・FF14漆黒のヴィランズネタバレあり/空想考察成分過多
・愛に潰される「あの人♀」、そして潰したヒュトロダエウスの、
あったかもしれないし無かったかもしれない副編最終話
・某ぴくしぶ公開分(Augustwal名義)の再掲
「ああ…ようやく、か」
不毛な戦いの末に14人委員会からの妨害を制して、ついに展開・構築を完了した術式により、新たな星の理は正しく召喚され、「彼」は満ち足りた穏やかな表情でその様を見上げていた。
「終末の日」、己の体が燃え盛る炎と崩れ行く瓦礫に包まれるよう偽装した彼は、「妹」と友の前から姿を消した。
やがてエメトセルク達の手によってゾディアークが生み出され、その処遇を巡って人々が紛糾を始めるようになると、終末の日の犠牲者となったとある死人の戸籍を乗っ取り、別人を装っていた彼は、委員会に真っ向から歯向かうようになった「妹」の為に、まさに悪鬼の所業にその手を染め始めた。
同じく終末の日に「犠牲」となった、元『座』を預りし者の遺した研究データとコネクションを駆使して、真なる星の意思の存在を流布し、新たな理の創造を是とする風潮を創り上げ。
時には繁殖対象となった生命体の集落で守備隊が「事故」を起こすよう暗躍し。
終いには、とある『座』持ちを「病死」させて、本来『座』に付くべき力を持たぬ者にすげ替える程の悍ましい犯罪行為すら、己の責務と定めて淡々と実行する。
とうとう、義憤から激情の芽生え始めたアーモロート市民の、反感を抑えきれぬほどに行政府を弱体化させることに成功したのだった。
人々を二分して勃発した悲惨極まりない大戦すら、己をすでに人の身に非ざるモノと定めた男の手によって撃鉄が引かれた事を知るものは誰もなく。
世界は明日をも知れぬ混迷の中を、闇雲にひた走り続ける時代に突入していった。
そして。
「ふふ、あの子の創るものはいつだって美しいな」
当初は勝てる見込みの無かった戦いを、「彼」の裏工作に支えられて耐え抜いた委員会反対派たちは、その計画を違えること無く遂行した。
「同じ目的を持って造られた筈のゾディアーク、あれの放つ波動とこうも違うものなのか。…これなら、きっと」
真なる『星の使徒』たる愛しい女が、己の本心すら封じてひたすらに求めた健やかな未来が、きっとこの先、紡がれる事だろう。
時待たず、生み出されたばかりの新たな星の理…<ハイデリン>から放たれた、全てを飲み込む強大な光を、視界に認めて。
「…………愛してる、誰よりも。いつだって、君だけを想おう。我が至高なる情動よ」
名も、姿すらをも捨てた男は、血に塗れ続けた両手を空に向かって広げ、待ち続けた贖罪を受け入れるかのように微笑みながらその中に消えていった。
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それから、筆舌に尽くしがたいまでの長い長い、とてつもないほどの時間が過ぎ去っていって。
かつてヒュトロダエウスと呼ばれていた男の写し身が、今日も幻影のアーモロート街を彷徨っていた。
いつもと変わらぬ、「終末の前日」の再演。穏やかに在る事が許された、幻の彼方の一日の繰り返し。
今回は珍しく、アシエン・エメトセルクが市街に戻っているようだったが、愛で満ちていたあの部屋ではなく、彼は行政府に留まり続けている。
(あれはいつからのことだったか…誰のことだったのか…エメトセルク、君は)
己が不自然なコピーであることを認識しながらも、影たる身は酷く心を痛めていた。力なく、手近な場所に腰を下ろす。
(なぜ君はひとりなんだ…。なぜ「あの人」を探さないんだ…。ああでも、名前も、顔すら、思い出せない。ワタシも確かに「あの人」を、誰よりも愛していたはずなのに、覚えているのは…)
やるせない気持ちを抱えながら、恋しい存在達を想い募るも、「今日は行政府を訪れない」という行動指針をあらかじめ植え付けられている、ただの「にぎやかし」には、友に言葉を届ける事すら許されていない。
(せめてもう一度、あの輝きに出会えたら…そうすれば、ワタシは…)
そも、当代のエメトセルクの差し金か否か、最愛の「あの人」の記憶すら、オリジナルのヒュトロダエウスのそれとは比べるのもおこがましい程に不確かで曖昧になっている事が、彼はとても悲しく、切なかった。
たとえ奪われているのが、罪の記憶であったとしても。
(…おや?)
