プラチナとアリアは他愛もない会話をしつつ、ラドネアの裏通りにある、奴隷市場へと向かう。
奴隷市場が見えたところで、アリアはプラチナに奴隷について説明する。
アリア曰く、奴隷にも種類があるとのことだ。
普通の奴隷は安い労働力として扱き使われるが、これはかなりマシな部類だという。
他にあるものは性奴隷と戦闘奴隷で、その名の通りの使われ方をする。
とはいえ、戦闘奴隷である場合でも性奴隷として扱われることも多々ある。
他には奴隷としての商品価値が無くなってしまった廃棄奴隷というものが存在する。
基本的に廃棄奴隷は理性が完全に無くなった、狂った状態か、もしくは病に冒されたり、四肢欠損をしているという。
見世物として処刑されるか、奴隷市場内にあるトイレに死ぬまで設置されるのが基本的な扱いだ。
廃棄奴隷は非常に安く、それこそ1エルで――この世界で広く流通している通貨で、1エルでは普通の店では何も買えない――買えるそうだが、廃棄奴隷を買う者は余程の物好きだそうな。
「迷う、物凄く迷う」
説明を聞き、プラチナは悩ましげにそう呟いた。
「プラチナ、何を買っても構いませんよ。予算は気にしないでください」
「うん、それはそうなんだけど……我慢しとかないと、あれもこれも買いそうで……」
遠慮しているプラチナにアリアとしては、しっかりしていると感心してしまう。
「とりあえず、行こう」
「ええ。行きましょう」
そして、プラチナとアリアは奴隷市場へと足を踏み入れた。
奴隷市場でまず最初に感じたのは、その臭いだ。
体臭と汗と精液の臭い、それらに加えて色んな臭いが混ざり合い、中々に刺激的だ。
それは売られている奴隷が発しているものだけではなく、行き交う人々や、奴隷の味見をしている者達からも発せられていた。
奴隷の味見とはすなわち、性行為である。
知らず知らず、プラチナの男根が大きくなってしまうが、別に今更だ。
勃起状態で歩いているふたなりなど、そこまで珍しくもない。
奴隷商人達やその従業員による客引きは威勢が良いものも多い。
売られている商品が奴隷でなければ、魚市場のように思えるかもしれない。
プラチナは完全に誰が見てもおのぼりさんであり、百戦錬磨の商人達からすればカモであったが、その隣にいるアリアがそれをさせない。
彼女はまるで戦場で敵を威圧するかのように、周囲に視線を巡らせている。
私のプラチナの邪魔をしたら殺す――という明確な殺意を胸に抱いて。
そんなアリアの気も知らず、プラチナはアリアの手を引っ張って、あっちこっちの奴隷小屋や檻を覗く。
すかさずに奴隷商人や従業員が声を掛けてくるものの、巧妙な話術で買わせようとしてくる彼らに対し、アリアはプラチナの後ろから思いっきり睨みつける。
すると、まるで蛇に睨まれた蛙のように彼らはぎこちなくなり、ごゆっくりとだけ言って、慌てて奥へと引っ込んでいく。
ある意味、営業妨害も甚だしいが、アリアにとって知ったことではない。
そんな中、プラチナはとある店の横にあった公衆便所という立て看板に鎖で繋がれた奴隷に目をつけた。
その奴隷は狐の獣人――狐人だった。
頭に狐耳とお尻に尻尾が生えている以外は人間と変わらない見た目であるのだが、 その奴隷には尻尾が9本あった。
俯いていて顔は見えなかった。
「ねぇ、アリア。あれって九尾の狐?」
プラチナに尋ねられて、アリアもまた数m程先にいる、その奴隷を見る。
何だか彼女はその狐人に見覚えがあった。
「……プラチナ、アレはおそらくですが……2000年程前、東の大陸で暴れまわった九尾ですよ」
「え、そうなの? 何でこんなところに?」
「顔を見てみないことには分かりませんが……私も討伐後の経緯は詳しくは知らないのですが、子宮に魔力を封じる術式が刻まれて、完全に力を失った筈です」
その会話が聞こえたのか、九尾らしき狐人が身動ぎした。
そして、顔をゆっくりと上げる。
その顔は美しかったが、何だか生意気そう――という印象をプラチナは抱いた。
すると、九尾は形の良い鼻を引くつかせ――
「くっさ。汚らしいドラゴンがいるみたいですね。恥垢塗れの変態糞ドラゴンが」
プラチナの抱いた印象は大正解だった。
しかし、変態糞ドラゴンというのは中々言い得て妙で、感心してしまう。
