Ultimate Fighting Showhouse 作:perv
クリスティーナ・ペトロフスカヤ RD1
「ただいまよりぃぃ!!本日のメインイベントを開始します!!!」
そこは至って普通のバーだった。
ビリヤード台にダーツボード、グラスに注がれる色とりどりのリキュールが妖しげな雰囲気を醸し出す。
豪奢なドレス、上等なスーツに身を包んだレディースアンドジェントルメン。
薄暗がりに急にスポットライトが照らされると、天井に備え付けられたモニターがバチンと音を立てて映像を映し出す。
ライトに照らされて、暗闇にぼうっと浮かび上がるような青白いキャンバス。
そこに立つ一人のスーツ姿の男がマイクを握る。
バーの中心に備え付けられた金網の中が映し出されていた。
ぞろぞろと金網の周りに集まっていく観客達。
金網が少し地面に埋め込まれたような形で設立されているので、それを柵越しに見下ろすような格好で見る事になる。
柵の中には無数のごついカメラや撮影器具で埋め尽くされていた。
UFSは主に動画配信によって収入を得ている。
日本国内だけでなく、海外からの視聴者もいるほどだ。
故に、興行を催す会場は立派なスタジアムなどではなく、同系列の会社が経営しているバー。
その方がコストがかからずに済む上、万が一警察が雪崩れ込んできた時対処できるようにするためだ。
「青コーナー!!本日の挑戦者!極寒の地からこの女がやってきた!"美しき死神"クリスティーナ・ペトロフスカヤぁぁぁぁぁ!!!!」
短い花道を歩いて金網の中へ入るクリスティーナ。
緊張は見られない、いつもの颯爽とした様子でケージイン。
その姿がモニターに映し出されると、見る者皆が息を呑む。
その美貌に、その凜々しさに、その雰囲気に。
透けてしまうのではないかというくらい白い肌に黒い質素なコスチュームがよく似合っていた。
彼女が身に着けるのはいたってシンプルなショートスパッツとスポーツブラ状のウェア。
白に近い金髪をポニーテールに束ねて、薄い青色の瞳が鋭い眼光をたたえる。
その先に見据えるのは、対戦相手か、果たして―――
―――「…ここにサインすれば良いのね?」
「ええ、左様でございます。条項を読んで頂いた上で…」
練習帰り。
上下灰色のスウェットで身を包んだ彼女の目の前に、見るからに異質な雰囲気を醸し出す黒スーツ姿の男二人。
明らかにカタギではないと思わせる一挙手一投足。
高級ホテルの、いやUFSの関連会社が経営するホテルの一室を間借りして、クリスティーナを呼び出したのだ。
一試合5000万円の契約書などそこらの喫茶店などで書かせる訳にはいくまい。
キリル文字で彼女は自身の名前を署名すると、「確かに受け取りました」と男が契約書を手にとる。
・この試合でもし貴方の名誉や尊厳を傷付ける事があっても、何も保障する事はできません。
ふんっと鼻で笑ってみせるクリスティーナ。
驕っている訳ではないが、自信はあった。
相手が男だろうが何だろうが彼女は何者にも負ける気がしなかったのだ。
勿論、この興行で負けた女がどういう目に遭うか、彼女も知ってはいたがそんな事はもうとうに頭の片隅へ消え去っている。
試合をするだけで1000万円、勝てば+5000万円、という契約内容。
"表"の興行のファイトマネーの10倍以上だ。
「一つ、聞きたい事がある」
クリスティーナがふいに喋り出す。
流石の彼女もリングや金網の中で男と対峙する機会は今までなかった。
戦場でなら幾度も対峙してきたが、素手で真っ向から戦うのは初めてだ。
おそらくフィジカルで優位に立たれる事は間違いない。
とすれば、フットワークを駆使して遠距離からジャブや蹴りで攻めるか、あるいは…
いや、あーだーこーだ考える前に聞いてみた方が早い。
如何に自信があっても、対戦相手の情報くらいは知っておきたい。
戦場で真っ先に死ぬのは碌に敵情を調べる事さえしない猪武者。
彼を知り己を知れば百戦殆うからず。
自分の強さに自信のあった彼女でも百戦千戦欠かさなかった事だ。
そのおかげで今日いまの自分がここにあると彼女は信じている。
「対戦相手についての情報を知りたい」
彼女の言葉に一瞬顔を見合わせる二人。
サングラス越しに鈍い眼光がかち合うのが見えた。
しかし、返答はすぐに返ってきた。
