『ある日の出来事』
「薙帆ちゃん読みましたか!? 私の貸した漫画!」
「ああ……読んだは読んだが……」
「滅茶苦茶面白いですよね、イイの♡大棒剣!」
「うん……」
「なんだか歯切れが悪いですね……『ユンケルよ……オレは男の価値というのはどれだけ特殊性癖への偏見を捨てられるかで決まると思っている』と格好良く諭していた男が、実は敵のトドマン女子に開発され手駒にされていたマゾワニだったなんてペニ汗握りませんか!?
しかも作中で幾度となく使われきた、ハラメダイイン!が孕め!イイ!という主人公のおまんこを狙う蜜命を帯びたコードネームと引っ掛かってたことに気づいた時は思わずマン痴魔塔の構えで耽ってしまいましたよ!」
「トドマン×ワニの構図が直視できないんだよ……やたら絵柄の再現度高いし……美岬はいいのかあれで……」
「薙帆ちゃん、結構初心なんですねぇ」
「それに関しては初心の一言で片づけられてたまるか!」
「たぶん、薙帆ちゃんはエロ紋派なんですよ。そちらを次回お貸ししましょう!」
「エロ紋?」
「マラゴンクエスト膣伝、エロの紋章! ですです!」
「ただの淫紋じゃないか……」
※ユンケルとは過去とあるドスケベ淫魔とコラボしたことで認定された、立派なドスケベワードの一つである
恥ずかしくて死にそう。
じゃなかった。穴があったら入りたい……。
私は無性にゴロゴロと暴れたかったけれど、隣には寝ている子がいるし人様のお家のベッドなので、シーツを摘む程度に抑えてもう一度寝そべっていた。
クソダサマスクさんとの決闘で使ったのは、全身の筋肉を超人的な速度で収縮・弛緩させ、莫大な振動エネルギーを生み出し拳一点に集約させ解き放つというもの。
それを発動するだけでカロリーを消費する。つまり、とってもお腹が減るのだ。
私、腹ペコキャラだと思われちゃっただろうか。恥ずかしい。
それにこの格好。この濡れスケワイシャツ。
橘くんがヤリマラくんだと思ってたから気にしてなかったけど、青藍島のノリに染まってないハツマラくんだと意識し出した途端駄目だった……!
彼が好意で貸してくれたものだから脱いで別の物をお願いするなんて論外だし。
青藍島のおっぱい魔人さんたちに比べたら、私など貧相ボディもいいところだ。お尻の大きさでは負けてないが! 格闘家ならそこ重要ですよ。
……それはさておき。
何より、私が一番恥ずかしかったのは──素の私を、彼に見せたことだ。
見せた理由はなんてことない。
ただ恩人でもありお友達でもある彼に感情を隠すのは、不誠実だと思ったから。それだけだ。
でもどうしてだろう。橘くんと一緒にいるとポーカーフェイスが上手く決まらない。
この半年、度肝を抜かれる数多くの変態交尾を目の当たりにしてきたが、内心吃驚こそすれ、それを顔に出したことは一度もない。何事にも動じぬ涼し気クールな顔つきを維持できていなければ、私はこの島で神格化されていない。
起きてからの私は、変だ。
彼と話してるだけでなんだかホワッとした気分になって、浮足立った心を引き締めてもすぐに緩んでしまう。こんな経験は生まれて初めて。
足をばたつかせ敷き布に顔を埋めたら、男の子の匂いが。
よく見てみれば、そこは丁度橘くんが首を置いていた場所だ。
私に押し倒されたから枕を敷くこともできなかったのだ。そして私が彼にだ、抱き着いて寝てしまったせいで、橘くんはとっても暑かったはず。
その証拠に彼の首筋から伝わった汗によってシーツはかなりの湿り気を帯びていた。
スーハー。
橘くんの香りが、私の鼻に充満していく。
スーハー。
そう言えば、橘くんにビッチアピールするために学校でははりきりすぎちゃったな。
なんなんですかパーフェクトディマンコーって。普段なら適当に流すだけなのにノリノリで嘘解説しちゃったよ。
スーハー。
…………常に嘘ついてるようなものだけど、更に嘘を重ねるのも申し訳ないし、頑張って習得してみようかなぁ……。ただの自己満足だけど。
スーハー。
物珍しさに嗅いでみたが、そろそろ止めないと。
スーハー。
いやいや、ここですぐ顔を離したら、まるで橘くんの汗が汚いみたいじゃないか。
もうちょっとだけ。もうちょっとだけ。
スーハー。
もう本当に止めないと。
スーーハーー。
歯止めが。
スーーーハーーー。
癖になりそ
「ん……」
衣擦れと年相応の可愛らしい声が横から届いて、反射的に私は伸びた手を引っ込め彼女より早く起き上がった。
年下の女の子の横で男性の汗嗅いで興奮するって言い逃れようのない変態じゃないか私……!
