※この作品はR-18です。

Ultimate Fighting Showhouse   作:perv

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プロローグ

 『嫌ぁああああああああっっっ!!!』

暗い四畳半に響く可憐な悲鳴。

24インチの四角形の中には、獣のように金網に閉じ込められた男女。

それを囲うように見ている無数の人影。

真っ黒い影が夜の水面のように客席で揺蕩う。

 

 暗闇に浮かび上がるような青白いキャンバスの真ん中では、少女が男に押し倒されていた。

上半身裸に黒いブーメランパンツを履いたその筋骨隆々の男は、組み敷いた少女の道着を脱がせる。

必死にもがく少女。

整った可愛らしい顔も、今や恐怖と涙でくしゃくしゃになっている。

強引に帯を解いて、袴も脱がせると少女は生まれたままの姿を晒す。

どよめく客席。

だがそれは驚きによるものではなく、歓喜によるものであった。

『あぁ…やだぁ…っ』

枯らした喉から捻り出された声が微かに聞こえた。

だが、その声も観客のざわめきにかき消される。

ブーメランパンツを下ろした男の股間からは赤黒い怒髪天が顔をのぞく。

彼女の甲高い悲鳴が会場を支配したのはそれから10秒後の事であった。

 

 「ふぅ…」

一息ついて、動画を一旦止める。

右向きの三角形が一つ。

がぶ飲みするコーラと右手で漁るポテトチップス。

動画の下には"3,167,824"再生の文字が。

当然こんな動画、公に見られて良い物ではない。

有料動画サイト『UFS』。

Ultimate Fighting Showhouseと名乗るこのサイト、この団体は金網の中で男と女を戦わせて、女が性的に辱められながら格闘家としても女性としても敗北する様を愉しむためのものだ。

月額500円(税抜)で、毎月開催される興行を堪能できるリーズナブルなサービスとは裏腹に、その周囲には黒い噂が漂う。

まず、何故そのような過激な動画を配信する事ができるのか?

いや、過激どころではない、液晶の向こうで行われているのは紛れもない犯罪なのだ。

何故許されているのか…それは団体のトップが裏社会のボスだからだとか警察組織とつながっているだとか、噂が立つだけではっきりとはしていない。

まあ、いずれにしろそれほどの人物でなければとっくに団体は撲滅させられて、団体の関係者は皆刑務所送りになっている事だろう。

最も信憑性の高い話は、元は賭博利権を握っていたとある政治家が副業としてこの興行を始めたという事らしい。

 

 そして次に、何故女はそんな危険な舞台へ足を踏み入れるのか?

男相手に格闘、というだけで圧倒的な不利なはずなのに参戦する彼女達。

当然負ける確率の方が高いが、勝つ確率は0ではない。

そしてその勝利に高額なファイトマネーが賭けられているとしたら、リスクを負ってでも出ようという者が出てくるかもしれない。

実際に男相手に勝利し、栄冠を勝ち取った女も過去にいる。

この興行に出場する女は皆、何らかの事情で多額の資金が必要になってしまった者だ。

 

 当然、そんなリスクを背負えるのは、男にも負けない腕っ節を自負する強き女だけだ。

クリスティーナ・ペトロフスカヤ、彼女のその一人だ。

極寒の地ロシアで生まれ育ち、貧困な家庭を支えるため、彼女は戦地へ立った。

初めて人の命を奪ったのは9歳の時。

落ち延びた敵の兵士を見つけて、重く冷たいトリガーを引き絞った。

血濡れた襟章と引き替えに手にとった温かいパンとスープ。

吹雪の中で仄かに感じた硝煙と血潮のにおい。

彼女は人生のトリガーをも引いてしまったのかもしれない。

それから幾度となく戦地で"功績"を挙げる彼女。

敵からも味方からも畏怖され、付けられた渾名は"Красивый Смерть(美しき死神)"。

もはや彼女は初めて人を殺した時の、あの独特な硝煙と血潮のにおいを忘れていた。

何故なら彼女自身にそれらの匂いが染み込んでいたから。

 

 しかし、そんな彼女も戦争が無くなれば食い扶持を失う。

皮肉なものだ、平和を目指して戦ってきた兵士がいざ目標に辿り着いてしまえば収入を失ってしまうという。

街の静夜に馴染めない彼女。

望んでいたはずの平和な世界はどこかくすんで見えた。

新雪に飛び散った鮮やかな赤、赤、赤、つまり血。

それを求めていた訳ではないが、彼女はなおも戦いへ身を投じる。

彼女が選んだ舞台は―――

 

 カンカンカンカン!!!

「勝者!クリスティーナ・ペトロフスカヤ!!」

高らかなコールと共に、彼女の右腕が上げられる。

彼女が選んだ舞台は―――MMA(総合格闘技)の世界であった。

ボクシングでもキックボクシングでも、プロとして戦える舞台があるのであれば何でも良かった。

だが、女子部門が最も成長しているのはMMAだ。

彼女は名実共に霊長類最強女子になるべくMMAへ道を見出す。

軍隊格闘技ベースのファイトスタイル。

テクニックだとかパワーだとか、そんなありきたりな言葉で表現して良い次元に彼女の格闘技はなかった。

"殺し"を見せるスタイル。

確実に相手を戦闘不能へ追い込む破壊力と狡猾さ。

見る者にさえ恐怖を感じさせるそのファイトスタイルで、ロシア国内の興行はほぼ制覇してしまった。

女子格闘技は選手人口が少なく、試合を組んで貰うだけで一苦労だ。

だから今は日本に来ている。

 

 腰まで伸びた金髪を束ねて、精緻に作られた人形のような美しい顔。

身長174cmの長身且つ8頭身のモデル体型、でいながら出る所は出ているセクシーな肢体。

メディアやファンが放っておく訳がなかった。

日本の興行でも圧倒的な強さを見せるその様に、またしても付いた渾名は"美しき死神"。

美しい顔を寸分たりとも乱さず相手を仕留めるその姿を"死神"と評すセンスは全世界共通なのだろう。

それだけ彼女が見る者へ訴えかけるモノはあまりに鮮烈過ぎた。

 

 彼女のUFS参戦は、毎年恒例の大晦日の興行で当時の日本人チャンピオンを左ハイキックで一撃KOしてからのものであった。

地上波放送された試合であまりにも鮮烈過ぎたその勝ちっぷり。

失神した日本人チャンピオンの白目剥いた表情が全国へ放送されると、ネットは賑わい放送局へのクレームは殺到。

『○○死んだんじゃね?』『【悲報】 第二代RAIZEN女子バンタム級王者○○さん、逝く』『クリスティーナたん可愛いprpr』

良くも悪くも大反響を呼んだ彼女は、明らかに女子格闘技界の中心にいた。

モデルや女優としてのオファーもあったが、彼女は断った。

決して有名になりたい訳ではないから。

そんな彼女が何故、UFSに出るに至ったのか。

やはり、"表"の興行ではファイトマネーが低すぎるためだった。

それが地上波で放送されるような試合であったとしても。

彼女には自分が生活するだけでなく、祖国にいる妹へ生活費を仕送りする必要があった。

3歳年下のたった一人の妹。

彼女に自分のような苦しい思いはさせたくない。

そんな思いを胸に、彼女はUFSからの契約書へサインをした。

 




続く…?
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