ふと、異質なエーテルを纏う生命体の気配を感じて、ヒュトロダエウスは首を傾げた。
(時間軸が違う?ああ、この幻影の街の住民ではない、「今」を生きている子達のようだ……どれ)
エーテル感知能力の展開方法をどうにかこうにか思い出し、男は珍客の魂の軌跡を追い始めた。
(?、そんな筈は…………いや。まさか……)
彼は即座にすっくと立ち上がり、驚き冷めやらぬまま、その軌跡を追って歩き始める。
(ふたつ…?)
いや、そんなことはどうでも良い。自然、足が早まる。
嗚呼、紛うことなきこの不思議な魂の色は。漆黒に塗りつぶされた仮初めの記憶の奥底から、情動を呼び覚ますこの輝きは。
やがてたどり着いた人民登録局において。
ヒュトロダエウスは、ぼんやりと長椅子に座り込んでいる小さな小さな人影を認めるのだった。
「…………隣、いいかな」
遠い遠い昔、友と一緒に初めて「あの人」と引き合わされた際の記憶が、じわじわと蘇る。
幼すぎる「あの人」はたしか、大事な宝物を奪われて、泣いて泣いて泣き叫んで倒れた数日後、という状況であったか。
想い出の中の自分を確かに認識し、それをなぞるようにして、ヒュトロダエウスはまったく同じ様に振る舞うのだった。
「……?」
不思議そうに首を傾げて小さな人物が顔を上げ、友人の纏うエーテル色にそっくりな紫紺の瞳が、影の身であることを象徴する仮面の下の瞳と交差した。
「…エメトセルクを追ってきたのかな?」
脆く儚い肉体に貯め込んだ膨大な光のエーテルに、不可思議な煌めきを秘めた綺麗な魂を潰されそうになっている「彼女」はこくりと頷いた。
ヒュトロダエウスの事を怪訝そうに見上げる顔が、やはりいつかの「あの人」の表情に重なる事に、彼の心は歓喜を覚えて満たされていく。
(ああ…そうだ。エメトセルク、いやハーデス、どうか思い出してくれ。僕らはあんなにもこの子を…!)
ならば自分は、愛しい「あの人」と、親愛なる友人を繋ぐべく、「兄」としての役割を果たさねばならない。
創造主によって植え付けられた行動規範は、作り出された写し身たちにイレギュラーな行動を許すものでは無かったが、ヒュトロダエウスは意思(ノイズ)の力でそれをねじ伏せて、アーモロートの終焉と、彼の者について滔々と語り始めるのであった。
(…………愛してる、誰よりも。いつだって、君だけを想おう。我が至高なる情動よ)
影の身でありながら、彼は奇しくもオリジナルのヒュトロダエウスの最期の時とまったき同じ言葉を胸の内で呟く。
そして、伝わらぬとと知りながらも仮面の下で微笑みを浮かべて、「彼女」に別れを告げるのであった。
「では、良い結末を。懐かしく、新しいキミ………」
無情にも訪れた、「最後の今日」の終わりの時を迎え、遥かな記憶の余韻と共に消滅していった。
「彼女」ならきっと、彼の者を永劫の苦しみから解き放ってくれることを、信じて。
そして辿り着くべきひとつの結末の、更にその先でいつか、新しい幸福の形が二人にもたらされることを、ただひたすらに願って…。
<かくて示された>