※この作品はR-18です。

転生先が転生前よりクソだったので異世界転移してHするわ   作:匿名希望者

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ロングソード
何の変哲もない武器
数多の激戦を潜り抜け、敵を屠ってきた。
だからこそ、誰もが彼の強さを理解し、恐怖する。


カルネ村にて①

 ソレが現れたのは本当に突然の事だった。

 鬱蒼と生い茂る木々を掻き分け、姿を現したのは薄汚れたボロの外套を纏った騎士だった。

 

 ――――敗残兵、逃亡兵。

 

 そんな事を考えている場合では無いことくらい、少し考えればわかる状況でありながら、エンリ・エモットは突然姿を現した騎士にそんな感想を抱いた。

 

 薄汚れた外套とは裏腹に、その下にある黒鉄の鎧は堅固な様子が見て取れる。生憎、フルフェイスの兜の下にある表情を見ることは出来ない。

しかしながら、エンリとその妹であるネム。そしてその二人を追い詰める二人の帝国兵の姿を確認した騎士は面倒な場面に出くわした、と言わんばかりに大きなため息を吐いた。

 

「お前、一体何者だ?」

 

 逃げ惑うエンリ達を森にまで追い詰めた帝国兵の片割れが完全武装した騎士に対して、警戒心を露にしながら問いかける。

 

「あまり、警戒しないでもらえるか? こちらに敵対する意思は無い。世捨て人が森を散策中に妙な所に出くわしただけだ」

 

「そんな……」

 

 悲痛な声を漏らしたのはエンリだった。

 帝国兵に村を襲われ、命辛々逃げてきた森の中で帝国兵に追いつかれ、絶体絶命の状況で姿を現した騎士に救いを求めるな、と言うのも無理からぬ事だろう。

 だが、騎士にとってエンリを救う理由が無い事は明らかだった。

 

「悪いがこちらには関係の無い話だ。貴公らがこちらへ敵対しない限りその娘達をどうしようとそちらの勝手だ」

 

 騎士を警戒する帝国兵へ言い聞かせるように呟いた騎士は踵を返し、再び森の中へ歩みを進めようとした。

 

「待ってください! お金なら払います! だからせめて、この子だけでもっ――――」

 

「悪いが既に世を捨てた身。金銭や正義感と言った物でこちらに助けを求めた所で興味無い。ましてやそちらはどうやら組織だった様子、一介の世捨て人が干渉するにはリスクが大きすぎる」

 

 エンリと騎士の交渉が上手くいっていない事にニヤつきながら見守っている帝国兵二人に視線を向け、騎士がエンリの願いを切り捨てる。

 

「こちらはそちらに干渉しない。それで良いか?」

 

「ああ、こちらとしても余計な戦闘をするつもりは無い」

 

 帝国兵の任務は王国の村を荒らす事、相手がこちらに干渉しないというのであればわざわざ負傷をする可能性がある戦闘をする理由は無い。

 

「ま、待ってください。何でもします! だから、助けてください!」

 

 騎士と帝国兵の間で進んでいく話に待ったをかけたのは当然のようにエンリだった。冒険者のように金銭で、王国兵のように正義感で、騎士に助けを求める事の出来ないエンリに出来ることはただの懇願だけだ。

 

 そもそも騎士が二人の帝国兵を倒せる確証は無い。しかし、エンリがこの状況で縋れるのは突然現れた騎士だけだった。

 

 縋るように騎士へ手を伸ばし、叫ぶエンリを舐めるように一瞥した騎士は小さくため息を吐く。

 

「この身は世を捨てたが女旱りしていた事もまた事実。二人程度なら奴隷を飼うのも一興か……」

 

「っ!」

 

「?」

 

「別に可笑しくあるまい? 命を助ける代わりにその後の人生を貰い受ける。こちらも組織と敵対するリスクがある以上、それ相応の対価だと思うが?」

 

 まだ、少女から女性に変わる年頃ではあるが、それなりに知識を持つエンリは騎士の言葉に息をのみ、まだ、純粋無垢なネムは騎士の言葉を理解出来ずに首を傾げる。王国で奴隷は禁止されている。しかし、世捨て人である騎士にその事を説いても無駄な事だ。

 

 非常時だからこそ通る無理な要求だ。だが、騎士の要求を断ればどのみちエンリ達は死ぬ事になる。

 

「わ、わかりました。あなたの奴隷になります。だから、私たちを助けてください……」

 

 震える声で俯きながらエンリは呟いた。瞳に涙を貯めながら、それでも生きてさえいればなんとかなると心に言い聞かせながら。

 

「そう……か、その契約、承った」

 

 エンリの言葉を聞いて、騎士は小さく頷くとエンリ達と帝国兵の間に移動する。

 

「すまないな、アレは私の所有物になった。手を引いてくれると助かるのだが?」

 

「――――馬鹿な奴だな。余計な死体が増えるだけだ」

 

