※この作品はR-18です。

悪夢の転身   作:花木 悠

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舌の侵入

33-04

一夜を共にして、話しやすくなった早代は「黒田さんって、菜穂さんの事が好きだから、乗り込んで来たの?」と尋ねる。

「それも有るけれど、僕の悪友の木原が菜穂さんを狙っているのが気に成ってね」

「今共演の?」不思議そうに尋ねる早代。

「女に手が早いからな、今まで泣いた女を沢山知っているから、気に成って来たのだ」

「本当は、黒田さんが好みなのでしょう?」そう言って微笑む早代。

お金を貰えるなら、今後も情報を流すとの約束をした二人は、肉体関係が有った事も忘れてお互いの思惑の為に団結した。

翌朝、黒田は早代の「姫路では絶対に、関係は起らないと思いますよ!私も今日から監視を強めますから、安心して下さい」の言葉に、仕事も有る黒田は帰って行った。

 

翌日考古園で、腰元として行儀見習いとして大奥に入った菊乃役が、将軍の目に止るシーンが撮影された。

着物姿に着飾った菜穂を間近に見て、木原の遊び心に完全に火が付いてしまった。

元々清楚系の好きな木原、菜穂の着物姿を見た事が無かった木原には新鮮だったのだ。

元々長い黒髪の菜穂は、他の役者さんが鬘を着けるのに、自毛を使った髪型に結い上げていた。

この正月特番が、女優デビューの北条菜穂、局側もそれを話題にしてこのドラマを制作している。

プロデュサー小柳が、態々竹本プロに出向いて出演依頼をしたのだ。

この小柳順一が、菜穂のファンで髪フェチだったのだが、誰もその事は知らない。

だが、この拘りが益々木原の心に楔を打ち込んでしまう事に成った。

三日目の朝、ロケの最終日、菜穂は髪を結って貰う為に早朝から臨時の化粧室に来ていた。

美容師さんが、髪を結って白粉を項から背中の上部に塗っているのを、目撃してしまったのだ。

その姿は艶めかしく、木原の脳裏に刻まれてしまった。

長い黒髪を上に、襟足の白さに呆然と見とれた木原。

ロケの間は切っ掛けも無く木原と菜穂は別々新幹線で帰路についた。

これは早代が木原に尋ねられて、異なる新幹線の時間を教えた為に離れ離れに成った。

 

小柳はこの作品の監督岩崎に、北条菜穂の新境地を開く作品にして欲しい、今までのイメージを打ち破りたいのが彼女の気持ちです。

公共放送の堅いイメージの払拭を狙った最初の作品ですから、大胆にお願いしますと本人には話さずに勝手に進言をしていた。

脚本には大店の商人の娘菊が大奥に上がって、菊乃に改めて将軍の手が付く設定。

将軍との寝所のシーンが注目の第一で、二番目の注目点は反対勢力に捕らわれて、折檻を受けてしまう場面、この二点を小柳が監督に強く指示をした部分だった。

脚本では、台詞が少なく菜穂には別段気に成らないシーンと思われる二番目。

将軍との寝所のシーンも、正月作品だから軽い気持ちの菜穂。

ロケの翌月、第一の寝所の撮影が行われる事に成った。

午前中監督から、トレーナーを着てのリハーサルを行うが、布団に横たわる菜穂の唇に軽く口づけをして帯を解いて、軽く胸を木原が掴む。

菜穂が目を閉じて、若干足を移動させてカットに成って終わった。

夕方に衣装と、メイクをして本番の撮影を行うと岩崎が告げてリハーサルが終了した。

本番では、ブラジャーもパンティも厳禁、アップに成るのでラインが映ってしまうからだ。

沢山着物を着込んでいる時は、和装用のブラジャーにパンティは許されるが、白い寝所の衣装は画像の良く成ったテレビでは、見える可能性大に成っている。

着替えをして早代に「昔の人って、風通しが良かったのね、お腹が冷えそう」そう言って笑いながら、撮影の準備をしていた。

木原には監督が前日から、リハーサルでは簡単に触れるか触れない程度に触って、本番では濃い演技をお願いします。

北条菜穂のお堅いイメージ払拭の作品したいそうですと指示をしていた。

木原には願ったり叶ったりの話で「出来るだけ頑張ってみます」と答えていたが、内心は菜穂を物にした時のリハーサルと、本当に初心なお堅い女性なのか?それを確かめるには絶好の機会だと思っていた。

控え室で顔を合わせて軽く挨拶をして、セットに入って行く二人。

ガウンをお互いが脱いで、寝所のセットには入って行くが、緊張しているのは木原の方で、菜穂は下着が無い事に気を取られて、内股で静々と歩いて高級布団の処に行った。

「菊乃は、横に成って準備して下さい」岩崎監督の声が飛ぶ。

菜穂が横に成って、リハーサルの様に目を閉じて待っている。

「一発本番で行きますよ、失敗の無い様に!」の監督の声。

菜穂の側に座って、決められた台詞を喋る木原、頷く演技だけの菜穂。

菜穂は自毛の状態で寝ているので、鬘に気を遣う心配も無く目を閉じているだけ。

白絹の寝着の紐に手をかけて緩める木原、小刻みに震える菜穂は演技なのか?本当なのか?判らないが良い絵柄に満足している岩崎監督。

木原がここで唇に口づけをするのだが、リハーサルでは触れただけだったが、監督が「気持ちを込めて!」と言うと、木原の唇が菜穂の唇に重なる。

リハーサルとは異なる口づけに戸惑うが、我慢をして演技をしていると、舌を入れようとしてくる木原。

驚いている時に、今度は右の乳房を着物の上から力を入れて揉む様に触った。

いきなりの刺激に、思わず唇を開くと木原の舌が侵入して驚く菜穂が足を少し動かした。

その様子に「カット、良かった!良かった!」岩崎が拍手をすると、その場のスタッフが全員拍手をした。

木原が拍手に答える時、漸く起き上がった菜穂は、驚きながらも微笑む仕草をした。

「北条さん、初めての演技とは思えなかったよ!実に良かった」褒め称える岩崎。

直ぐに控え室に駆け込んで早代に「驚いたわ、いきなり舌を入れてきたし、胸も揉まれて悲鳴が出そうだったわ」胸の鼓動を押さえる様に話した。

「私も見学していて、驚きました!リハーサルとは全く違いましたね」

早代の頭には木原が狙っている!の言葉が刻まれていたので、芝居の中でアピールしたのだと思った。

このキスが、菜穂の心に刻まれてしまったとは、早代には判らない事だった。

 

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