転生先が転生前よりクソだったので異世界転移してHするわ 作:匿名希望者
「その処刑、少し待ってもらえないか?」
王国兵の皆殺しを終え、疲労困憊のガゼフ・ストロノーフを天使が取り囲む絶体絶命の状況の中、響いた声にニグンは視線を向ける。
「……貴様、何のつもりだ?」
瞳に映る光景に一瞬、理解が追い付かなかったニグンは心を落ち着かせながら声の主に問い掛ける。
――――本当に理解出来ない光景だった。
薄汚れた外套を纏い、その下に眠る黒鉄の鎧は声の主が騎士である事を察する材料ではあった。ただ、少し視線を落とせば下半身は丸出しでその傍にはリードを持った幼女と首輪を付けて、全裸で地面に四つん這いになっている少女。少女は騎士の肉棒を肉壺で受け止めながら白濁色の液体が太腿に垂れている。
同じように言葉を失っているガゼフよりニグンの復帰が早かったのはひとえに先行部隊から受けた報告の中に凄腕の騎士に遭遇したという情報を受けていたからだ。可能性という意味で騎士の介入が無いとは言い切れなかった。ただ、まさかこんな光景を見せられるとは思っても見なかったが。
「ん~、あ~、口で説明するよりこっちの方が早いかもな」
ニグンの問い掛けにそりゃそうだ、と笑う騎士は一人頷くと右手を挙げて指を鳴らす。
――――瞬間、世界の時が止まる。
「き、貴様――――「スレイン法国陽光聖典隊長、ニグン・グリッド・ルーイン君で良いよね?」
周囲の動きや音が消え、明らかな異常事態に警戒を強めるニグンを余所に、騎士は悠然と肉棒を少女から引き抜き、ズボンの中へしまうとニグンの方へ歩き出す。
「と、止まれ! 止まらなければ貴様を――――」
「まー、まー、落ち着けよ。陽光聖典隊長の君なら俺の正体がわかるんじゃないか? ヒントはそうだな。“六大神、八欲王、十三英雄”、君の理解を超えた存在は世界にたくさんいるじゃないか」
「ま、まさか貴様――――いや、貴方様は」
世界の時が止まる明らかな異常、そして騎士が告げたキーワード、ニグンの思考は高速で駆け巡り一つの仮説を導き出す。
「君にはこう名乗った方が早いだろ。君達、スレイン法国が待ち望んだ存在、カンスト“プレイヤー”だよ」
――――“プレイヤー”
その言葉を騎士が告げた瞬間、ニグンは即座に跪き、騎士へ頭を垂れる。ニグンを襲う明らかな異常が騎士の言葉を証明していた。
「君の意見や法国の意思に興味は無い。ただ、少しばかりこちらのお願いを聞いてくれないか?」
「ね、願いとは?」
「俺は八欲王側のプレイヤーだ。ただし、こちらの世界を乱すつもりは無い。それにどちらかと言えば人類に貢献する欲があるだけだ」
平伏し、言葉を待つニグンを見た後、白濁液を流すエンリへ視線を向ける。
「俺が気の向くままに行動した結果として“神人”がたくさん生まれるかもしれないな。多少、立場のある人間を襲うかもしれないが“人類”という観点から見ればプラスだろう?」
騎士の言葉につられてエンリの方へ視線を向けるニグンは騎士の意図を理解する。
「ええ、ええ! それだけでも十分です! よろしければスレイン法国にもいらしてください! ニグン・グリッド・ルーインの名に懸けて、美女を用意致します!」
「そうか、ニグン君。君が賢い人間で安心したよ。ただ、上の連中にも伝えておいてくれないか、ケイ・セケ・コゥクは俺には効かない」
「勿論です!」
法国の情報が筒抜けである事に戦慄しつつ、プレイヤーの偉大さを感じたニグンは何度も頷く。
「それと番外席次にも伝えておいてくれないか。“お前より強い男がお前を孕ませに行くぞ”と」
「わかりました、必ず伝えます!」
帯びた使命の重さに身体を震わせるニグンを見て、満足そうに頷く騎士はニグンから離れるとガゼフに近づく。
「彼については俺に任せてくれないか? 少し面白い事になりそうだ」
顔から感情が消えていたネムの瞳に色が戻るのを見逃さない騎士は予想される展開に嗤う。当然のように頷くニグンを見た騎士は指を鳴らす。
「一体、何が――――」
「全員、包囲を解除! あの御方に失礼は許さんぞ!」
再び動き出した時の中で突如、包囲のど真ん中に現れた騎士に困惑するガゼフと陽光聖典の隊員達。一人、事態を把握しているニグンが隊員に号令を飛ばし、困惑しながらもニグンの号令に従い、天使を退いて包囲を解除する隊員達。
「ガゼフ・ストロノーフ! 状況が変わった、今は貴様に割く時間は無い」
「貴様、何を言って――――」
騎士が現れた瞬間、今までの行為をすべてひっくり返すような言動をするニグンに困惑するガゼフ。
そんな中、一つの願いが戦場に響き渡る。
「騎士様! 助けて、その人がお姉ちゃんを――――」
「調子に乗るな、小娘」
王国の鎧を纏ったガゼフに感情の戻ったネムが助けを求めた瞬間、瞬く間にネムへ近付いた騎士が容赦なく引き抜いたロングソードを振るい、鮮血が地面と近くにいたエンリを汚す。
「貴様、何をしている!」
ガゼフの絶叫が響き渡り、再び身体を赤く染めるエンリは声すら出さず、呆けた様子で頭部と胴体が別れたネムを見守る。
「アハ、アハハハハ!」
狂った嗤いがエンリから飛び出し、周囲が混乱のどん底に落とされる中、騎士が口を開く。
「ニグン君、この“雌犬”は俺の所有物だ。もし良ければ法国で世話をしてくれないかな? 見ての通り、既に種は出してある」
「勿論ですとも! 全員、彼女を丁重に持て成しながら撤退しろ! 反論は許さん!」
騎士から差し出されたリードを慌てて受け取り、状況を理解出来ていない隊員へ指示を飛ばすニグン。数分もしないうちに撤退していく陽光聖典を見届けた騎士は満足そうに頷くと瞳に怒りの炎を宿しながら下手に暴れず体力回復に努めていたガゼフへ向き直る。
「貴様、一体何者だ!」
「そう怒るなよ。飼い主に逆らった奴隷を処分しただけだろ」
闘志を燃やし、戦う姿勢を見せるガゼフの態度に騎士は肩を竦める。
「なんか、色々と言いたそうだけど、俺のお願いを聞いてくれよ。蒼の薔薇のイビルアイに伝えてくれないか? “カンストプレイヤーが人類の為に神人作りに励んでる”って。それで多分、意味は通じる筈だ」
フルフェイスの向こう側で嗤う騎士に我慢の限界を超えたガゼフが瞬く間に接近すると速度を乗せた一撃を振るう。ガゼフの腕に鈍い衝撃が奔る。避ける事すらせず、ガゼフの一撃をまともに受けた騎士は特に気にした様子もなく、口を開く。
「ちょっと気になったんだけど、王国戦士長ほどの人が滅茶苦茶弱くなったら、王国の王派閥はどうなるんだろうな? まあ、気にするな、“最終的”に生きて返してあげるからさ」
次の瞬間、絶望がガゼフを襲った。
エンリの心、完全に壊れる(キリッ)