※この作品はR-18です。

漆黒の情動   作:角付きの人

9 / 12
【諸注意】
・FF14漆黒のヴィランズネタバレあり/空想考察成分過多
・愛に潰される「あの人♀」、そして潰したヒュトロダエウスの、
 あったかもしれないし無かったかもしれない副編
・本話R-18展開あり
・某ぴくしぶ公開分(Augustwal名義)の再掲


異説Erat.劣情、未だ眠らずとも

「…飲みすぎですよ。そろそろ控えなさい」

「だって…飲みたい気分なんだものぉ…」

 

久々に招かれて訪れた「妹」の家で、ヒュトロダエウスは呆れた声で彼女に注意するが、「兄」の忠告を耳から素通りさせた彼女は、ぐいっとグラスを真上に上げて、一気に飲み干した。

 

彼はあれ以来、呼ばれない限りはこの家の敷居を跨ぐことを何のかんのと理由をつけて頑なに拒んでいた。

しかし、あの老人が彼女とその周囲に新たな思惑を仕込んでいないかある程度確認することも、また必要な事ではあったのだ。

それゆえ、近頃あまりに伴侶の帰宅頻度が減ってすっかり落ち込んでいる「妹」を慰めるという建前で、今日は已む無く訪問していたのである。

 

「もう止めなさい」

「あああっ、だめ、返してようぅ」

 

彼女の手がゆるりと瓶に伸びたのに気づいて、酔う訳にはいかなかったヒュトロダウエスはテーブルの向こう側からさっとそれを引ったくった。

瓶を届かない所に置くと立ち上がり、未練がましくじたばたと伸ばしてくる手を制しつつ、彼女に近づいた。

 

「今日はもう休みなさい。君も最近はずっと忙しくしてたでしょう?」

「だって…あの人は帰ってこないし……。ヒュトロは最近なんだか冷たいし……」

 

「妹」の体を支えながら椅子から引き剥がすと、彼女は「兄」の顔を視界に認めて、子供のようにぼろぼろ泣き出した。

 

「わたし、もうどうしたらいいか分からないよぅ…」

 

すん、すん、としゃくり上げてしなだれかかる「妹」に、彼は複雑な想いを消しきれず苦い表情を浮かべる。

ハーデスが帰宅できない原因の一助に、今の自分が関わっていた。あの愚劣な老人の醜い手がこれ以上伸びてこないよう、アナイダアカデミアの極秘監査を敢行するための政治工作を彼に提案したからだ。

ちょうど進行していた、主要建築物の維持保存規定の見直しにねじ込めるよう、今ハーデスはあの時の怒りもそのままに各方面を駆けずり回っている。

 

「すまない…。でもしばらくは、私がなるべく来るようにしますから。ね?」

「むうー………」

 

ヒュトロダエウスは縋り付いてくる彼女の体を抱えあげて寝室に向かうと、大きな寝台の上にその体をそっと横たえた。

流石に泊まり込みは考えられなかった。いつぞやの暴挙の記憶は、いつだって彼を苛んでいる。

 

その時までは。

 

「…ん?」

「まって……いかないで…………」

 

意識があって言っているのか、それとも寝入ってしまって寝ぼけているのか、まるで判別がつかない口調と動きで、彼女は男の服の裾を掴んでいた。

 

「…仕方ない子ですね、ほんとに。ほら、離し…」

「…おいてか…ないで………ハ…デス………」

 

彼女の手をそっと外そうとしたヒュトロダエウスの動きがぴたりと止まった。彼の瞳に宿る感情が、だんだんと冷たい物になり始める。

 

「そんなに、寂しいですか。…今は私が居るのに?」

 

人当たりが良い、といつも評される茶色い瞳。そこに宿り始めたそれは、狂気。

いつかの時に飲ませた薬剤の組成式は、彼の英明な頭脳の内で応用法と共にしっかりと刻まれ続けていて、ターゲットと定めた相手に服用させることで副作用なく意識を奪い、様々な情報を引き出す事に大変役になっている。

