※この作品はR-18です。

不忍探偵社 Rating-18   作:J・P・シュライン

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第16話 開戦 伊賀vs甲賀

 湯上りの男性陣が、ガラガラのVIPルームでリクライニングチェアに座って寛いでいると、館内着を着た知佐と紗織が手をつないでやってきた。

 どうやらト(・)モ(・)ダ(・)チ(・)作(・)戦(・)は成功のようだ。

 目が合った知佐が、ウインクをしてくる。

 

「さ(・)ぁ(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)、あっち座ろうか。」

 上出来だ。

 

「ち(・)ぃ(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)、窓際に座ろうよ!」

 

(ち(・)ぃ(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)だと!?)

 ここまで打ち解けるとは、予想外だ。

 こっちが愛称で呼ぶのと、向こうから愛称で呼んでもらうのとでは、ハードルの高さが数段違う。

 知佐は、相当嬉しいのだろう、はた目にも舞い上がっているのが分かる。

 

「俺、ちょっとジュース取ってくる、タカは何がいい?」

 翔がこっちの親密ぶりをアピールしようと振り返ると、崇継はこめかみを抑えて俯いていた。

 

「おい、どうした?」

 焦って肩を掴もうとする手を知佐に止められる。

「超(・)霊(・)感(・)よ。」

「これが?」

「そう、今、映像を受信してるの。」

 あっけに取られて見ていると、突如、崇継が留めていた息を吐き出して青い顔をこちらにあげた。

 

「何か見えたのか?」

「はい、、、今から共有します、皆さん数珠つなぎに手を合わせてください。」

 ダニエル達は怪訝(けげん)な顔をしたが、知佐に促されて言われたとおりにした。

 

 すると、崇継の手が数珠の先頭にいる翔の手に触れた時、全員の脳裏にイメージが飛び込んできた。

 <三(・)つ(・)巴(・)の(・)紋(・)章(・)>に、<朱(・)色(・)の(・)立(・)派(・)な(・)楼(・)門(・)>、背後には<小(・)高(・)い(・)山(・)>が控えている…。

 崇継が手を離すと、イメージは消えた。

 

「今の何やったと?」

 ダニエルが驚嘆の声をあげる。

 

「超霊感は、イメージの共有も出来るのよ。」

「イマのはドコなんだ?」

「それは、分かりません。」

「今見たイメージから場所を推測するしかないわ、どこかの神社なのは間違いないんでしょうけど…。」

 

「とりあえず、山の麓(ふもと)にある神紋(しんもん)が<三(・)つ(・)巴(・)>の神社を探してみませんか?」

 崇継の提案に、レオナルドが、肌身離さず持っているノートパソコンを開き検索を掛ける。

 

「ダメだ、<三(・)つ(・)巴(・)>の神社なんてソコラ中にアルゾ、モウ少し限定的なジョウホウがナイト。」

 翔が気になっていた事を口にする。

「あの<三(・)つ(・)巴(・)>、普通とちょっと違ってなかったか?」

「ソウナノカ?」

「なんか、普通のより長細かったような…。」

 

「そうだわ、<尾(・)長(・)三(・)つ(・)巴(・)>よ!」

 知佐が思い当たったようだ。

 早速レオナルドが検索を掛ける。

 

「タシカに、<三つ巴>ニモ色んな種類がアルヨウダ。

 エェット、メジャー所では、ウサジングウがそうだな。」

 そう言って、宇佐神宮の画像を検索していたレオナルドの手が止まった。

 

「ビンゴ!」

 画面に表示された宇佐神宮の画像は、まさに先ほど共有したイメージのそれだった。

 

「ここに、お宝のあるとかね?」

 ダニエルは興奮を隠し切れない様子だ。

 

「それは分かりませんが、何かしら手掛かりはあると…うっ。」

 崇継が、再びこめかみに手を当てて俯いた。

 

「ヒントの追加やろかね?」

 どうも違うようだ、先ほどと違い今度は眉間にしわを寄せて苦しそうに見える。

 

「おい、大丈夫か?」

 声を掛けた翔に、青い顔で崇継が答える。

「逃げましょう、何かが…何かが来ます!」

 

 翔たちは弾かれた様に行動に移った。

 

 館内着のままだった知佐は、同じく館内着の紗織を連れてロッカー室に戻る。

 既に着替えを済ませていた翔たちは、知佐たちが着替えを済ませる間に、一足先に会計を済ませた。

 ダニエルたちが車を停めたのは翔とは違うブロックだったので、エントランスで二手に別れる。

 

 ザ・ビートル・カブリオレの所に戻った翔と崇継の前に、二人組の黒スーツの男がゆっくりとした足取りで近づいてくる。

 男達の手は懐に入れられたままだ。

 

「破(・)刻(・)の(・)瞳(・)。」

 

 相手が何者か敵なのかさえ分からなかったが、そんな事には構っていられない。

 術を掛けて相手の時間を奪うと、視線を外さないまま近づいて胸のポケットを探った。

 

「さて、お前らは、悪(・)者(・)か、ただの柄(・)の(・)悪(・)い(・)ビ(・)ジ(・)ネ(・)ス(・)マ(・)ン(・)か…。」

 翔の手に、固く冷たい鉄の手触りがある。

 サイレンサー付きのジグ・ザウエルだ。

 もう片方の男のポケットからも同じものが出て来た。

 

「決まりだな。」

 動けない男たちにそう呟くと、銃把をこめかみに叩きつけて昏倒させる。

 男達の身元を探ろうとしゃがみ込んだ背中に、女の声が飛びこんできた。

 

「なんや、けったいな術やな。」

 

 不意を衝かれた翔は、とっさに崇継の方に身を翻し、声の主と正対した。

 目の前の女は、小柄だがいわゆる男好きのする身体を持っている。

 年のころは二十代後半だろうか、良く日焼けした浅黒い肌にコケティッシュな顔は、好みが分かれるが、概ね翔の好みと言えた。

 ゴムまりの様な弾力を伺わせる肢体は、危険なフェロモンを放っている。

 ボタッとした黒のワンピースの上からでも分かるバストの盛り上がりは、充分に暴力的だ。

 

「自分、伊(・)賀(・)モ(・)ン(・)やろ?」

「お前は、甲(・)賀(・)か?」

 お互い答えないが、それは既に答えたようなものだ。

 

「昨日の刺客を殺ったんも、自分やな?」

「さぁな、だが、お前を地面に這いつくばらせるのは俺だ!」

「はんっ、えらい威勢ええけど、自分の術は効かへんで!」

 

 どこまで気付いているのか、女は目を合わせようとしない。

 だが、それならそれで問題はない。

 相手の動きも確認せずに戦闘などできっこない、向こうがこちらに目を向けないのなら、こちらが圧倒的に有利だ。

 

「けったいなモン見せてくれたお礼に、えぇもん見せたるわ。」

 そう言って女が取り出したものは、野球ボール位の大きさの玉と、一行を出迎えてくれたあの人懐こい子猫の死(・)が(・)い(・)だった。

 

 

 紗織の手を引いて施設の玄関から駆け出した知佐の目に、崇継を庇うように立っている翔の姿が映った。

 目の前の女と何やら言葉を交わしている。

 

「あれが敵?」

 

 そう思う間もなく、その女が手に持っていた何かを地面に投げつけると、煙のドームが翔たちの周りを包み込んでしまった。

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