「対戦相手の情報の開示はオプションとなっております。貴女の契約条項一つ、そうですね…『試合をするだけで1000万円』という項目と交換では?」
「構わない」
クリスティーナからすれば自分が勝つ事しか見えていないのだ。
最初からいらなかった項目だった。
自らそれと引き換えに勝った時のファイトマネーの増額を申し出ようと思ったくらいに。
男から数枚の資料を差し出される。
載っているのは対戦相手の男の情報だ。
「外柴聖人…どこかで聞いた事がある名だな」
既視感のある名前と顔に、どこで見たか思い出せないまま次の情報を見る。
年齢44歳、身長162cm体重83kg。
「ふむ…」
リーチで言えばクリスティーナの圧勝だろう。
だが、体重…そのほとんどが体脂肪であったにしても脅威である事には変わりない。
一発一発の打撃の威力、組み合った時のパワー、全てに体重は関わってくる。
やはり、最初考えた通り足を使って的確に打撃を打ち込む作戦が良いだろう。
バックボーンはレスリングらしい。
パワーの差があったとしても、遠い間合いからのタックルであれば切れる自信がある。
だが、近い間合いでのタックルであれば一瞬で倒されてしまうであろう。
胸を合わせるクリンチ状態になるのもいけない。
尚更近い距離では戦えないな、と独りごちるクリスティーナ。
試合映像なども渡されたが、力の弱い女性を一方的にいたぶって陵辱する動画など見る気はしなかった。
「続きましてぇぇ、赤コーナー!"失墜のオリンピアン"外柴ぁぁぁ聖人ぉぉぉーーーーっ!!!」
赤コーナー側から現れた男は、やはり数値の示す通り背の低い男であった。
上半身裸に黒いブーメランパンツを履いて、禿げ上がった頭、とは正反対のむさ苦しい胸毛腹毛。
肥満体と言うほどではないが、確かに少し緩んだ腹を見ると83kgという数値にも頷ける。
"失墜のオリンピアン"という異名の由来が少し気になるが…邪念を振り払い集中するクリスティーナ。
「両者、中央」
レフェリーが手招きするままに、二人は金網の中央へ歩み寄る。
向かい合って見てみると、外柴の醜い顔面が目につく。
髪は両サイドだけ残して、頭皮は禿げ散らかった惨たらしい始末。
腫瘍でぶつぶつの目立つ顔面は醜悪そのもので、見ているだけで汚臭が漂ってきそうなほど。
そしてその醜悪な顔面がくしゃりと形を歪めて、クリスティーナの眼前に迫ってきたら…手が出そうになったのを抑える。
「グフフッ…!綺麗なお嬢さんだ…」
べろりと唇周りを舐める仕草が最高に気持ち悪かった。
こんなにも気持ち悪い生物が存在して良いのかと、クリスティーナは天へ問い質したくなる。
ゾッとしたような表情と手と吐瀉物が出そうになるのを抑えて、彼女は氷のようなポーカーフェイスを貫く。
―――「えっ?次の対戦相手、ですか?」
人が歩けば床が鳴るようなボロアパート。
不似合いなシャークスキンウールのスーツを身に着けた男がその一室へ訪れる。
UFS二連勝。
輝かしいその戦績は、彼が15年前に掴んだ栄光の証以上に輝いていたかもしれない。
二連勝しただけでファイトマネーは4000万円。
男は女と比べてファイトマネーが低く設定されているが、1フロア風呂無しアパートの一室に住む彼にとってはとてつもない大金だ。
試合の内容も、挑戦者の若い女をタックルで押し倒して犯した、それだけだ。
それだけで全世界から称賛を浴び、大金も得る事ができる。
それだけで幼い頃から心血注いできたレスリングへ払った代償がこの手に戻ってゆく。
降って沸いたような栄華を前に、内心彼は思っていた。
(金メダルなんか取らずにこっちやっとけば良かった…)
15年前の事。
とある警備会社に所属しながらレスリングの練習に励む毎日。
詰め寄せる報道陣の目当ては外柴であった。
「外柴さーん!四連覇に向けての意気込みを!!」
「外柴さんコンディションの方は…?」
練習が終われば彼はスーパースターのような扱いだった。
いや、実際彼はアマレス界においてのスーパースターであった。
五輪三連覇を成し遂げ、世界選手権十連覇。
生ける伝説として語られた彼の見据えるは五輪四連覇。
それがもう来年に迫っていた。
報道陣に対して適当に相槌を打って終わらせる外柴。
「では、ありがとうございましたー!」