 

そして目の前の女は、すでに酩酊するほど酔い潰れ、寂しさに打ち震えている。

あの時よりも組成式をひとつ減らして、ヒュトロダエウスは淀みなく多重詠唱を試みた。

 

「口、開けなさい」

 

抱き起こした女の耳元で優しくそう彼は囁いた。もはや友の口調に寄せる気すら持たずに。

彼女が素直にそれを聞き届けるものだから、罪の始まりたる甘露を含んだ男はそっと口づけ、その内にとろとろと流し込んでいく。

 

「ぅむ…ふ……ぅ……」

 

先程奪われた酒を取り返して飲んでいるつもりなのだろうか、彼女はなんの抵抗も見せずにこくこくと飲み下していった。

 

「なら今日は、私が替わりになりましょうか…?」

 

あっという間に体から余計な力が抜けていき、女の本能ゆえか、自分を支える男の体温に甘え、縋り付いていく。肯定するかのように。

彼女の顎に手を回すと、ヒュトロダエウスは二度とすることもないと戒めた心を欲望の底に押し込めて、深く深く口づけた。前回よりも素直に応えて、彼の唇を吸ってくる彼女の姿が、たまらなく愛おしい。

改めて彼女の体を寝台に押し倒すと、わずかに震える手で彼女の衣服をほどいていった。艶めかしい白い肌、すっかり女性らしくなった胸元や下半身、そのどれもが、彼の目には哀しいまでに新しい。

 

「…綺麗になりましたね、身体まで」

 

前回はまるで余裕が無かった事を思い出しながら、男は横たわる裸身をじっくりと睨めつける。

頬から顎、首を過ぎて肩、二の腕から手首、手のひらまで、すうっと撫で上げていく。指をからめてやると、力なく握り返してくるのが愛おしい。引き寄せて、手の甲に唇を落とす。どこも温かく、離し難い。

激情に押し流されるようにして彼女に覆いかぶさり、ヒュトロダエウスはその首筋に噛み付くような勢いで口づけ、吸い付いた。肩口に、鎖骨に、少しずつ場所をずらしながら何度も何度も唇を落とす。

強く吸う度に、女の身体がぴくぴくと反応するのが、徐々に彼を昂ぶらせる。

 

「…んぅ……ぅ……ぁ…ああ…」

 

自分で剥いた素肌に両手で触れて、思う存分その感覚を味わいながら、漏れる吐息に交じる僅かな喘ぎに耳を澄ます。

混濁した意識のまま、彼の愛撫に素直に感じ入る姿は、扇情の極みだ。煽られるまま、男の動きが性急さを増していく。とうとう秘所に指を数本捻じ入れ、最初はゆっくりと、次第に緩急つけて抜き差しを繰り返してやると、女の身体はあっけなく達して、今度こそぐったりと動きを止めた。

彼女の事になれば途端に箍が外れてしまうその本心から溢れる劣情が、獣のように理性の鎖を引きちぎり、先走りに濡れる欲棒の先端を秘所にあてがった。少し埋めて、数度かき回してやると、そこだけは敏感なままなのか、面白いようにぴくぴくと身じろぎする。

 

(…どうせ出来ないんだ。だったら、何をしたって)

 

…だが辛うじて、ひとかけらの罪悪感が最後の鎖の一輪として残り、彼の情欲を押し留めた。

 

「………ッ!くそ……!!」

 

ここまで来たら、ではない。

 

すでに手遅れも同然ではあるが、本当にこのまま最後まで抱いたら、自分は死すら生ぬるい程の罪を犯す事になる。

誓い合った伴侶以外と肉体関係を持つことは動物以下の行為とされ、禁忌中の禁忌と見なされている。自分なぞどうなっても構わないが、万一汚されたことを知ったら彼女は間違いなく自ら命を絶つだろう。

 

