌気質な好人物である。引っ越し直後、右も左もわからない私に水ノ月学園を案内してくれたのも彼女。

 

 この長考もそれだけ深く手コキについてを考えてくれているのだろう。

 クッ、これ以上話を振られないようにと適当に話題を振ったただけの自分が恥ずかしくなってくる。お詫びに今度売店のコンドームアイスでもあげよう。凄く似合いそうだし。

 暫くして、重々しく彼女の唇が開いた。

 

「うーん……さ、最終的には相手のチ〇ポを射精させてあげたいっていう優しさが大切になってくるのよねぇー」

 

 レベル1の私にももう少し理解できるように説明してほしい。 

 そう、まるで耳年増な未通女(おぼこ)の背伸びトークにしか聞こえないが、相手はあの片桐 奈々瀬だ。そんな浅い発言でないことなど百も承知。

 学園最強ビッチの熟慮の末に捻り出された啓示には、必ずなにか裏がある。深い意味がある。

 ここで片桐テクを学んでおけばいつか似たような話を振られた時に役に立つことがあるはず、私は勤勉。決してムッツリなわけではない。

 最終的に……射精する寸前は優しい愛撫へと切り替える……? 悪魔のように細心に、天使のように大胆に、みたいなことを彼女は言いたいのだろうか? 

 ……くそう、さっぱりわからない。やはり実戦経験皆無のクソ雑魚女子では彼女の助言から言葉以上の意味を見出せなかった。無念。

 

 質問者の女の子を何気なく見てみると。

 

「……なるほど……そういうことかー!」

 

 凄まじいスピードでメモ帳に書き綴ってる……。

 え? あの一言でどんだけ情報量得てるの。もう三枚も捲ってるし滅茶苦茶気になる。

 

「す、少し見せてもらってもい」

 

 

「──雀野ォ!」

 

 私の小さな好奇心は野太い声によって遮られた。

 

 声の主は昨日の男の子だ。顔を真っ赤にしてプルプルと激しく震えている。前傾姿勢になっているから今彼はフル勃起状態なんだろう。

 

「もう一回、俺とセックスしろォ……! 今度こそお前を俺のモンにしてやる……!」

 

「……すまない、片桐にも言ったが今日は約束があってな」

 

 む。

 最近、私に声を掛けてきた人はなぜだか暫く誰も近寄ってこないのだが珍しいこともあるものだ。

 それにお爺ちゃんのマッサージだから別に嘘は言ってない。

 

「は、はぁあん♡」

 

 私の声を聴いた途端彼が突然喘ぎ声を放ち始めた。なにゆえ!? 

 

「クソッ俺は屈しねェ! 体はお前に屈していても心だけは思い通りにさせねェぞ……!」

 

 男子はまるで私に調教されたみたいな態度を取っている。エロゲでいうなら半堕ち状態だ。全く記憶にございません。

 相手が女の子なら一番美味しい時期なのだが男がそれやるって誰得よ。私にそういうS系の趣味はない。

 こうなれば昨日と同じ状況に持ち込んで速やかに射精させて帰宅せねば。ここでウダウダやってると、急いでるならこの場で公開セックスしろという流れになりかねない。

 

「仕方がないな。あの特別教室で相手をしようじゃないか」

 

「お、おう……そ、それでいいんだよそれで……」

 

「話の途中ですまないな、二人とも。それでは、また来週」

 

 二人に微笑みかけ、そのまま男の子へと視線を戻した。

 するとどうしたことか。失礼な言い方ではあるがまるで薬物中毒者のように痙攣していて、食い縛っているのか肉食系男子の相貌は大きく歪み、より朱くなっている。

 これは何かやばいことでも起こっているんじゃないだろうか。保健室に連れて行った方がいいのかな。

 もし我を忘れて文字通り私に襲い掛かってくるのであれば迎撃も視野に入れなきゃいけない。セックス絡みの暴力的行為は青藍島におけるタブーの一つになっている。ここで抵抗をしても咎める者は誰もいないだろう。怪我をさせないように、上手く手加減をしなきゃ。

 

 ゾンビのような足取りで男が一歩、また一歩と私に近づいた。

 

 私は肉食動物じみた相手を警戒させないように、慈愛に満ちた雰囲気(があってほしい)の笑顔で、男と視線を合わせた。

 

 その瞬間。

 

「ウック! ッウアアア射精(で)るゥゥゥ♡」

 

「え?」

 

 情けない絶叫と共に、男の子は膝から崩れ落ちる。所謂アヘ顔でそのまま白目を剥いて気絶した。きたない。

 ズボン内側から染みが広がっていき、すぐさまあの匂いが込み上げてきて、何が出たのかハッキリと悟った。うお大量だな……。

 

「す、凄い……!」

 

 クラスメイトの子が何やらキラキラしたような目で私のことを見つめている。

 え? 何が? 