「ここ、は……」
半覚醒といったところか、瞼をやや開けボンヤリとした表情で上体を起こす。
しかしそこだけ切り取って見ても、優雅かつお上品な仕草だ。それが自然体になるほど、彼女は厳しく育てられたんだろうな。
「おはよう。よく眠れたか?」
「おはよう、ございます……彼の、方たちは……」
よしよし、今は上手く機能しているみたい。私の顔に熱はなく、至って平静だ。
キョロキョロと辺りを見渡し、私を認識すると彼女は大きく目を見開いた。
今の私同様、この子は普段からあまり感情の起伏がないようだが、語調は明らかに動揺を隠し切れていなかった。
彼女からしてみれば、ゴム弾で撃たれ気絶している間にこの部屋に運び込まれていたのだ。
私とセットで男たちに捕まってしまったと考えるのも無理はないか。
「大丈夫だ。我が全員返り討ちにした──と言いたいところだったんだがな。
すまない、主犯格だけは取り逃がしてしまった」
あの後やって来たSHOによって下っ端さんたちは全員捕まっているだろうけど、常軌を逸した防御力とタフネスを誇るあの人なら上手く逃げ切ったに違いない。
でも、あくまで私の目算だけど、数カ月まともに動けないんじゃないかな彼。
威力は極力抑えたが雀野の奥義はそれでも生半可なものではない。
彼は耐え切ったが、爪痕は必ず残る。すぐ報復にやってくることはまずあり得ないだろう。
私の見解を伝えると、白髪の少女は楚々と寝台から降りて向き直った。
そして──両の掌を床に着け、深々と頭を垂れる。
思わず言葉を失いそうになるほど、彼女のお辞儀は美しさと神聖さを兼ね備えていた。
「雀野様……心より感謝申し上げます……そして、あなた様を巻き込み、お怪我をさせてしまいましたこと……お詫びの言葉もございません……」
「好奇心で山に入り、我が自分から首を突っ込んだだけの話だ。貴女が気に病むことではない。
それにこんなもの怪我の一つにも入らんよ」
私はどれだけ傷を負っていようと戦闘続行できるよう様々な特訓を受けているのだ。
……昔、人目に付かないからと言って夏休み開始初日に片足の骨を折られた時はお父さんを呪い殺したくなっちゃったけど……まぁ今では笑い話さははははは。
彼女は首を横へ振るだけで微動だにせず平伏を崩さなかったが、後半の自虐を伝えると顔を上げ瞳は驚愕を物語って、いや思いっきりドン引きしている。
全然大したことないんだから畏まらなくていいんだよーと言いたかっただけなのに。気持ちが前のめりになって女の子へ話すべきでない物騒な話になってしまいました。
…………あれ?
橘くんとこの子の前で一度も戦ってる姿を見せたことないし、もしかして客観的に見たら私とっても痛々しい人!? 記憶も消せる一子相伝の暗殺拳とか世紀末劇画漫画のパクリ乙もいいところで、語った内容も胡散臭いことこの上ない。ドスケベビッチ雀野なら、ドスケベバトルで相手の
やばいよやばいよ。二人に内心笑われてたら私しんじゃう。
ど、どうしよう。二人の前でお披露目した方がいいだろうか。廃棄予定の鉄板でもその辺に落ちてないかな。
でもなー、力を誇示する目的で武術は行使したくないんだよね。凄い凄いって皆に褒められ、チヤホヤされたいっていう欲求があるのは否定できないけど、それはそれだ。
いやでもこれは私の人間としての名誉を守るためだし……と葛藤していたら、
「雀野様は、わたしの想像も及ばぬ、修養をお積みになられているのですね……
感服、いたしました」
……彼女の言葉から嫌味は一切感じ取れない。
妄言だと斬って捨てられたくはないが、しかし私の眉唾物な話をそっくりそのまま受け入れるのもどうなのよと思ってしまう。我ながら面倒だな!
ってそんなことはいいんだ。重要だけど重要なことじゃない。
──一体、この子は何者なんだろう。
クソダサマスクさんの言うことが虚言でなければ、本土の任侠団体にもSHOにも追われる身。
僅かな時間しか視認できなかったけれど、少なくとも昨日今日に始まったわけでないと確信できるほどに少女の後姿は淀みなく。
またワケもわからず恐怖に怯え逃走しているようには見えず、寧ろ彼らの思惑を理解した上で毅然と立ち向かう──そういった強靭な意思を、この少女から見受けられた。
「……貴女の名前を、教えてはくれないか? わからずに会話するのは、どうにもむず痒くてな」
「文乃…………ふ、吹子とお呼びください!」
「そうか。吹子。奴らが口にしていたのだが──SHOもまた貴方の敵だと。それは本当か?」
私の問いに、吹子を名乗る少女は沈黙で応えた。肯定と捉えてよさそうだね。
青藍島はドスケベ条例という錦の御旗の下に統治された、一種の管理社会だ。
その管理者であるSHOは島に住まう者たちのありとあらゆる情報を全て握っている。
もし彼女が一般家庭に生まれた人間であれば、登録された住所を調べ条例違反者としてでっち上げ確保すればいいし、逃げられても大々的に犯罪者として島全体へ喧伝すればいいだけ。
でも、そんな話を耳にしたことがない。小さな島だ、違反者の情報はすぐに出回ってくる。
やはり私の推測通り、この子は青藍島を支配する上層部の誰かにとって明るみに出したくない、弱み、なんらかの火種となり得る子なのだろうか。
「そうか。ならば、これ以上は何も聞くまい」
どこに住んでいるのか?