「油断はするなよ」

 

 面白がって成り行きを見守っていた二人の帝国兵が武器を構え、戦闘態勢になった事を確認すると騎士が腰のベルトに固定した鞘からロングソードを引き抜いた。

 

「「っ!」」

 

 ロングソードを構え、戦闘態勢に入る騎士の姿を見て、絶句したのは帝国兵の方だった。

 

 それは何の変哲もない、街でよく見かけるようなロングソードだった。

しかし、よく手入れされたロングソードであり、自身がよく使うロングソードだからこそ、騎士が構えたロングソードが途方もないくらいの血を吸ってきたモノだと直感的に帝国兵でも理解出来た。これが逆に魔剣や伝説に出てくるような剣では帝国兵も目の前に立ち塞がる、騎士の“ヤバさ”を理解出来なかったハズだ。

 

「ま、待ってくれ! こちらに交戦の意思は無い! そこの二人はあんたの好きにすればいい。だから、俺たちは退かせてもらう!」

 

 直感的に騎士と自分たちとの間にある隔絶した実力を理解した帝国兵は叫び、戦闘状態を解除する。任務が殲滅では無い以上、戦えば確実に殺されるような相手と戦うのは自殺志願者のすることだ。たった村娘二人の命など自分の命に比べればどうでもいい。

 

「そうか、こちらも余計な手入れをせずに済むならそれに越した事は無い」

 

 帝国兵の言葉に頷き、去っていく帝国兵を見届けながらロングソードを鞘に納めた騎士は無言で成り行きを見守っていたエンリ達の方へ向き直るとエンリ達の横を通り抜け、歩き始める。

 

「ついてこい、今からお前たちは俺の所有物だ」

 

「ま、待ってください」

 

 騎士の進む先は森の方向で、エンリ達が逃げてきた村の方角からは未だに悲鳴や火の手、喧騒が聞こえてくる。

 

「まだ、お父さんやお母さん、村の人達が!」

 

「調子に乗るなよ? こちらに助ける義理は無い。奴隷の分際でアレもコレもと騒ぐようなら奴らの代わりに切り捨てても構わないのだぞ」

 

 状況を理解出来ていないのか、キョトンとしているネムと対照的に村の運命など興味なさそうな騎士の腰に縋りつくエンリ。そんなエンリの態度にイラつきを見せた騎士はエンリの髪を掴み上げ、エンリの耳元で囁く。

 

「お願いします、お願いします、お願いします」

 

 頬に涙を流しながら只々懇願するエンリの姿に騎士はため息を吐き、何かを考える素振りを見せる。

 

『やはり多少はガゼフに顔を売っておいた方がいいか? いや、ガゼフよりも法国やイビルアイにプレイヤーの存在を明かした方が面白いか……。エンリは合法的(笑)にゲットした訳だし』

 

「そうだな、今思いついた余興に付き合うなら村に向かってもいい。ただし、早く村に着くかはお前次第だ」

 

「わ、わかりました」

 

 頷いたエンリを見て、騎士は余興を口にする。

 

「今後、飽きるまで人間を辞めて、愛玩“動物”になってもらう。人間じゃないから服なんて着ないし、四足歩行してもらう。話す事も禁ずる。そうだな、返事は飼ったこと無いからワンと言え。お前は今から雌犬だ。当然、他人がいてもそのままだからな」

 

 今まで聞こえていた無機質な声から明らかに面白がっている声音に変わっていた。騎士は何もない空を見上げると右手の親指と人差し指で丸を作り、左手の人差し指を右手で作った丸に出し入れする謎の行為をしていた。

 

「っ!」

 

 エンリは弾かれたようにネムの手を取ると騎士から逃げるように走り出す。

 

――――狂ってる。今まで無機質な声音で話していたから実感が湧かなかったが目の前にいる騎士はあの帝国兵よりも異常者だった。

 

「あーあ、そこで逃げちゃうか。まあ、別にいいけど……」

 

 騎士の呟きが聞こえた次の瞬間――――。

 

「えっ?」

 

 エンリの視界が赤く染まり、生暖かい赤い雨が“何故か”全裸になっているエンリの身体を濡らしていた。

 

「所有物を壊すのは好きじゃないんだけどな~。あ、可哀想だから落とすなよ」

 

 フルフェイスの向こう側からケラケラと嗤う声が聞こえる。ネムの手を取って走り出したハズなのに何故か両手で抱えていたモノに視線を落とす。

 

 “目が合った”エンリは自分の中で何かが粉々に壊れる音がした。

 

「因みにメイン職は近接だけど蘇生魔法を使えるマジックキャスターでもあるんだな、これが。どうする? “雌犬”ちゃん」

 

「……ワン」

 

 四肢を地面に付け、お手、と差し出された手に前足を乗せる表情の消えたエンリの姿がそこにはあった。

 




主人公は一体、何者なんだ。
そしてネムは何処に行ってしまったんだ(白目)
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