33-017
夕方のワイドショーに、木原の妻涼花が乳飲み子を連れて出演をして、涙ながらに訴えたのだ。
木原良純が時代劇の共演で北条菜穂と出会って、タイプだから濃厚なキスとか乳房を強く揉めとか強要されたと証言した。
その後、渋谷のホテルに誘われたが、まさかSMホテルだとは知らずに、色々指示されて恐くなって逃げ出して、自宅に戻り主人が自分に告白したと証言をした。
主人は共演のタレントさんと、少なからず過去にも浮気をしていました。
今回も軽い気持ちで、美人タレントに誘われてホテルに行ったけれど、北条菜穂の異常な性癖に驚いて逃げ帰って来て、総てを話して謝りましたと説明した。
週刊誌の状況をより一層確定にさせて、北条菜穂のSM趣味が全国的に確立されてしまった。
その後は、時代劇のシーンが何度も画面に流れて、検証の様な話が進んだ。
「何故?こんな事に成るのよ!」テレビを見ながら興奮する菜穂。
旅館に恭子が電話をしてきて「見た!大変な事に成ったわね、世の中で貴女は変態の悪女に成ってしまったわ、今日は木原も、付き人も会う事が出来ないわ、落ち着くのを待ちましょう!出たら駄目よ!」と念を押す恭子。
自宅にもその日の夜から(変態女)(俺が吊してやろうか?)等々強烈な抗議が始まって、家族は自宅から出られない状況に成った。
菜穂と連絡が出来ないので、一層不安が広がるが、自宅には連日マスコミが張り込みをしている。
小柳プロデュサーはこの報道に驚いて、自分の楽しみで撮影したのに、その後木原とこの様な事成っていた事に怒りが出ていた。
しかし、SMの趣味が有った事は全く気が付かなかった小柳。
それなら、清楚なイメージを作る必要も無いのでは?小柳は木原に菜穂を取られた気分に成っていた。
だが心の何処かに、この事件は本当なのか?本当に北条菜穂がSM趣味でマゾなのか?の疑問も残っていた。
小柳は夜に成って友人の斉藤プロダクションの社長、闇プロの有藤と三人で銀座に飲みに出ていた。
店でも話題は北条菜穂の事に成って、小柳の趣味を知っている二人が「木原に完全に取られた様ですね」と笑った。
「あの、週刊誌の記事もテレビの証言も自分には信じられないのですよ、何度も北条菜穂とは話しましたからね」小柳が二人に話す。
「でも、この事件は完全に北条菜穂が不利に成っているよな、特に木原の奥さんの涙は大きい」斉藤が言う。
「今後は、竹本プロが大きな痛手で、経営が苦しくなりますね」有藤が話した。
「そうだな、それ程大きくないプロダクションだから大変だろう?小柳さん何か助けてあげる方法は無いのかね?」斉藤が小柳に話す。
「そうだな、今後の成り行き次第だが、何か考えてみるか?」小柳が話す。
「小柳さんは業界に詳しいから、良い知恵が有るでしょう」有藤が微笑みながら、酒を飲み刺身を摘まんだ。
「まあ、今後の展開次第でどの様に成るか?判りませんがね、あの木原って男、女癖が悪いのだろう?」
「相当手が早いらしいな」
「でも北条菜穂は良い女ですよ、気立ても良いし頭が良くて美人だ!」と小柳が褒めると「髪が長くて、清楚だろう?」そう言って笑う三人。
小柳の髪フェチを知っている三人の会話で盛り上がっていた。
翌日妻の涼花に続いて他局が、木原の単独インタビューを流せば、対抗の局に近藤早代がゲストで出演して、菜穂の持ち物に変なSEX道具を見た事が有ると、新たな作り話を作り上げた。
その日の夕方、北条菜穂のCMが総ての画面から消えて、スポンサーから自粛のコメントがマスコミに流れた。
それは、事件の真相が不透明と判断したスポンサーが、一時中止にしたからだった。
(私、北条菜穂は、今報道されている様な事実は、全く無く!一方的な報道に驚いております)の文章がマスコミに向けて配信されたのは夜に成ってからだった。
その報道に一番驚いたのは菜穂本人で、恭子から「何故この様なコメントを流したの?」と怒りの電話がかかった。
全く知らないと答えると「木原かも知れないわ、菜穂を表舞台に引きずり出す魂胆かも?」と困惑した。
全国には菜穂の熱狂的なファンも沢山居るので、このFAXが何処から発信されているのかは判らない。
菜穂の自宅では、父も兄も職場からしばらく休む様に勧告を受けてしまう。
理由は連日マスコミ関係者が取材に訪れて、仕事が出来ない状況に成ってしまうからだ。
五日目の夜に漸く自宅に電話が繋がった菜穂は、涙ながらに母昭子に訴えたが、母は菜穂に信用しているからねでも自宅には戻らないでね、マスコミも張り紙も投書も凄いのよ、落ち着くまでは連絡もしなくて良いからねと伝えた。
母を始めとして、家族全員がもううんざりした状況に成っていた。
菜穂には安らぐ場所は存在しなくなった。
あの卑劣な木原の罠に落ちたと、後悔をしても今更戻す事も出来ない。
付き人の近藤早代に尾行されていた事、木原が芸能記者にホテルの外で出会ってしまった事で、自分を正当化する為に出鱈目を話したと想像した菜穂。
恭子に自分の推理を話すと「多分それに間違い無いけれど、証明するのは困難よ」と言われる。
「でも、まだ人目は避けて隠れて居なさいよ、落ち着けばチャンスは有るわ」と元気付けた。
恭子は、翌日木原に面会に行く予定だった。
「何故?安藤さんに会わなければ?」と言う木原に「奥さんに会いに行きましょうか?北条さんから、総て聞いて知っているのよ」と言ったのでホテルで会う事に成った。