きっとそういう子なのだ、これは。だから、いつまでたっても彼の欲しい物は得られない。

 

先端だけ埋めかけた醜い分身を、ぐうっと握りしめて軌跡を逸すと、彼は荒い息を吐きながら己の愚行を堪えきった。あれだけ昂ぶっていた気持ちが、握ったそれごと無様なまでに萎えていく。

苦しげに息を吐き切ると、横たわる彼女を自分の身体で覆うようにして崩折れていき、頬を寄せた。

 

「愛してる…愛してる、愛してる、愛してる…君だけだ、君しかいらないんだ…なのに、どうして……」

 

細い体を折れんばかりに抱き締め、世の全てを呪うかのような声で、いくら言っても詮無き心をひたすら吐露する。

 

「どうして…こんなことに、なったんだ…………!」

 

爆発するかのような想い。なぜ、どうして、と壊れた再生機のように彼は何度も何度も呟いて、彼女をひたすらに抱き締める。

 

その時。

ふっ、と、薬でまともな思考を奪われているはずの、濁った紫紺色の瞳が僅かに開き、そして何かを確認するかのように少し細められた。

ヒュトロダエウスが気づく間もなく、ゆっくりと、ゆっくりと細い腕が持ち上がって。

 

そして彼の背の上におちるようにして、その体を優しく抱き締めた。

 

「………ないてる、の?……トロ……?」

「!!」

 

まだ薬の効果時間を過ぎるような刻ではなく、たとえ覚醒したとしてもまともな思考であるはずがない。

 

「トロ…なかないで……」

 

そして、そんな状態の時に、彼女の共感能力…未だ未知数とは言え『超える力』の一端が、正しく作用することもない。今までの調査で明らかだった。それなのに。

 

「わたしも…かなしくなる、から…。ね、トロ……?」

 

どこか舌足らずだった幼い時に、何度も何度もそう呼びかけきた、彼の略称を。いつだって彼を面映ゆくさせてくる、純真な声音で。

 

「また…ぷりんの………おみせ、に………トロと…いっしょ……に………」

 

すり、と頬を寄せながら、「兄」を恋い慕ってくるのだ。心の底からの信頼をもって。

 

「ふたり、だけ……で………………………」

 

体力を消耗させてしまったが為に、薬が強く効きすぎでもしたのだろうか。彼女はそのまま脱力し、穏やかな表情で眠りこけてしまった。

そしてヒュトロダエウスは。

 

「私は、今まで一体……何を…………?」

 

呆然とした表情で呟いた彼は、いつしか自分の両眼から温かなものがぼろぼろと流れていくのに気づいた。

心を抑えきれずに彼女に無体をしても、今までこの醜い欲が鎮まる事などまったくなかったのに、それが。

 

(…望んだ形ではない、でも、それでも)

 

ずっと彼女を愛していた。だが男女の性愛だけが自分を満たすものだと信じ込み、自分は愛されていないと思い込んでいた。

 

(兄妹ごっこなどでは無かった。この子は、本当に私を…こんなにも……)

 

「彼」へのそれとはまったく違う、それどころか逆に「彼」は永久に得ることがないであろう温かな想いを、こんなにも深く向けてくれていた。

彼を幼い頃から慕って、ずっと信頼を向けてくれて、血の繋がりなどなくとも時に家族としてその身を案じて…ずっとずっと。

 

他の誰でもない、ヒュトロダエウスを愛してくれていたのだ。

 

「ふっ…く、う、うう…っ………うううぅ……!」

 

生涯得られるはずもないと思っていた存在を強く感じたヒュトロダエウスは、彼女の身体を強く抱き締め、そして溢れる涙を止めることが出来なかった。

 

ずっとずっと、誰にも言えずにいた。それどころか、唯一見透かした老人は彼を脅し、踏みにじる手段とさえした。

鬱屈し続け、心の奥底で逃げ場もないほどに渦を巻いていたどす黒い想いが、いま涙と共に洗い流されていく。

 

