崩壊世界で伯父上と静かに隠遁生活するだけ 作:カリギュラ伯父上大好きマン
愛が、欲しかったのだ。溺れるほどのそれが、我が身に注がれることこそ唯一の願いだった。
「………」
やっぱり声は出なかった。もはや世界は壊れてしまった。それでも様々な人々が今を生きている。だけれど私は、そのずっと前から脚を止めてしまっていた。
小学四年生の時、家に押し入った強盗が家族を殺した。修学旅行に行っていた私は、家に帰るなり途端に孤独になってしまった。
まだこの頃は、声も出せていたと思う。引き取ってくれた叔母さんが、私の心を守るために必死にケアしてくれたから。
叔母さんは、仕事の出先で車に轢かれたのだという。中学二年の、春の事だった。もう一人の母と慕った優しい人は、死んでしまった。
声が、出せなくなった。
高校生になり、日々を生きるだけの人形になった私を救ってくれた先輩は、恋人になった。
声が出せなくとも、人並みの幸せを知って明日へ向かおうとしていた私の心。それもある日の夕方、先輩の死によって凍りつき、砕け散った。
私のストーカーだったらしい男が、目の前で先輩を滅多刺しにしていた。自失した私が
人気のない裏路地での犯行だったが、運よく目撃者が警察に通報し、直ぐに男は捕まった。叔母亡き後、私の後見人になってくれた中学時代の先生が、被害届を代わりに提出し、裁判になった。
刑がどれ程のものになったか、私は知らない。私は、裁判に出廷しなかった。出来なかった。泣くことすらできず、布団の中で
高校を中退し、人との関わりを断った。先生が、時折慰めにやってくる以外に、人と接する機会はなくなった。
そうして何年も経って、ご飯を食べることすら忘れかけていた頃に、先生がゲームでもしてみたら、と勧めてきた。ソーシャルゲーム、Fate/Gand Order。少年少女が、奪われた未来を取り戻す物語。
もしかしたら、先生はこの物語を通じて人の営みの尊さを説きたかったのかもしれない。かつて私も知っていた、その暖かさを。
だからこそ、私は余計に辛かった。だって私は知っていたのだ。その暖かさを。幸せを。思い出してしまうのだ。それを喪うということを。
だが、他にやることもない。引きこもりの私は、多くの時間をゲームに費やした。
カリギュラ、というサーヴァントがお気に入りだった。彼が愛の男だったからだ。愛のために、我が身を投げ捨てた男だったからだ。
それが、
やり込み要素をこなして、完璧な状態になったカリギュラを眺めていた矢先に、世界が崩壊した。溢れ出る幻想種、人智を超えた怪物たちは猛威を振るい、紀元前より続く人類の繁栄を引き裂きにかかった。
それを阻むべく現れたというサーヴァントたちは、各々のマスターに力を貸し、この世を生きるための助けとなっている。
私も、サーヴァントを呼び出したマスターの一人だ。引きこもるために買い込んでいた食料を消費しながら、家の中に閉じ籠った臆病者にも、救いの手はやってきた。
その手を、まだ私は取れずにいる。だけど、きっと、その手を取るのは近い未来だ。私の壊れてしまった心が、何を勘違いしたのかまた熱を持ち始めている。
心の中に、恐ろしげな黒い炎がちらつく。
「………」
それを鎮めるように、無骨な大きくて固い掌が、私の頭を撫でた。
私は今、風穴の空いた家の中で暮らしている。言葉もなく、生きる意思すら薄弱な、そんな女を助けるべく現れた、カリギュラと共に。
赤い瞳が、穏やかに私を覗いている。バーサーカー、カリギュラ。狂化スキルを、ランクにしてA+という最高値で有していながら、言語能力を保ったほどの精神力が遺憾なく発揮されている。
彼は、私のためにここにいる。それが、暗い愉悦を生んだ。はしたないとは思うけれど。えぇ、だって私みたいな女に優しくしてしまったんだもの。そういう風に想われるのも無理ないわよね?
「ぉ、前も……ロー………マ……だ」
そうなのでしょうね。私のような汚れて狂った女でも、貴方は愛してくれた。
「余の、振る舞いは……運命……で、あ……る」
それは、カリギュラが自身に言い聞かせる言葉なのか。或いはその牙に貪られた憐れな犠牲者に懺悔したのか。分かりはしない。その答えは、彼自身のみが知ることだ。
私を慰めるこの手の優しさもまた、運命なのだろうか。そう思うと、胎が熱を持つ。あぁ、今更になって、私は蘇生を始めたのだ。
得てしまったものを手放すことは難しい。ましてや、喪う苦しみを知っているのだ。二度と離しはしない。執着する。
私は、藤原京子は、そういった狂気を抱えて生きている。それを自覚してしまったのは、良かったのか悪かったのか。未だ判断はつかない。
「………」
「我……が、愛………よ……。お前が………ネロが、しあ……わ……せ……で………ある………ならば、余は………」
思わず、ネロに嫉妬した。理由など、考えるまでもない。想いを寄せる男が、自分以外の女の名前を口走るなど……。だが、まぁ、いい。今は、私だけなのだ。言葉くらい、我慢すればいい。
きっといつか我慢できなくなる。そんな確信を持ちながら、撫でられる感覚に集中する。煮えたぎる情念は私の脳を焼き、段々と一つに集約しつつある。それが完成すれば、私は遂に音を取り戻すだろう。
甘えるように、逞しい胸板に縋り付く。カリギュラは、私を壊さないようにそっと抱き締めてくれた。彼からは見えない私の口許が、ひとりでに弧を描いて音もなく愛の言葉を囁いている。
あぁ、私は愛の名のもとに
投稿したけどあんまり続けるかどうか考えてない話、はっじまっるよー()
初回だから短め薄め。以降は喋ることができない主人公が行動で分からせていく感じになりそう。最終的に喋るだろうけど。
さて、この作品ですが、KEY兄貴リスペクトなら女性(というよりヒロイン)側がヤンデレであるべきでは?という天啓が降りてきたので、カリギュラでやろうとしていたわしは急遽主人公をヤンデレにしました。
結果兄貴リスペクトでは珍しい女主人公の物語になってしまいましたが、そもそもノンケに男×男はいやーキツいっす(素)
男の娘×男ならまだイケるけど、カリギュラ伯父上使うんだったら女のが良さそうとも思ったのも理由の一つですね。
カリギュラ伯父上の行動原理については、また後程に展開される物語で明かされることでしょう(適当)
追記
主人公がどんなのか書き忘れてたので適当に。
・黒髪ロング前髪パッツン
・たれ目
・普乳
・デカケツ
総じてルックスは儚げ美人という評価になるが、中身はドッロドロの地雷系。FGOじゃ珍しくないから……(清姫とか見ながら)