何故狙われているのか? 行動を共にする仲間はいるのか?
庇護下に置いてくれる、信頼できる保護者や家族はいるのか?
本当はもっともっと、沢山聞きたいことがある。
「だがな、これだけは言わせてくれ」
人は追い詰められた時にこそ、本性が現れるという。
この子は銃に撃たれ激痛に襲われた。のたうち回り、大声を張り上げ助けを求めるのが普通だ。
だけどしなかった。絶望的状況に陥り、それでも尚私の心配だけをしてくれた。
そんな自分よりも他者を優先してしまう慈愛の心を持った少女が、私を渦中に引きずり込むことを良しとするか? 否。私の戦える姿を目にしたところで多分答えは変わらない。
彼女の本当の名は──『ふみの』。残念ながら私は難聴系主人公とは対極にいるのだ。
小声でうっかり呟いてしまえば、よほどのことがない限り私は声を確実に拾えてしまう。
彼女はとてもわかりやすい。ふみのという言葉を滑らせたときは明らかに失敗したという不安の感情を滲ませ、私が吹子と返した時には安堵か顔ばせが緩んでいた。
それは、名前を知っているだけで
そしてそのリスクの高さを、彼女が自覚していることに他ならない。
彼女はもう、踏み込んだ質問にこれ以上は答えてくれない。
だからこそ。
「──我は貴女が好きだ!」
「むべ!?」
一回り幼いが私なんかより、ずっと大人である。吹子ちゃんの高潔な精神こそ尊敬に値する。
彼女を害する全てから守ってあげたい。物語のお姫様を守護する騎士のように。
でもそれは拒絶されるだろうから、彼女を遠くから見守ろう。
私なりの、やり方で。
「故に」
私たちの一族は元より闇に生きる者。影に潜み生を喰らう者。
尾行なんて朝飯前だ。
「困ったときは我を呼べ。貴女が危機に陥った時、我は必ず現れる」
呼ばれずとも行っちゃうけどね。
「お、お心遣いありがとう、ございます…………お気持ちだけ、有難く……」
やんわりと断られたがそれは予想通りなので気にしてないけど、彼女が更に角度を付けて頭を下げているのが気になった。まるで私から顔を隠したいみたいだ。
ん?
「何か、髪に付いているぞ……あぁ、土か」
彼女は一度山で倒れたが、幸運なことに泥汚れが着物に付着することはなかった。
移動している最中に土埃をポンポンと払い除けていたが、髪の毛は手付かずだったな。
よしよし、私が取ってしんぜよう。
「……なん……だと……」
彼女の髪の毛に触れた途端──私に、電撃が走った。
なにこの手触り。指の間をすり抜けていく、サラサラとした感触。
よく小説で絹糸のような髪、という表現が使われるけど、これはもうそのままズバリだ。
「貴女はヘアケアに何を使っているんだ?」
「えと……市販の物かと思われますが……商品名は……申し訳ございません……それを一週間に、一度だけ……使わせて頂いております……あとは、お水を浴びて」
なにそれ凄い。私は毎日かなり時間かけて手入れしてこの黒髪を維持しているというのに。
格闘家ならデメリットでしかないんだけど、その程度のハンデも背負って戦えないなんて本当に俺の子か?と師匠に煽られてそのまま伸ばすようになったのだ。今では気に入っていますけど。
うーむ、なんというナチュラルボーン柔らか艶やか髪質。とっても羨ましい。
「なぁ……頭を撫でていいか……?」
「へ!? ど、どうぞ……ご随意に……」
「では、早速」
わーい。
許可を貰ったので意気揚々と手を置く。しかしただ触るだけでは味気ない。
そんな訳で──アレをやっちゃおうか!
「す、雀野、様……?」
私の胸で彼女の小っちゃな頭を優しくホールドする。
……自分で言うのもなんだけど、私には天稟があるのだ。
一度見た肉体の動きを忘れることはないし、大体即興で技を再現することができる。
そう、これより放つは昨日見せてもらったヒナミ先輩の技(?)。勝手に命名──バブみハンド。
あの礼先輩を宥めた先輩の手つき、力加減を全てを
「んっ、ふあ……」
だが私にはヒナミ先輩のようなお母さん力がないだろう。
よってその辺は雀野家に伝わるツボ押しを織り交ぜることでカバー!
