※この作品はR-18です。

悪夢の転身   作:花木 悠

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悪夢の契約

33-028

「社長本当なのですか?」と尋ねると「小柳君、北条君に心配させる様な事を言わないでくれ」と困惑顔に成る。

しばらく考えた菜穂が「私が軽率な行動をしたのが原因です、私の髪を切って解決出来るのなら喜んで協力します」と言い切った。

「北条さん、水着の撮影も有るのよ!良いの?」澄江が心配して尋ねる。

「ヌードでは無いので大丈夫です、今回はそれ以上の話題に成りましたから!大丈夫です!」微笑む菜穂。

竹本が「北条君、無理をしなくても良いのだよ」と再び忠告するが「これで私も吹っ切れます!」と昨年からのスキャンダルに別れを告げる切っ掛けにしたい菜穂。

 

翌日早速小柳は衣川に「契約成立です!闇プロから制作費の請求が有りましたが、これは?」と尋ねると「よし、早い対応に五千万を制作費に上乗せしよう、明日小切手を自宅に取りに来てくれ、CMの契約金として支払おう。但し撮影が出来なかったら一億八千万返金して貰う、契約書も忘れるな!それから一週間以内に撮影を始める事!」

「判りました、順番に消化していきます」で契約は成立した。

 

翌日契約書を受け取ると、小切手を持って今度は自分が制作した契約書を竹本プロに持参する。

菜穂も同席して契約書を読み始める。

①北条菜穂はこれまでのイメージを大きく変更する大胆な髪型にする事、K&Cの企業イメージをアップの為に、自分のこれまでのイメージの打破がテーマ。

②その髪型での水着撮影の為の準備をCM撮影会社の指示により行う事、肌を綺麗にする意味で水着着用の為の美容脱毛も医療機関で行う事、CM会社より指定の病院を指示するので費用はCM会社が全額負担。尚、独自でエステ等に行かれて、美容行為等をされCM会社の意図に反する場合は、キャンセルと成る場合も有る。

③撮影は品川のK&Cの美容室で行うが、ここでは洗髪のみの撮影で、実際の撮影は照明等の関係でスタジオにて行う。

④水着はビキニ、セパレートの二種類での撮影とする。

⑤時代劇のイメージが残っていますので、その連続で作品を制作する可能性が有る。その場合は全面的にK&Cが資金面のバックアップをして作品を制作する。

尚この契約には映画の制作費も含むが、出演料は二千万を支払う。

 

「美容脱毛もエステも行った事無いわ、嫌いなのよ!でも高校以来の水着着るなら、仕方ないわね!前から多少は気に成っていたから良かったかも」の菜穂の言葉に微笑む小柳。

「それで、宜しければサインをして下さい」小柳が言うと「あの時代劇では随分迷惑したので、忘れたいのですが?」菜穂が言う。

「逆に先方は気に入られて、一文を入れる様にと言われて映画製作にも意欲的です!カムバックには良いのでは?」小柳が恐縮して言う。

「この様な名前のCM会社聞いた事が無いな」竹本が不審に思う。

小柳が「我々の間では有名な会社ですよ、闇プロって変な名前ですが所謂黒子の意味ですね、本当の制作会社の裏で実務の仕事を行う会社です、大手は下請けに殆ど仕事を任せるのですよ」と竹本の不安を払拭した。

 

昨日衣川に「あの時代劇の着物姿が気に入っているのだよ、何かに使えないか?」と言われた小柳。

「会長実は北条君には美容整形に行かせる予定なのです」

「美容整形?何処を治すのだ?」不思議そうな顔の衣川。

「違いますよ、脱毛に行くのです、会長の為ですよ!」

「病院に私も入れるのか?」嬉しそうに尋ねる。

「闇プロの社長が松宮美容整形の院長ですよ、奥様があの咲江女医です」

「本当なのか!それは最高だな!咲江女医の亭主は美容整形外科か!」嬉しそうな顔に成る衣川、これまで何度か咲江の責めを間近で見学していたので、この時点でわくわくしている。

「はい、ですから脱毛も普通の脱毛には成りませんよ、会長が喜ばれる様に成りますよ」

「本当か先生にお金を渡してくれ、これを別に診察料として、わしのポケットマネーで払うよ」そう言って五百万の小切手を渡した小柳。

 

企みを知らずに、サインをする竹本と菜穂。

「私の為に、すまないね!ありがとう、ありがとう」と涙を流しながら握手をする竹本と菜穂。

「この黒髪ももう直ぐ見られないのね、菜穂さんのトレードマークだったのに、惜しいわね」と澄江が黒髪に触りながら抱き合っている。

「奥様、髪は直ぐに伸びますわ、新たな気持ちで頑張ります」菜穂が言う。

「北条君のお陰で竹本プロも助かったよ、本当にありがとう」小柳は不思議に思いながら契約書を胸に竹本プロを後にした。

スキャンダルで苦しめた女優を、何故竹本は大事にするのだろう?自宅に戻るまで疑問は続いた。

 

しかし、直ぐに電話で闇プロの有藤に「契約成立です、制作料三千万でよろしくお願いします、咲江先生には別に診察料として五百万頂きました」

「あの爺さん、奮発したな!事件に成らない様に充分注意をして、満足して貰える作品を作る準備をするよ、三千五百万頂ければ道具もエキストラも雇える」有藤は充分過ぎる報酬に喜んだ。

「竹本プロには映画の出演料も足せば一億二千万入るので立ち直れる」

闇プロは各テレビ局にも小柳程では無いがコネクションを持っているので、CMを流すのは安価で行える。

 

衣川はこの日を境に北条菜穂の事を調べ始めて、楽しみを倍増させていた。

特に最近のスキャンダル、時代劇、出演していた放送の録画を集めて楽しむ徹底振りで、関係者を驚かせる。

会社では絶大な力を持って、株式も個人で過半数を所持して、重役達も衣川の言葉に神経を尖らせる。

子供は女の子が一人居るのみだったが、その娘も癌で亡くなっている。

孫が美容師として東京の店を任されているので、後継者はこの衣川丈だと社内ではもっぱらの噂が有る。

美容師だが理容の免許も取得して、今後会社全体の管理運営に役立てようとしていた。

父親は祖父と意見が合わずに母と若い時に離婚で、その後は全く姿を見せた形跡も無い。

丈は父の事を知って祖父に反感を持ち、成人すると家を出て一人暮らしで、祖父とは時々顔を合わす程度だ。

拓次郎の妻も遠い昔に離婚をして、現在では他界したと聞いていた。

一緒に美容、理容の店を経営していたが、拓次郎の性癖が二人の仲を絶縁にして行った。

若い時から性癖は有ったが、成功するとその欲望は増大して行った様だ。

衣川老人には二億を税務署に払うか、CMに使うかの違いだから損の無い話だった。         

 

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