『橘くんには、妹さんがいるんだよね』
『あぁっう、うん』
放課後の教室で、少女が不意に語り掛けてきた。俺達の学校では授業後、日直が教室を簡易的に清掃することが決まりになっている。
俺は、はっきり言って彼女の容姿がどちゃくそ好みである。物静かで白百合を思わせる、清楚で儚げな、思わず守ってあげたくなるような人だった。そんな彼女と二人きりの状況になれば舞い上がらないはずもなく。
緊張していたせいかつい素っ頓狂な声を上げてしまい、そんな俺を彼女はクスクスと口元を隠して上品に小さく笑った。
『入学式のとき見かけたんだ。迷子になって困っていた妹さんを、必死になって探していたあなたを』
実際は方向音痴の俺自身が妹の
それを口にするのは、男としてあまりにも恥ずかしかった。
それでね、と前置きを彼女は入れて。
瞬きで俺の視界が暗転したほんの一瞬。気が付けば5mは離れていた筈の彼女が目の前にいて。
あっという間に、俺の手を優しく握っていた。
『──格好良かったよ、橘くん』
彼女の花咲くような笑顔を見て。
俺は。
人生二度目の恋をした。
◆
4時限目終了を知らせるチャイムが鳴り、ひと段落。
私は自分のクラスで一人ポツンと座っていた。
先の授業は移動教室で私だけがいち早く戻ってきただけなのだが、ほぼ確実にクラスメイトたちは暫く誰も戻ってこないことだろう。
理由は至ってシンプル。そう、セックスのためだ。
性欲>食欲である彼らは昼食も食べずに、空いたお昼休憩時間のほぼ全てを性行為に費やす。ラスト10分くらいで全員が大慌てでクラスに戻り、急いで昼食を掻っ込んでいくのである。中には栄養補給ゼリー(中身はほぼほぼ青藍島産精力剤)を飲みながらセックスに勤しむ者も。
水ノ月は授業の合間合間に5分しか休憩時間がないから、基本的にセックスするタイミングがない。午前中ずっとお預けを食らい続けるとはいえあまりに貪欲すぎやしませんかね。
この学園、一部の授業内容はともかく教育に力を入れており、生徒たちもまた勉学に精を出している。下ネタじゃないよ。
特に禁止されていないはずだけど、普段勉強している空間でまでセックスをやりたいとは思わないんだろうか。特に、お昼休憩の間は廊下や体育館など各々好きな場所に散開するので誰も近寄ろうとしない。
必然的に教室は穴場となって、私は安心して昼食を食べられるのだ。性欲と食欲を絡める一部の特殊性癖生徒と遭遇するのは好ましくない。申し訳ないが食ザー文化はNGです。
「いただきまー」
お弁当箱を用意し手を合わせたところで、無情にも扉の向こうから気配を感じてしまった。
ちいっ、今日はだし巻き卵がとっても綺麗に巻けたから早く自画自賛したかったのに間の悪い。
おのれなにやつ。
「……あれ? 雀野さんだけ?」
橘くんだった。
男子生徒たちと仲良く話し込んでいたので、てっきり彼らに連れられ絶賛青藍島デビューしているかと思ったが。いや、教室で昼食をとろうとするのは転入生の彼にとって至極当然の話だった。
「みな出払っているよ。ただ、もう少しすれば彼らも廊下に……そら、噂をすればというやつだ」
今回私たちの授業は通常の5分ほど前に終わって解散になった。ちょうど今、隣の教室も授業が終了したのだろう。
終わった終わった~と伸びをしながら歩く生徒たち。よくある光景だ。
橘くんの後ろを生徒たちが次々と通り抜け──廊下で交尾を開始する。よくある光景だ
「!?」
シンとしていた廊下が瞬く間にピストン運動音、フェラ音、喘ぎ声に染まり橘くんは固まった。
扉の向かいつまり彼の真正面に、コスプレをした一組の男女が現れる。
「──チンポをカリ奪る、えぐい形をしてるでしょ?」
目元に
「……え、えーと……! 購買があるって聞いたんだけど、どこにあるかな? 弁当を持ってきてないんだ」
暫し硬直した後、間を置いて再起動した橘くん。話題を変えるためなのか、早口気味で話を切り出してきた。
橘 淳之介くん。彼とはあまり話したことがなかったけど、とても妹さん想いのお兄ちゃんだってことは知っている。兄妹一緒にこの島にやって来たんだろうか。両親の転勤に付いてきたから、というのが大抵の転入理由。気になったけど軽はずみに質問をするのはやめておいた。
──その大抵の理由に当てはまらなかった場合、高確率で誰にも触れられたくない地雷を踏むからだ。
午前中、周囲の男子やクラスの風紀委員ちゃんが彼を逐次サポートしていて、私の出る幕は皆無だった。
性欲をいつでも発散できる環境だからか、本当に良い人ばっかりなんだよねこの島。私が青藍島を嫌いになれない理由の一つでもある。
それに比べて私はどうだ。
口調や東京にいた頃の話を掘り下げられたくないあまり、橘くんに話しかけられたら困るなぁなどと心の中で少なからず考えていた自分がいる。
片桐さんのように彼をフォローしたいと思っていたのに、彼が元クラスメイトと知った途端掌を返すとは何事か。恥を知れ雀野 薙帆。
開き直るんだ雀野 薙帆。橘 淳之介以外に私を知るものは誰もいない。
東京の高校にいた頃の私は、猫を被っていただけなのさ……という体でいくんだ。本来の喋り方はこうなんだと振る舞えば、なんとかなる気がしてきた。
「よし、我が案内しよう。もし貴方さえよければお昼も一緒にいかがかな? これも何かの縁だ。これからも仲良くしてもらえると我は嬉しい」
「え?
