・愛に潰される「あの人♀」、そして潰したヒュトロダエウスの
あったかもしれないし無かったかもしれない副編
・本話R-18展開あり
・某ぴくしぶ公開分(Augustwal名義)の再掲
「おーい、明かりも付けずに…あれ」
長期の出張を余儀なくされた友人に頼まれ、「数日後に」という謎めいた条件を完全に無視して彼の住居を訪れたヒュトロダエウスは、久々に顔をあわせる「妹」の姿を、奥の部屋の寝台の上にようやく認めることができた。
しかしすぐに、剥き出しのほっそりした腕と、仄暗い室内に浮かぶかのような白い脚に気づいてぎょっとする。
「…なんて格好してるんだ、まったく。いや…それとも」
肌触りの良い上掛けにくるまって、静かに寝息を立てている娘の目尻には涙の跡が残っていた。
咄嗟に彼は視覚に魔力を集中し、部屋の様子を改めて伺った。止めればよかったとすぐに後悔する羽目になるのだが。
「うわ……」
そこに映ったのは、娘の身体の下腹部を中心として、ここには居ない人物の紫紺色のエーテルが未だ散逸しきらずに揺蕩い、これでもかと存在を主張する光景だった。あまりの生々しさに、さしものヒュトロダエウスも驚きの声を隠せない。
(まだこんな密度のエーテルが残ってるなんて。……さては抱き潰したな)
考えたくなかった予想が見事なまでに的中したことに、彼は頭を抱えた。
(い、いやいや、動揺してどうする。分かっていたことだろう…分かって…)
伴侶として彼女の隣に在ることを諦めたのは、紛れもなく己の決断だ。
ようやく心を落ち着かせると、ヒュトロダエウスはひとつ頭を降って、「兄」として振る舞うべく寝台に近づいた。
「ほら、起きて。体調を崩したらどうするつもりなんだ。食事もまだだろうに…」
まだ最後の肉体成長期を迎えていない小柄な身体を引き起こして、青年は壊れ物を扱うかのように抱き締める。
上掛けが滑り落ち、一糸まとわぬ身体が露わになると、どうしようもなく胸が跳ねるのを必死で制しなくてはならなかったが。
「んー…」
覚醒しきらないとろんとした思考が、やがて自分を抱く人物の体温をぼんやりと感じて。
「……はー…です?」
ぎくりとして、ヒュトロダエウスは返って彼女を抱く腕に力を込めてしまった。我知らず、息が上がる。
「んっ…、まだ…するの…?もう…ばかぁ……」
細い腕がゆるりと伸びて、青年の背中に回される。
間違いなく女としての色香を含み、与えられた愛情の余韻に浸り続ける甘い声が、自分で思うよりも諦めの悪い男の理性を手酷く切り裂いた。
どくどくと、鼓動の音に合わせるかのように、それは致命傷を受けたがごとく彼の心から吹き出して。
「…でも、すき………」
「……ッ!」
やがて、尽きた。
(君が悪いんだよ、ハーデス。僕は、油断するなと何度も忠告した筈なのに、ね…)
「ん…っ、んっ…ぅ」
情欲にまみれた心の波動で、疲労の極みにより遮断しきれず酔った娘が、彼の肩口に額をぐりぐりと擦り付けて甘い声を上げる。
その様子を底冷えする眼で観察しながら、彼は知識として記憶に留めたイデアの中からとある薬剤の組成式を引き出しつつ、更にみっつの分子式の創造魔法を構築し始めた。三重詠唱[トリプル]どころではない、四重詠唱だ[クワトロ]だ。
そうして出来上がった薬剤と、少量のエタノール、そして甘味料を、一拍置いて顕現した水球に溶かし込んでから全て己の口腔に収めてしまうと、ヒュトロダエウスは娘の顎に優しく手を添えて持ち上げ、しばしの逡巡の後、瞳の色を見られぬよう瞼を閉じて深く口付けた。
「…んぅ。んぐ…」
細い喉が、むせぬよう慎重に流し込まれる甘い甘い液体を、こく、こく、と飲み下す。
「舌、出すんだ」
どうにか友人の口調に寄せつつ、青年はいつからか思い描くようになった醜い願望を、するりと言葉にした。
あっという間に酩酊した娘が、ためらうようにそっと桃色の舌を唇の隙間から僅かに差し出すと、「兄」の仮面をかなぐり捨てた男はもう一度深く深く口づけ、思うままに吸い付いた。
じゅる、じゅるっと、音が立つ度に、甘露とも唾液ともつかぬ液体が二人の唇の端から溢れて、清潔なローブと、白い素肌の上に滴り落ちる。
