ナルシストなボクっ娘、変態領主に辱しめられるの巻 作:NMKR
ある日。ボクは、気付いてしまった。
この世界における一つの真実に。ありとあらゆる事象が記録されているというアカシックレコードの冒頭に記されるだろう、唯一無二不変の真理に。
その気づきは、ボクの意識に革命をもたらし。新たなる自分へと、生まれ変わる事が出来たのだった。
ボクはしがない、何処にでもいる商人の娘だ。
子沢山だった実家は、成人と言える年齢になったボクを知り合いの商家に奉公へと出した。しかし不運にも、その奉公先はボクがたどり着いた時には強盗に遭って既に破産していた。
ボクは途方に暮れた。実家から片道分の路銀だけをもらって遥々旅をしてきたのに、辿り着いた先に何もなかったのだから。こうなれば、何とか自力でお金を工面して実家に戻らねば。
いったいどうやって? それはまぁ、地道に酒場の従業員などをしてコツコツ貯めていく他はあるまい。
そう考えたボクは、たどり着いた街の酒場でウェイトレスとして雇ってもらい、日銭を稼ぎ始めたのだった。
……だが。
「君可愛いね。後で、俺とでかけない?」
「あ、そのゴメンなさい」
その酒場では毎日のように声を掛けられ。
「ひゅー、可愛いじゃん。ねぇねぇ、こっちきてお喋りしてよ」
「え、えへへ。そうですか?」
この店に長居をするつもりはないから恋仲になれないと伝えたうえでも、客はボクに言い寄り続けていて。
「ねぇねぇ、そこの可愛いウェイトレスさん。この後空いてる?」
「あ、あははは……」
日々、ナンパな男どもをあしらい続けているうちに、気付いてしまったのだ。
────ボクって、可愛いのでは!!?
鏡に映る自分を見る。
決してグラマラスな体型とは言えないだろう。やせっぽちではないが、普通に出るところは出ている、まさに平均的な体格。
だが、顔は可愛い。目もパッチリしてるし、笑えば愛嬌がある。整って均整の取れたパーツに、あまり手入れできておらず少しボサついた髪。
だが、そのボサついた髪も逆にプリティだ。何とも言えぬ、味のある髪型となっている。
少し首をかしげてみる。清楚な雰囲気を持つ美少女が小首をかしげる姿は、物凄く庇護欲をそそられる。
腕を組み、不敵に笑ってみる。するとどうだろう、今度は小悪魔な雰囲気を纏った美少女が鏡に艶やかに映し出されている。
え、やばくない? 可愛すぎないかコレ。
総合的に判断しよう。ボクは可愛い、それは絶対不変の真実だ。
ああ、何で今までボクは気づかなかったんだろう、鏡を見る機会など何度もあったというのに、自分の美貌に気が付かないなんて。
ああ、可愛い。可愛らしい、可愛すぎる、可愛さの暴力。一日中鏡を見ていても、飽きることは決してない。
……ああ。こんなに可愛いなら、おねだりするだけで誰か実家まで送ってくれるかもしれない。ま、そんな男の人を騙すような真似をするつもりはないけれど。
ふぅむ、実家の人間は実に馬鹿だなぁ。こんなに可愛い女の子を手元に置いておかないなんて。看板娘にすれば千客万来だっただろうに。
仕方がないなぁ。こうなれば自力で実家に戻って、ボクの美貌で商売繁盛させてあげようじゃないか。
こうして、素晴らしいことに気づけたボクは。ウェイトレスのバイトを続けながら客に可愛がられつつ、コツコツと路銀を稼いでいったのだった。
そんな、ある日。
「……ゲッ」
夕食時も終わり、店には酒飲みがタムロするだけになった頃合い。可愛いボクの尻を撫でようとするオッサンを蹴飛ばしながら、普段通りに店の中で掃除をしていると。
「邪魔をするよ、店主」
ゾロゾロと、怪しい髭のオジサンが兵士を従えて店内に入ってきたのだった。
な、なんなんだろう。
「ご、ご領主様。これはこれは、我が店になんの御用でしょうか」
「ふん。下賜だよ、私直々のな。お前のところの娘は美人だと聞いたが?」
ジロリ、と店主さんを睨みつけるオジサン。態度がめちゃくちゃ悪いけど……領主様ってよばれてたな。
もしかしなくても、この辺りを治めている偉い人なのか?
