「ねえ、マスター? 『真実の愛』という言葉が、いったい何を指しているか分かるかしら?」
メルトリリスは俺のベッドに腰を下ろしながら、そんなふうに質問を投げ掛けた。
俺はそんなメルトをベッドに横たわったまま聞いていた。
はて、そんないかにも高尚なワードとは無縁の人生を送ってきた自分だ。
そんなふうに訊かれても、貝のように押し黙るしかできない。
「少し意地悪な質問だったかしら? そうね、そんな大層な言葉とは一切関わりのない素朴でありふれた人生を送ってきた貴方には、到底理解することのできない問題だったわね」
何故だか、急に俺の株価が大暴落していた。
どうにかして立て直しを図りたいところだが、ペースはいつだって気ままな少女の掌の上だ。
「別に謎かけじゃないわ。答えはひとつではないの。だから思い思いに答えて良いのよ? それが貴方の、貴方だけの答えなのだから」
メルトはそう言うと荘厳な滝のように流れる髪を揺らして、俺の胴体の上に腰を下ろした。
メルトの少し冷たい肌が、なめらかな絹のような肌触りと共に俺を舐(ねぶ)る。
しなだれかかる髪の感触が、こそばゆくて何処か心地よかった。
「……そう言われてもな……。俺には分からないよ。俺は皆のことが大切だし、皆を守りたいって思ってる」
「それは愛とは違うでしょう? 焦がれるほどに思い詰めることもないし、灼かれるほどに追い求めるわけでもない。そんなものは愛とは呼ばないわ。……少なくとも、私にとってはそう」
大切の度合いで言えば、マシュはかなり高い位置にいる。けれど、それを愛という言葉だけで語るのは違うような気がする。
そんな分かり易いシンプルな言葉で、説明した気になるのは酷く不愉快なのだ。
だからこそ、思い悩む。言い淀む。
求められた答えを、俺には出せそうにない。
「呆れたものね、マスター。仮にもこの私のマスターなのだから、愛憎の業の深さを少しくらいは理解するべきだと思うのだけれど」
「う~ん……、メルトにとってそういう感情が、物凄く大事な要素なんだってことは理解しているつもりなんだけどね……。でも、だからこそ逆に、簡単に分かったつもりにはなりたくないというか……」
そんなふうに口籠もっていると、メルトは俺に跨がったまま俺の顔へと手を伸ばした。
「ふうん……。少しはマスターとしての自覚があるみたいね……。いいわ、褒美に貴方へ『真実の愛』の一端を味わわせてあげる」
舌舐めずりするメルト。
メルトの細い冷たい指が、肩に触れ、胸を撫で、乳首を爪弾いて、腹を弄(まさぐ)った。
「マスター? 金輪際私だけを愛すると誓うなら、至上の快楽で奈落に落としてあげるけれど?」
「そんなこと約束したら、俺灼かれると思うんだけど」
「そうかしら? どちらにせよ妬かれるのは一緒よ。私、これでも相当に嫉妬深いの」
思わず冷や汗を垂らす俺だが、メルトはというと何処吹く風だ。
「怯えているように見せかけて、随分と肝が太いじゃない、マスター。私の股の下で、貴方ってば随分と物欲しそうにしているけれど」
当然のように見抜かれていた。
まぁ、当たり前か。こうもギンギンになっていれば。
だが、それでも最低限の抵抗はさせてもらおう。マスターとしての尊厳を守るためにも!
「ふふ……、私を相手に抵抗する気……? 相手が悪かったと、後悔させてあげましょうか」
メルトの指が、再び俺の乳首を摘まんだ。
今度は放してくれない。摘まんだままグリグリと捏ね始める。
「あ、うぅ……! ぐぅ……ッ!」
痛みに呻く俺を、楽しそうに見下ろす人形のような美少女。
その微笑みは女神のような美しさで、その所行は悪魔のように貪欲だった。
「ねぇ、マスター? 私、こう見えてあまり我慢強いほうではないの。あんまり強情だとこのまま抉り取っちゃうわよ」
「やめてくれ、メルト……。許してくれ……」
情けなく懇願するが、一度燃え上がったメルトの炎はそう簡単に消えてはくれないらしい。
「そういうわりにはここ、堅くなってるわよ? 気持ちいいんでしょう? 素直になりなさい、マスター?」
「違う! 痛くてもそうなっちゃうんだよ! 単純な刺激があれば、性感とか関係なくそうなるものなの!」
残酷にもメルトはそれで引き返しはしなかった。いっそ加速する。
爪が、突き刺さる。身体が震えて、俺は半ば諦めるような心地で吼えた。
「メルト! 君に欲情してる! こんなふうに攻められて、嫌なはずなのに、何処かで期待してしまってる! メルトに求めて貰えてるのが嬉しくて、胸がドキドキしてるんだ!」
俺がそう白状すると、メルトは妖艶に微笑んで腕を引っ込めた。
「……やっぱり指はうまく動かせなくて面倒ね。……そろそろ違う方法で悦ばせてあげましょうか。ふふ……、身も心も、生きていた痕跡さえも溶かしてあげる」
メルトが一度身体を持ち上げると、そのまま俺の上に跨がった。
そのままギシギシと軋むベッドの上で、俺とメルトは互いを求め合うのだった。
意外に思われるかもしれませんが、ドS攻めは結構苦手だったので書くのは大変でした。不器用な腕で愛撫する慎ましいメルトが個人的にポイント高いです。