「のっへっへ……」
頭皮マッサージをしつつ彼女に気持ちよくなってもらいながら、髪を撫で私も気持ちよくなる。
まさにWin-Winだ。そのキラキラ白髪、堪能させて頂きますよ。
「ゴロゴロゴロ……ぬっへへへへへ……」
手を止めたら、いつの間にか時計の針が15分も進んでいた……!
なんという魔性。女の髪には魔力が宿ると言うが納得である。
いやぁだってワンコ的反応するの可愛すぎでしょ。この子を愛でてるだけで一日分の栄養を補給できそうだ。
そんな私の蹂躙を受けていた彼女はボーっとしていた。焦点が合っていない。もしかして私やりすぎちゃった!?
「だ、大丈夫か?」
「────もも問題はありませんので……!」
顔を近づけると丁度我に返った女の子が、今度は顔を林檎のように真っ赤にして私から視線を外している。
羞恥心だけで頬を染めているのではない。まだ未成熟であるにも拘わらず、彼女からはどことなく妖しげな色気を感じる。小ぶりな唇をキュッと引き締めているが、それは声を押し殺しているようにも見えた。
あれ。この光景、記憶に新しい……ハッ!
私。この子。橘くん。至近距離。そして、媚薬。
謎は全て解けた──!
実は彼女も微量ながら媚薬を吸い込んでいたんじゃなかろうか。
あの超強力な催淫煙が、ただ性欲を掻き立てるだけとは考え辛い。何かしらの影響や副次的効果があると考えて然るべきだ。
私が発情した時最も近くにいて長く寄り添っていたのは、お姫様抱っこで運んでくれた橘くん。
この子を運んだのも橘くんだけど、少なからず毒に耐性のある私と違って、彼女は眠ったままの状態ですぐに発症してしまったのだろう。
その間、身近にいたのは彼女を背負っていたこの私。
私は橘くんの。この子は私の。
──そうだ、私達はそれぞれの体臭に敏感になってしまっていたのだ!
彼に妙にドキドキしたのも、汗を嗅いでしまっていたのも、全ては媚薬のせいだった。
彼女も私の匂いでプチ発情状態になっていたんだろう。げに恐るべき青藍島の媚薬技術……!
橘くんと言えば。
「……伝え忘れていたんだがここの家主は我のクラスメイトでな。匿ってくれたのもその殿方だ。
今も我たちのために昼食を用意すると言ってくれていたのが──吹子はどうする?」
呼ばれるまで休んでいるか、リビングで待たせてもらうか。
私は何か手伝えることがないかとりあえず聞いてくるつもりだ。勝手に人の家をうろつくのも失礼だけど、ここで出来上がるのを二人して待っているのもね。
「では、微力ながらご助力を……わたしも母より指南を受けております」
スッと立ち上がる吹子ちゃん。
きちんとした正座であれば痺れは起こらないものだけど、慣れるまでが結構難しい。
厳しい躾をそのお母さんから施されていたのはこれまでの所作からして容易に想像がついた。
扉を開けて廊下を進むと、彼女は一定の距離感を保って私の後を追ってくる。
見ずとも気配でわかる、寸分の狂いもなく距離を置く吹子ちゃんに、聊か悪戯心が芽生えた。
ほんの少しスピードアップ。同上。ほんの少しスピードダウン。同上。
足を止め振り返るとチョコン、小首を傾げる吹子ちゃん。なんなのこの子可愛すぎる。
もう一回頭を撫でたかったがいけないいけない。これじゃいつまでも下に降りられないし、またえっちな気分にさせてしまう。
腕を降ろすと物欲しげに小さく声を漏らし口元を袖で隠していたが、見なかったことにしよう。
「……先程はよくわかったな。我がダメージを負っていたことに」
私、そんな素振りを見せてない筈だったし、回復力は高い方だから炎症もすぐに引く。
このドスケベシースルーで肌が透けても気づかれない自信があったのにな。
「……ひとえに、わたしが賜った、"
吹子ちゃんはいつ頃からか数㎞先の距離を肉眼で捉えられる、常人ならざる視力を発揮していたらしい。そしてそれに付随して相手の発言の真偽を見極めることも可能だと。
魔眼じゃ魔眼! 格好良いなぁ。
私、彼女との会話で嘘は一言もついてないよね。全部本心から出た台詞なので彼女を不愉快にさせることもなかった……ついてたわ。嘘と言うのか微妙なラインだけど。
「貴女と森で再会した時、我はドスケベビッチを自称したはずだ。もしや…………!」
「わ、わたしも処女でありますゆえ……!」
フォローありがとうございます……!