「む、娘はもう嫁ぎ先が決まっていまして」
「それは良かった。嫁ぐ前なのであれば、まだ生娘であるな」
「……そんな!」
ニヒヒ、と下卑た笑い声を出して店主に詰め寄る領主様。
あ、そうか。これはアレか。
つまり、権力にモノを言わせて好き放題に女遊びしてるのかあのオジサン。最低すぎる。
そうなのだ。店長の娘さんは、最近やっと嫁ぎ先が決まった。
何でもずっと憧れていた年上の幼馴染と、10年来の恋が実っての結婚だそうだ。その日は皆で祝福したからよく覚えている。
そんな、幸せいっぱいの彼女の蕾を……。あの男は、ただ性欲の対象として食い散らかすつもりらしい。
「お願いします。娘は、娘だけは。お金ならいくらでも支払いますので」
「あまり私の機嫌を損ねるなよ? 貴様の娘とやらを、ボロ雑巾のようにして返してほしくなければな」
「……ああ。ああ、神様」
「安心せよ、同じ女を何日も抱くつもりはない。娘は1日で返してやるさ、使用料金も払ってやる。私は、嫁入り前の生娘を汚すのが大好きなんだぁ……」
ポロポロと、涙を零す店主。それを、心底愉快といった表情で眺めている悪徳領主。
許せない。胸が痛くなってくる。あいつは、人の気持ちを何だと思っているんだ。
────。
そして、ボクは。
「さぁ、娘を差し出せ」
「う、うぅぅ。サラ、サラ……」
店の奥で。青白い顔をして震えてる、店長の娘を庇うように。
「大丈夫さお父様。1日くらい、なんてことはないよ」
一歩踏み出して、悪徳領主の前に出た。そう、「店長の娘、サラ」として。
「えっ?」
「ほう、貴様が店主の娘か。名は何と言う?」
「ボクはサラ、この食事処『黒猫夜飯』の看板娘さ。どうだ、噂通りに超可愛くて目が溶けてしまいそうだろう?」
「あ、ハイ。んー、でもまぁ確かに可愛いな」
「でしょう!?」
店主の娘は可愛いと噂だった。ボクほどではないにしろ。
つまり、ここでボクが店主の娘を名乗り出ても全く違和感がないハズ。何せ、この店で一番かわいいのはこのボクなのだから。
「でも、噂だと店主の娘は『誰もが振り返る高嶺の花』系の美人って聞いたぞ。お前はどっちかと言うと『ソコソコ可愛いくて声がかけやすく、頭が弱そうで持ち帰れそう』な、お手軽に声を掛けられる系の感じがする」
「失礼な!? え、なんですかアナタ。ボクの美貌を馬鹿にしてるんですか? この究極にして至高の美、この世に舞い降りた奇跡の天使! その名もエリ────じゃなくて、サ、サラちゃんだぞ!!」
あ、危な。一瞬本名を名乗りかけた。今のボクはサラちゃん、うん、もう間違えない。
「うーん。なんか聞いてた噂と違ってアホっぽいな」
「と言うかアホですな」
「アホ可愛いかもしれない」
向こうでは、領主と兵士がボクを見て微妙な顔をしている。なんだよ、こんなに可愛い美少女を前にして何の文句があるんだよ。
「……まぁ良いか。ではサラとやら、私についてこい。大事な人に抱かれる前に、散々に汚してやろう」
「そんなことはどうでも良いから、ボクがアホだという謎の醜聞を訂正してください!! こんな美少女に向かって失礼でしょ、ふんす!!」
「え、どうでもいいの!? けっこう大事なとこだと思うよ!?」
何やら、拉致用の手錠的なものを手首に巻かれたがそんなことは関係ない。
ボクはぎゃあぎゃあと文句を言いながら、悪徳領主の屋敷までにいかに「ボクは完璧な美少女か」を領主に説き続けたのだった。
「……連れていくやつ、間違たかなぁ?」
そして、屋敷につくと。
そこに広がっていたのは、地獄のような光景だった。
「……ふむ、んんん」
猿轡を巻かれ、全裸で柱に縛り付けられた汗だくの女性。
「……あ、あ、あ……」
ボロボロの服を着せられ、大事なところを一切隠せぬまま檻に入れられ縛られている少女。
「……」
開脚位のまま固定され、性器から血を流し失神している巨乳。
「ひ、ヒィィィィ」
有体に言って、そこは女性にとっての地獄だった。この領主は、正真正銘に糞野郎らしい。
「ああ。そやつらは娼婦なんだよ」
「し、娼婦さん?」
「金さえ渡せばなんでもやる、卑しい女どもだ。こんな奴らを辱めても、たいして興奮せなんだのよ」
ぽん、とボクの可愛い肩に手が置かれる。
見上げると、ニタリと寒気がするような笑みを浮かべた領主が、上半身裸で姿を現したのだった。
「だが、君は違う。まもなく結婚する、正真正銘の生娘」
「……」
「大事な旦那が居る、そんな生娘を存分に辱める……。ああ、考えただけで興奮し、勃起する。あそこで無様に性器をさらしている連中には、ピクリとも反応せんのにな」
「そ、そそそそれは良かったですねねねねね」
「ようは質なのだよ。女には質がある。金を払えば何でもするような『低品質』な女には、私の高貴なイチモツはもったいない訳だ」
だからと言って、人様の嫁(ボクじゃないけど)に欲望ぶつけるな!! この人でなし!!