何言ってんだこいつみたいな顔やめて。
その反応、やはりダメージが大きい……!
何故私は男避けが出来なかった時点で即喋り方を修正しなかったのか。今ではもうこっちが自然体になってるし。多分ロールプレイ気分で楽しかったんだろうな。完全に自業自得です。
「……でも今から食べようとしてたみたいだし迷惑じゃないか?」
「なに、我は一人より二人で食べた方が美味しく頂けるたちでね。普段は悪友と食事を共にしているのだが、今日はあいにく欠席でな。我のためと思って……どうかな?」
なんでも冷蔵庫を夜中漁っていたら、奥底に隠されていた賞味期限が10年以上過ぎてる缶詰を発見して、一口食べてこいつはいける! と確信してその場で完食し今朝お腹を下したそうだ。何やってんだろうあの子は。
……後でお見舞いに行かなきゃ。下校する頃には復活してドカ食いしてそうだけど。
「じゃあ……よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げた橘くんを引き連れて、善は急げと私は扉を勢い良く開けた。
「なん……だとぅ♡ 私の卍解がメダリオホォン♡に奪われるぅ! 歴史に名を刻まれた隊長格まんこを無防備凌辱されたらどうやって戦えばいいのぉ♡」
「お前のは卍解じゃなくてマン開だろうが! 俺の圧倒的霊圧で瞬歩が如くイかせてやるよ!
先程までイキっていた死神系女子が
「なんて圧倒的なバトル展開だ……こんな
この前見かけたデータ系男子くんがまた何やらメモに書き殴っている。果たしてその情報は必要なんだろうか。
道なりに進んでいくと、やはりというべきか見馴れた影が。クラスメイト同士で仲良くセックスをしている集団を発見した。
「お、雀野か。良かったらお前も一本ひっかけていかないかー?」
そんな、ちょっと居酒屋に寄って行かない? みたいな。
「誘ってくれて感謝する。しかし、今は橘くんにこの学園を案内しているところでね」
案内するのは購買だけど、それだけだと場所を教え次第すぐここに戻ってきて『ご注文頂きましたーのど越し(に)生一本
「あぁそういうことか……さすがだな雀野は」
「あちゃー……もう橘君愛液付けられちゃってたか。雀野さんなら仕方ないわね」
なんでしょうその含みのある言い回しは。感心したような面構えは。羨ましそうな目は。たぶん愛液は唾だよね。と思っていたら気のいいクラスメイトが駅弁状態で女の子を抱えながら耳打ちしに近づいてきた。シュールすぎる。
「あれだろ? 二人きりで校舎案内した後は我のマ〇コあぁん♡内、所謂『最高に高めたエモいフィールで最強の快楽を手に入れてやるぜ作戦』だろ?」
私の行動は全て下半身に直結しているとでもみんな思っているんだろうか。思っているんだろうな……。
一方、橘くんの方に射精してひと段落ついた男子たちが駆け寄って、何やらヒソヒソと話している。
耳を澄ませば。
「橘。無理だと思うが……! お前だけはあの子とのセックスを忘れないでやってくれ……!」
「俺達は……駄目だったんだ……!」
私は誰からも忘れられていくセカイ系泣きゲのヒロインかなにかだろうか。
でも原因が私にある分、感極まって男泣きされるととても心苦しい……!