 玄関口の近くだからか、困惑している内に沢山のギャラリーが詰め寄って来ていた。

 まるで私が何かしでかしたような雰囲気に包まれている。これはいったい。

 

「この前やったエロゲに眼力で対象をイかせる、という主人公がいたが……まさか!」

 

 まさかじゃない。そんな頭がおかしそうなエロゲの主人公と一緒にしないでほしい。

 

「いや違う! ニコッと微笑んだだけでチ〇ポが暴発した……あれは"ニコポ"! 伝説と謳われたあの絶技をお目にかかれるとはのう。長イきはするもんじゃわい」

 

 世のハーレム系オリ主に失礼だと思う。あとそこのお爺ちゃん教師は私の理想をぶち壊さないでほしい……! 

 

「馬鹿な……そんな技僕のデータにないぞ!?」

 

 あってたまるか!! 

 データ系男子君が口を閉じた途端、周囲にいた男女が感極まったのかセックスを開始し余った男性観客は拍手をしてシコり始めた。なるほどこれがスタンディングマスターベーション。

 彼らの奇行もだいたいわかってきた辺り大分私もこの島に馴染んできているようだ。全然うれしくないけど。

 

「す、凄いわねー、雀野さんは。やっぱ本物の人は次元が違うのだわ……」

 

 周囲の喧騒で最後の方が聞き取れなかったが、片桐さんがちょっとドン引きしてることはわかった。

 違う、私じゃない。凄いのは勝手に射精できた彼であって私じゃない。

 だけど困惑していたら怪しまれるので、さも私は最初からソレを狙っていたかのように、優雅な微笑みを絶やさぬままその場を立ち去っていったのであった。

 

 

 帰宅してから私はまたしょーもない噂が広まるんだろうなと、マッサージ終了後に枕に顔を埋めて足をバタつかせていた。

 確かにここはほぼ全ての男性が敵、常在戦場の心得を身に着けるには絶好の環境。お父さんがこの場所を最終試験の課題に選んだのもあながち変な話じゃないのかもしれない。

 ボケーッと枕に突っ伏してたら、ポケットから電子音が鳴り響いた。

 連絡主は、タイミングが良いというべきか父だった。

 

「はい、もしもし」

 

『よーよー元気にしてたかー? 悪いな、半年間まともに連絡取れなくて』

 

「なんでしょうか、お父さん」

 

『おいおいそう冷たい言い方しないでくれよ母ちゃんっぽい。お父さんどうしても言いたいことがあってなぁ……』

 

 青藍島送りを今更になって後悔し出したのだろうか。返答次第ではビンタ抜きにしてあげよう、第一声が謝罪の言葉だったら花丸だ。

 高級ディナーからファミレスまでランクダウンすることも吝かではない。

 さぁどう出てくるマイファーザー。

 

 

『お前本当に青藍島行ったのかよ馬鹿正直だなー! 文句の一つでも言ってくれれば別の課題を用意したのにハッハッハ。それにお前は母さんと似てチ〇ポに弱そうだから心配d』

 

 バキリと。

 勢い余ってスマホを粉砕してしまった。

 こっちがドスケベアイランドにいるからって下ネタ全開できやがって……! 私を産んで亡くなったお母さんの数少ない情報がチ〇ポに弱いって。そんな話聞きとうなかった……! 