用が済むと一斉に帰って行く彼ら。
次の仕事もあるのだろう、俺も帰るか。
そんな事を思いつつ帰路に就く。
午後4時半、ちょうど親子連れで街が賑わう頃だ。
正直、五輪だとか世界選手権だとか、そんなものはどうでも良かった。
もう三回も金メダル取ったんだから良いだろう、世界選手権も十連覇ってキリの良い所で終わらせてさ。
アマレスに対しての彼のモチベーションはほとんど消え失せていた。
彼にとってのアマレスは"ツール"でしかない、その上で彼には大きな不満があった、それは…
道行く人。
仮にも自分が五輪三連覇した人間だというのに誰も見向きもしない。
そう、自身の知名度が低い事。
もとい、女性にモテない事であった。
アマレスは"ツール"でしかない。
女にモテるための"ツール"でしかない。
彼はそう考えていた。
もっとも、そういった"ツール"にするならバスケやサッカーにした方が良かったのだと気付いた頃には軌道修正できない歳まで来ていたが。
中学生の頃、アマレスで全国制覇を果たした。
校舎には『外柴聖人』と刺繍された大きな幕が垂れ下がり、彼の優勝を称えた。
学校に戻れば、朝会で全校生徒の視線を浴びる中、壇上にてスピーチを行った。
地元の新聞社に取材を申し込まれ、彼の名は『アマレス天才少年』として県下に広く周知された。
それなのに…それなのに関わらず、好きだったあの子は県大会にさえ進めないテニス部の男に惚れて付き合った。
何故だ?
何故、俺はこんなに凄いのにモテないんだ?
中学生時代の彼はずっとそれを悩んでいた。
寝そべりながら授業中、にきびをペン先で潰す。
何故だ?何故だ?何故だ?何故だ?
高校進学する直前、その答えが分かってしまう。
「…気持ち悪いから」
「えっ?」
ボソッと呟くように言った少女。
彼女は彼の26番目に告白した女子であった。
高校入学前に童貞くらい捨てておかないと、と焦っていた頃。
彼はアマレスの推薦で日本で最もアマレスの強い高校に入学が決まっていた。
それで越境するから自分とは付き合えないのか?違う。
他に気になる男がいるから自分とは付き合えないのか?違う。
アマレスが嫌いだから自分とは付き合えないのか?違う。
「じゃ、じゃあ、何だよ…?」
及び腰になりながらも、彼は確かにパンドラの箱を開けてしまったのだ。
伸びない身長、得られぬ人望、曇る心情。
されど増してく筋力、そして淫欲。
それから高校進学して、さらに彼は強くなっていった。
1年次から出続けたインターハイで三連覇。
もはや大人ですら敵わない領域に来ていた彼のアマレスへのモチベーションは"モテる事"ただ一つにあった。
自分がキモいから?ブサイクだから?チビだから?臭いから?むさ苦しいから?うるせえ、じゃあもし俺が将来の金メダリストだったらお前らどーすんねん。
俺がカ○リンみたいなヤバイ男になるって皆分かってたら寄ってくるだろう!?多分。
顔や体格は生まれ持ったものだから変えられない。
なら、後天的に積み上げられるものを積み上げていけば良いだけだ。
動機はどうあれベクトルは間違ってなかった。
彼は涙ぐましい努力の末、ついに金メダリストになる事が叶った。
集まる報道陣、受けるインタビュー、新聞のスポーツ欄には白黒の俺。
世間の皆が俺という存在に気付いて、持ち上げてくれるのが純粋に嬉しかった。
こんな俺でもビッグになれる。
夢はこの手に掴んだ。
なら次は…ベッドの上でビッグになるだけだ。
金メダリストになったんだ。
バラエティー番組やクイズ番組の一つや二つ出てもおかしくないだろう。
そしたらそこで知り合った女優とかアイドルと…ウヘヘ。
思わず涎が垂れちまう。
だが、一番の目的はそこだ。
何のために五輪に出て、金メダルを掴んだのか、股間に聞いてみた。
…ヤツは正直だった。
そうだ、そうだよな。
いっぱい番組出ていっぱい色んな女と知り合っちゃおう。
誰が良いかな、●●も良いし△△も良い。
芸能界よりどりみどりだ。
だが、彼への番組オファーは一件も無かった。
「オイどういう事だよ!!」
何の罪もないマネージャーに怒鳴り飛ばす。
彼に怒鳴っても無駄な事。
それは分かってはいたが、誰かにあたらずにはいられなかった。
(なんで?なんでだ?…何故俺にオファーを出さない?)