……聞かなかったことにしよう。
橘くんの突き刺さる視線も無視して更に廊下を進み、学園に備え付けられているエレベーターへ到着した。
ふと思い出したけど橘くん、東京にいた頃も私のことをこんな風にじっと見つめていた気がする。と、当時私がなにか粗相をしてしまっていたのだろうか……。不安になってきた。
「購買部は一階のエレベーターの目の前にあるんだ。おっと、丁度我たちの階に留まっているようだし乗ってみようか」
扉が開いて、小さな箱に乗り込む私と橘くん。
その後を追うように、ゴテゴテした赤い……パワードスーツだろうか? 所々金の入った、ロボットのようなメカメカしい機械鎧を着込んだ男子と、星条旗をモチーフにしたであろう一昔前の古風なデザイン、青いピチピチスーツを着た女子が一緒にやって来た。大きな盾も装備している。
名前は知らないけど、海外のヒーロー映画でこんなビジュアルの人を見たことがある。
他に誰もいないようなので、レッツラゴー、ボタンを押してエレベーターが始動する。
狭い空間に四人、半分は制服で半分はコスプレ衣装と異様な光景である。
おもむろに少女が手を壁に突き、メカ男子がチャックを開けた。
あ、そこは布だったんだと驚いている場合ではない。
この流れはもしかしないでも。
「枝分かれ細長蛇チンポに前と後ろを同時に責められて……これが本当の入りゅ・ヒドラァ(小声)♡」
「ナノテク技術で構成された近未来チンポの味はどうだ子宮降りてくるなら今のうちだぞアメリカのケツを抑えられながら3000回孕めオラ!」
こっちがエレベーターから降りたいよ! 外部を通るクリスタルエレベーターならガラスを割ってでも飛び降りたい気分である。
まぁ所詮は学園校舎。私たち二年生がいるのは3階なので1階などすぐに到着する。
扉が開き開ボタンを押してる間に、二人組が軽く会釈して先に降りた。あっどうも。
「雀野さんここ訴えられたりしてない?」
真顔で聞かないでよ橘くん。
「貴様らぁ!」
女性の砲声が飛び込んできた。二人組は驚いているのかピタリと動きを止める。
規則正しい靴音が聞こえ、直後私たちの眼前を凛とした少女が通り過ぎた。
再び、少女の怒声が校舎に響き渡る。
「視界不明瞭なコスプレ着用中での移動セックスは危険だといつも言っているだろう! 直ちに中止して壁際へ移動し立ちバックの状態で再開しろ!」
ハーイと力のない返事をしてトボトボと壁に寄り掛かる二人組を尻目に、私は一学年上の先輩へご挨拶した。
「いつもお疲れ様です、
青藍島では特別な奨学制度が存在している。なんと返済義務のない奨学金で、それ目当てでやってくる学生も少なくない。
SHOと呼ばれる、青藍島を管理している組織から資金は提供されており、支援を受ける代わりに彼らのお手伝い、更には風紀委員──通称SS──として、学園の健やかなドスケベ性活を守るための治安維持活動を行っているのだ。
格好いい、クールビューティな彼女が卑猥な服を身に纏っているのは何というか。この前、後学のためにやった催眠抜きゲーの常識変換で痴女コスを普通の制服だと思い込んでるシチュを想起させられる。とってもインモラルな光景だ。
「ああ雀野か。知っての通り二カ月前のイベント、シルビュルビュルウォーで彼らは仲違いしていたんだがな。この前の
そんなイベントがあったこと自体知らないんだけど……
「あ、見てみろ雀野! あっちならお前も知っているだろう!?」
普段はとても厳格な人なのだが、確か青藍島に引っ越してきて数カ月が経過した頃の話だったか。
山間部をジョギングしていたらいい感じの滝を見つけたので私は人生初の滝行にチャレンジしていたところで、溺れている子供たちを発見した。彼女の弟とその友人が保護者に黙って川遊びをしていたら、突然流れが強くなったらしい。
なんとか彼らを救出したことがきっかけで、私に対する礼先輩の対応が比較的優しくなったのである。彼女は二人いる弟妹の保護者同然らしい。深く事情を尋ねることなどできないが、とても苦労をなさっていることだけは何となくわかる。
そして、この前オナホ技を習得した私が調子に乗って人前で『貴方は一手で詰む……』と指を上げて格好つけてた次の日以降だったか。周囲に誰もいない状況で会うと時折テンションMAXで話しかけてくるようになった。
あのセリフがなにか彼女の琴線に触れてしまったのだろうか。
彼女が指差す方角にはまたもやコスプレ男子……って今日は多いなぁ。
フェラしてしゃがんでいる女子生徒の股下へ、男子生徒は滑るように移動する。不気味な姿の装束だけあってなんというかヒーロー物に出てくる怪人っぽい。
地面と平行にスライディング滑走した怪人が、そのまま挿入を開始した。
「おほぉ♡」
「ゼサギデギス リントド ジャス ザベボ ダギブヅバ ゲゲル ザバ。ゴゼバ ガダラ ミンブ ン ズヅ・ヂンボ・ジャ ザ! ギベ!」*1
ここでは人の言葉で話して。
礼先輩めっちゃ得意技な顔で頷いてるけど何言ってるかわかっているのだろうか。すごい。
よくわからないジャンルだけど、とりあえず肯定しておこう。
「いいですよね……」
「ああ、クウガいい……」
クウガというのか。適当に相槌打つような真似をした手前、あとでネットで調べて見てみよう。知ったかぶりは原作ファンをとても苛立たせるものだしね。
そうこう会話しているうちに、橘くんは既に購買へ突入していたみたいだ、抜け目がない。食料を無事確保できたようで少しずつ私に近づいて来ていた。それでは、と礼先輩に頭を下げたら引き止められてしまった。
「待て! よくないなぁ、そういうのはぁ……男女が揃っているのにも関わらず、性産的行為に励まないってのは……どうかなぁ?」