「私だけの、たったひとりの……。君だけが、私の……」

 

破滅の予兆に心を蝕まれるあまり、他でもない己の手で、最愛の者との絆を汚し続けた獣。

 

それが、誰も知らない夜の底でひっそりと死んだ。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

災厄の日は唐突に訪れた。大多数の者にとっては。

 

 

耐え難いまでの非日常的な恐怖を前に、平穏に慣れきった市民たちの精神はことごとく狂乱状態に陥った挙げ句、その恐怖が生み出した幻獣達によってアーモロートの街は阿鼻叫喚の地獄へと変貌していった。

 

「ヒュトロダエウス、なにゆえこのような非常時に?」

「ええ。どうしても今、お話したい事がございまして…」

「後にせい、馬鹿者が!万一此処が崩壊すれば、この街の知が永遠に喪われるのじゃぞ!?それだけは許されん、急ぎ障壁を張り直し、炎と魔物から護らなければ…」

 

元ラハブレア院長は、血族の青年の方に視線を向けもせず、最初に街を襲った衝撃で破壊された防御術式の再構築準備を行いながらその不作法を罵った。

その姿を、唇に酷薄な笑みを浮かべつつ、すでに死んだ身となった青年が眺めている。ややあって彼は口を開いた。

 

「ご心配なさらずとも、貴方の魂の遍歴とも呼べる研究成果は私が護ります。…退いた『座』の権威をいつまでも振りかざし、心の底で侮蔑する市民たちよりもなお非情な貴方のそれを、この期に及んで大事とするのは、大変に、不愉快ですがね」

 

そして、ちらちらと部屋の四隅に目をやりつつ、半歩だけ距離を詰めた。

 

「!?、こんな時に何を言いだす、儂がどれほどこの街の為に心を砕いていたか、知っての暴言か?」

「ええ、ええ、貴方はご自身の研究をこの街に反映させ、栄えさせる事を己の至上の責務として、本当に愛していらっしゃった…己が唯一と定めた伴侶よりも、ね。その精神だけは感服しておりますよ」

「貴様……今はそれどころでは無い。出てゆけ、痴れ者めが!!」

「そういう訳にはいきません。私はずっとこの機会を待っていたのです。当初の予想とは随分違う形になりましたが」

 

「妹」と友人を盾に、老人に踏みにじられ続けていた男は、心の奥で研ぎ続けていた牙を今こそ閃かせようとしていた。

 

「貴方をこの世に留めおく程、執着なさっている研究の軌跡の全て。私はそれをいただきに上がりました。ただ、活用するには邪魔者は排除せねばなりません。なにせ、今明るみになれば査問にかけられるほどに、随分と非道な実験結果も含まれておりますでしょうから…」

「!、何故それを………」

 

ヒュトロダエウスはそれには答えない。

 

「しかも邪魔者じゃと…?言うに事欠いてこの儂を……!貴様血迷ったか、ヒュトロダエウス!!」

「ご謙遜を。偉そうに人の進化を説きながらその実、他者の情愛を理解せず、赤子すら奪おうとしていた貴方ほどではありません」

 

ただ、老人の秘密を己の手で暴いた昏い喜びを伝える、断罪者としての微笑みを静かに浮かべ続けている。

 

「…ええい、我が血の末とはいえその暴言の数々、許せぬ物ではない!塵も遺さず滅せよ!!」

 

焦れた老人は、築き上げてきた自分の功績を汚されかねない恐怖を覚え、動揺しつつも容赦なく雷属性魔法を詠唱した。確実に仕留める事を想定し、豪炎で相手を焼き尽くす強力な魔法までをも、極めた詠唱速度で同時に発動させる。

萎びた両手のそれぞれに、瞬く間に生じた雷球が、渦巻く炎の塊が、青年に向かって放たれようとするが、それはどちらもパンッと甲高い音をたてて即座に消滅し、環境エーテルに還元されてしまった。

