絵の女性と生身の女性、どちらがいいか? 〜現代のピカソが三次元に恋をするまで〜 作:チャンドラ=グプタ
「相変わらずおもしれぇな。彼◯島」
コンビニにて、俺はゴングマガジーンを立ち読みしていた。そこで俺の一押しである彼◯島を読んでいたのだが、今後の展開が気になるような内容であった。
立ち読みを終えると、俺は水(いろはす)を購入し、コンビニを後にした。
これから向かうところは学校の視聴覚室である。
なぜ視聴覚室かというと、今日はゲーム制作の打ち合わせがあるからである。
先週、陽毬にゲーム制作を持ちかけられていた。折々あって、ゲーム制作に携わることになったのだが、他のメンバーが誰なのかまだ聞いていない。
ちなみに今日は土曜日であり、学校に来るのは一部の部活がある生徒だけである、
俺が所属している美術部は基本的に土曜日は活動しないため、土曜日に学校に登校するのはなんだが新鮮だ。
視聴覚室に向かい、扉を開けるとそこには見知った顔があった。
「おはようございます! 先輩!」
「湊くん! おはよう!」
桃子と澪が座っていた。どうやら二人も陽毬に呼ばれたらしい。
「おはよう。二人もゲーム制作するんだな」
「え? ゲーム制作ですか?」
桃子は驚いたような表情を見せた。この態度から察するに何も聞かされずに呼ばれたらしい。
「湊くん、ゲーム制作ってどういうこと?」
「それはだな……」
俺が二人に事情を説明しようとしたちょうどその時、ガラガラガラと音を立てて扉が開いた。
「待たせたね、みんな」
視聴覚室に入ってきたのは陽毬であった。制服を着こなし、髪を掻き分けながら入ってくる様はなかなかかっこいい。
れっきとした生徒会長という感じがする。
「おはようございます。陽毬さん」
「おはようピカソくん」
「あの、陽毬先輩。ゲーム制作ってどういうことですか?」
澪がゲーム制作のことを訊いた。
「ああ、これから君たちにはゲーム作りに協力してもらおうと思ってね」
「わ、私もゲームを作るんですか? ていうかピカソくんってなんですか?」
桃子も心底驚いた様子を見せ、更に俺のあだ名について尋ねた。
「湊くんはパブロピカソ並みに絵の才能があるからそう呼んでいるんだ。君にも米◯玄師並みのクォリティの曲を期待しているよ、桃色Pくん」
「そ、その名前で呼ばないでください……」
謎の呼び名を言われた桃子は心底嫌そうな表情を見せた。
「陽毬さん、何ですかその『桃色P』というのは」
「彼女は中学時代から作曲活動をしていてね。桃色Pという名前で活動しているんだよ。主にワラワラ動画で」
そうなのか。作曲できるなんて桃子のやつすごいな。俺には未知の能力だ。
「その名前で呼ばないでください。というかゲーム作りなんてそんな大変そうなこと、私に手伝えそうにありませんよ」
桃子はゲーム作りに関して否定的な様子を見せた。
「わ、私もゲーム作りはちょっと……」
澪も同じく、ゲーム作りに乗り気ではないようだ。まぁ当然だろう。
「そうか。では仕方ない。君たちの秘密を先生に話さなければならないな……ヌードデッサンの件についてね」
陽毬の言葉を聞いた二人の表情が一瞬にして強張った。
澪の件はともかくとして、どうして俺と桃子がヌードデッサンをしたことを知っているんだ?
「な、何のことでしょう? あたしゃはヌードデッサンなんてしていませんよ」
桃子は冷や汗をかきながらも何とか平気そうな態度を取ろうとしているが、側から見てもかなり焦っているのが分かった。
というかなんだその一人称。ま◯子か?
「私が前に働いていたアルバイト、あそこに行ったそうだね」
桃子と前に行った秋葉原のメイド喫茶。
一年前まで働いていた同じ中学校の先輩って陽毬のことだったのか。
「ど、どうしてそれを……」
「あそこには今も知り合いの友人が働いていてね。君たちが来たのを教えてくれたんだよ。制服で行くのは迂闊だったね。アトリエルームには監視カメラが置いてあるんだよ」
つまり店員にヌードデッサンしていたのを見られていたとうことか。
「そ、そんな……」
「安心するといい。友人には内緒にしてもらうよう頼んでおいた。だがその映像データは私が預かっている。果たしてこの意味が分かるかな?」
某宇宙最強の帝王を彷彿とさせるような言い回しで圧力を掛ける陽毬。
つまり、桃子が退学するかどうかは陽毬の行動次第ということだ。
澪も同様である。
「ねぇ、湊くん。もしかして私たちがヌードデッサンをしていたのも?」
「ああ、バレてるぞ」
「そ、そんなぁ……」
こうして俺たち三人は陽毬に弱みを握られ、ゲーム制作をさせられることになった。
「というわけで、これからゲーム制作を始めるわけだが、まずは君たち三人の役割を伝えておこうと思う。澪さんとピカソくんはイラストレーター、桃子には作曲を担当してもらう」
陽毬は黒板に俺たちの役割を記した。それにしてもイラストレーターが二人か。
「陽毬さん。イラストレーター二人って大丈夫なんですか? 絵柄とか変わっちゃうんじゃ……」
「イラストに関しては塗り方を統一して描けば、二人で作業しても問題ない」
そういうものなのか。どちらにせよ絵柄に違いが出ないよう、澪と打合せして慎重に作業を進める必要があるな。
「陽毬先輩。先輩はシナリオとプログラミングを担当するんですか?」
「ああ、そのことだが桃子。実はもう一人、ゲーム作りを手伝ってくれる人がいてね。プログラミングはその人が担当してくれることになる。もうそろそろ彼女が来るはずなんだが……」
それとまるで測ったかのように良いタイミングで視聴覚室の扉が開いた。
「失礼します」
セミロングの亜麻色の髪をした少女が部屋の中に入ってきた。
彼女は無表情でかつ神秘的で、俺が今まで会ってきた女性とは違う雰囲気を感じる。
なんというかこう……二次元的な雰囲気なのである。
「初めまして、一年の薩摩由衣夏(さつもゆいか)と言います」
由衣夏の声を聞いて俺は唖然とした。妙に甲高く癖のあるようなこの声は……アニメ声だ。桃子と同学年らしい。
「紹介しよう。彼女は中学校の時の後輩で、彼女は中学校の頃からゲームを作っているんだ。ゲーム作りのベテランと言ってもいいだろう」
すると由衣夏はひょこっと俺の前に立った。
「初めまして、湊さん。私、先輩の絵すっごく感動しました」
脳が蕩けるような甘ったるい声で俺の絵を褒め称えてくれた。
目を爛々とさせ、じっと俺を見つめている。
なんだこれ、すっごくドキドキするのだが。こんな気持ち初めてかもしれない。
「そ、そうか……ありがとう」
「一緒にすごいゲームを作りましょうね!」
「それじゃ、みんな。全員揃ったところで早速、打ち合わせするぞ。これから作るゲームのコンセプトはずばり、『色とりどりの妹萌え』だ!」
こうして、第一回ゲーム制作の打合せが幕を開けた。