ねっとりと語り掛けてくる礼先輩。
なんだろう、本気で咎めるつもりで言ってるわけでない。そこはかとなく言ってみたかった感。まるで数少ない同士を発見してついつい早口で話しかけてくるオタク特有のアレのような。これも先のクウガという作品のネタなんだろうか。
かくかくしかじか。
「なるほどフィール作戦か。分かった、行ってよし」
校舎案内の一言で伝わってしまった……。橘くんも合流したので素面に戻ったのかドライな対応。
「やっほー! もしかしなくてもフィールだよね!?」
この島って実は島民の脳みそにチップが埋め込まれていて無意識のうちに情報共有を行っているSFディストピア物の舞台かなにかじゃないんだろうか。
帰り道はエレベーターではなく、階段を昇っていこうと提案した。
道沿いには体育館に続く連絡通路がある。お昼から体育の授業もあるし予め説明しておいても彼にとって損はないだろう。
こっちの通路は遠回りになるが。玄関口に最も近い表ルートの階段より比較的人通りが少ないため話しかけられる機会もあまりなく、結果的に早く校門へ到着できるのだ。急がば回れとはよく言ったもの。
なのだが、運悪く昨日手コキテクを訪ねてきた元気っ子と遭遇してしまった。
「ちょっとこっち来て……」
一体なんなんでしょうか? 超絶技巧のセックスか、それともお笑いセックス鑑賞でもしようというのか。……ちょっぴり気になる。
橘くんを引き連れて、着いた先は保健室。
中に入ってももぬけの殻、人の気配は皆無。
「ほら、今は保健室に誰もいないんだよ!」
うん。
「珍しいよねー! 保健室セックスって人気あるのに!」
うん。
「私が入口を見張っているから、一対一で安心して童貞卒業させてあげてね!」
え。
突然の出来事に思考停止していた私の虚を突きあっという間に扉の向こう側に移動してしまった。
扉の窓から少女の後ろ姿が見える。本当に監視しているようで、規則的に左右へ首を振っていた。かわいい。
うーむどうしようかなこの状況。橘くんが困惑している。勿論私も困惑している。
まだ二人とも食事をしていないのは事実だし、腹が減ってはイク竿できぬと言えばこの場は脱出できそうだが──
あっ、と。思わず声が出そうになった。時折見かけた女の子たちの羨むような表情が一体何を意味していたのか。今になって漸く理解できた。
────そうか、橘くんは童貞なんだ。
すっかりそのことを失念していた。
この島の女子は肉食系ばかり。彼女たちにとっては青藍島にやって来た男子の初物チ〇ポを戴くことが一番の御馳走と言っても過言ではない、らしい。更になんとなくで童貞か童貞じゃないかを見分けることができるそうだ。
みんなして私をアマゾネス扱いしてるけど島民ほぼ全員がアマゾネス要素をデフォルトで装備してませんかね?
それはともかく、こちらの諺で言えば据えチン喰わぬは女の恥垢という奴で。童貞チ〇ポを自由に出来るシチュエーションを手にしておいてあっさり手放すという行為はこの島の一般人にとって有り得ない、信じがたい所業なのだ。
私は不本意なことに滅茶苦茶目立っている。女の子の負の感情、爆発力というのは恐ろしいもの。きっかけさえあればアンチが急増し、揚げ足を取るために監視の目が沸く可能性は否定できない。
──橘くんには悪いが、童貞はこの場で捨ててしまったと思い込んでもらおう。恐らく放課後になれば橘くんは今の混乱した顔のまま、この学園の女子たちに囲まれて強制的にハメさせられる。転入生の多いこの学園では、そんな光景を僅か半年だけで山ほど見てきた。
それよりはここで卒業したと周囲に思わせた方が、橘くんも気軽に本当の初セックスを楽しめるんじゃないだろうか。初日で女子たちに輪姦されトラウマになった男の子もいたとかなんとか聞いたことあるし……いや、これは私にとって都合のいい言い訳に過ぎないな。
ごめんなさいと心の中で呟きながら静乱流独自の歩法で、橘くんに反応する時間を与えず私は一気に距離を詰める。橘くんはポカンとした表情のまま私の接近を許してしまった。
そのままクラスメイトの視界に映らない角度に設置されたベッドへと橘くんを押し倒す。腕力には結構自信があるんですよ。力が入らなくなるツボもバッチリ抑えているので抵抗は無意味だ。
……わっやっぱり橘くんは結構筋肉あるなぁいいなぁ。男の子の筋肉って言うまでもなくスケベだよね。
「え? え?」
「──さぁ、始めようか」
崩れ去る橘くんを見て、私は一息ついた。口で説明するのは難しいけど、なんというか普段より気の巡りが遅く感じたのだ。初めての感覚だったが上手くいったのは間違いない……はず。
さて、オナホで抜いたら気つけして目覚めさせて、ちゃちゃっと一緒に教室へ戻ろう。記憶を失ってる間に、挿入してすぐ
島民のほとんどは膣トレを行っており、その締まりの強さに我慢できず転入生は同じように即イキするのがお約束。よくあることなので橘くんの尊厳も守られるはず。
隠し持っていたオナホと個包装の使い捨てローションを取り出そうとした瞬間。
「きゃああああああああ♡」
「なっ──」
クラスメイトの悲鳴が、保健室にまで轟き渡った。禍々しい圧力が扉越しからでもはっきりと伝わってくる。総身に活を入れ、血を巡らせ即座に臨戦態勢を整える。
現れたのは、長槍を持った巨漢だった。一応注釈しておくと長槍チ〇ポを隠そうとしない丸裸男性、というわけではなく本当に武器としての槍を抱えていた。
「あの娘はどうした? 返答次第によってはただでは済まさんぞ」
「
子宮でなく首級とな。穏やかではない。
SSの制服着てるからウチの生徒なんだろうけど彫り深いし笑い方も凄いしこの人本当に同世代?