「ん? 居間が騒がしいな……」
階段を下りたら、ざわついた雰囲気を壁の向こうから感じる。
こういう時は気による探知だ。リビングには二人。一人は当然橘くん、そしてもう一人、似た気配の──妹さんだね。何日か前、校舎でほんのちょこっとだけ話したことがある。
人見知りなのか、かなり言葉に詰まっていた様子だったけど。
扉を開くと。
「──知ってるかアサちゃん。この目盛りに合わせ水を入れると、ご飯が美味しく炊けるんだぞ」
「おいおい、誰に向かってものを言ってるんだよぉ。こちとら生まれてこの方炊飯器から自分の手で一度もご飯をよそったことのない女だぜ……マジか兄ついに覚醒しちゃったか!?」
「しちゃったかもしれん! わかる! わかるぞ! この5の数字がベストだ──!」
そこには、かなりのダメ人間っぷりを自慢げに語る妹さんと。
少量のお米に、並々と水を注ぎ込んで、蓋を閉めようとする橘くんの姿が。
「スイッチ! オ」
「待て待て待て」
私が手を掴むと、うぉぉぉ雀野さん!? とビックリしている彼。こっちの方が驚いてます。
そしてここ汚いな! 数歩分歩いてるだけで埃が舞ったよ。お鼻がムズムズする。
もう一度開けて中身を確認。えーと、これはお米が約1合半……いや、1.3~1.4か……とっても中途半端だな。お水は5合分。
なんだこれ。
「貴方は一体何を作ろうとしていたんだ……?」
「チャ、チャーハンです……」
へぇ、チャーハン……チャーハン⁉
「むべ、むべ……斯様な調理方法があるのですね……勉強になります……あんちょこはどこかしら……」
「絶対違うから書かなくていい」
吹子ちゃん結構天然入ってない?
「どうやってお米は計量した……?」
「こう、袋ごと持ち上げてザーッと……」
「ああ、うん……」
雑い。あまりにも雑い。
わかった。わかりたくないけどわかっちゃった。
橘くん、この兄妹、料理全くやったことがないんだ。
「米袋に付属されている透明なカップがあるだろう? これだ、これ。
……失礼する」
台所を借りて手を洗い、備え付けの計量用カップを橘くんに提示する。
素直に頷く彼を尻目に、私は袋の中へカップを突っ込んだ。器よりはみ出たお米を指でスッと落としたらそれで終了。
「これで、一合。だいたいお茶碗二杯分だな。そして釜に表記されたこの白米1が、一合分に必要なお水の目安となる」
「雀野さん、料理ができるのか!?」
そんな迫真ボイスで叫ばんでも。
尊敬の眼差しを送ってくる橘くんだが、この程度で褒められても全然嬉しくない……!
「何故あんなこと言ったんだ」
「すみません……良いところ見せようとして見栄張ったんです……!」
……男の子だものね。格好つけたくなる時は誰にでもあるよね。
「あのあの雀野先輩ビッチじゃないって本当なんですか!?」
唐突に脈絡なく早口でぶっ込んできたなこの子は。
「麻沙音だったか。そう、我もまたドスケベ条例違反者だ」
だから私はあなたの味方だよ。安心してほしい。
詳しいことは聞いていないけど、橘くんの妹さんなら、きっと貞淑な子なんだろうな。
親しみを込めて微笑むと──唾を吐く勢いで彼女の眉が歪んだ。
「けっ、んだよ清純派気取りのカマトト女かよ……」
えぇ……
「……な、なるほど、わかった。昼食は我が作ろう──そして、助けてもらった礼だ」
捨て台詞を吐いて出ていく麻沙音ちゃんの心が全くわからない件。
考えてもどうにもならないので、一先ず置いておこう。私は切り替えが早いのだ。
切り替えが早くなければこの島ではやっていけないとも言う。
会話している間に、吹子ちゃんは橘くんにお礼を言っていたようだ。今は麻沙音ちゃんを追いかけようかしまいか少し悩み、私の後ろへ控えるように回った。
……部屋を全体的に眺めてみる。床にはそこかしこに散らばっている埃。端にはほとんど手を付けていなさそうな引っ越し用ダンボール群。これはまぁ仕方ない。
上からは悪臭、匂いの元は部屋干ししているグシャグシャとなった洗濯物だ。
洗ったまま長時間放置してた奴じゃん。
しかもティッシュまみれだったり服が伸びていたりとよくありがちなミスの見本市状態である。
台所もまた酷い有様だった。小さなフライパンを食器乾燥機に突っ込んでいるのはいいとして、ひっくり返さずに入れているせいでお水が溜まったまま。新品っぽいのにテフロン加工が金たわしのせいで思いっきり傷ついてるしちゃんと汚れを全部取り切れてない……。
紙袋に纏められた、割れたお皿の量も凄いことになっちゃってるけど、これは違うよね?
引っ越しする時に梱包が甘くて移動中割れちゃったとか、食器棚へ運んでいる時にうっかり落としてしまったとか、そういうことだよね?
まさか洗うたびに皿を割るなんて、そんなフィクションのドジっ子メイドさんみたいな現象、現実であるはずないでしょ、うん。
あまりにも、あまりにも惨たらしい。
お友達として、私がなんとかせねば。
そして私に対して見栄を張りたかった、というのがよくわからないけどなんかグッと来た!