「プラチナ、さっさと行きましょう。関わると面倒くさいですから」
アリアは頭にきたが、ここは大人の対応をした。
「待って、アリア。ちょっとお話をしてみたい」
「やめたほうがいいですよ。アレの性格は最悪ですから」
「大丈夫、何とかなる」
そう言って、プラチナは九尾へと近寄っていく。
アリアはハラハラしつつ、その後を追う。
プラチナは九尾の目の前までやってきて、屈んだ。
九尾の金色の瞳がプラチナを見つめる。
「あら、珍しい。あなた、あの糞ドラゴンの番ですね。まー、おめでとうございます。永遠に不自由のない生活を送れますわ。あーくさいくさい。うんこくさい」
嫌そうな顔をする九尾、しかし、プラチナはじーっと彼女の顔を見つめる。
「……何ですか? 私の顔に何か? 今じゃ廃棄奴隷ですけど、顔はあなたよりも良いですよ」
「ちょっと聞きたいのだけど、あなたはどんな名前なの? 私はプラチナ」
「珍しい、名前を聞いてくるなんて。ま、いいでしょう。私は舞華です。文字は東方の大陸独特のものですから、学のないあなたじゃ分からないでしょうけどね」
名前を聞いて、玉藻ではなかったとプラチナはちょっと驚いた。
九尾の狐=玉藻という雑な等式は地球からきたプラチナならではだった。
色んな作品に九尾の狐は玉藻という名前で出てきた為に、すっかり刷り込まれていたので、新鮮だ。
「で、その股間にぶら下がって大きくしているもの、突っ込みたいんですか? それなら、さっさと済ませてくださいな」
そう言って、舞華は長い足を開いてみせる。
すると、そこには大きくそそり立つ皮を被った男根とパンパンに膨れ上がった玉袋があった。
その男根と玉袋には不思議な紋様が刻まれている。
「ああ、これですか? 子宮の魔力封印と並んで、非常に忌々しい射精封印です! おかげさまで、この2000年間、ずーっと射精はしてません。嬲られるだけの肉棒です! まあ、マンコに突っ込んだこともこの2000年ないんですけども!」
プラチナは唾を飲み込んだ。
それだけではないと彼女は直感していたからだ。
それを舞華もまた察した。
「チンカス塗れですよ! お察しの通りね! 昔は私のチンポを巡って戦争まで起きたくらいなのに!」
腰を動かして、その巨根を揺らしてみせる舞華。
それを見て、プラチナは問いかける。
「何で廃棄奴隷なの? 顔も良いし、肉体も問題なさそうなのに……」
「マンコですよ、マンコ。2000年の奴隷生活のおかげで、すっかりガバガバ、しかもグロマン。ま、幸いにも九尾が子供を孕むと面倒くさいって思ったらしくて、薬のおかげで妊娠したことはありませんけどね」
それに、と舞華は更に言葉を続ける。
「ケツ穴もゆるゆるです。今日はまだ出ているような感じはしないですけど、糞も小便も垂れ流しで、臭いったらありゃしない。それに、ここ3ヶ月くらいは私に挿入する輩もおりませんし、緩くて気持ち良くないってことが広まっているんでしょうね」
言い終えて、ふん、とそっぽを向く舞華。
それを聞き終えて、プラチナは非常に興奮した。
彼女の黒いスカートの前側は、勃起した男根で捲れてしまっている。
「流石は変態糞ドラゴンの番。こんな私を見て、そんなに勃起するんですか? 本当に最低の変態ですね」
「うん、最低の変態だから……すごく興奮した。あなたみたいな綺麗な女性のマンコと肛門がガバガバのグロマンだって聞いて……」
舞華はジト目でプラチナを見つめる。
「いや、そこですか? あなた、変わっているって言われません?」
「変わっているかもしれない。だが、個人の性癖は尊重するものだと思うの」
「そりゃそうですけど……自分で言うのもなんですが、マンコの方も洗ったりはしてないので、マンカス塗れですよ? まあ、変態糞ドラゴン程ではありませんけど」
「そこがいい。そのギャップ……いわゆる差というものが、すごく興奮する」
舞華は溜息を吐いた。
変態糞ドラゴンの番になるくらいなんだから、頭がおかしいに決まっている――
彼女はそう結論づけ、再度問いかける。
「で? どうするんですか? ヤるんですか? まあ、私も、3ヶ月もヤッてないですから、別にいいですけど」
「ここだと恥ずかしいので……」
プラチナはそう言って、にっこりと笑った。