「こんな華奢な女を捕まえて中々物騒な話をするものだな?」
「呵々、戯言を。正中線が一切揺るがぬ立ち振る舞いを見れば一目瞭然。お主の強さも推察できなければ、武人として生きる価値もなし」
「俺はSS一番隊が精鋭、ストライクフォースにひと月前配属された者よ。今日は挨拶代わりにとやって来ただけなのだがな」
殺傷性能を限りなく落とすためか、刃先を潰した槍を中段に構え、肩幅より大きく、ワイドスタンスでどっしりと足腰を深く落としている。
あれは確か管槍。文字通り柄に管が取り付けられていて、管を左手で抑え、右手で押し出すことで柄が管の中を滑るように移動する。要はピストン運動のような動きでシコシコと……って今はシリアスな場面だった。これにより通常の槍を遥かに凌ぐ速度での刺突を可能とする武器だ。更に手元で捩れを加えることによって円運動のような軌道を生み、相手を撹乱し圧倒する流派もあると聞く。
「──お主の闘気に当てられて気が変わった。悪いが少しばかり遊んでもらおうか」
あまりにも一方的に、矢継ぎ早に語り掛けてくる野武士面のおっさん学生。
SSメンバーは暴徒鎮圧ないし治安維持のため、ゴム弾を装填したライオットガンを各自装備しており、更には軍隊さながらの訓練で格闘術も修めている。一応ここ日本ですよね……?
個人戦で負ける気はないが、彼らは後方からの的確な指示を受け集団で襲い掛かってくる。数の暴力とは恐ろしいもの。絶対に敵には回したくない相手だ。
一番隊はその中でも特殊。各々が得意な得物を装備し、一人一人が他の部隊員とは隔絶した強さを誇るとか。一番隊のトップはまさに別次元。私も勝てるかどうかわからない。他の隊で馴染めなかった子が集まってくる問題児収容所のような役割もあるそうで、みんな頭悪い言うこと効かないで扱いづらいと以前彼女が愚痴ってたっけ。この人も扱い辛そうだ。
だが、──なるほど、確かに強い。筋肉達磨のようでいて無駄な肉は徹底的に削ぎ落とされている。正に戦うためのフォルムに仕上げていることが制服越しでもよくわかる。写真撮らせてもらえないかな。付き合ってもない男の子にそんなことを頼むのはちょっとはしたないし本当にお願いするつもりもないけど。
「強者との交わりこそ至上の悦楽よ。いざ──」
でも。
一言いいたい。
来る場所間違えてません?
「孕ませ御免ェェェェン!」
すみません合ってました。交わりってそーいう。
一々槍を振るうたびにシコォ! シコォ! と掛け声の五月蠅かったヤリオさん(仮称)を制圧し速攻で抜いてベッドに寝かせ、カーテンを閉めていない子扱いに。橘くんが気が付かなければいいけど。
クラスメイトの様子を見に行ったらアヘ顔Wピースのまま気絶したまま立っていた。器用ですね。彼はあっちの槍も強かったんだろうか。
さてと。騒ぎにならないよう、暴力沙汰にならないよう、怪我をしないさせないためかなり気を遣ってたから完全に意識外となっていたけれど、そろそろ肝心の橘くんをどうにかしなきゃね。男の子はいつも勃起してるものだけど気絶していればその限りではない。まだあれから5分と経過していない、萎えてしまわない内にとっとと抜かねば。彼もお腹ペコペコなはず。
……視線の先には、ムクリと起き上がる橘くんの姿があった。
えーっ!
やばいよやばいよ初めての状況だよ。あまりにも復帰が早すぎる。
あの技は脳への負担が僅かながらあるし短いスパンで使うのはご法度だ。記憶を抹消できない以上、これ以上彼に対して手出しできない。
……こうなったら一か八か、"アレ"を使うしかあるまい!