品行方正なる市民の象徴ともいえるローブの合わせ目をもどかしげに解くと、ヒュトロダエウスは己も胸元をはだけて、彼女との肌との距離を縮めた。
誰も知る由のない秘密の抱擁は、彼らの属する種族が「生涯でただひとつだけ執着する存在を見つけると、得てしてそれに囚われる」という、悪癖にも近い唯一の傾向を、この上なく満たしてやまない。
万が一にも顔を見られぬように注意しながら彼女の頭を己の胸板に押し付けると、青年は自分の腿を跨がせるようにして小柄な身体を座らせた。抵抗する気力をまるでもたぬ肢体は、成すがままにふわりと彼にしなだれかかる。
自然、下半身に欲情と血流が集中するのを、男は止められない。
片腕で彼女のしなやかな背を抱き寄せ、自分の太腿を彼女の内股に擦り付けるように軽く体を揺さぶってやる。
もう片方の手で控えめな胸の膨らみを丁寧に揉みしだくと、彼の両足の間が嫌でも昂り始めた。
ぴん、と尖った胸の先端を摘んでやると、小さな手が彼の胸板を所在投げに彷徨い、かしかしと肌を掻いてくる。
「気持ちいいか?」
「…んっ、ん…うん…っ」
「ふふ、ならもっと気持ちよくして…やる」
女性経験などあるはずもないヒュトロダエウスであったが、かつて学術のひとつとして学んでいた人体の構造の知識に基づく、彼の拙い愛撫に悶える姿に満足し、うっそりと凄絶な笑みを浮かべた。
娘の身体を寝台にうつ伏せに寝かせると、その腹に腕を回して持ち上げながら膝を立てさせ、容赦なく彼女の女の部分を露わにしてしまう。
初めて見る、愛しい少女の秘密の場所は、こぷこぷと蜜を湛えていて、彼の与える行為を素直に感じていることを示していた。
「悪い子だ。もう、濡れてしまって…」
興奮をどうにか堪えながらつぷっと中指を差し入れると、娘の身体がびくっと跳ねた。
「あっ、ああ……はんっ……」
もう一本、人差し指も増やして。
そのまま、長い指でずるずると彼女の内側をなぞり、そして浅く引き抜くこと数度。
絡みつく蜜の中に白い筋が幾重にも混じり溶け合っていた。
「ぅぅ……」
「こんなに……どんな顔して、受け取ったんだ?」
扇情的な光景と、発狂寸前の嫉妬にたまりかね、ヒュトロダエウスはとうとう娘に後ろから覆いかぶさった。柔らかな内股に己の滾りを挟んで、擦り付ける。
たったひとかけらだけ彼に残された罪悪感により、胎内を汚される事こそ免れはしたものの、青年の欲棒に敏感な所を執拗に責め立てられる彼女は、お構いなしに叩きつけられる快楽にただ翻弄された。
反面、この体勢すら拒否の色を示さずに受け入れる娘の姿に、目眩がしそうなほどの怒りを覚え男は、更に激しく己の中の情欲を振る舞わせる。
「…はー…です、だめ…わ、たし…ぁあ…あ、すき…だい、すき………っ…」
「ぐ…」
やがて一際激しく娘の全身が硬直すると、その衝撃を受けた男の分身は貯め込んだ本能を生理学に忠実に従って別の物質へと変じ、気を失った娘の肌や、彼らを受け止める寝台に散って、躊躇いなく汚していくのであった。
「…ごめん。でも」
意識のない娘に、意味のないことだと知りつつも謝罪しながら、ヒュトロダエウスは浄化の術を応用し、自身の痕跡をエーテル粒子レベルで丁寧に丁寧に闇に葬った。
白い肌に散らした紅い口づけの跡を、未練がましく指先で触れては、治癒術でひとつずつ消していく。
最後に、彼女の胎内に未だ留まり続けるエーテルを、無駄かつ非道な行為であると知りながらも出来るだけ散逸させ、妊娠する可能性を取り除いていった。出生率が極端に低い傾向にあるとはいえ、万一授かりでもすれば、あの冷徹な老人はあらゆる手を使って生まれた子を力ずくにでも奪うに違いない。
そして自分には、それを止めるだけの力が無いのだ。今は、まだ。
くったりと眠りこける娘に新しい夜着を着せかけ、頭をそっと枕にのせると、軽くて温かな上掛けを細い肩が隠れるまで引き上げる。
自身も服装を整えると、最後にもう一度寝台に跪き、愛しい愛しい「妹」の額に、瞼に、そっと口づけた。
「おやすみ、良い夢を。…………愛してるよ、誰よりも」
機械じかけの扉が、「兄」の仮面をかぶり直した男の退出が住むと同時に、静かに閉じた。