 もうあったまきた。水ノ月学園卒業したら親父に静乱流電気あんまをお見舞いしてやるのだ。けど一応心配してくれてはいるみたいだし……いやいや私はそんなことで気を許すようなチョロインじゃない。心を鬼にせねば。

 

 A等部(高校)卒業まで残り約2年。こうなったら意地でも生き残ってやる。

 免許皆伝のためでもあるが、やはり私も女の子。島の人たちの価値観を否定するつもりはないけれど、初めては大好きな人と一緒がいい。

 それにしてもどうしようかなこのスマホ……。

 

 

 ◆

 

 

 週が明けて月曜日、転校生がやって来た。

 

「えーと……橘淳之介と言います。東京から転校してきました」

 

 名前を聞いて、偶然ってあるものだなぁとしみじみ感じた。

 

「昔この島に住んでいましたが、小さかったのでほとんど覚えていません。なので青藍島ビギナー同然です。趣味はパソコン関係で、モノを作ったりとか……あとは筋トレなどです」

 

「……よろしくお願いします」

 

 男の子が頭を下げる。クラスメイトは気のいい子ばかりで、予想通り歓迎の拍手が教室全体に響き渡った。うーん何だろうこのデジャビュめいた感覚は。

 

「はーい、みんな静かにねぇ~~。えーと席は……橘君、あの今手を振ってる美人の子の隣に座ってね。必要な教科書は全部机の上に載っているから」

 

 実は金曜日の時点で私の隣に机が運び込まれていたから、転入生の話は最初から知っていた。

 担任の先生の言葉にコクンと頷き、少年が近づいてくる。こんな初々しい男の子も数日もしたら青藍島に馴染んでドスケベセックスを楽しむようになるんだろうなぁ。

 でも彼はこの島にやって来て日が浅い。不安は沢山あるだろう。情けは人の為ならず。片桐さんに良くしてもらったように、困っていたら私も彼の手助けをしてやらねば。

 しかし、あの顔どこかで……。

 

「……雀野さん?」

 

「え」

 

 何故私のことを知っているんだろうこの転入生くんは。もしや私の勇名という名の嘘の塊が本土にまで轟いてしまっているのか? それは流石にないないと内心苦笑する。

 私の隣まで近寄ってきていた男の子と目が合った。

 な、なんなのその信じられないものを見たという驚愕の瞳は! 

 

 ……

 

 脳内検索開始。

 

 橘 淳之介

 同級生

 そこそこイケメン

 ガッチリした体型

 趣味はパソコン

 メガネ

 

 ピコーン、と。該当者アリのメッセージと同時にエマージェンシーコールが頭の中で駆け巡る。

 

 

「ひ、久しぶりだね、だな橘くん……息災だったか?」

 

 

 

 東京に住んでた頃のクラスメイトだった。

 しにたい。 

 

 




雀野 薙帆
→雀(じゃく)→弱(じゃく) 弱野 薙帆→よわいのチンポが由来。
マゾ気質なムッツリドスケベだが本人は否定的。ヒロインの影響を受けやすい淳之介は雀野さんとくっついた場合鬼畜プレイでもイけるようになる。
√によっては特定の条件を満たすと卒業後マニラへ飛び立つ手嶋エンドも。

雀野家の呪いとは遅漏のこと。雀野さんはもっとシリアスな呪いだと思い込んでいる。
筋肉の一本一本を収縮・弛緩させそれを超高速で繰り返すことで肉体を振動させ破壊力を上げる、それが静乱流の基本。挿入前、自慰行為の際に手をバイブ化させることによって刺激を与え短期間でオーガズムに達することを可能とした。
極まった静乱流継承者男子はチ〇ポすらバイブ化でき、中には疑似的なマジカルチ〇ポへ昇華させる者も。
遅漏克服した初代がハッスルし、子供を沢山作りすぎたせいで食うに困って暗殺稼業に手を出し始めそれが一族の伝統となっていった。

雀野さんはオナホを超振動させ、ワンスイングで射精させていたのだが、その瞬間的快楽負荷はあまりにも壮絶。
気絶していても、記憶を失ってもその快楽は身体が覚えている。男の子は雀野さんに近づいたせいで、無意識下で味わった快感がフラッシュバックしてああなった。要するにニコポは雀野さんのせい。
ちなみに同じ技を生の手コキ状態でそのまま使用するとチ〇ポは爆裂する。

物語終盤になるとオナホコキ経験者が大量に増え覇王色の覇気状態に。
その光景を目の当たりにした人々の証言を元に、やがて雀野さんは神話へと至る。
後年、雀野さんの妨害空しく青藍島の入り口に淫魔の像が建築された。
その際『ぜひポージングは我が魔王と同じ変身ポーズで』と早口で頼み込むアナル弱そうな女性がいたとかなんとか。
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