33-010
翌日木原は、竹本プロに嘘の電話をして、菜穂の来週一週間のスケジュールを聞き出した。
木原と名乗ってドラマの評判が良く、サイン会が入るかも知れないので、空いている日は無いか?と尋ねた。
決まっていたら、連絡するので本人にはその後話して下さい!不確かな話ですからと事務員に言った。
木原の話だから、直ぐに信用して詳しく教えてしまった。
情報を手に入れた木原は一月の末、待ちに待った強迫のメールを送った。
(二月の一日に、渋谷のラブホテル欄の五百二号に午後五時に来る事!無視されたら、翌日の芸能ニュースに発表されると思って下さいよ!)と送り付けた。
受け取った菜穂は覚悟をしていたが、返事を躊躇してしまう。
(何度も呼び出されるなら、行く事は無理です!奥様に話してしまいます)意を決て、菜穂は初めてメールを送る。
(それは困る!今回で最後にする!来てくれたら目の前で過去の画像は消す事を約束する)
(本当ですか?信用出来ません)
(部屋前で消すから見てから入れば良い!薬飲んで無いから、大きな声を出せば係が来る!)
(本当に今回で最後にして下さいね!)
(嫁に言われるのは、俺も困る)
次に木原は、ホテルの住所と簡単な地図を送った。
菜穂に調べさせない為に木原が、先手を打ったのだ。
木原は逃げられたら困るのでSMホテルに連れ込んでしまう作戦をしていた。
見張っている早代は、何か変だとその日から菜穂の動きに注意して、当日木原から送られたメールを偶然目にしてしまう。
「黒田さん、今日の夕方渋谷のラブホテル欄で、密会する様な感じですよ!」伝えた。
黒田には、そのホテルがSMホテルだと直ぐに判ったが、早代には「ありがとう」と言っただけだった。
あの二人が良い仲だとは聞いてはいたが、信用していなかったのでSMの趣味が有った事に驚いた。
その様な仲の二人の中に割り込む事は不可能だと諦め様としたが、何故妻も子供も居る木原とだ!徐々に腹が立って来た黒田は潰してやろうと、知り合いの芸能記者に教えてしまった。
芸能記者安達は、最初信じ無かったがドラマの最中のキスを見ただろう?縛られて吊されただろう?と言われて騙されたと思いながらもホテル欄を四時から張り込む。
あの清楚な美人北条菜穂が、不倫でSMホテルにて密会!もしも本当なら大スクープに成ると心躍らせて待っていた。
五時前に成って、変装してやって来た木原を見つけて「本当に?」と口走って、シャッターを切った。
一人でホテルに入って行くので、先に来ている?北条菜穂程の美人を見落とす筈は無いと、改めて気合いを入れた。
木原は以前から恋愛の多い人物だから、面白味も無いが相手が元公共放送の美人アナウンサーで、過去に一度も噂も無い北条菜穂なら、相手が木原良純でも事件に成る。
木原が入ってから、十五分以上過ぎて安達が諦めかけた時、帽子を深く被ったスタイルの良い女性がやって来た。
安達には、直ぐに北条菜穂だと判ってシャッターを連続で切る。
周りを気にしながら、エレベーターに向かうので連れが居る事は明らかだ。
フロントに目もくれずに向かった事が菜穂の不幸で、このホテルがSM仕様だとは全く知らずに部屋に向かった。
安達が階数を確かめて、次のエレベーターに乗り込む。
各階には二部屋しかないので、全部で二十部屋で安達が事前に調べた部屋の仕様は、医療プレーの部屋だと記憶していた。
エレベーターを降りると、五百二号室の前で何やら揉めて居ると見ると、急いで男性が菜穂の手を掴んで連れ込んだ。
「何をするのですか?」と怒る菜穂に「危なかった!芸能記者に尾行されましたか?」と尋ねた。
「えー、何度も振り返って注意して来ましたから、大丈夫だと思います」
「今来たのは、安達って蛭の様な記者ですよ」
「えー、芸能記者!」怯える顔に成る菜穂、手には木原の携帯が握られている。
「私達を張り込んで無かったのかも、知れません」木原が安心した様に言った。
菜穂は急に携帯に気づき、途中迄消した画像の続きを消しながら「本当に嫌な写真ばかりですね!」怒りながら消し終えると、入り口のノブを回して逃げ様とする。
空回りのドアのノブに「何故開かないの!」今度は「ドンドン」と扉を叩いて叫ぶ。
「この鍵しか開きませんよ、それにこの部屋には完璧な防音装置が有るのですよ!」鍵を見せて微笑む。
「えー、普通のホテルではないの?」入り口の奥を見るが、暗くて何も見えない。
「菜穂さん、当医院にいらっしゃいませ」と言うと電気のスイッチを入れて、奥の部屋が明るく成った。
菜穂の顔色が直ぐに変わって血の気が消えた。
最悪SEXはしなければ難しいとは思っていたが、この様な部屋に連れ込まれるとは考えてもいなかった。
「木原さん、この様な趣味が有ったのですか?」気に成って尋ねる菜穂。
「この様なプレーは好みませんが、予想通り逃げ様とされました。この部屋にしていて助かりました」
「逃げたのは申し訳ございません!この様な事も婦人科に行った事も有りません!許して下さい」
だが木原はその言葉に逆に燃えてしまった。
「それは尚更面白そうですね!私が検査をして差し上げましょう」
「いや~、絶対に嫌です」部屋の奥に走る菜穂。
部屋の奥には、鎖の付いた手錠がセットされたダブルベッドがある。