「──我が家事全般を教えよう! 貴方が一人で完璧にこなせるようになるその日まで!」
「いやいやお礼なんて気にしなくていいって! わからないことがあってもネットで調べられるから!」
……インターネットで何でも調べられる時代。その場で検索し、失敗した原因を大体はすぐ突き止められる。失敗から学んでいけば、いずれは問題なく作業を終わらせられるようになっていくものだ。普通は。
しかし、橘くんを見ていると……なんだろう。物凄く気懸かりになる。
誰かが傍にいてアドバイスできる環境でもなきゃいつまで経っても成長できないような……私のシリアスセンサーが囁いてる。そんな気がしてならないのです。
「我が貴方の手助けをしたいのだ。部屋の環境というのは精神にも大きく影響を与える。すぐ改善できなければ、貴女の大事な妹にも悪影響を及ぼしかねん。
……厳しい言い方になるが、貴方たちはこの島の圧倒的少数派として生きねばならぬ身。自宅を心休まる場に出来ずしてなぜ戦えよう?」
「そう言われると、弱いな……よろしくお願いします」
「ん、こちらこそ。我も基本を見直すいい機会になりそうだ。
まずは掃除からだな。流石にこうも埃が立っていては落ち着いて料理も出来ん」
「僭越ながら、本日はわたしも……」
掃除道具が保管されている場所を橘くんに尋ね、吹子ちゃんも部屋を出て行った。
麻沙音ちゃんを例に出したのは大きかったようだ。説得に時間がかかると思っていたけど、こうもあっさり話が進むとは。
吹子ちゃんは一宿一飯の礼として手伝ってくれるが、恐らく長居するのも迷惑だからと今日一日限りの参戦だろう。
そう、これからは二人で…………ふたり!?
男の子の家に毎日上がり込んで、家事を……。まるでこ、恋人みたいな関係じゃないか……!?
いけない緊張してきた。この高まりはただの媚薬の副作用に過ぎない、落ち着け私、橘くんはあくまでお友達なのだ。ドキドキを鎮めるのだ。
せめて誰かもう一人。そうだ、麻沙音ちゃんも一緒にお料理勉強しないかな。私嫌われてる?みたいだから難しいかもしれないけど。
………………いるじゃないか! 私の初めてのお友達が!
「……さて、理由はどうあれ我々は志を同じくする仲間という訳だ。我には友人の女子生徒にして同志がいてね。今日か明日か、貴方たちに紹介しよう」
「本当か!? それは心強いな……」
「うむ。転校したての貴方には少々劇毒というか、怪物というか……超危険生物に映り青藍島に大きな偏見を抱いてしまう恐れがあるため引き合わせるのを躊躇っていたんだが……」
「不安になってくるんだけど……」
「根は良い子なんだぞ……?」
ピンポーン!
彼女の良さをどう上手く伝えればいいのか悩んでいたら、電子音が鳴り響いた。
どこかギクシャクした足取りで受話器を取ると。
『家事代行サービスですが、お話を伺いに参りました』
「あっそうだった……」
インターホン越しから、歯切れ良い女性の声が伝わってくる。はて、どこかで聞いたような。
家事代行サービスとはその名の通り家事を請け負ってくれる、家政婦さんと似たようなものでお仕事内容も然程違いはなかったと思う。
大分前、雀野家にチラシが入ってたのを見て気になって調べただけだからうろ覚えだけどね。
心当たりのありそうな台詞を聞くに、お仕事を依頼したはいいものの私たちのドタバタに巻き込まれて、すっかり記憶から抜け落ちてしまっていたんだ。
そっかぁ、ちゃんと色々考えてたんだね橘くん。メガネ掛けてるし見ての通り頭のいい人だ。 しかし、そうなると私の出番はないかな?
青藍島の代行サービスは、相場に対してかなり安かったはず。私が手伝えば無料だけど、そうなると橘くんは家のお仕事に時間を割かなければいけなくなる。
私たちは学生、時間はいくらあっても足りないものだ。
でも、ちょっとだけ残念だな。ちょこっとだけね!