「ほら見たまえ。まだ服も脱がしていないというのに、この隆起したイチモツを」
「ひっ」
「やはり、女が大事なのだ。私は、無垢な生娘が大好きでなぁ……ぐ、ぐふふ」
ひぃぃぃ!! キモイ!! 気持ち悪い!!
「さぁ、始めようか。一晩限りの凌辱を……」
「……」
「安心せよ、明日には返してやろう、その両手いっぱいに、金貨を持ってな」
あ、ある程度覚悟はしてたけど怖い! なにこれ、このオッサン尋常じゃなく気持ち悪い!!
路銀を稼がなきゃとか、サラさんを守りたかったとか、いろいろ考えて庇っちゃったけどめっちゃ後悔してきた! こんなに可愛いボクの純潔を、こんなオッサンに奪われるのって国民的損失じゃないかひょっとして!!
うわぁ、どどどどうしよう。
「……ふ、ふふふ!! その程度ですか、領主さんとやら!!」
「なに?」
何か手段はあるはずだ。そう、きっとここから知的でスマートなボクは画期的なアイデアを思い付いて無事に貞操を守り切る事が出来る!!
それまでは、適当に口を動かして時間を稼げ!!
「甘い、甘いんですよ貴方は。ガッカリしました、性にどん欲なだけで貴方はエロスと言う者を何も理解していない。童貞そのものと言っても過言ではない!! なんなら、生娘であるボクの方があなたよりよっぽどエロいくらいですよ!!」
「なぁにぃ!? ど、どどど童貞だと!? 貴様、この地を治める領主たるこの『フーグリ』を馬鹿にする気か」
「バカにしますよ、何が領主ですか!! 女の抱き方ひとつ知らないで領主とは可愛いボクの片腹も痛がってますよ!!」
「片腹が痛むんじゃなくて、痛がるのか……」
うるさいな。言葉の綾じゃないか。
「例えば、そう。そこで唸っている方がいるじゃないですか、猿轡されて全裸で縛り付けられて」
「……ああ、いるな」
「まず、アレがセンス無いです。全然ダメ、論外、赤点です」
「……むむぅ?」
そしてボクは、必死で脱出法を考えながら……。3人の娼婦の一人、長髪でスレンダーな人に近づいて、適当にエロ談義を垂れ流すことにした。
「見て下さい、この方を。大事なところが一切隠れていない」
「まぁ、そりゃあ凌辱だしな」
「そこが間違っているんですよ。ほら、ボクならこうします」
そしてまずは。柱に縛られた女性の乳首と股間に、部屋に在った丁度よい大きさな紙を濡らして張り付け、女性として大切な部分を隠してやった。これで、ある程度の女性としての尊厳は保たれるだろう。
「む、何をしている」
「わかりませんか?」
「そんなことをしては、何も見えなくなるではないか。縛られて、大事なところに紙を張り付けられただけの何もエロくない────」
さて。これで、この変態領主も何かに気付いてくれるだろうか。
「な、なに? 少し、興奮してきただと……」
「そうでしょう。そう、全裸で柱に括り付けるよりも局部に張り紙をしてやる方がエロいんですよ!!」
がーん、と言った表情で股間を抑え込む変態オヤジ。ふふ、やはり貴方ほどのエロなら気付いてくれると思っていた。
ボクの超ド級の変態たる兄は常に「チラリズムを忘れたものにエロを語る資格なし」と言っていた。女のボクには正直分からん世界ですが、兄の受け売りをそのまま話せばきっと理解してくれるでしょう。
なにせボクの兄もコイツも、超ド級のエロなのだから!!
