33-027
しばらくして衣川が「鈴木君、少しテレビの裏話とか女優さんの事を小柳さんに聞きたいので、君には悪いが席を外して貰えないか?」突然言い始めた。
「はい、会長私は先に席を外します、色々聞いてCMの話にも耳を貸して上げて下さい」と微笑んだ。
しばらくしてコーヒーを飲み終わる、と鈴木は挨拶をして衣川の自宅を後にした。
鈴木が帰ると衣川が「君は闇プロで出会った人だな!」といきなり尋ねた。
小柳は微笑みながら「会長お判りでしたか?」と言う。
「わしが、あの席で言った事を覚えていて、この話を持ってきたのか?」
「はい、その通りです、K&CチェーンのCMに最適かと思うのですが?」
「あのスキャンダルの女優が、何故我が社のCMに最適なのだ!」
「会長の会社は美容、理容業界のガリバー的な存在です、彼女が大きなイメージチェンジで立ち直る象徴にする為に、一大決心でイメージチェンジをする為に、髪を切り生まれ変わると言う設定です」と熱弁を振るう。
「成る程、あの綺麗な髪の毛を大胆な髪型に変えるのか?」
「はい、その様な感じを表現出来たら宜しいかと思いますが?」
「大胆とは?坊主か?つるつるの坊主か?」
「それは、会長の思いのままに!」と笑みを浮かべて話した小柳に目が輝く衣川。
「それで、CM代は幾らだ!」
小柳が指を一本立てて「一億程お願いしたいのですが?」
「大きく出たな、その金額なら私の望を総て聞いて貰わないと無理だな」
「坊主以上に何を?」知りながら尋ねて挑発する小柳。
「あの子は濃いのか?髪の毛と身体の色、襟足の感じから見て濃い感じはするが?」
「はい、大丈夫です、時代劇の時の衣装の着付けの人間に確かめました。会長の希望の様です」
「そうか、それじゃあ条件が三つ有る、撮影は闇プロで行う事、理由は私が満足するSM好きを見てみたい。もう一つは、私に長い髪を一度洗わせて欲しい。最後に濃い陰毛を剃らせて欲しい!」
予想はしていたが、この爺さんに髪を洗わすのと、陰毛を剃らすのは中々難しいと首を傾げる小柳。
「その条件が叶うなら、一億を出そう!返事を待っている」
「北条菜穂の髪を洗いたい、陰毛を剃りたい、闇プロでSMショーを見たいですね」
「わしの条件はそれだけだが、あの長い髪はつるつるに剃ってしまえ!CMはインパクトが必要だ!」老人とは思えない精気に満ちた話し方だ。
小柳は交渉には成功したが、難題を抱えての帰宅に成った。
直ぐにそのまま闇プロに向かうと、有藤に会って内容を総て話してアイデアを聞こうとした。
「先日話題に成ったSM好きの女優だな、髪の長い清楚な感じの美人だ」有藤が言う。
「俺もあの事件を知るまでは、清楚な美人で公共放送の堅さを解す為に、時代劇であの様なシーンを入れたのだが好きだったとは驚いたよ」
「お前が好きだっただけだろう?」有藤が笑う。
「何か良い知恵は無いか?」と尋ねた時、松宮が部屋に入って来て「小柳さん今日は何か良い話か?」と尋ねた。
有藤が大まかに事情を説明すると「爺さんに陰毛を剃らせるのは簡単だ!」と笑う。
「それが一番難しいと思うのですが?」小柳が言う。
「これから夏に向かうじゃないか?CMの話と水着の撮影でイメージチェンジだと言えば?最近の水着はハイレグが多いだろう?これから病院にも沢山患者が来るのだよ」
「民間のエステも忙しいと聞きますね」
「そうだよ、民間の方法は本格的で無いから直ぐに戻ってしまうが、美容整形の脱毛は所謂永久脱毛だからね」
「北条菜穂を松宮美容整形に連れて行けば解決ですね」
「普通は女性がするのだが、妻に頼めば誤魔化すだろう」と微笑む。
「爺さんに髪を洗わせるのは、自分の美容院に彼女に行かせて撮影すれば簡単だろう?」有藤が話して、続けて「カットはここにセットを作れば井上がするだろう?SM撮影はどの様にするかは咲江先生に相談しておく」と総ての段取りを簡単に組んでしまった。
難しいと思われた事が簡単に進んで、明日にでも竹本社長に話して、北条菜穂を説得する必要が有ると意気揚々と自宅に戻った。
翌日小柳は、竹本プロを訪れて応接室に居た。
「今日は仕事を持ってきました」開口一番笑顔で話した小柳に「安藤さんの?」と澄江が尋ねる。
「いいえ、違います!北条菜穂さんへの依頼です」
「インタビューはもう許して遣って欲しい、私が悪かったのだから」と申し訳なさそうに言う。
「社長、一億も払うのは不可能でしょう?今回の話はCMの依頼です」
「えー、誰のCMだって?北条君にか?」驚く竹本。
「そうです、依頼主はK&Cチェーンです」
「あの、美容理容の大手か?」
「そうです!でも条件が二つ有ります、それを北条さんがOKなら一億が出ます」
「えー、一億大きな出演料だな、ヌードなら今私が断る!彼女に罪が無いのに受ける訳にはいかない」竹本は頑なに菜穂を守った。
「違いますよ、北条さんの長い髪を切ってイメージチェンジのCMを作るそうですよ!その短い髪で水着を着て今までの堅いイメージからの脱却をテーマにCMを作るそうです」
「髪を切るかな?彼女のシンボルの様な黒髪ロングだからな」竹本が躊躇うと澄江が「一度本人を呼んで尋ねてみましょうよ、一億有れば助かるわ!」と言い始めた。
竹本も渋々納得して、電話で菜穂を呼び出す事に成った。
しばらくして、菜穂が帽子を深く被り事務所にやって来た。
小柳を見て軽く会釈をしてソファに座ったので、早速澄江がCMの話を始めるが、乗り気な様子は見えない。
小柳が「北条さん、このままでは竹本プロが無くなってしまいます、貴女のCMで一億の損害賠償の請求をされています」と話してしまった。
菜穂は全くその事実を知らないので、驚きの表情に成ってしまった。