考え込んでいると、橘くんが振り返って、手でマイクを隠しながら首を横に振っていた。
「相手はこの島のビッチ──よく考えたら、俺の貞操が危ない!」
「確かに……」
男の子の貞操って初めて聞いたよ。
『あのー、すみませーん! お電話が遠いようなんですけどー!』
二段階ほどボリュームの上がった音声が届いてきた、放置してしまってごめんなさい……やはり、聞き覚えがある。声はかなり若い。うーん水乃月学園の生徒ぐらいしか思い浮かばないな。
女、ビッチ、語尾のなんですけどー……あっ。
「この声は……片桐奈々瀬!」
「あの女を知っているのか!?」
「知らぬ方がおかしかろう……これは、かなりまずいな橘くん」
どういうこと……? と尋ねる橘くん。
ある日、彼女は中出しバケツリレーなる青藍島最難関を誇る競技の記録に挑戦していたらしい。
積み重なるは死屍累々の男たち。対して身体を交える度、精力をつけ艶々していく一人の女。
そんな彼女は射精済みで文字通り精魂尽き果てた彼らに対し、指を差して、こう尋ねた。
『ところで…なんで山の下に童貞がいるのかしら?』
「ひいっ」
男は青藍島に訪れたばかりの観光客だったが、あまりの熱量に呑み込まれて運悪くそうなってしまったそうだ。その後どうなったかは言うまでもない。
彼女が一度だけグラビアモデルとして表紙を飾った雑誌の、片桐奈々瀬の生き様を描くスペシャルコラム『愛(液)・精子編』にて語られていたお話だ。
このエピソードからわかる通り、童貞を嗅ぎ分ける能力を持つ青藍アマゾネスたちの中でも彼女は別格中の別格。万と珍の応用技エッッ!随一の使い手である片桐さんは、その力で補足した初物の悉くを食べ尽くしてきたのだ──!
「彼女の索敵範囲は異様に広い……つまり」
「俺は既に捕捉されているかもしれない……だと」
「十中八九な」
「とんでもないクソビッチだな……! しかしそれならどうしてあの時俺を見逃して……」
彼女は史上最強のギャルビッチ。ギャルとはオタク、堅物系、不良……誰とでも仲良くなれるトーク力と行動力を併せ持つ、チートめいたコミュ強生物である。
橘くんがいくら性産的行為を拒絶する鋼の意思を見せようと、彼女が本気を出せばそれも儚く崩れ去ってしまうことだろう。息をするように彼と距離を縮め、自然な流れで筆下ろし展開へ移行しCG、回想シーンの一枠が解放されるは必定。
なんなら彼女の淫力に魂を引かれ、私、吹子ちゃん、麻沙音ちゃんも参加し5P大乱交パーティに発展してもおかしくはない。
それほど別次元の存在なのだ、この島の看板を背負う女というのは……!
「断言する……家に上げたら、終わりだぞ……!」
橘くんが顔を引き締める。私の言葉で事の重大さを理解したようだね。
片桐さんはドスケベをこよなく愛するが決して無理強いはしない、とってもいい娘なんだ。
丁重にお断りすれば、彼女はそれに応え退いてくれる。依頼しておいてキャンセルするのも申し訳ないけど事情が事情だ、仕方がない。
彼が片桐さんに返事をしようと口を開こうとしたその刹那。
居間の扉が、突然開いた。麻沙音ちゃんである。
彼女は橘くんへと近づいていく。何事かと目配せするが彼もよくわかっていないようだ。
力強く、ズンズンと彼に迫るが──その勢いに反比例して、まるで低速再生かのようにその歩速は、べらぼうに遅かった。
麻沙音ちゃんが橘くんの横に立ち。
開錠ボタンを押して。
先ほどより気持ち足早に、部屋から出て行った。
……?
「なんで!?」
「俺たちの会話を盗み聞きしてたな……! ビッチ好きマイシスターめぇ……!」
妹さんは階段を上り、玄関口から開閉音が聞こえた。こ、これはやばい! 途轍もなくやばい!
彼女の謎行動に思い当たる節があるようだけど今それを問いただしている時間はなかった。
「こうなれば──腹を括るしかあるまい! 橘くん! 迎え撃つぞ!」
「ど、どうやって!?」
「我も世間からは彼女と双璧をなす龍虎ビッチと呼ばれている身だ。
仕事を任せその上で如何にして貴方を味わい尽くしたかを強く主張し、誤信していたと彼女に思い込ませる! 活路を切り開くにはそれしかあるまい」
「………………ごめん、雀野さん。君にそんな真似させるなんて」
「気にするな。逆の立場であれば、貴方もきっと同じことを我にしてくれる筈だ」
「橘様……お客様が、お見えになっていらっしゃいますが……」
バケツや雑巾を手に持ちながら、吹子ちゃんが戻ってきた。
片桐さんは中に入って玄関で待っているみたい。
──これからは、もっともっと忙しくなる。
吹子ちゃんの安全の確保も勿論必要だが、任侠団体の動向も探らないといけない。
彼女に心配をかけてしまうから言わなかったけど、私の顔は既に割れている。
青藍島全域に張り巡らされている監視カメラのおかげで彼らも表立って行動は出来ないし、いくら末端とはいえ部下を大勢検挙されたのでは身動きも取りづらくなる。
今回の一件で私の住んでいる過疎地域にも暫くは警備員が巡回するようになるだろう。
