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菜穂が受け取った台本には、実際には行わない郊外でのロケも書かれていた。
その為、台詞を覚えるのに時間が必要と成って、翌日から自宅に籠もっての勉強に入って居た。
スタジオの撮影が行われて、その次の週にロケが行われて終了のスケジュールに成っていた。
翌日も、朝から丈は小まめにメールを送ってきて、菜穂の心を穏やかで楽しいものに変えていた。
撮影の台詞を集中して覚える菜穂、気掛かりな事は再び縛られる様なシーンが有る事が少し気に成る。
大奥から連れ去られて、町医者の処に連れて行かれるシーンが何故か胸騒ぎを感じていた。
妊娠していないのに堕胎される場所に連れて行かれて、浪人者に危機一髪を助けられる設定。
その浪人者と一緒に悪を成敗する事に成るのだが、少し腑に落ちないと思いながら読んでいた。
水野芽生は安達に連絡が出来ないけれど、有名に成りたいので木原の誘いに乗る事にしていた。
自分は木原と関係が出来ても、有名に成りたい願望が強いので進んで会うと返事をしてしまった。
木原は来週の火曜日にホテルで食事をしたいと連絡をしていた。
木原は奇しくも菜穂を強姦したホテルでの食事に招待をしていた。
縁起を担いだ訳では無かったが、一度上手く運んだ場所は木原も手慣れていたので選んでいた。
連絡を貰った芽生は電話が繋がらなかったので、最後だと思ってメールを安達に送りつけた。
(明日、木原にホテルで食事を誘われました)このメールを受けた時、今度はアメリカ国内の飛行機の中、安達が恭子に連絡したのは当日の昼過ぎだった。
恭子は九州に仕事で出かけていたので、早く戻っても水曜日の午後。
以前から渡しているボイスレコーダーは、必ず装備して一言一句を録音する事。
予備に必ずもう一台も録音をする事、危なくなったら逃げる様にとのメールを安達は送るのが精一杯だった。
芽生は上手く録音出来れば、有名に成れると信じている呑気な娘だから安達も不安一杯だ。
翌朝に恭子は仕事を切り上げて、飛行機で帰ろうと予約を入れたが、台風接近で時間が未定に成って鹿児島空港を離陸出来ない。
ホテルに連絡すれば、失敗は確実で木原の尻尾は掴めない。
もう芽生に運命を託すしか道は無いと、新幹線の駅に予約に向かう恭子。
一方、闇プロは最後の点検を行って、明日の撮影準備が万全だと衣川拓次郎と小柳に連絡をして、十一時から撮影を始めます。
十時半にはスタジオに来て欲しいと伝えていた。
菜穂は九時にはスタジオに入らないと準備、化粧、着替えが待っている。
菜穂の携帯に、有藤から「明日九時前にはスタジオに来て頂きますので、八時過ぎにお迎えに行きますので、準備をよろしくお願いします」と連絡が入った。
(丈さん、明日はメール出来ないからね、九時から夜まで撮影だから、終わったら私からメールするから、我慢してね)と送った。
(寂しいけれど、我慢します、後少しの辛抱だから、頑張って!復帰作期待しています)と返信が来た。
丈も今日から名古屋地区の店長会議に向かって、明日の午後東京にもどる予定に成っていた。
月、火、水が店の定休日が重なるので、関西は月、火が多く、関東は火、水が多いので、会合等は週初めの三日間に集中する。
今は、祖父の下で働く人が社長だが、実質は拓次郎のワンマン経営の会社だ。
最近は拓次郎は高齢で各地に行く事は無いので、手分けをして丈も各地に行く事に成っていた。
将来は多分社長に成るだろう!は社内では決まった事に成っている。
火曜日の夜、小型のボイスレコーダーを隠し持って、待ち合わせのホテルへ向かう水野芽生は、不安半分期待半分でロビーに入った。
ロビーにサングラスで顔を隠した木原が、直ぐに芽生に気づいて近づいてきた。
芽生は全く無名の女の子で可愛いだけだから、ホテルの従業員も客も全く関知していない。
「久しぶりに見ても可愛いな!もう直ぐテレビ局の人が来るので、レストランに行こう」
「テレビ局の人が来られるのですか?」笑顔に変わる芽生。
「先に食事をして、来るのを待とうか?お腹が空いただろう?」そう言いながらホテルの奥に入って行く木原。
芽生はこの時、木原が本当に紹介してくれるのでは?と思い始めていた。
「和食にしたよ、好きか?」と尋ねられて「大好きです」と答えて付いて行く。
予め個室を予約していたのか、畳の個室で入り口を入った右側の部屋だった。
座ると着物を着た従業員が「いらっしゃいませ」と言って、料理をお持ちしますと告げた。
「お飲み物は?」と尋ねると直ぐに木原が「赤ワイン二つと注文してしまった」
給仕の女が出て行くと「私未成年なので、お酒は?」と芽生が遠慮をすると「十九歳?お酒が飲めないと、タレントは無理だよ!」と決めつけて言う木原。
「君は、タレント希望か?歌手か?」と尋ねて期待を持たせる。
「私は歌が上手くないので、タレントか女優さんが希望です」と微笑みながら話す姪。
しばらくしてワインが運ばれて先付けが一緒に運ばれてきた。
「それじゃあ、芽生ちゃんの芸能界入りをお祝いして、乾杯!」とワイングラスを合わせた木原。
一口飲むと直ぐにワイングラスをテーブルに置いて、飲まないで芽生は注意している。
食事の方を食べ始める芽生は「美味しいわ」と嬉しそうな顔に成った。
直ぐに刺身の盛り合わせが届いて、木原は既に一杯目を飲み干して二杯目を注文している。
芽生は飲み物を一口飲んだだけで、全く飲む気配が無い。
「芽生ちゃんはお寿司が好きか?」と尋ねる木原「はい、お寿司は大好物です」と答える芽生。
木原はこのホテルの常連で、店の従業員もよく知っている。