33-042
安達は翌週から、ビッグカップルの取材でハワイに出張に成っている。
恭子も仕事で、木原の監視も芽生の監視もしていなかった。
もう木原が芽生を狙うとは考えられなかったので、二人は完全に油断をしていた。
そんな木原が芽生に電話で「良い紹介相手が見つかった、来週末打ち合わせをしたいと連絡をしてきた」
芽生は暴力団の事件でも話題に成らず、忘れられた状態に成っていたので木原の誘いを大いに喜んだ。
だが考えて翌週安達に連絡だけはしておこうと電話をしたが繋がらない。
飛行機の中の安達には、連絡は届かなかった。
丈は連絡を前日菜穂にして、火曜日早朝白の車でマンションの近くに迎えに来た。
先日菜穂が、白が好きだと話したのでレンタカーを借りてきた様だ。
「衣川さん、今日は白の車?」不思議そうに尋ねると「レンタカーですよ!サラリーマンですからお金は有りません、マンション住まいですよ!河口湖に行こうと思っているのですが良いですか?」今日は長い髪を後ろで束ねて、白のワンピースで半袖姿の菜穂。
「本当に白が好きですね」服装を見て一気に喋って嬉しそうな丈。
「大きな家にお祖父様は一人なのに、一緒に住まないのですね」
「お爺さんとは合わない部分が多いから、一緒に住んでないのですよ」過去に何度か事件を起こしている祖父の趣味も丈は合わない原因のひとつだった。
母から何度かその話を聞いた事、それが原因なのかは判らないが、父と合わず祖父が追出した事も原因だ。
「私河口湖って初めてですわ、天気も良いので楽しみだわ」
「今日は鬘では無いし、誰でも北条菜穂さんだと判りますよ」微笑む丈。
「もう逃げ隠れしても仕方が無いでしょう?CMも流れますからね」笑顔で答える菜穂。
「僕は菜穂さんの事は信頼していますから、安心して下さい。だって結婚をする気持ちは本気ですから」照れながら話す丈は車を発進させた。
車は中央道を河口湖目指して走るが、丈は初めてのデートで緊張しているのが手に取り様に判る。
菜穂も何を話せば良いのか、戸惑うので沈黙が続いている。
「河口湖は観光地多いのですか?」漸く何かを喋ろうと菜穂が話した。
「洞窟とかに行けば、菜穂さんが見えないから良いかも?」そう言って初めて喋り始めた。
「洞窟があるのですか?」初めて聞いたので興味が湧いた菜穂。
「富岳風穴と西湖の蝙蝠穴ですね」と言うと早速スマホで探し始める菜穂。
「指紋認証しているのですね、楽ですか?」スマホの操作を見て話した丈。
「暗証番号を付き人に見られた様なので変更しました」と微笑む。
探し出して「面白そうだわ、洞窟行きましょう」菜穂は嬉しそうに言って、和やかな雰囲気に成っていた。
二人の行動とは全く別の世界で、有藤達の準備は順調に進み大きなアクリルの水槽がスタジオに設置されて、スタジオの全員が大きさに驚いていた。
有藤と咲江は時間が出来ると、綿密な打ち合わせを行う。
今回の撮影には見学会員の入場はさせないで、小柳と衣川の二名のみが見学者と成る。
エキストラの人も皆無で、咲江を始めとして闇プロ関係の人達が出演する事にした。
全員が鬘に着物姿で、時代劇の衣服を着て撮影をする事に成った。
小柳が衣装を貸してくれるので制作費も助かっていた。
時代劇の撮影所でのSM調教に成るので、現在と江戸の二つの要素を持たせた作品。
「先生、例のガスですが、量を間違えるとどの様に成る?」
「少ない時は効果は全く無いけれど、多い場合は記憶の欠落が起るらしいですよ、間違えると大変なのよ」
「時間は?どれ位の間の記憶が消えるのですか?いつもよく判らない」
「個人差が有るけれど、二時間から三時間の記憶が欠落する様です」
「意識の有る麻酔の様なものだね」有藤は微笑む。
ここのスタジオでも、数回使用の経験が有るが毎回使用には神経を使っていた。
意識の無い時に色々な事は出来るが、それでは全く面白く無い!暴れて色々問題が起っても困る場合に、その両方の効果が期待出来る薬がこのガスに成る。
「元は麻薬ですから身体には危険ですが、面白い薬だと思います」
会話の後、スタジオのセットを見て回る咲江が「ここが中条流の部屋ね」と見るとカメラが二台置ける台と、木の枠の中に自動撮影のカメラが五台準備されて、天井のライトの横には全体を撮影出来るカメラが準備して有る。
将軍の寝所に向かう時に、誘拐される場所は簡単なセットが在るのみで、数分間の撮影だけの為にしてはきっちりと作られていた。
大きな水槽の部屋には、天井に滑車の設置が梶原の指示で今作られていた。
「ここは、大掛かりですね」と咲江が言うと「これを境にマゾ女に変わるシーンですからね、重要です」有藤が答える。
最後の部屋には、木枠に首、手を入れて、腰を吊り下げる縄が準備されている。
「ここが最後の調教で、二穴を徹底的に責める場所に成るのですね」
「ここまで来た時には、もうされるままで抵抗も無く先生の自由でしょう?」と微笑む有藤。
咲江は殆ど男性経験の無い菜穂に、二穴調教を出来る事に興奮を感じていた。
その後の会議の中で自分以外の人間は全員、北条菜穂はSM好きのマゾだと思っているのが、おかしくて吹き出しそうに成っていた。
丈とのデートを楽しむ菜穂は、すっかり打ち解けて会話も弾んで楽しい時間を過ごしていた。
平日で、洞窟の中には人気が少なく恐い雰囲気に、手を繋ぐ機会が増えて我慢が出来なく成った丈が、菜穂を抱きしめて唇を重ねる。
「菜穂さん、好きです」と語る唇は、菜穂に重なると激しいキスに変わって舌が絡み合う。
帰りに成って別れるのが辛くなる丈が、ホテルに誘うが「駄目ですわ、結婚が決まらなければ、私はその様な処には行きません」と目の覚める様な断り方をした菜穂。
我に返った丈は、菜穂のマンションの近くでキスをお額にして別れた。
「今度お会い出来るのは、撮影が終わってからに成りますのですみません」と言った。
丈も「今度会う時までに意志を固めて来ます。良い作品が出来ます様に衣頑張って下さい」そう言って二人は別れた。
それは、丈が祖父に結婚の許しを貰うと言う意味だった。
最後まで作品の詳細の話が無く、拓次郎の作品だと丈は知る事は無かった。