 

「なっ…!」

「そういえば、申して上げておりませんでしたね、私が身に付けた力を。ご興味がなかったようでしたし」

 

世に存在する六種の属性魔法、それを一属性毎それぞれ無効化する防御障壁が、複層状にこの部屋全体を包んでいた。

 

「私に属性魔法は効きません。何の準備もなしに貴方から奪えると思うほど、無謀ではありませぬゆえ」

 

全ての属性魔法をたった一層で防ぐ術式ももちろん存在するが、膨大な魔力を要する割には維持時間が短いし、相手の魔力量が覆せぬほど多く、また強力であれば単純に力負けしてしまう。

であれば、ひとつひとつの属性を確実に無効化する障壁を、同時に展開すれば良いという理屈を成立させてしまった男が、ここに居る。

 

六重詠唱[セクスタ]とも呼ぶべきヒュトロダエウスの異能が、今まさに正しく発動したのだ。

 

「この…!小賢しい、ならこちらを………!!」

「ああ、お止めになられたほうが。無属性であれば……と」

 

そして、もっと前に仕込んでいたもうひとつの罠も。

 

「ッ!?ぐああああぁあ……ッ!…ぐ、ふっ!」

 

怒りのまま練り上げた純粋な魔力波をもって、青年ごとこの部屋の障壁を破壊しようと目論んだ老人であったが、部屋のあちこちに見慣れぬ魔法光が瞬いたかと思うと、あっという間に逆流した己の魔力に押しつぶされるようにして、相手を切り刻むべき強烈な衝撃により、全身をずたずたに引き裂かれた。

 

「…お伝えするのが遅くなって申し訳有りません。かつて貴方が研究されていた対魔法防御装置、それが先般ようやく実用段階に至りまして。属性を帯びない一定量の魔力に反応し、それを発したものに反射するよう調整してこの部屋に設置させていただいておりました。…お気づきになりませんでしたか?」

 

読みが見事に的中した事に満足した青年は、哀れな敵役に対して、懇切丁寧に状況を説明してやった。

 

「き、き…貴様……っ!があっ……!」

 

かつての威厳の欠片もなく、ボロ布のようになって床に倒れ伏す元ラハブレア老は、自分のつま先にも及ばぬ筈の若輩の策に嵌った驚愕と怒りで、ヒュトロダエウスを射殺さんばかりに目を見開き、ギラギラと輝かせている。

 

「ああ、本当に、老いられましたね…。見る影もない、とは、よく出来た言葉です。今の貴方を表すに相応しい」

 

手足がひしゃげ、吐血する老人に一片の憐憫も示さず、青年は穏やかな微笑みを浮かべ続けた。

 

「ですが感謝してください。なにせ貴方が見誤った軌道を、私が修正して差し上げるのですから。俗物の末路としては幸いな方でしょう?」

「…な、ぜ…お前、なぜそれ程までに…儂を…。……まさか、あの娘、の……ごふっ。この…愚か…者……めが…………」

「褒め言葉をありがとうございます、旧き方。…貴方の見下す、心穏かなる市民達と、今の私達。はてさて、一体どちらが一市民として正しい在り方なのやら」

 

いつの間にかヒュトロダエウスの手には、エーテル体ごと相手の身を傷つける事が出来る特殊鉱の短剣が握られていて。

 

「おやすみなさい、我が忌むべき血の先達よ。どうか安らかなる贖罪の旅路が御身にあらんことを…」

 

半刻後、流星雨が降り注ぎ、未だ喧騒やまぬ街のある建物で、二次災害と考えられる連続爆発が発生し、数代前の院長や数名の研究員が犠牲者として、後に名簿へ名を連ねることと成った。

 

この日以降に混迷を極めることとなるアーモロートの街で、歴史書でしかその名称を知られていない「罪人」と呼ばれる存在が生まれていた事を、誰も知る由は無かった。

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