「フフ……貴方の初めて、確かに頂いた。ご馳走様でした」
「……?」
再び理解不能といった表情を見せる橘くんだが、そんなものは想定内の反応。
これは心理学で言うハロー効果。普通の人が語れば誰も信じない胡散臭い話でも、権威ある教授や医者が同じ内容を話せばその権威に自然と引きずられ肯定的に受け取ってもらえる、というものだ。催眠ゲーで知った。
彼は授業合間の休憩時間や一部の授業、加えて先ほどの廊下。ありとあらゆる場所で私の噂を耳にしている。挿入すれば記憶を失ってしまう、変態ドスケベビッチだと。
そう、彼が私のことを学園トップクラスの淫乱女と認識する環境は既に完成されているのだ! 全然嬉しくないしそれが私の首を締め上げているんだけど。
「記憶がなく実感も湧かないだろうが、中々の射精っぷりだったよ。思わず我も丹念に掃除してしまった」
人は思い込みで、ありもしない火傷を負ってしまう生き物だ。実際に射精してなくとも、その痕跡が残っていなくとも、頂点を争うビッチアマゾネスにこうも堂々と言われれば橘くんも納得せざるを得まい。時間が経つにつれて、あの時俺は本当に射精してたんだなという確信に変わっていく。
私の奥義によって保健室入室前後の記憶がスッポリ抜け落ちていることもまた、私の嘘を力強く後押しする。ありもしない虚構は橘くんの中で事実へと姿を変えるのだ。
私の言葉に、橘くんは
「……そうなんだ……」
と小さく呟いた。よしセーフ。声色には当然懐疑的な感情も少し含まれているが、その問題も時間が解決してくれることだろう。
極々稀に、数千万に一人という割合で、特別頑丈な人は脳まで力が及ばず記憶消去が上手くいかないという、ケースがあると父から聞いたことを唐突に思い出したが。
……いやいや、ないない。そこまで運が悪いなんてことは流石にないでしょ。
一年以内に青藍島だけを破壊する隕石がピンポイントで落下してくるレベルのあり得ない話だ、うん。
そしてお昼ご飯は特に滞りもなく無事に完食できた。
橘くんは筋トレが趣味と言ってたが確かに、なかなかどうして筋トレマニアだ。
筋肉は努力の積み重ねによって形成される。コツコツと努力していることが一目でわかるから、私は好きだな。
ウェイトトレーニングそのものはあまりしないが私も鍛錬を積んでいる身。筋肉について……というより身体を痛めつける行為については一家言ある。
二人で盛り上がって、人生初の男友達ができた。
今でこそ肉体を維持するために最低限の修行しかせずアニメ漫画を読み漁っているだけの日もあるが、本土にいた頃は小中高とずっと修行第一主義でお友達が全くいなかった。橘くんは人生で通算二人目のお友達だ。
テンション上がって何を言ったかも朧気だけど、変なこと言ってないよね私。
◆
やめてくれ、と俺は声にならない叫びを口にした。
皆が言う。雀野さんは誰にでも股を開く最高のビッチだと。島の誇りだと。そんな人じゃない、と俺は否定した。だが島民は俺を諭す──常識のない子供を嗜めるように。
『雀野は東京にいた頃からヤリ慣れてたんだぜ? 本島じゃ往来でセックスもできないらしいから、学校じゃ大人しくしてただけなんだろ』
『セックスなしの窮屈な生活をしてる人たちがいるなんて、ちょっと信じられないよねー。私だったら息苦しさで喉に精液詰まって死んじゃいそう。雀野さんも本当は辛かったんじゃないかな』
お前たちに雀野さんの何がわかる。彼女がそんなことをするはずがない。おかしいのはお前らの方だ。はっきりこう言ってやりたかったが、転校初日から敵意剥き出しで噛み付くのがいけないことぐらい俺だって理解している。できるだけオブラートに包んで反論した。
『雀野の友達ってわけでもなかったんだろ? 動揺するのはわかるけどお前も雀野の何が分かるんだよ』
返す言葉が出てこなかった。彼女と会話をした回数は片手の指で足りる。あの人はクラスメイトに遊びを誘われても家の用事があるからといつも断りを入れていた。彼女が下校してから普段何をやっていたかなど、何一つ知らない。
二学期が始まったと同時に、俺は夏休み中に雀野さんがどこかに引っ越したことを聞かされた。喪失感から本気で悔し抜きした。
教室で彼女と再会した時は本当に嬉しかった、運命的とさえ思えた。反面この島の実態を目の当たりにしていくうちに、憂慮に堪えない自分がいた。
青藍島ではセックスを求められれば応えなければならない。それは学生でも、雀野さんでも同じこと。
今の彼女の口調は、本来の自分を曝け出しているといわんばかりの自信に満ち溢れているもので。
もしかして。本当にそうなんじゃ、と俺の中の雀野 薙帆像は大きく揺らいでいた。
島民の言葉を彼女自身が肯定するように、槍の名手のベルトを緩めズボンのファスナーを開いていく。
やめてくれ。やめてくれ。口に出したいのに力が上手く入らない。
雀野さんにされたがまま、仰向けの状態で俺はその光景を眺めていることしかできなかった。