「何故だ。何故、紙で局部を隠しただけでこんなにエロくなるのだ」
「その秘密は2つ。縛られていて、猿轡をしていることにあるんです」
「なんだと! それはどういうことだ」
えっと。確かあの時、兄はこう言っていたような。
「縛られている女性の局部を隠すとき。それは、決して体のラインを隠さずに大事な部分のみを隠す事、そして易とも容易く剥がせること、そして声を出せないこと。これがエロスを演出する条件です」
「ほ、ほう」
「領主さんが感じている興奮は、すなわち『女性の尊厳を奪える』事に対する興奮。つまり、先程の様に何もかも丸出しで縛られていては奪える尊厳が残っていなかったんです」
「むぅ」
「ですので、大事な部分を隠すことで女性としての尊厳を保ってやり。そして、その女性としての尊厳を隠せる紙をいつでも剥がす事が出来るという征服感。そして、紙を剥がしてしまっても縛られていて抵抗できず、猿轡だれて文句ひとつ言えない状況。これらが合わさって、相乗効果的なエロスを生み出したわけです」
「あ、あ────」
ふ。完全に論破してしまいましたか。
ようし、気分が良くなってきた。このまま、論破しまくって彼女たちに興奮させ、ボクから性欲の興味を外してしまおう。
おお、なんだかやれる気がする。今だけは、あの変体糞兄貴に感謝してやってもいいかもしれん。
「では次です。そこにいる、檻に入れられた少女」
「こ、この娘は何が問題なんだ」
続けて、檻に入れられピクピクしている少女の前に立つ。
凌辱された後なのか、ぼろきれの服を纏い全身をグテと大地に投げ出している。
「こやつはもう楽しんだ後でな。今さらする事など……」
「檻に入れるなら縛るな!! てかせっかく檻に入れているのに何もしていないとはどういうことですか!!」
「え、えええ!?」
えーっと。確かに兄は、檻のエロスについてこう語ってたっけ。
「拘束モノで檻というのは、最も特殊で自由度の高い拘束です。何せ、拘束している存在を縛る必要がない。檻の中という限定された空間において、女性は自由に行動できる」
「ま、まぁそうだな」
「そして、最も大事なことは。檻の中に入れられた女性は、衆目に晒されているということです。自由に行動はできるが、そのプライバシーは存在しない」
そう。檻と言うのは、ようは見世物小屋なのだ。
「ただ何もせず、檻に女性を入れてもきっと体を隠して参加座りするだけです。檻の中に入れる女性は、自ら痴態を晒してもらわないといけない」
「……ま、まさか」
「檻の中に入れる女性には、媚薬を含ませる。これが、基本中の基本なんですよ」
ボクの明快な答えに、領主は衝撃を受けた顔をしていた。
「檻の中で、女性は自由意志で行動できます。だからこそ、自分の手で痴態を晒させるんです」
「あ、あ、あ」
「媚薬を存分に含ませ、快楽に抗えず。檻の中で、周囲の目を気にしながらも、やむを得ずに自自分を慰め始め────、それが、檻の使い方と言うやつですよ領主さん」
「うおおおっ。な、なんと……想像するだけで興奮してきてしまった。貴様、天才か……?」
「それほどでも」
こんなことで天才呼ばわりされても困る。というか、その理論で行くと天才は兄になるし。
正直、あんなゴミを天才扱いしたくないんだが……。
「では最後に。気絶してしまった女性に対する辱めです」
「き、気絶した上でなお出来る事があるのか」
「ええ。といってもこれは……、すこし特殊性癖ですけどね」
そういうと。ボクは1人目と同じように局部に紙をおいてやり、女性としての尊厳を一応は取り戻してやった。
これで、準備は完了だ。
「気を失った女性のエロス。それは、女性側は何をされても気づかないという『悪戯心』にあると思います」
「悪戯心……」
「こっそりつまみ食いをした、悪ふざけで床を転びやすく濡らした。そんな誰もがやったことのある子供じみた悪戯心を、成人した女性の裸体に対して発揮するのがキモです」
そして。ボクは、領主の部下の人に、長い帯をもらって気絶した女性に目隠しをした。
この目隠しこそが重要なのだ。
「さて、これで下準備は完了。あとは、そうですね。近くに墨と筆でも置いておきましょう」
「墨と筆……、落書きか!」
「そう、ラクガキです。子供じみた悪戯でしょう? 彼女に目隠しをしたのも、これが理由です」
そして。ボクは、気を失った女性のフトモモに、適当なブタさんの落書きを書いたのだった。
「気づけないんですよ。彼女が意識を取り戻した時、縛られていることは分かっても……、目隠しをされているので周囲の様子がわからない。自分がどんな状況にあるかも理解できない」
「……は、はぁ」
「それで、彼女は周囲に声をかけるわけです。『あの、私はどうしたのでしょうか。縄を解いてくださいませんか』と」
