33-014
「主人との不倫の話よ!知らないの?虫も殺さない顔して、する事は凄いのだから!」苛立つ涼花。
「ご主人と言われましても、何方か存じませんが?」聞きだそうとする井尻。
「誰でも良いじゃ無いの、安達さんがまだスクープ持っているのね!帰ったら携帯にかけて」と自分の番号を教えて電話を切った。
井尻が早速編集長の矢口に伝えると「何、あのスキャンダル処女の北条菜穂が不倫!」声が裏返る矢口。
「はい、情報は安達さんが持っている様です」井尻が話す。
「直ぐに、安達君を呼び戻しなさい、他の取材は必要無い」矢口は言葉に力が入った。
安達は木原の話を信用していなかったので、社には連絡を躊躇っていた。
一度、北条菜穂の取材をしてから、記事にしても遅くは無いと考えて、今日もアポをしたのだが、断られていた。
編集長に呼び戻されて安達が戻ると、詳しく話を聞く矢口。
写真を見せられて「安達君、これは間違いないよ!大スクープだよ!付き人の証言も有るのだろう!間違いなく不倫で北条菜穂は変態だよ!」一人で納得している。
「でも木原の言っている事が真実だとは限りませんよ!何しろこれまでの恋の遍歴が半端では無いですよ」
「だがな、木原はこれまで一度もこの手の行為はしていない!先程調べたら殆どが普通のSEXだ!今回はこの北条菜穂が怪しい!」
「でも北条菜穂もその様な遍歴が有りませんよ」
「恋の噂も無かったのは、変態SEXを好むから無いのでは?」矢口が説き伏せる様に話して、記事にしてしまおうとする。
結局編集長に押しきられる形で、渋々安達は記事にする様に成ってしまった。
それでも納得出来ない安達は、涼花と菜穂の二人を取材して書くと約束をした。
涼花は直ぐにでも来て、私も色々聞きたいのよ!と答えた。
菜穂に連絡をすると「えー、木原さんの事で取材?」驚いた様子で答えた。
「一度時代劇で共演しただけで、お話しする事は何も御座いません」と厳しい応対に成った。
「貴女と木原さんがラブホから出て来たのを見たとの証言が有るのですが?反論は有りませんか?」必死に尋ねる安達に「その様な汚らわしい場所に行く事は絶対に有りません!」と怒って電話が切られた。
側に居た早代が驚いて「雑誌記者が何か?」と尋ねると「考えたくも無いわ!」憮然とした菜穂。
翌日、木原の自宅に向かった安達に「主人がタイプだと言って、あのインテリ美人の北条菜穂が声をかけてきたって聞いたわ!」と話した。
「大奥の新春時代劇の共演で?」
「そうよ、時代劇の共演でベットシーンの時も、台本に無いのにキスを濃厚にしたとか、胸を強く揉んでと言われたそうよ、私も録画の画面を見たけれど主人の証言の通りだったわ」
「木原さんは、渋谷のホテルの事も奥様に話されましたか?」
「勿論です、事細かく聞きましたが、恥ずかしくてここでは申せません、主人が途中で嫌に成ってホテルを先に飛び出したって聞きましたが、本当でしょうか?」
「はい、半時間程後で北条さんはホテルを出て来ました。それは間違いないと思います」と答えると涼花が「今回は、いつもの浮気と違うわ、聞いても居ないのに自分から告白したから、本当に恐かったと言うか迫られたのだと思います」意外と嬉しそうに話す涼花。
安達も先日の話と同じ事を、妻の口から聞いたので本当なのか?と思ってしまった。
そして、何度取材の申し込みをしても反応が無い菜穂に、安達もしびれを切らせて編集長の意見に乗ってしまった。
週刊誌に原稿が回って、翌週号の巻頭を飾る大スクープに成る事が確実に成ってしまった。
新聞の予告も電車の中吊りも、発売日に合わせて臨時で印刷される段取りに成っている。
通常の予告には(驚異!!清純タレントの性の秘密、渋谷ラブホテルの密会)の記事のみで、何処の誰か判らない。
ライバルの映好の編集部でも「これは?誰だ?」
「清純タレントって?」
「若い女性かな?」
「若い女性なら、面白く無いでしょう?堅いイメージの女性が何故って感じでないと」
「その様な女性居たか?殆ど実際と全く異なる生活態度が多いからな、今更清純とか清楚と聞いても驚かないよな」
「一人、噂も私生活も全く何も無い美人が居るわよ!」女性記者の佐々木望が急に発言をした。
「北条菜穂!」「北条菜穂!」声を揃えて、森田と辻井が叫んだ。
望が「それは、無いと思うわ!彼女にその様な男性の影は無いから、私も調査はしているのよ」自信有ると言い切った。
「誰だ?????」三人は謎に包まれたスクープに、困惑をしていた。
発売日前日(北条菜穂、隠された性癖!渋谷のホテルRで密会!妻子在る男性と禁断の一時)新聞広告、電車の中吊りも総て特別に刷り直されて発表に成った。
昼過ぎ、竹本プロの電話が一斉に鳴って、事務員が驚いて対応をするが鳴り止まない。
菜穂も先輩アナ安藤恭子がいち早く情報を手に入れて、電話をしていたので驚いて身を隠した。
紹介した安藤にも責任が有るので、真意を確かめたいと言われて急遽東京から姿を消した菜穂。
「渋谷のラブホで密会!この様な記事が出たら当分世間には出られないから、隠れなさい」
「どの様な内容の記事なのですか?」
「心当たり無いの?私も詳しい事は知らないの、今回記事を出したライバルの映好の佐々木って女性から連絡が有ったのよ」
「特定の男性は居ません、もっと詳しく判りませんか?」
「その様な時間は無いわ、少しの間身を隠す身の回りの物を持って、私の知り合いが経営している湯河原の(千鳥)と言う温泉旅館に隠れて、もう少し情報を持って夜には行くわ、誰にも言わないで付き人にも話しては駄目よ」
望は広告が張り出される数時間前に安藤に伝えたから、菜穂は楽々と東京を離れた。