俺の混迷極まる心の内とは正反対に、雀野さんは淡々とズボンを露出させる。吐き気がこみ上げてくるのに、俺の視線は目の前の光景に釘付けとなっていた。
そして彼女はどこからか、何かを取り出した。
俺にとっては見慣れたものだが、それ故に疑問符で頭の中が埋め尽くされる。
それは、一振りのオナホであった。
正式名称オナニーホール。女性器である膣を模倣し、男性器を慰めるために作られたソレは一つの"芸術"と呼んでもいい。
彼女自身がオナホを握っていた。右手に収まるシリコン製の筒は生物のように脈動して……いや、そのような生ぬるい言葉では済まされない。例えるなら肉食動物が飢えに喘いでいるような、そんな錯覚すら覚える。
瓦割りをするかのように雀野さんは姿勢を正し深呼吸。先ほど見せつけられた武術のキレのように、その構えはあまりに洗練されていて思わず俺は息を呑み込んだ。
「──はぁっ!」
──鋭利で小さな掛け声と共に、蠢く人口筒を男の肉棒めがけ勢いよく振り下ろす。速すぎて、俺の目には雷が落ちたようにしか映らなかった。
それでもオナホは見事肉棒のキャッチ成功にしたらしい。そして雀野さんが再び声を出すと自慰道具は更に勢いを増し、チ○ポを包み込んだまま手負いの獣のように獲物を喰い千切らんと暴れ狂っていた。
──あれは、やばい。俺はゾクリと身震いした。
予想通りと言うべきか、僅か一回の抽迭。それだけで、男の全身は打ち震え呆気なく射精させられた。
雀野さんは部屋に備え付けてあった水道の蛇口でオナホ洗浄し、テキパキと後始末をつけていく。
麻痺していたかのような俺の身体はいつの間やら治っていたらしい。思わず勢い良く起き上がった瞬間に、片付け終えた少女と目が合った。
僅かながら彼女は目を見開いたが、すぐに鳴りを潜め普段の穏やかな笑みを浮かべた雀野さんへと戻っていく。俺のベッドへとゆっくり近づいて、こう言い放った。
「フフ……貴方の初めて、確かに頂いた。ご馳走様でした」
……何を言ってるんだろう、この人は。
保健室に突然閉じ込められて、押し倒されて。突然頭を押さえつけられたと思ったら気絶して。何やら騒がしいなと音に気付き目覚めたら彼女たちが凄まじい戦いを繰り広げていて。
そして俺の時と同様に、頭を押さえつけた途端男は気絶。雀野さんが男を抜いて今に至る。
いかん。全くもって意味が分からない。
そのあともまるで本当に、雀野さんは俺とセックスしたかのように語り掛けてきた。
昼食を終えた後も、気になって気になって授業を集中して受けられなかった。
どうしても気になって放課後、彼女とセックスしたという他生徒に質問してみたが皆同じ反応。誰もがセックスしていると主張するが肝心の記憶はない。オナホについて言及しても知らぬ存ぜぬ。それは先の槍男も例外ではなかった。みな、嘘をついているようにはとても思えない。
本当に記憶を忘れるほどの膣を持っていたとして、なぜあの男はセックスしていないのに関わらず記憶を失っていたのだろう。
俺もセックスをしていないのに、なぜ彼女はそううそぶいていたのだろう。
なぜ雀野さんは。なぜ雀野さんは。なぜ雀野さんは──
答えが見つかるはずもなく、出口の見えない迷路を彷徨いただただ懊悩として時間は過ぎ去っていくのであった。
「雀野さんはビッチィ……雀野さんはビッチじゃないィ……!」
「……す、雀野さんはビッチ……す、雀野さんはビッチじゃないィィ……! うっ!!」
「雀野さんうおおおおおおお!」
収まりがつかない俺のリビドーを、全力で特製オナホに叩きつけた。貫通式オナホールである構造上、挿入口の反対にも穴が開いており、その隙間から精液が弾丸のように射出される。大量の白濁液は俺の股間と天井を繋げる蜘蛛の糸と化していた。
直後、蹴破るような勢いで真後ろにそびえるドアが開かれる。
「もうー用事があるならまずはノックしようっていつも言ってるだろー?」
「さっきからチュンチュンシコシコ雀野さん雀野さんうるさいんじゃい! ってうわきったな!」
「すまないなアサちゃん。これも愛故に……。全く、MIUHIKI_Aさんも花占いオナニーとは乙女チックな提案をする──!」
アサちゃんの声で白濁糸が大きく揺れ、ブチリと切れてはそのままオナホの中へと落下する。そんな光景を白い目で見つめてる最愛の妹。
「乙女要素どこにあるんだよ……大体『ビッチじゃない』と抜くタイミング合わせてるだけで花占いですらないただのマッチンポンプだろうがこの処女厨童貞クソメガネ」
眼鏡は関係ないだろうが……! それに童貞は大事な人に捧げるための大切な物なんだぞ童貞をマイナスの意味で使うのやめろ。
「グヌヌ……! まぁいい。とにかく俺は雀野さんがビッチじゃないと信じることにしたぞアサちゃん」
射精したことで幾分か冷静になれた。彼女の真意はまるでわからない。
でも。
