希望のオーバーロード ~うはうはハーレムえちえちナイツ~ 作:胆谷
それは突然だった。
世界最強を自負し、そしてそれが揺るがぬよう鉄壁のロジックを積み上げてきたのは、ひとえにそういった脅威に対抗するため、事前に知るためだ。
その俺の懸念は、予想をはるかに超える形で的中し、この世に顕在化した。
すべてが無駄だった。いや、無駄だと知った。
あれほどの存在を発見出来ないはずが無い。あのレベルの脅威を見逃すはずが無い。
その当然変異体は、初め人間ですら無かった。
数年前、当時は取るに足らない存在だったが、放っておけば牙が届きうるかも知れないと、芽を絶っておいた少年。
桁違いの潜在能力を秘めているというシミュレート結果を踏まえ、仲間として教育するプログラムを何重にも考えたが、謎のエラーによるブラックボックス化された少年のユニークスキルが、俺の警報を鳴らしたため殺した。
恐らく教育や洗脳は役に立たず、無駄に敵のレベルを上げるだけになってしまう。
その後、人間が別の存在と入れ替わるスワンプマン事件が起こる。
入れ替わった存在は、元の人間と性格や思考、肉体構成、ステータスなど何もかもが全く同じだが、ただ一点、クオリアが消失していた。
それが判明したのは、偶然からだった。配下の階層守護者がいつの間にか入れ替わっており、定期的に行っている健康診断で世界に一つしかないSSSレアランクギルドアイテムを使用したからだ。
件の階層守護者は、凍結したが、本人すら本物だと認識し、普通は先ず見抜けない。一点以外は、すべて本物と同じなのだ。
そして、例の少年を発見した時には、すでに手遅れだった。
発見した部隊は全滅し、上司である階層守護者も城とともに壊滅。こちらに届いた報告も、後手に回る要因になった。
それほど奴の成長と行動の速度は著しく、ナザリックは態勢を整えるどころか、瞬く間に4分の1が死滅した。
奴が勢力を伸ばすと、俺に反旗を翻す輩が湧き出し、それはレジスタンスとなり、やがて軍勢となって統合されていった。
奴は「勇者」と呼ばれるようになり、俺は「魔王」と呼ばれていた。
「7日間世界大戦」と後に呼ばれる戦争が終わった。
勇者が出現し、1年の間、俺は体力を温存し、ありとあらゆるレアアイテムや禁呪を開放し、ナザリックの守りを固めた。何年掛かろうと奴を分析し、弱点を見つけ解体するつもりだった。シミュレートは何度やっても完璧で、計算では100年以上難攻不落を貫ける筈だった。
先ず奴は、ナザリックの城の周辺をすべて焼き払った。村も町も王都さえも一つ一つゆっくりと見せ付けるように破壊した。それがナザリック以外の勢力は奴に加担し、見渡す限りが焼け野原となった視界から、世界が敵に回ったと思わせる心理作戦ならば、それは成功していた。それまで抑圧されていた怯えが階層守護者にまで浸透し、ナザリックは勇者軍と戦うまでもなく内側から崩壊した。
油断はしていなかった。ただ、奴が驚異的であっただけだ。
見たことも無い武具に身を包み、上限を超えた魔法と未知のスキルを使いこなし、幻となった神獣を従え、光の軍隊を率いて、完璧に勝利する。蹂躙する。殺戮する。
それらすべては、俺が今まで、やってきたことだった。
俺の行ってきた経緯が鏡に反射して、そのまま俺に返ってきている。これを予想しなかった訳では無い。
だが、いつかそうなるだろうという取りとめもない、自分自身に対しての勝手な免罪符を「俺は予想している」と思い込んで安心していただけだ。
ついに勇者は、俺に触れすらしなかった。
俺を真っ二つに裂いたのは、階層守護者でもない、ただのリザードマンだった。
倒れ伏し頭を踏み潰され、転がった眼球に相当する装置が、特に興味もなさそうに去っていく勇者の後姿を記録してブラックアウトした。