絵の女性と生身の女性、どちらがいいか? 〜現代のピカソが三次元に恋をするまで〜 作:チャンドラ=グプタ
「次は秋葉原、秋葉原ー」
車内アナウンスがまもなく秋葉原に到着することを伝えた。
秋葉原――言わずと知れたオタクの聖地であり、秋葉原駅周辺にはアニメ・ゲームショップを始めとしたたくさんのお店がある。
元々は闇市が行われていた場所であったが、電気部品を販売するお店が出来始め、それに付随するような形でアニメ・ゲームショップも増え、今のような街へと発展していった。
俺たちは駅を降り、電気街方面の改札口を潜った。改札口を潜ると、たくさんの人とお店が目に入った。
「たくさん人がいますね」
「そうだな」
今日は平日のため、実際のところはいつもよりそこまで多くはない。ちなみに日曜日になると歩行者天国があるため、さらに人が混む。
「先輩、どこか行きたいところとかありますか?」
「そうだな……とりあえずラジオ会館に行ってもいいか?」
「はい! ぜひ行きましょう」
駅からすぐ近くの大きな黄色い建物の中に入った。エスカレーターを使って書店コーナーへと向かった。
新刊コーナーでは今月発売された本が並べられていた。
「先輩は好きな漫画とかあるんですか?」
「まぁ、それなりにあるぞ」
「どんなのですか?」
「イチピースとか契約のサバーランドとかに今はハマっている」
「そうなんですか。結構、王道な漫画が好きなんですね」
「まぁな」
桃子でも知っていそうな有名な作品を上げたが、俺が一番好きな漫画は彼◯島である。
あれほど面白い漫画はこの世には存在しないと思っている。
俺はイラストの描き方が載っている本の場所へと向かった。一冊の本を取り、中身を見てみることにした。鮮やかなイラストとともに、技術的なことが詳しく描かれている。
専門的なことはともかく、綺麗な絵が描くためのポイントが分かりやすく記されていた。
「先輩、こういう絵も描くんですか?」
「ああ。結構ネットとかで絵を上げたりしてるぞ」
嘘ではない。ペンタブレットを使い、デジタルの絵も描いたりしてイラスト投稿サイトなどに上げている。イラスト絵を描くときは、ヌードデッサンを描くときのようなリアルな絵ではなく、アニメやゲームのようないわゆる『萌え絵』にして描いている。
その方が閲覧数や評価数が増えるからだ。
「へー! そうなんですか。なんていうペンネームで活動してるんですか?」
「カタカナでミナトっていう名前にしてる」
「興味あるので帰ったら先輩の作品、見させてもらいますね!」
その後、俺は秋葉原でイラストの指南書が売っている場所を回って歩いた。
一時間ほど歩いた後、駅前にある椅子で休憩することにした。
「先輩はああいう本を読んで絵を上達させてるんですね。勉強になりました!」
「まぁ、指南書を読むことも大事だけどやっぱりたくさん描くことが重要だよ」
「先輩が言うと言葉の重みが違いますね。それじゃ、そろそろヌードデッサンができる場所へ行きましょうか!」
いよいよ俺たちはヌードデッサンができるという場所へと向かった。
向かう途中にて路地の狭い道を通ることになったのだがそこで何度もメイドの勧誘にあった。
「ご主人様、良かったら寄って行きませんか?」
ビラを差し出すメイドを無視して、歩き続ける。この辺りはメイドによる勧誘がやたら多い。ひどいところだと騒がしい店内のBGMが外にまで聞こえてくるお店もある。
「先輩、ここです!」
俺の前を歩いていた桃子が立ち止まった。店の看板を見て、俺は愕然とした。
『メイド喫茶 アトリエ』――看板に可愛らしいポップの文字でそう書かれていた。
「桃子、ここメイド喫茶じゃないのか?」
「はい! 信じられないかもしれませんけどここでヌードデッサンができるんですよ。行きましょう!」
「ちょ……おい!」
桃子は止める間もなく、お店の中へと入っていった。しょうがないので俺も桃子の後に続く。
「いらっしゃいませ! ご主人様、お嬢様!」
黒いフリフリの付いたゴスロリ服を着たメイドが丁寧に出迎えてくれた。店内には想像に反して、ゆったりとしたクラシック音楽のようなBGMが流れていた。
「どうぞ! こちらへ!」
案内されたのは二人用のテーブル席であった。メニューを開くとオムライスやコーヒーなどありきたりなメニューが載っているが、どれも高い。どのくらい高いかというと、どれも一品で大体漫画二冊買えるくらいである。
「えっと、桃子。これ、メニュー頼むのか?」
「まぁ、そうなりますね。すみませーん!」
桃子は手を上げて店員を呼んだ。
「はーい! ご注文はお決まりでしょうか? ご主人様、お嬢様!」
「アトリエコースお願いします!」
桃子はアトリエコースとかいう謎のメニューを選んだ。
「承知いたしました。どうぞこちらへ」
桃子が店員の後についていったので俺も慌ててついていくことにした。
案内されたのは大きなキャンバスがある小さな一室。大きな鏡や杖、帽子などたくさんの小道具が用意されていた。
「描きたいメイドのご指名はありますか?」
「いえ、ここを貸してくれるだけで結構です」
桃子が店員に告げた。俺も段々と状況が読み込めてきた。
アトリエコースというのはこの部屋で絵を描くことができるメニューであり、本来は店員であるメイドにデッサンのモデルになってもらうのであろう。
「承知いたしました。では、ごゆっくりどうぞ」
店員はあっさりと承諾し、部屋から出ていった。密室で俺と桃子の二人っきりになった。
「先輩! 実に絶好の場所でしょう?」
「確かにな。どこでこんな場所知ったんだ?」
「実は同じ中学出身の先輩が一年前までここで働いてて、教えてくれたんですよ」
「へぇ、そうなのか」
「はい。では早速ヌードデッサンを始めましょうか」
桃子は早速着ている制服を脱ぎ始めた。俺はスケッチブックを取り出し、早速デッサンをすることにした。
身に纏っているもの全て脱いだのを確認すると、早速描き始めることにした。
桃子の身体のラインを軽く鉛筆で書き込み、徐々に筆圧を上げていく。
身体のラインを描き終えると細部を描き込む。胸に影をつけ、立体感を出す。大きさは目視で澪のよりも少し小さいくらいである。
乳輪は小さめであるため、あまり大きくならないように集中して描いた。前にも言ったが胸に関しては本人と同じように描くのが俺のポリシーである。
胸の描写が終わると下半身の描写へと移る。本人のものと忠実に描くよう薄めにする描くよう意識した。
そこからさらに色付けを始める。肌を着色し、乳輪と乳首は桃色を使用した。
光や影を表すため適宜、白色や黒色を使用し、描き始めてからおよそ一時間弱で描き終えた。
「できたぞ」
俺がヌードデッサンを完成させてことを桃子に告げると、彼女は嬉しそうに俺の元に駆け寄ってきた。
「見せてください!」
興味津々な様子で桃子はスケッチブックを覗き込んだ。
「うわ……さすが先輩。超上手いですね!」
「そうか。気に入ってくれたみたいで良かった」
「せっかくですし、今度は小道具を使ってみますか?」
「そうだな。と言っても何を使うみるかな……」
桃子は数ある小道具のうち、箒を手に取り、それを魔法使いのように跨った。
「先輩。この状態の私をデッサンするというのはどうでしょうか?」
少し恥ずかしそうに桃子は提案した。
「ああ、それいいな」
こうして俺は全裸の魔法使いさんをモデルにして描くことにした。