身勝手なエゴイズムであることは重々承知しているが、それでも俺は信じていたい。あの教室で会話したあの頃の彼女と何一つ変わっていないと。
少なくとも、この目で真実を確かめるまでは。
「えー別にいいじゃんビッチで。雀野さんはドスケベビッチ~」
「……あれ? アサちゃんはギャル系が好みじゃなかったんだっけ」
「いやぁ私の中の至高の存在はギャルビッチである片桐 奈々瀬しゃんだけだけど雀野さんみたいな清楚な人が実は男を喰い漁ってる清純派ビッチというのもそれぞれの属性の魅力が引き立って所謂ギャップ萌えならぬギャップエロで非常に性欲を駆り立てられるためそれはそれで大変ありというかありがたいといいますかグヘヘヘ」
「めっちゃ早口で言ってそう」
橘 麻沙音は女の子が好きだ。恋愛対象として。特にギャル、ビッチというものに目がない。
ちなみに俺は彼女の言う通り、処女厨で純愛エロゲでしか興奮できずかわいそうなのは抜けない。
一方アサちゃんはビッチ好きで陵辱鬼畜調教ゲー専でかわいそうなので抜ける。
嗜好が見事に正反対な兄妹なのであった。
「あたしの勘じゃねぇ……ビッチかどうかはともかく雀野さんは絶対ムッツリだよ。抜きゲーの犯されヒロインに自己投影してオナってるタイプのドMでド変態なのさ……」
なにいってだこいつ。
「適当なこと言っちゃめーでしょ。……あっそうだ。俺、雀野さんと友人になったぞ」
今こいつ鼻で笑いやがった。
「笑わせてくれるねぇ……どうせ兄のことだから『これからも仲良くしてもらえるかな?』みたいな社交辞令を真に受けちゃったんだろうがよぉ……」
「いつもの俺ならそうだったかもしれんが……実は彼女も筋肉を愛する同士"マッスルメイト"のようでなぁ……!」
俺の発言を真実だと悟ったのかニヤニヤ半笑いを浮かべ小馬鹿にしていた彼女は急に動きを止め、次第に目をぱちくりさせようになる。
暫し沈黙したのち絞り出すように口を開いた。
「……え? マジで仲良くなったの?」
うん、とドヤ顔で俺は頷く。
「ハァッ!? 何言ってくれちゃってんのあたしたち兄妹は一生友達いないことを桃尻で誓い合った仲じゃんかよぉこの裏切り者ぉ!」
それを言うなら桃園の誓い。何が悲しくてそんな後ろ暗い誓いをしなきゃならんのだ。
「ふーん……あたしの中じゃ筋肉好きの女なんて禄な奴いないんだよねぇ……マトモな人種だったの?」
「んー」
昼食時の会話の断片を少し思い出してみる。
『スクワット等で下半身を徹底的に追い込んだ次の日の日常生活の辛さがいつの日かクセになってしまっている自分がいる』
『わかる』
『痛みとはつまり、気持ちいいことだと我は思う』
『わかる……!』
『心臓が止まる程の負荷となるともはや絶頂物だな!』
『わか……りたい!』
「至って普通だったぞ」
「ほんとかよぉ……?」
……おかしいことは何一つ喋ってなかった、よな……? 最後の方なんてちょっと大袈裟に言ってただけだろうし……。
「ま、彼女のことはひとまず置いといてこれからの対策もちゃんと考えなきゃな」
「ここまでやべー島だとは思わなかったよ兄ぃ……」
アサちゃんは女の子が好きだ。しかしこの島は同性愛者を、彼女を性産的な行為を行わない条例違反者として全面否定する。アサちゃんが男とセックスするなんて死んでも御免だということを、俺はよく理解している。
俺も、
俺たちは、訳あってこの島に来ざるを得なかった。この島以外にはもう居場所がなかったからだ。
だが、この島においても俺達には居場所がない。
俺たち兄妹は二人して、この島の根幹を為す"ドスケベ条例"に反する存在なのだから。
オナホを洗い、アサちゃんと作戦会議を終え居間へ向かった。
ピルの効果が安定するまでの2週間だけは、セックスを拒んでも問題ないとされている。それまでには、二人で学園を歩き回り、安全ルートを模索していかなければ。
居間にはまだ引っ越しの荷物が山積みされている。その量に少し億劫になりつつも、俺は飾られた仏壇に線香をあげて手を合わせる。
この島に着いてからの出来事を、心の中で報告しながら、俺は祈るようにゆっくりと目を閉じた。
────アサちゃんだけは守り切ってみせます。天国で見守っていてください。"父さん、母さん"。
主人公→友達がいなかったのであまり距離感が掴めず冒頭のような台詞をたまに言っては男女を勘違いさせていた
淳之介→常識人のように振る舞う非常識野郎。筋肉の話題、何かしらの非常事態が起きなければこの後特にイベントも発生せず卒業まで主人公に一度も話しかけられなかった可能性もある骨の髄まで童貞男
アサちゃん→雀野さんがビッチであることをロジカルに突き付けてやろうと思ってたけど面倒くさい反応を起こすのは目に見えてし今回は勘弁してやるよ兄ぃ
礼先輩→主人公を『騒がず多くを語らない大人のライダーオタ』としてああなりたいものだと密かに尊敬している。引っ越し背景を知ったら本気でキレそう
──次回、デブ襲来! ○○○嬢!