「……ごくり」
「だが。そう、助けを乞う彼女の裸体には……局部だろうとなんだろうと子供が好き勝手に書いたようなラクガキで汚されているのです。一応局部に紙を貼ったのは、『その紙が一部分でも残っている』ことによりより一層のエロスを演出できる……、まぁこれは蛇足ですがね」
「う、うおおおおっ!! なんだそのシチュエーションは。たぎる、たぎるぞぉぉぉぉ!!」
そして。何やら興奮して雄たけびを上げている領主を横目に、ボクは筆を置いて不敵に腕を組んだ。
「どうですか? 興奮しないと言っていたはずの彼女たち娼婦も、ひと手間加えればこれ以上なく扇情的でしょう?」
「お前の言う通りだサラ。……ああ、私は間違っていた」
「気づけたのなら、それでいいですよ。で、折角ここに魅力的な女性たちが居るのですが……まだボクの同衾は必要で?」
さぁ。これが狙いだ。
あのオッサンは、彼女達娼婦であっても興奮する事に気付いてくれた。
ならば、民の反感を買うようなこんな下劣な真似はもうしないと言ってくれるかもしれない。
「……く、あっはっはっは!! そうか、やはりお前も旦那に抱かれるまでは清らかでいたいのだな。それで、あの大立ち回りか」
「まぁそうですね」
「良いだろう、お前は抱かずに帰してやろう。この3人には、まだまだ欲望がぶつけ足らんことに気が付いたからな。それに……」
いやらしい笑みを浮かべたおっさんは、ボクを見てふっとため息を吐いた。
「貴様の話を聞いていると、貴様が男にも思えてきたな。あそこまでのエロスを理解しているのであれば、そういう部分もあるのかもしれん。残念ながら、私は貴様に興奮しなくなってしまったよ」
「むぅ。複雑ですが、まぁ有難い話で」
「ようし、貴様は外に出て良いぞ。ああ、金も渡してやろう。一泊30金貨である、持っていけ」
お、おお!! 30金貨か!
ラッキー。それだけあれば、実家に帰るなんて楽勝だ! いやらしいこともされずに済むし、まさに理想の展開!!
「ありがとうございます!! で、ではこれで」
「あー待て待て。ところで貴様に聞きたいんだが……、1,2,3で好きな数字は何だ?」
「え? 1,2,3ですか?」
さぁおうちに帰ろか。サラを庇ってよかった、良いことはするもんだな。
そう考え、荷物をまとめ始めたボクに────その領主は、謎の笑みを浮かべながらそんな質問をしたのだった。
「店主さん、お世話になりました」
「元気でね、エリー」
数日後。
ボクは、荷物を纏めて出立の準備を終え、あいさつ回りをしている真っ最中だった。
「サラもお元気で」
「エリー。貴女のお陰で、本当に助かったわ。いつか絶対にお礼をさせて頂戴」
「良いんですよ。貴女には大事な人が居て、ボクにはたまたまいなかった。それだけの話です」
「でも。貴女、あんな恥ずかしい目に────」
「後生なので忘れてください。本当に」
あの日。なんと、あのクソ領主の意味不明な質問の意図は……「ボクを何人目と同じ手段で辱めてやろうか」というふざけた質問だった。
それに気づかず、素直に好きな数字を答えてしまったボクは────即座に捕らえられ、ボク(というかボクの兄)自ら提案した辱めを、そこそこに人通りの多い領主の家の前の道端で一晩中受け続けた。
幸いなことに貞操は無事だったが……あんな辱めを公衆の面前で受けてしまってはこの街に残れない。あのクソ領主からもらった金もある。
なので、ボクはさっさと街から出発して実家に戻ることにしたのだった。
「あんまり気にしちゃだめよ」
「まぁ、あの領主も殺されたみたいだし……」
そして。
とても、とても意外な事なのだが────、あの日ボクが見た3人の娼婦は、実は娼婦じゃなかったらしい。
なんと、彼女らは領主「フーグリ」の暗殺のために送り込まれたクノイチだったというのだ。だが、領主に体を売る前に散々調教されて感度が4000倍になり、あんな感じにダウンしていたらしい。
だが、彼女達は使命感からなんとかギリギリで正気を取り戻し、無事暗殺に成功したそうな。
「あと1日早く暗殺してくれてたら、ボクもあんな目に合わずに済んだのに」
「あ、あははは」
「うぐぐ……」
だが、彼女たちを責めても仕方ない。もう、やられたことは仕方ない。
この町の人々も、絶世の美少女の恥ずかしい姿を見れたハッピーだっただろう。そう思っておこう。
「それでは、また。いつかまた近くに来た時は顔を出しますよ」
「……ええ。また会いましょ、エリー」
こうして、ボクは。この地での奉公を終えて、再び実家へと戻るのだった────
貴方が好きな数字はなんですか?
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3