青のビートル・カブリオレは、朝の日差しを鮮やかに跳ね返しながら、翔と崇継を乗せて、宇佐別府道路を経由して国道10号線に入った。
そのまましばらく道なりに走り、国道212号線から中津ICへと向かう。
ダニエルとレオナルドを乗せたウニモグも、その巨体で周囲を威嚇しながら、軽やかに走るビートルの後ろを猛追している。
朝の病院で谷本から敵の情報を入手した翔たちは、退院手続きもそこそこに、車に飛び乗り宇佐の街を後にしたのだ。
情報を教えてくれた谷本は、
「ほな、
という言葉を残して消えていった。
(不思議なヤツ…。)
一度は死闘を演じた翔だが、今ひとつ憎みきれない。
二台の車は、中津ICで東九州自動車に入るとそのまま東上し、東京を目指す。
ウニモグの車内では、レオナルドがノートパソコンを熱心に弄っている。
紗織を奪われた責任を感じているのか、いつになく気合が入っているようだ。
しばらく熱心に手を動かしていたが、今は手を止めて画面を凝視している。
「どげんしたとね?」
「サッキからフタリの信号が動イテル。」
車に乗って移動しているのか、かなりの速度で移動しているようだ。
「トマッタ!」
「そん場所、どこね?」
ダニエルが色めき立つ。
「イマ、調べテル。」
画面に表示されているその場所の名称を横目に見て、ダニエルも怪訝な表情を浮かべる。
「とりあえず、前の二人に知らせたがよかね。」
**********
~山陽自動車道・白鳥PA~
夕暮れ前の生暖かい空気に包まれた芝生広場で四人はノートパソコンの画面に釘付けになっていた。
「どういう事だ?」
「分かりません、なぜ紗織が南光院のおじさんの家に…。」
「チサは裏切ったンジャなく、サオリを保護シタんじゃないノカ?」
「どぎゃんコツね~?」
「しかし、保護するなら、黙って連れ出さなくてもいいだろ。」
「なんか事情のあったとかも?」
「どんな事情だよ。」
「ワカラナイ。」
「結局、聞いてみないと何も分からない事に、変わりないな。」
「でも、居場所ははっきりしました。」
「そやね、ちょっと安心やね。」
ダニエルは待ちきれないとばかりにPAの食堂に歩き出した。
「ほんならご飯休憩にしよか。」
<白鳥PA>は、山陽自動車道の途中にあるパーキングエリアだ。
そして、もうひとつのウリがフードコートの食堂だ。
無料で大盛りをサービスしてくれる食堂は、様々な定食や丼・麺類を提供している。
ただし、よく調べずに
翔たちは、名物の白鳥定食を頼むと、空いているテーブルを確保した。
定食を受け取って、席に着くと山盛りに盛られた定食を一心不乱に胃に掻きこむ。
「東京着いたら、まずどっち先に行くね。」
「ドッチ?」
「日枝神社か南光院かっちゅうこつたい。」
「う~ん。」
翔の気持ちとしては、南光院に行って紗織の無事と知佐の本心を確かめたいのが本音だ。
「先に日枝神社に行きましょう。」
崇継が答えた。
「南光院のおじさんが敵か味方かは分かりませんが、敵だとしても、少なくとも(降天菊花)が手に入るまでは、紗織は安全だと思います。」
「そうだな、逆に敵さんが先に見つけてしまうと…。」
途中で言葉を止めた翔を見て、レオナルドは、無言で肩をすくめる。
「でも、その前にベースば見つけんと、東京に居る間シャワーも無か車中生活になるバイ。」
ダニエルが現実的な心配を口にする。
「それについては俺に当てがある。」
翔はそういうと、片目をつぶってみせた。
**********
~東名高速道路・海老名SA~
<海老名SA>は日本でも屈指の規模のパーキングエリアだ、駐車台数もさることながら、その施設の充実振りも目を見張るものがある。
ぶっ通しのドライブで疲れ果てた翔たちがたどり着いたのは、とうに日付も変わった深夜1時。
駐車場の端、できるだけ人目につかない場所に停めて、車外に出て伸びをする。
「さすがに疲れたバイ。」
「あぁ、今日はここで仮眠していこう。」
「そうですね。」
崇継も欠伸をかみ殺しながら答える。
「ネル前にトイレダ。」
四人はトイレに直行した。
海老名サービスエリアのトイレは数が多い割りに清潔に保たれている。
<
しかし、それなら、何も<
だが、そのレベルの美人はなかなか居ない。
だからこそ、
ズラリと並んだカウンターで手を洗い、外に出ると、ダニエルが缶コーヒーを投げてよこした。
「サンキュー。」
「ありがとうございます。」
崇継には<
「ところで、ウニモグの後ろは4人眠れないの?」
「そうやね、ビートルよりは寝心地よかやろうけど。」
「いい、いい、横になれりゃ何でもいいよ。」
前を歩いていたレオナルドが、ふいに立ち止まった。
視線の先、車の方を見ると、シルクハットを被り片眼鏡を掛けた細身の男性がステッキをついて優雅に待ち構えている。
「どげん思う?」
「
「ナラ、先手必勝ダ。」
「あぁ。」
小声の相談がまとまった。
「
目の前の男は、シルクハットを取って優雅に一礼し、持っていたステッキの柄の部分を掴んで、中から細身の剣を取り出す。
「オイ、キイてないゾ! アノメガネのせいカ!?」
「なんでや、片目だけで、しかもサングラスやないぞ。」
翔は呆然として答えた。
「術が…、