水乃月学園の子も、あの山付近にいるみんなも安全だと思うけれど。それでもあの手の人種は何をしてくるかわからない。面子を重んじる彼らが復讐しにきたり、『ふみの』を匿っているとして私の周囲の人間を人質に取ろうと画策する可能性だってある。
後でお爺ちゃんやお父さんに相談してみよう。ドスケベ条例とは無関係な話であれば、力になってくれる筈。
仮面の人以外の人相を、SHOに情報提供するのは──悩ましいところ。私も監視対象としてマークされることになったら自由に身動きが取れなくなってしまうから。
やるべきことも考えるべきことも、懸念材料も山積みだ。
が。
「雀野さん、行こう!」
今はこの場をどう乗り切るかが重要です。
相手は青藍島の実質的頂点。ラスボスが物語開幕から攻めてくるようなもの。
敗北イベントで勝利をもぎ取る、そういった無理ゲーを私たちは強いられているのである。
一瞬の油断が致命傷になり得る難敵を前にして、他所事を考えている余裕はないのだ。
彼は愛する人以外とはセックスしたくないと言っていた、それは同感だけど、しかし彼の場合私とは比較にならない程──何かしらのトラウマがあるのではと考えてしまう程──尋常でない気迫を感じた。
私はあの時、おじさんが怖かった。当然の権利のように性行為に及ぼうとするおじさんが。
橘くん、麻沙音ちゃんにとっては、この島の女性/男性全員がそうなんだ。私には特別なスキルがあるから密室状態に持ち込めば何とかなるという自負心があったけど、二人は違う。いくら筋トレで身体を鍛えようと、条例によって抵抗自体禁止されているのでは意味もなし。
あんな怖い思い二人にはさせたくない、登校中だけでも守ってあげたいけど特定の異性とずっと行動を共にするのは、より多くの不特定多数の異性と交わるべしという条例の理念に反する。
結局のところ、お互い目をつけられないよう要所要所で助け合うしかない。
そして今が、その時だ。
隣にいる彼と目を見合わせ、頷き合う。
家の前で見た、彼の目を瞑ったあのなんとも言えない表情も味があって好きだけども。
キリっとした目つきは、やっぱり男の子だなって。
……漫画とかだと、こういうタイミングで、呼び名を変えるよね。
緊張するけど、言っちゃおう。
だって私たちは、お友達なんだから!
「ああ──頼りにしているぞ、
あっその顔、その顔……。
えっ、何でこけた!?
ま、まさか……これが音に聞く片桐さんの特殊能力!
この距離で、もう彼女の
「淳之介!? しっかりしろ淳之介ー!」
彼女と対面する前から敗色濃厚な私たち童貞処女コンビであった。
この後滅茶苦茶仲良くなった。
一時間後、奈々瀬の圧倒的女子力と吹子の圧倒的女中能力を前にアヘ顔完全屈服キメる主人公。
修行人生送ってきて片手間で家事してきただけの女が勝てるわけないだろ!
雀野と、恩義に報いようとする文乃は今後お互いを守りたいあまり雀野は街中でどこからか視線を感じ、文乃は山でどこからか視線を感じる。お互いがお互いにプレッシャーを掛け合うことに。
たった7話書くだけで一年近く時間を掛けてしまうとは、読めなかったこのモブガサの目をもってしても!
元々ぬきたし普及のため、未プレイヤー(マダハメイト)に読んでもらい生ハメイトが増えてあわよくば二次も増えないかなーと思って執筆を開始したのが切欠です。
そのためキャラ紹介も兼ねた初心者向け作品にしようと考えていたのですが、途中であれ?生ハメイトの方しか読んでないんじゃね?生ハメイト向けにもうちょっと尖らせた方がいいんじゃね?と悩み中途半端感が否めなくなってしまった気がするのは内緒。
そんなこんなでマダハメイト、生ハメイト双方の方に少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
一応これにて体験版終了。番外編としてドスケベ回と、いつになるかわかりませんがダイジェスト形式の本編を書けたらなーと考えてます。いつになるかわかりませんが!
ご読了、ありがとうございました。
オマケ『同好の士』
「む、本は燃えるゴミではないぞ」
「ゲッ別にいいじゃないですか燃えますって……どうせ叱られるなら奈々瀬しゃんがいい~」
「そういうわけには……おや、この本は向かうから持ってきたものじゃないか。
荷物の整理を手伝っていた時に見かけた覚えがある。本当に捨てていいのか?」
「いいんすよ急に冷めたんです……」
「……我もこれを読んだことがあるからわかったぞ……理由はオチの──適当な二次元エンドにある!」
「────へぇ……」
「戦うヒロインが徹頭徹尾陵辱調教されていたのにも拘わらず、最後の数ページで何の伏線もなく唐突に逆転する。様々な理由があるとはいえ、個人的にはあまり好ましくないのだが──どこかクセになるものがある。しかし読み直したらやはりコレジャナイ……と感じることもあろう」
「二次元エンド! ジュブナイルポルノの失敗作!! 雑で抜けなくて今まで読んできた中で一番醜悪な終わり方だぁ!」
「そこまで言わなくても……」
「雀野先輩は
「お、おおう……?」