アマボクのあいつが良くてサッカーのあいつが良くて卓球のあいつが良くて。
で、なんで俺が出れない?
おかしいだろ、18歳にして金メダリストってあんな騒いでたんだぞ?
なんで、なんで俺にオファーを出さないんだ?
まだ努力が足りないというのか、もう一回メダルを取れって言ってんのか?
畜生、畜生…っ
俺はバラエティー番組で女優と戯れる先輩方を見ながら眠りについた。
それから8年後。
彼は五輪三連覇を果たしたレジェンドとして取材を受けていた。
付けられた渾名は"霊長類最強男子"。
この頃になると、彼は流石にお茶の間にも顔を出すようになっていた。
五輪三連覇、という圧倒的なステータスを冠する今、メディアも放っておけなくなったからだ。
憧れの女優や可愛いアイドルとの共演も叶いつつある。
だが、彼の空腹にもよく似た欲求は満たされないまま年月が過ぎる。
街を歩いていても、「外柴さんですか?」などと声を掛けてくる人はいない。
もしかしたら気付いている人も中にはいるのかもしれない。
だが、声は掛けられない。
それが何よりも悔しかった。
彼が夢見ていたのは外も歩けないくらいのスーパースター。
現実は程遠い。
誰にも声を掛けられないまま、アパートへ帰る。
四回目の五輪を眼前にして、彼は婦女暴行で逮捕される。
近所に住んでいた女子大生をレイプしたのだ。
もはや三連覇もクソもない。
彼のお望み通りTVや新聞で連日報道されるような有名人になってしまった。
道行けば誰もが振り返るだろう。
だが、誰も見やしないし誰も話しかけてくれなどしない。
いるとすれば下世話なゴシップ記者くらいか?
いや、それさえも無かった。
今や刑務所暮らしなのだから。
だが、彼は後悔していなかった。
むしろ、己の生きる道をやっと見つける事ができたと満足していた。
そうか、俺には輝かしい"表"の世界を生きるのは似合わない。
犯罪行為と底なしの欲とが同居する"裏"の世界こそ自分に相応しい場所なのだと。
女をリフトしてテイクダウンした時、彼は4歳の頃からアマレスを続けていた理由が初めて分かった。
懲役を喰らってもなおそのぎらついた瞳は輝きを失わなかった。
クリスティーナはやや肥満と評したが、彼の肉体は10年間毎日刑務所で鍛えられた常人離れした肉体である。
「1R5分。勝負はどちらかが戦闘不能だと判断されるまで…」
レフェリーから形だけのルール説明が終わると、すぐに自分のコーナーへ戻るクリスティーナ。
セコンドにつくのはUFS側から用意された人間。
流石に露骨な妨害はしてこないとは思うが、警戒心を解かず彼には一切干渉しない事にする。
差し出された水に妙な薬でも入れられてたらたまったものではないから。
「ラーーーーンドワーーーーン!!!」
「レディィィ…ファイッ!」
カンッと乾いたゴングの音。
と共に、軽やかな動きで間合いを詰めるクリスティーナ。
外柴はガードを下げて前足重心、いつでもタックルに行けるようなスタンスをとる。
「はッ」
バシィィッ!と何かが炸裂したような音が会場へ響く。
クリスティーナの左のローキックが外柴の左脚へ直撃したのだ。
「ぐっ…!?」
一瞬バランスを崩す外柴。
だがすぐに立て直し、さらにもう一発打ち込もうとするクリスティーナへ左右の拳を強振する。
空振り。
だが威嚇にはちょうど良かった。
クリスティーナが自分の間合いから離れて、息を整える。
だがそれも束の間、クリスティーナは蜂のような動きで外柴を翻弄すると、今度は右のローキックを打ち込む。
バシィィッ。
「がっ…!」
サウスポーのクリスティーナ。
予め前に出していた右脚でノーモーションの蹴りを繰り出した今の一撃。
懲役を終えてからMMAの練習も重ねてきたが、男でもこれほどまでに強く迅いローキックを蹴る者がいただろうか。
利き足とは逆の足だと思えないほど強い一撃に、内心驚愕する外柴。
わずかローキック2発で彼の身も心も追い詰められてしまっていた。
(ど、どうすれば良い…!?)
レスリング出身であるが故に、前足に体重が乗った前傾姿勢になっているのが良くなかった。
ローキックをカットできない上に、体重が乗った脚を攻められるものだから痛くて痛くてしょうがない。
雀蜂のようなおぞましいステップで迫り、その毒針のような一撃を繰り出すクリスティーナ。
蹴りの間合いから離れると、遥かにリーチの劣る外柴は何もできなくなってしまう。
一気にステップインしてきたところにカウンターのタックルを合わせるか。
いや、タックルに行こうと思った時にはクリスティーナの蹴りが入っている。
どうすれば良い?どうしようもない。
将棋で言えば詰み、チェスで言えばドミネーション、スーパーマリオならとうにゲームオーバー。
外柴は組みの展開なら圧倒的な強さを誇るが、自ら踏み込んでの打撃や緻密な駆け引きには長けていなかった。
「うわっ!?」
前蹴りが顔面に飛んできてすんでのところで首を捩って躱す外柴。
思わず情けない声を上げてしまう。
動体視力や運動神経に関しては生まれながらに人並み外れたものを持つ。
穢れても金メダリストは伊達じゃない。
これが常人なら前蹴り一発でKOされていた事だろう。
(やばいな…負けるにしてもつまらない試合をしたら干されちまう)
食い扶持を失う事だけはご勘弁願いたい。
そのために目の前にいる金髪超絶美女を組み伏せて、おち●ちんを挿入してあげなくちゃいけない。
(やべ…そんな事考えてたら…)
クリスティーナの蹴りさえも届かないような遠い間合いで、いきなりブーメランパンツの局部を膨らませ始める外柴。
無機質にさえ見える、その無表情な美貌。
肌の向こう側さえ見えてしまいそうな白い肌に、さらさらと揺れる金髪。
薄い唇に鼻筋の通った鼻梁、春の青空を思わせるような淡い青色の瞳…
それら全てが、もし俺の下等で汚い精子と臭い汗に塗れたら、一体どんな表情を見せてくれるだろう?
俺の腹の下で為す術もなく悶えて、ただの女として性的に辱められるような事になれば、どんな悲鳴を上げてくれるだろう?
あまりに強すぎて勝てるビジョンが思い浮かばない。
だが、もしその高すぎる壁を乗り越えられた時、果たしてどんな景色が見えてくるのだろう?
アマレスで三連覇した時も同じだった。
もし俺が三連覇成し遂げて有名人になったらその先には一体どんな未来が待ち受けているのだろう。
見据える未来はイカ臭くも汚い、性の香りしか漂わない素晴らしく下卑た世界だが、そこへ向かっていくひたむきな意志は大リーガーを目指す野球少年のそれとよく似た清らかさを覚える。
(何としても勝たなければならない…)
その後もクリスティーナの蹴りとジャブを浴びる時間が続いた。
どうやら彼女は外柴に近付きたくないらしい。
だが、彼は一つの希望を見出した。
カァンッ!
「1R終了っ!!」
針の穴を通すようなその希望…果たして2Rに炸裂するかどうか。
痣だらけの顔面で彼はニヤリと微笑んでみせた。